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日経『アジア内需拡大 成長の軸』H22.3.16

日経『アジア内需拡大 成長の軸』H22.3.16

中国 GDP 

 さて、2009年、中国のGDP(国内総生産)は、日本に「追いついた」とか、「並んだ」と言われています。2010年には、確実に日本を抜くようです。日本は、1960年代半ばより、維持してきた「GDP(GNP)世界第2位」の地位を開け渡すようです。

倉西雅子 鶴見大学非常勤講師 ブログ『万国時事周覧』
「一方の国が,極端に労働力が廉価である場合には,両国の間で生産費を比較…するまでもなく,この国が,全ての産業において競争力を持つことになります。つまり,相互利益は成立せず,生産費の主要部分を占める労働コストが低い国の一人勝ちとなるのです。…労働力が全て人口大国である中国に集中すれば,他の国の雇用はそれだけ減少し,当然に購買力も低下します」

 というような論調が、まことしやかにささやかれます。中国に抜かされると、日本の労働雇用が奪われ、日本は、大変なことになるというものです。

 貿易は、競争ではありません。ましてや、企業と違い、国と国は、競争の主体ではありません。貿易はWIN-WINの関係であり、国と国がGDPの額を競い合っているという国際競争なるものは、存在しません。

 日本のとなりに、日本と同じ規模のGDPを持つ国が出現したとします。簡単にいえば、「隣家」が金持ちになることです。GDP=GDI(国内総所得)のことですから、お隣の国の購買力が大きくなるということです。このような隣家を持つと、町内会は助かります。近所に「金持ち」がいて、困る人はいません。その街の商店街も潤います。

 中国は、日本と同じ巨大市場となり、周りの国からモノ・ヒト・カネを引きつけます。日本にとっては、ビジネスチャンスの拡大です。

 また、GDI(国内総所得)の増えた彼らは、日本に観光にもやってきます。冬の北海道「阿寒湖」周辺では、宿泊客の8割を、中国人観光客が占める場合があるそうです。また、彼らは、富裕層で、日本への旅行に、百数十万~数百万の費用(買い物代含む)をかけます。これだけの旅行予算をかけられる旅行者は、日本人にもまれです。
 GDP=GDI(国内総所得)ですから、使える所得も増大しているということです。
中国 GDP 増加

 貿易は,輸出と輸入を通した,「ゼロサム・ゲーム(勝つか負けるか)」の戦いではありません。貿易は,麻雀のような,限られた点数の取り合いゲームではないのです。ゼロサム・ゲームは,次の図のようになります。

リカード図ゼロサム.jpg

 しかし,貿易は違います。資源(労働力),資本,技術力を有効活用し,量を増やすのです。
リカードWINWIN.jpg

「勝つか負けるか」ではなく,両者ともに,「WIN-WIN」の関係になれる,それが貿易です。

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genre : 政治・経済

日経『米議会、元切り上げ圧力 中国は強くけん制』H22.3.17

日経『米議会、元切り上げ圧力 中国は強くけん制』H22.3.17

 人民元問題(筆者注:元がドルに対して安いとみなす問題)を巡って米中の対立が深まってきた。中国が相場上昇を抑えている人民元の切り上げを求める動きが米政界では強まっている。中国は…米国の圧力に反発する声が高まっている。
元安が国内産業を苦境に陥れているというという議会の主張は激しさを増している。…秋の中間選挙をにらみ、輸出増・輸入抑制を通じた雇用創出を印象づけたいからだ。主導するのは、労働組合の影響力が強い民主党議員だが、「切り上げ論に賛成しなければ国内雇用維持に反対しているとみなされ選挙で不利になる」。

…中国商務省…「自分たちの輸出を拡大するために他国に通貨の切り上げを要求するのは、一種の利己主義だ」…。中国人民銀行は…2008年夏から元の対ドル相場を1ドル6.83元前後に事実上固定している。相場を維持するための元売り・ドル買い介入は国内の過剰流動性を招き、不動産バブルやインフレの温床になっている。


