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マクロ経済学のミクロ的基礎づけ 短期と長期

<マクロ経済学のミクロ的基礎づけ 短期と長期>

(1)
「人々が将来を織り込んで、行動することを想定に取り入れる」:合理的期待形成

(2)
IS-LMモデルは、「現在」だけを考え、「将来」を考慮していないのです。「動き」がなく、「止まっている」のです。

(3)
このように、ベースには、動的に考える視点が、必要です。そこで、「合理的期待形成」説は、IS-LMモデルを徹底的に批判したのです。


 この考え方によって、ケインズモデルはどのような欠陥があるのか、もっともシンプルな例を使って検証します。

 参考文献 『マンキュー経済学Ⅱ応用編』 東洋経済新報社 2004 p147~

 ケインズの仮定は次の3つでした。後の批判は、この仮定に対するものです。

(1)限界消費性向は、0<1の間にある。
(2)平均消費性向は、所得が増加すると、低下する。
(3)消費は所得に依存し、利子率の影響は少ない。


(1)です。限界(追加的)消費性向とは、例えば、臨時収入があった場合です。ボーナスが増えたとか、親戚のおばさんが来て、お小遣いをもらったとかの場合です。

 お小遣いを1万円もらったとします。以前から欲しいものがありました。ゲームソフトです。そこで、ゲームソフトを6000円で購入し、残り4000円を貯蓄しました。
 あるいは、高校を卒業したら、自動車免許を取得したいと考え、10000円を貯蓄しました。
 
 このように、臨時の追加収入があったら、0円~10000円の間で消費することが分かります。つまり「0<1(追加収入)の間で消費する」というものです。10,000円のうち、6000円を使ったら、限界消費性向は0.6になります。 

(2)です。平均貯蓄性向とは、普段もらっている給料とか、お小遣いとかで考えます。

 年収300万円の人が、270万円を消費に回し、30万円を貯蓄に回すとします。この場合、消費性向は270÷300なので、0.9になります。
 毎月3,000円のお小遣いのうち、2700円を使い、残りをためたとします。この場合も、2700÷3000なので、消費性向は0.9になります。
 実際に、日本の平均消費性向は(最も単純に考えた場合です)0.57限界消費性向0.58です。 両者にあまり変化はありません。日本人はGDPの約6割を、消費に充てています。
 
家森信義『基礎から分かるマクロ経済学 第2版』2007 p50 
単純な消費関数.jpg

 ボーナスが臨時に増えたから、「その分、全部使ってしまう」という消費行動は、日本人の場合、あんまり見られません。

 さて、次に、(2)「平均消費性向は、所得が増加すると、低下する」についてです。高所得者は貯蓄を多くし、消費性向は低いというものです。

 年収300万円の人が、転職により500万円にしました。先ほどの消費性向では、270万を消費に使い、30万を貯蓄するのだから、消費性向は0.9でした。

 では、この人が年収500万に増えた場合、450万を消費に回し、50万を貯蓄に回す=消費性向0.9をそのまま実践するでしょうか?

 ケインズはそう考えませんでした。「貯蓄は余裕のある人こそできる、贅沢なものだ」と考えました。確かに年収120万円だと、貯蓄に回す余裕はなく、すべて消費に回ると考えられます。

 年収3000万の人は、全て消費に回すのではなく、貯蓄額も大きくなると、考えます。
2000万を消費し、1000万を貯蓄に回すと、消費性向は、2000÷3000なので、0.67になります。

