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憲法について、学んでみる その2

<憲法について、学んでみる その2>

 「小さな政府論の蹉跌」という連載で、「法律(憲法)・人権」について扱ってきました。この憲法について、高校で教えられている内容を再確認したいと思います。
 
 憲法は、基本法中の基本法ですが、実は案外、知られていないことも多いのです。

<クイズ>

 ○×で答えましょう(正解は一番下です)


 外国人にも原則として基本的人権の保障は及ぶ。権利の性質上、日本国民のみを対象としていると解されるものについては、この憲法に違反する。


 天皇は、特殊な地位にあるため、憲法上、基本的人権の保障は及ばない。


 何人も、みだりに指紋を強要されない自由を持つが、外国人登録法が定めていた在留外国人についての指紋押なつ制度も同様である。


 所謂、定住外国人に、地方公共団体の長や議会や議員に対する選挙権を付与する条例は、国民主権の侵害ではない。


 政治活動の自由は、日本の政治のあり方に影響を及ぼす参政権的性格を有するので、国民主権の原理から、日本国民のみを対象とするものと解され、外国人には保障されない。

<外国人の人権>

 憲法第11条

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
 


 さて、日本に住んでいる外国人にも、この「基本的人権」は保障されるのか?もう一度、上記第11条を見てください。「国民」の「基本的人権」について述べています。この「国民」に、外国人は入るのでしょうか?

 結論から言うと、「外国人は入らない」のです。

 マクリーン事件 最高裁 S53.10.4

「基本的人権の保障は、権利の性質上、日本国民のみを対象としていると解されるものを除き、我が国に滞留する外国人に対しても等しく及ぶ」



 このように、外国人の人権保有を肯定したうえで、権利の性質から、外国人には保障が及ばない場合があることを示しているのです。



(1)社会権

 生存権、教育権、社会福祉などの、「社会権」です。

塩見訴訟 最高裁H1.3.2

「社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、原則として国はその政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源のもとで福祉的給付を行うにあたり自国民を在留外国人より優位に扱うことも許される
 

 要するに、外国人への社会権保障は否定し、その保障については立法府の裁量にゆだねられるというものです。日本人第一、外国人第二でかまわないのです。



(2)参政権

 政治活動の自由についてです。

マクリーン判決

「我が国の政治的意思決定またはその実施に影響を及ぼす活動など、外国人の地位にかんがみ、これを認めることが相当でないと解されるものを除き、保障が及ぶ



 つまり、「国の政治的意思決定、またはその実施に影響を及ぼす活動など、外国人の地位にかんがみ、これを認めることが相当でないと解されるもの」については制限することができるのです。

事件名 

外国人の地方参政権


内容

定住外国人が、選挙人名簿の登録申し出を却下されたことの合憲性


争点

外国人に選挙権は保障されるか
法律により、外国人に地方選挙権を与えることは合憲か。


憲法

 第15条
 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。




判決要旨

 国民主権の原理に基づき、公務員の終局的任免権が国民に依存することを表明したものにほかならない。国民主権の権利における「国民」とは、日本国民を意味することは明らかである。日本国民のみを対象とした、規定が保障する選挙権・被選挙権は我が国に在留する外国人には及ばない。

 法律で外国人に地方選挙権を付与することは許される。法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない。   
最高裁 平成7年2月28日
 

 ポイントは、「憲法上、外国人に選挙権が保障されているかどうか」です。「法律で与えられているかどうか」ではありません。現在の法律では、選挙権は、外国人には、与えられていません。



(3)出入国の自由

 外国人の入国の自由については、国際慣習法上、その国の主権にゆだねられており、憲法上、外国人に入国の自由が保障されるわけではないと判例で出ています。滞在の自由も同様に否定されています(マクリーン判決)

 再入国の自由についても、「我が国に滞留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものではない(最高裁 平成4年11月16日)」として否定しています。



(4)プライバシーの権利

 「個人の私生活上の自由として、みだりに指紋押なつを強制されない自由を有するが、外国人登録法の指紋押なつ制度は外国人の居住関係および身分関係を明確にするために最も確実な制度であり、その立法目的には合理性・必要性が認められる」
最高裁 H7.12.15
 