<いつか来た道>

 貿易は、相互にWIN-WINの関係です。だから、世界的に一貫して、貿易額は増え続けています。理論だけではなく,実際に「自由貿易によって,全ての国が利益を得ることができる」からです。

世界貿易額 推移
  
 ところが、マクロ的(その国の消費者全体)には、WIN-WINなのですが、ミクロ的(例えば、個々の生産者、個々の製造業界)にとっては、死活問題になります。例えば、中国企業と競争を繰り広げる業界では、「中国に雇用を奪われた」と主張します。議員はその声を無視できません。過去には、日米貿易摩擦です。自動車を巡って、両国は激しく対立しました。

 80年代になると,日本からアメリカへの,集中豪雨的と言われた輸出が急増し,アメリカの貿易赤字は年々増え続けました。1987年には,アメリカの1,500億ドルの貿易赤字のうち,約560億ドルが,日本との貿易赤字だったのです。
 
 特に自動車産業では,80年代初頭に,日本車がアメリカ国内の販売台数の20%以上を占めるとともに,生産台数も,アメリカを抜いて世界第一位となりました。一方,アメリカの自動車産業は,不振におちいり,工場閉鎖,従業員の一時解雇(レイオフ)が相次ぎました。日本による失業の輸出であるとしたアメリカは,対日非難を強め,保護主義を台頭させました。

山川出版社 教科書『詳説政治・経済』2007 p195
日米貿易摩擦

 1986年には,日米半導体摩擦から,日米半導体協定が成立します。その中には,「日本は外国製半導体の日本国内のシェアを20%以上にするよう努力する」という,覚え書きが含まれていました。自由な貿易ではなく,数字の目標を掲げるという,管理貿易です。

 1989年には,日米構造協議が開かれます。日米間の貿易不均衡(日本の貿易黒字,アメリカの貿易赤字)の是正を目指した協議で,1990年に最終報告がまとまります。アメリカ企業が日本に進出できるよう,?大型店・スーパーの出店を規制した大規模小売店舗法の見直し,?商品の日本と外国との価格差を是正することなどを約束しました。アメリカ側は,1.財政赤字の削減,2.輸出競争力の強化,3.企業の投資活動の強化などを目標とします。

 1993年からは,日米包括経済協議が開かれます。日米構造協議を引き継いだ,アメリカ側が,自動車・半導体・保険などの分野で,アメリカ企業の日本市場への参入・数値目標を求める協議です。
 このころの,貿易不均衡を背景とした「日本の経済的脅威」をあおるアメリカの論調は,およそ次のようなものでした。

参考文献 野口旭『経済対立は誰が起こすのか』 1998 p34~

1.冷戦が崩壊し,軍事競争から経済競争の時代へと移った。最大の敵は,最も対米貿易黒字を抱える日本である。
2.冷戦時のアメリカは,西側諸国の経済発展のために,自国の市場を開放し続け,自国産業の利益を損なってきた。結果,アメリカの経済力は弱体化し,貿易赤字を抱えた。
3.アメリカのそのような政策につけ込み,日本は経済成長した。日本は,自国への外国企業の参入を規制し,自国産業を保護し,成長した輸出産業は,製品を,アメリカへ集中豪雨的に輸出した。
4.日本は経済大国になっても,欧米とは異なる経営様式や取引慣行を持ち,欧米企業が日本市場へ参入することを拒んでいる。
5.日本の不公正さは,一方的な貿易黒字にあらわれている。日本は市場を閉ざしている。
6.日本のやり方による,最大の被害国は,対日貿易赤字を抱えるアメリカである。
7.アメリカは自国産業の競争力を強化し,日本に市場開放させなければいけない。それは,具体的数値(シェア・輸入数量)によって明らかになる。
8.具体的数値が伸びない場合,アメリカは日本に制裁を加えるといった,おどしが必要だ。