 これは(3)「消費は所得に依存し、利子率の影響は少ない」の根拠ともなっている考え方です。
 
マンキュー p164
貯蓄と利子率.jpg

 実際には、(3)の仮定は、生き延びました。貯蓄は利子率には依存していないのです。

 まとめると、ケインズの消費関数は、次の3つの式で表せます。

 C=C+cY C>1 0<c<1 

 Cは消費、Yは所得、Cは定数(平均消費性向)、cは限界消費性向です。

 マンキュー p150 
ケインズ 消費関数.jpg

 このように、消費関数は、直線になります。利子率とか、将来予測に影響されないと考えればです。

<実証>

 さて、このケインズの示した、消費関数ですが、例外が発見されました。

(1)限界消費性向は、0<1の間にある。
(2)平均消費性向は、所得が増加すると、低下する。
(3)消費は所得に依存し、利子率の影響は少ない。
 

 ケインズによれば、世界経済が成長すれば(Y所得が増えれば)、消費割合が減り、貯蓄割合が増えます(消費減退による不況?)。しかし、第2次大戦後、そのようなことはありませんでした。Y所得の増加は、貯蓄率の大幅な上昇にはつながりませんでした

 また、消費と所得について、長期のデータを用いれば、所得の増加につれて、平均消費性向が低下するという仮説は当てはまらなかったのです。平均消費性向は、長期では一定だったのです。

マンキュー p152
消費関数 短期 長期.jpg

 クズネッツが1869年~1940年のデータを検証した結果です(この功績で、ノーベル経済学賞を受賞しました)。

<批判>

 この長期と短期の差異は、どのように説明したらいいのでしょうか。
 1950年代に、ミルトン・フリードマンが補足解説しました。

 この理論のベースには、アービング・フィッシャーの「異時点間の選択=将来加味」があります。ミクロ経済学の参加です。まず、こちらについて見て行きましょう。

1.

 われわれが豊かになりたいのは、より豊かな消費がしたいからです。美味しいものも食べたいし、コンサートや野球場にも行きたいし、高級車にも乗りたいです。

 アダムスミス「すべての生産活動の存在理由と目的は消費である」

 ですが、われわれには、予算制約があります。収入です。収入以上に消費はできません。

カテゴリ リカード ミクロ経済学 家計の予算線 参照
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-49.html
 

 その所得Yのなかで、どれだけを消費に回すか、どれだけを貯蓄に回すかを考えます。
消費は今使うことです。貯蓄は今の消費をあきらめて、将来の消費に回そうということです。
(借金もあります。将来消費分を、現在に使ってしまうというものです。家のローンが典型です)

 若者と老人(退職後)を考えます。

 若者時期(第1期)は、所得Y1=消費C1+貯蓄Sです。
 老人期(第2期)は、 消費C2=その時の所得Y2+過去の貯蓄S2(利子が加わるため増)

 これを1つの式にします。
 C+(C2/S2)=Y1+(Y2/S2):S2には利子率が加わっています

第1期 第2期 消費.jpg

 点A⇔点Bの間では、第1期の所得Y1をC+Sにし、貯蓄をしている状態です。点A⇔点Cの場合は、借り入れにより、第1期のY1<消費Cが大きい場合です。

 次に、選好(無差別曲線)です。

カテゴリ リカード ミクロ経済学 無差別曲線 参照
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-50.html


消費 第1期 第2期 2.jpg

 例えば、(点う)から(点い)へと、1期の消費を減らすと、2期の消費が増えなければ、同じ満足度は得られません。(点あ)の場合、第1期の消費をあきらめれば、より多くの第2期の消費を増やさなければ、満足度が上がらないことを示します(点う⇔点いより、傾きが大きい)。

消費 第1期 第2期 3.jpg

 まとめると、このようになります。線wは、予算線を越えているので、選べません。線zは、まだ、最適な効用点ではありません。この場合、点アが、この消費者にとって、最適点となります。

 さて、では、この消費者の所得Yが増えたらどうなるでしょうか。Y1(第1期)Y2(第2期)が増えた場合です。

消費 第1期 第2期 4.jpg

このように、第1期or第2期、どちらかの所得が増加すると、予算制約線は外側にシフトします。この重要な点は、所得増が第1期に起きようと、第2期に起きようと、消費者は両期も消費を増やそうとすることです。消費者は、2つの期の間で、借入や貸付をできるので、所得がいつ得られるかと、今どれだけ消費をするかは、無関係ということです。