 違憲ではありません。



 
(5)経済的自由

 外国人は、一定の職業に就くことはできません。管理職公務員任用制度で、日本人に限るとするのは、合憲です。



<天皇の人権>

 さて、天皇および、皇位継承者の人権です。もちろん、人権は保障されています。ですが、その地位の特殊性から、必要最小限度の制約を受けているのです。

・世襲制(法の下の平等の例外)
・国政への関与の禁止
・養子縁組の禁止
・選挙、被選挙権
・政治活動の自由
・外国移住・国籍離脱の自由
・宗教活動


クイズの答え

 すべて×です。

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genre : 政治・経済

憲法について、学んでみる その1

<憲法について、学んでみる その1>

 「小さな政府論の蹉跌」という連載で、「法律(憲法)・人権」について扱ってきました。この憲法について、高校で教えられている内容を再確認したいと思います。
 
 憲法は、基本法中の基本法ですが、実は案外、知られていないことも多いのです。

<間接適用説>

事件名

三菱樹脂事件



内容

三菱樹脂株式会社に採用されたAさんは、入社試験中に、在学中の学生運動歴を隠していたことなどを理由として、試用期間後の本採用を拒否された。



争点

企業が労働者の思想・信条を理由として採用を拒否することは許されるか。



憲法

第19条
思想および良心の自由は、これを侵してはならない。



判決要旨

 憲法第3章の規定(人権規定)は、国や公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を規律するものではない(ゆえに、会社の行為が思想信条のおよび良心の自由を保障する憲法19条に違反するということではない)。

 ただし、人権侵害の様態・程度が社会的に許容しうる限度を超える時は、民法90条、不法行為に関する諸規定(民法709条など)の適切な運用によって、私的自治と人権保障の間の適切な調整を図るべきである(間接適用説)。

 企業は、原則として自己の営業のために、いかなる者を雇い入れるかを決定する自由を有するので、特定の思想・信条を有する者の雇い入れを阻んでも、違法ではない

 最高裁大法廷判決昭和48年12月12日。

1

 憲法は、国家という巨大権力を持ったリヴァイアサン(怪獣)の手足を縛る為に制定されたものです。何しろ、国家はやろうと思えば、人殺し(死刑)もできますし、財産没収(罰金~追徴金etc)だって簡単にできます。この権力を、縛るのが憲法です。

 ですので、「日本最初の憲法は、聖徳太子(この表現も最近怪しいそうですが)の17条憲法だ」などというのは、真っ赤な間違いです。

 また、例えば、「プロ野球選手は、ドラフト制度があり、意中の球団に就職することができないのは、憲法違反だ」などという意見は、勘違いです。

第22条
 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。


 これは、国(自治体)が、職業選択の自由を阻害してはいけないという事であって、日本プロ野球機構(民間)が、独自に、ドラフト制度を取り入れているのは、もちろん憲法違反ではありません。

 ただ、判例の「間接適用説」は、「私人間の人権侵害の自由」を認めているのではなく、憲法の人権保障は、民法などの私人間に適用される法(私法)の解釈・適用を通じて、私人間にも反映させるべきだという考え方です。

2

<クイズ>

 ○×で答えましょう(正解は一番下です)

1 
 憲法は国や公共団体と個人との関係を規律するものである。ゆえに、憲法の人権規定が私人間に直接適用されることはない。

2 
 憲法の人権規定は原則として私人間には直接適用されない。しかし、私人の行為が人権を侵害する場合、当然に、私法上も違法となる。

3 
 憲法の人権規定は、私人間に直接適用されないので、民間企業の労働者の労働基本権は憲法ではなく、法律(労働関係法規)によって初めて保証される。



<私人間に直接適用>

 実は、憲法は、私人間に直接適用されるのです。

第28条 

勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動する権利は、これを保証する。
 

 この条文は、直接適用の代表例です。労働組合法などの法律は、「労働基本権」を具体化するものであり、「労働組合法がないから労働基本権がない」とはならないのです。

 同様に、次の条項も同じで、「直接適用」です。

第27条 児童はこれを酷使してはならない。
 
 他にも、次のような条項があります。

第15条

 すべて選挙における投票の秘密は、これを犯してはならない。選挙人はその選択に関し公的にも私的にも責任を問われない。


第18条

 何人ともいかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。















クイズの答え

 すべて×です。憲法の人権規定は私人間に直接適用されないので、私人による人権侵害行為が当然に私法上違法となることはありません間接適用説によれば、「人権侵害の事実が民法90条等の解釈で考慮される結果、私法上違法と判断される一要素となるにすぎない」となります。

民法第90条

公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

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