 このような考え方は,アメリカのマスコミを通じて広がります。その結果,「閉鎖的でアンフェアな日本」という考え方は,一般の国民にも浸透しました。
 
 1995年春に,日本の自動車・部品市場における米国側の要求=「数値目標」を掲げた日米交渉は,何とか妥結しました。アメリカが,ちらつかせていた,日本制高級乗用車に対する100%制裁関税(例:100万円の日本製の車を,米国が輸入する際に,100万円の税金をかける)は,使われずにすみました。

 しかし,当時の世論調査では,アメリカ国民の72%はこの制裁関税を支持し,反対は19%に過ぎなかったのです。アメリカの世論も,重商主義=国際競争主義的な考え方に染まっていたのです。

 2010年現在の中国とアメリカの貿易摩擦には、選挙を控えたアメリカの議員の声が大きくなっているという背景があります。

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新聞を解説(60) 『昨年の道貿易 輸出額6年ぶり減』日経H22.1.29

新聞を解説 『昨年の道貿易 輸出額6年ぶり減』日経H22.1.29

 函館税関が28日まとめた2009年の北海道外国貿易概況によると、輸出額は、前年比26.8%減…輸入額は47.3%減…だった。いずれも金融危機による世界的な不況の影響を受け、減少幅は過去最大となった。


<北海道は資本収支黒字=経常赤字>

 北海道は、必ず、貿易赤字になります。それは、北海道の生産額<北海道の消費額だからです。北海道で必要なモノ・サービスを、北海道だけで生産していないからです。

 つまり、アメリカや、イギリスや、オーストラリアのように、生産額<消費額であり、貿易赤字=資本収支黒字の地域なのです。

北海道ISバランス

 北海道のISバランスを見てみます。北海道の場合は、北海道の道内総生産(GRP:上記グラフではGDPで表記)では、北海道の需要をまかない切れていない実態が分かります。道内総生産<道内総消費です。北海道民が必要としているモノ・サービスを、北海道民だけで、生産しきれていません
これは、2000年の実態でもそうですし、2030年の予測でも同様です。

(1)お金の貸し借りから見る

上記の三面等価の図から、次のことがわかります。

<貯蓄が足りないと、貿易赤字になる>

 北海道人の貯蓄についてです。私たちが,給料をもらったら,何に使うでしょうか。これには3つの使い道しかありません。「使うか,貯めるか,税金か」です。高校生がアルバイト代を1万円もらいます。6000円で服を買います。消費税は,5%なので,300円です。残り3700円は,預(貯)金します。ものすごく単純な例ですが,これですべてです。
 ここで,「貯める」というのは,使わなかったお金すべてを示します。それは,財布の中にあろうと,銀行預金になろうと,誰かに貸そうと,要するに,「使わなかったお金全部」のことを言います。
会社が使っても同じです。「モノを作るために,原材料を買ったり(飲食店のようなサービス業なら,食材を購入したり,従業員の服をそろえたり)するか,法人税や,消費税などの税を払うか,残るか」です。
 分配(所得)が,会社に回っても,個人に回っても,あるいは,北海道や札幌市のような地方自治体に回っても,すべて同じ結果になります。「使うか,貯めるか,税金か」です。この「使うか,貯めるか,税金か」を難しく言うと,「消費・貯蓄・税金」と言います。
 「消費・貯蓄・税金」=「消費を英語のConsumptionの頭文字C,貯蓄をSavingのS,税金をTaxのT」であらわします。すると、「C++T」という式になります。

 この貯蓄が、企業に貸し出され、政府に貸し出され、外国に貸し出される原資です。日本国の、三面等価の図を見て下さい。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)

三面等価 2008

2008 ISバランス.jpg

 国民の貯蓄超過がなくならない限り、財政赤字(G-T)+外国への貸し出し(EX-IM)は必ずトータルプラスで発生します。

 では、北海道の場合、どうでしょうか。

北海道ISバランス
数字出典 日本経済新聞社編『北海道2030年の未来像』日本経済新聞社 2006 p202

 北海道の場合、S(道民の貯蓄)が足りません(原因はGDPが足りない)。Sで、I(企業投資)+(G-T:政府投資・消費)+(EX-IM:外国投資・消費)をまかない切れません。
 ISバランスは、S+(ex-im)=(G-T)+(I)です。つまり、道民の貯蓄+道外からの資本(カネ)=北海道の公債+北海道の企業の投資金となります。

S+(ex-im)=(G-T)+(I)
          ↓(ex-im)を右辺に移項
S=(G-T)+(I)-(ex-im)


(ex-im)は、輸出-輸入ですから、輸出が多いと黒字、輸入が多いと赤字です。-(ex-im)ですから、貿易赤字=道外からの資本流入額(資本収支黒字)となります。(アメリカの貿易赤字=資本収支黒字と同じ構図です)

 北海道は、道外からの資本流入(北海道から見たら資本の借り入れ)で、道内企業の投資を行い、道債・市町村債をまかなっているのです。北海道の道内総生産額(GDP)=北海道の道内総所得(GDI)ですが、所得が低く、道内で必要なお金をまかなえません。ですから、貿易赤字(道内への資本流入)が必要なのです。

 道内への資本流入とはどういうことでしょうか。例えば、「ヤマダ電気」や「ケーズ電気」といった、道外資本の家電量販店が北海道に進出することです。「セブンイレブン」や「イトーヨーカドー」「ユニクロ」の進出も、北海道への出資=北海道の資本収支黒字=貿易赤字額になります。

 また、北海道は税収が足りないので、「国庫支出金」や「地方交付税交付金」で道や市町村が予算を組んでいます。このカネも、北海道への資本流入=北海道の資本収支黒字=貿易赤字額になります。

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新聞を解説(59) 冤罪

11月4日23時38分配信 毎日新聞

 女性に抱きついたなどとして強制わいせつ未遂罪に問われた北海道中標津町の自営業、谷内保男さん(45)を逆転無罪とした札幌高裁判決(10月22日)について、札幌高検は4日、上告を断念した。…谷内さんの無罪が確定する。
 谷内さんは08年、電気温水器の修理の依頼を受け訪れた中標津町内の女性(当時21歳)宅で、女性に抱きつき、暴行しようとしたなどとして逮捕、起訴された。谷内さんは一貫して無罪を主張。1審・釧路地裁は懲役1年6月(執行猶予3年)を言い渡したが、2審・札幌高裁は「女性の証言の信用性に重大な疑問がある」として無罪を言い渡した。
 谷内さんは「当たり前のことでうれしいという気持ちはない。家族や支援者の支えがあってここまで来られた。冤罪(えんざい)をなくすため、警察、検察は捜査を尽くしてほしい」と話した。

『卓上四季』北海道新聞 H21.11.7

 再審が始まった足利事件と並ぶ冤罪に、7年前に富山県氷見市で起きた連続女性暴行事件がある。タクシー運転手をしていた柳原博(42)さんが犯人として逮捕された。…懲役3年の刑で服役…その後真犯人が捕まり、再審で無罪となった。…密室での長時間にわたる聴取。いくら否認しても聞いてくれない。精神的にも肉体的にも限界となり、何を言ってもダメだ、とあきらめたという。


 冤罪事件です。どの事件も、「検察(警察?)」の強引な取り調べがあったことが分かっています。起訴をすれば、必ず有罪に持ち込む、持ち込まなければならないというのが、今までの検察の在り方でした。

 今回の東京地検特捜部による、小沢幹事長の聴取についてです。
東京地検特捜部を、『巨悪を追求する』正義の組織と見ては、権力分立の観点から、見あやまります。

検察 ①起訴する権利を独占的に持つ(有罪かどうかを、検察が判断する)
    ②捜査権を持つ (本来は警察のもの)


 

菅原晃「司法制度改革における、裁判員制度導入の経緯と行方」(H16)より抜粋

 日本人の「お上は間違わない」思想により、日本の検察は、恐ろしく肥大化した権力を保持する。それも検察官出身の代議士ですら「世界一」と認めざるをえない権限を持つにいたったのである(起訴権の独占と捜査権保持)。その上で、起訴されて裁判で無罪判決が出るのは、最近では、文字通り0件(『平成14年版・犯罪白書』)である。世に言う99%の有罪率である。有罪かどうか、検察官が決めているといっても過言ではない。

 検察官は英語でpublic prosecutor。文字通りの意味は「公の訴追者」である。警察以外にも、国税庁や税関など捜査機関はいくつもあるが、裁判所に対し、「この刑事事件の審理を願います」という「起訴(訴追)」ができるのは、日本では検察だけである。であるならば、わざわざ「公」をつける必要はない。

 実は、世界では「公」ではなく私人の起訴が当たり前なのである。「私人の起訴者private prosecutorがない国は、日本と韓国だけだ。実際、英米法の国だけではなく、日本が刑事司法制度を習った大陸法のドイツも私人起訴を認める国である。いわく、「もし私人起訴が認められないとしたら、検察が不起訴にした場合、どうやって救済されるのか。」これは日本(韓国)以外では当たり前の疑問なのだ。

 不起訴事件は完全に闇の中に葬り去られるので、報道されることもない。凶悪犯罪だけでも、検察は年間1724件も不起訴にしている(平成14年版 犯罪白書)。殺人事件に限っても、検察庁処理人員1386人中、家裁送致69人、起訴は788人。残り529人が不起訴処分である(平成9年 同)。

 加えて、「起訴しても無罪になりそうなので不起訴」に加え、起訴を猶予する権限も検察だけにある。これを、「起訴便宜主義」と言うが、これは、日本が刑事司法制度をならったドイツにはなく、わが国が独自に始めたものである(刑事訴訟法第248条)。証拠がそろっていて起訴すれば有罪が取れる場合でも、種々の事情を考慮して起訴をしない。種々の事情とは「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の状況(刑事訴訟法248条)」である。前科なし、若・老年、軽微な罪、被害弁償・・・などが起訴猶予になる主因子である。日本では、毎年刑法犯の約3分の1がこの起訴猶予処分にされる。

 前述のように日本の有罪率は99%である。検察は(確実に)有罪になる罪しか起訴しない。逆に言えば、裁判所が「無罪」とするおそれのある事件は起訴しないのである。傷害致死でも起訴猶予にするということは、傷害致死が「有罪にならない」ことを、裁判所が判例で示しており、検察が起訴をする・しないの決定は、その判例のガイドラインにそうものと解釈できる。

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新聞を解説(58) 藤井彰夫 『不均衡是正永遠の課題?』21.11.1

新聞を解説 藤井彰夫 『不均衡是正永遠の課題?』21.11.1

<不均衡とは、お金の貸し借り>

 「ドルは我々の問題である。しかし問題は欧州にある」…1971年のこと…米貿易収支の赤字が増え、ドル切り下げ圧力が強まっていたが、コナリー(財務)長官は米国の責任を認めようとしなかった。
…米国が不均衡問題を持ち出す場合は、決まって相手国に内需刺激策を求めると同時に,相手国通貨の対ドル相場切り上げのカードをちらつかせる。

…77年…日独に米国と並ぶ世界経済のけん引役を引き受けるよう…(サミット)などで内需拡大を求めた。
…ドル高是正と内需拡大をセットにした…プラザ合意(85年)。
…90年代前半…日本に再三、財政出動による内需拡大を要請…。
…9月…20カ国・地域(G20)首脳会議…主要な相手国とにらんだのは中国…。…内需主導の成長を求め…人民元切り下げの圧力も…。
…ドイツは…プラザ合意後…日本とともに内需拡大…政策協調を求められた。…圧力に嫌気がさした西独は…協調から距離を置く…。…87年秋には、それが一因となって株価暴落(ブラックマンデ-)が起こった。
…G20…後、米国がどの程度、ドイツに圧力をかけるかだろう。

世界経済の永遠のテーマのように見える「不均衡是正」


 「インバランス(不均衡)」問題は、資本取引・貿易取引の自由化を選択する限り、なくなりそうもありません。

チャールズ・ユウジ・ホリオカ『経済教室』日経H21.9.30

 世界全体でみたら、貯蓄と投資は常に等しくならなければならない。なぜなら貯蓄は投資の財源として必要で、ある額の投資(設備投資、住宅投資、公共投資など)を行うには、同額の貯蓄が必要だからである。一方、(1)ある国において投資と貯蓄が常に一致する必要はない。貯蓄が投資を上回れば、余った貯蓄を海外に提供し、逆に投資が貯蓄を上回れば、貯蓄の不足分を海外から借り入れればよい


(注)以下、貯蓄をSavingのS、投資をInvestmentのIで補足します。
経済学で「貯蓄」とは、「所得のうちで、財・サービスの購入に支出されなかったすべて」です。タンス預金でも、財布に入っていても、株や社債の購入にあてても、銀行預金しても、すべて「貯蓄」に含めます。

…ある経済またはある制度部門の貯蓄投資差額(貯蓄-投資)は「ISバランス」という。なお、経済全体のISバランスはネットで貯蓄がどのくらい海外に流れているかをとらえており、資本収支の赤字を意味する。また、国際収支は全体として均衡しなければならないため、ISバランスが正(筆者注:プラス、貯蓄超過の状態)であり、(2)資本収支が赤字であれば、貿易収支を含む経常収支はほぼ同額の黒字にならなければならず、逆にISバランスが負であり、資本収支が黒字であれば、経常収支はほぼ同額の赤字にならなければならない

 上記(1)部分が、(2)①資本収支収支赤字経常(貿易)黒字国、②資本収支黒字国経常(貿易)赤字国になります。

 ①は日本、中国,ドイツなどの経常(貿易)黒字国、②はアメリカなどの経常(貿易)赤字国になります。そのインバランス(不均衡)是正しようというのが、下記記事になります。

…G20は世界経済の不均衡是正に向けた国際協調の検討…米国などの経常赤字国が消費を抑制し輸出を増やす一方、中国などの経常黒字国が内需を拡大し輸出依存を引き下げる。
…過剰消費体質の米国への輸出拡大で日本、中国、ドイツなどの経常黒字が膨らむ一方、米国は経常赤字が増え、借り入れが限界に来たことが金融危機を引き起こした-こうした認識が米提案の背景…
…しかし、ガイトナー長官は24日、日米財務省会談後に「強いドルは米国にとって非常に重要だ」と強調した。財政資金の半分を中国や日本など海外マネーに依存する米国にとって資金流入の減少につながるドル安政策に動きにくい…不均衡是正の有効な策は見いだせないのが現状だ。


 世界経済の不均衡 日経H21.9.26

9.26経常収支不均衡.jpg

9.26 不均衡の構図.jpg
(グラフも)

…国際収支上は、米国が巨額の経常赤字を抱える一方で、日本などが経常黒字を計上する格好となる。過剰消費を繰り返す米国に対して中国などで過剰貯蓄が続く構図は、世界経済の不均衡(グローバル・インバランス)と呼ばれている。

<お金の貸し借りが原因、貿易黒字(赤字)は結果>

竹森俊平 慶大経済学部教授 『世界的な需要大幅減の背後に奇妙なるグローバルインバランス』週間ダイヤモンド 2009.4.4 

…世界的な問題には…米国を中心とした近年の国際貸借の増加、いわゆる「グローバルインバランス」問題がありました。
…「インバランス」というと、なにか悪いことのように感じられますが、海外から資本を借りている国もあれば、貸している国もあること自体は、国際資本取引の上ではおかしな話ではありません。


 お金の貸し借りは、善いとか悪いとかの対象ではありません。お金の貸し借りは、財(モノ・サービス)の面から見れば、貿易赤(黒)字になるのです。
 ただ、米国だけが、世界中の投資を,1人で引き受ける(裏には貿易赤字)と、アメリカ国内の住宅バブル崩壊で、世界中に金融危機が波及するという事態を、招いてしまいます。要は「行き過ぎ」はまずいということですね。

 インバランスは「国際間のカネの貸し借り」が原因です。これが、貿易不均衡という結果を招きます。ですから、「貿易不均衡がまずいというのは、お金の貸し借りはまずいと言っているのとおなじこと (野口旭『グローバル経済を学ぶ』ちくま新書2007 p188)」になります。

三面等価 汎用.jpg

22.1.24用

 経常(貿易)黒字は、貯蓄超過から生まれ、海外への貸し出し額と同意なのです。

…資本、おカネの流れは、財の流れという側面から見ることもできます。
 そもそも米国に流れ込んだアジアの国々のおカネ(上図③)とは、本質的には過剰貯蓄、つまり消費(上図①)にも投資(上図②)にも使われないおカネです。過剰貯蓄の存在は、そのぶんだけ生産されたモノ(上図④)に対する需要が欠如している状態を意味します。
「経常収支の赤字=海外からの純借入額=国内投資の国内貯蓄超過額」と頭にいれておいてください。


はい、ここで、竹森先生の、重要な式が、提示されました。アメリカの場合は下記の式でA側から見た見方になります。一方、日本や中国、ドイツは、全く逆のBからの方向になります。

A→経常収支の赤字=海外からの純借入額≡国内投資の国内貯蓄超過額←B

 …生産所得(上図④)のうち消費で使われないぶん(上図⑤)つまり貯蓄に見合った投資(上図②=政府の投資と企業の投資)があれば、生産所得と総支出は均衡することになります。

 貯蓄額=投資額なら、経常黒字(海外への貸し出し)は生まれません。

…アジアの国々が国内投資を抑制し、国内貯蓄を余らせた状態(過剰貯蓄)…しかるにそのとき、米国はアジアの余剰貯蓄を借り入れる一方、自国の貯蓄は減らしてそのぶん消費を増やし、投資も旺盛に行っていた。その結果、世界経済の生産余剰を米国の投資と消費が埋め…要するに…表裏一体の現象なのです。

 「貯蓄>投資」国≡「貯蓄<投資」国

 ですから、貿易黒字はもうけではなく、海外への貸し付け額なのです。例えば、日本国内/中国国内・ドイツ国内には環流しないおカネなのです。
 海外への貸し付け(投資)とは、外国の国債、社債、株、外国銀行への預金(外国銀行から見たら負債です)などです。

投資してもらっている国から見ます。

 ある会社の株式が、外国人によって買われているということです。
 ある会社の社債を、外国人が購入している状態です。
 ある銀行の預金を、外国人がしていることです。
 ある国の国債を、外国人が購入している状態です。
 ある国の不動産の持ち主が、外国人の場合です。

 株式の50%超を外国人が持っている、ヤマダ電機や、日産は、外国企業です。日本の国債の4%~7%ほどは、外国人が購入しています。北海道のニセコにある長期滞在型のホテルやコンドミニアムは、オーストラリア人が購入しています。

 日本から見たら、「負債」になります。しかし、日本のGDI(国内総所得)は伸びます。企業も、銀行も、建設、不動産業もです。これらの企業にとって、買ってくれるのは、日本人であれ、外国人であれ、誰でもかまわないのです。

 だから、「貿易黒(赤)字と、経済成長は無関係」なのです。

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