ケインズの仮定

(1)限界消費性向は、0<1の間にある。
(2)平均消費性向は、所得が増加すると、低下する。
(3)消費は所得に依存し、利子率の影響は少ない。

ケインズの消費関数

 C=C+cY C>1 0<c<1
 

 ケインズは、ある人の現在の消費は、その人の現在の所得に依存するとしました。フィッシャーモデルは、消費は生涯にわたる予測所得に依存すると主張したのです。

 これは、後の時代の、下記(1)(2)の萌芽です。

(1)
「人々が将来を織り込んで、行動することを想定に取り入れる」
:合理的期待形成

(2)
IS-LMモデルは、「現在」だけを考え、「将来」を考慮していないのです。「動き」がなく、「止まっている」のです。

(3)
このように、ベースには、動的に考える視点が、必要です。そこで、 「合理的期待形成」説は、IS-LMモデルを徹底的に批判したのです。


2.フリードマンの恒常所得仮説 

 これは、将来の所得に関して、恒常所得と、変動所得に分けたものです。

 恒常所得とは、将来にわたって、予想されるものです。例えば、高学歴で卒業した場合、将来にわたって恒常的に高所得が予想されます。

 変動所得とは、一時的な所得増のことです。日本で、ある一部の地域が寒冷気候で、農産物が少なかった場合、別な地域の農家は、所得が上がる可能性があります。
 宝くじが当たった場合も変動所得と考えられます。両者ともに、一時期の所得増と考えられるからです。
 
 そして、消費に影響を与えるのは、前者の恒常所得と考えます。100万円給与が上がれば、その人の消費はその分増えます。気候変動で、100万円収入が増えても、全部を使い切らずに、貯蓄に回すだろうというものです。

 フリードマンは、将来予測を加えることによって、ケインズの消費関数=現在の所得に関係付けようとしているのは誤りだと説明します。

 IS-LMモデルによれば、減税は、消費を刺激し、需要を増やすと考えます。増税は反対に需要を減らすと考えられます。

 ですが、恒常所得モデルでは、消費は恒常所得の変化に反応し、租税の一時的な変更(変動)は、消費と需要に、無視できる程度の影響しか与えないとい考えます。

 実際に、アメリカでの税制改革は、この仮説を裏付けました。
①1964年の恒久減税は、永続的な減税だったため、経済を刺激する効果がありました。
②1968年の臨時増税は、1年限りのものでした。増税は消費を抑制せずに、失業は減り、インフレ率は上昇しました。

 単純なケインズの消費関数では、説明できなかったのです。

 現在は、経済学では、「消費は異時点間の決定に直面している」ことを認めた上で、下記の消費関数が、どのように影響を与えるのかを研究しています。

ケインズ

 消費=関数(現在所得)

現在

 消費=関数(現在所得、財産、期待する将来所得、利子率)


<2つの話>

齋藤由香 『闇の中の一筋の光』週刊新潮 6月16日号

…福島県矢祭町東館小学校の宍戸校長先生…日頃から教育者として「『心に響く言葉』『力のある言葉』とはどんな言葉だろう」と考えて…。
「…福島第一原発の事故では…被災者であるにもかかわらず、日夜、危険な作業にあたってくださっている作業員の方々に…生徒たちのメッセージカードを送ことを決めたのです。木曜日の三時限に二~四年生六十五人にそれを書いて貰いました。…二年生のはなまりあさんのメッセージカードを見ていただければ幸いです」

「日本じゅうをまもってくれている人たちへ ちきゅうにいる人たちが みんなをおうえんしています。つらくてもかなしくても 雨がふっても げんぱつにつなみがきても 木がねっこからおれても きれいなさくらのようにがんばってください」
「もしも、たいへんなことになっても、きぼうをすてずにがんばってください」
「とおくにはなれていても 思いはいっしょ。げんぱつにまけないで、がんばってください」
「あなたたちは、ひさいしゃのやみのなかのひとすじのひかりです。きぼうを捨てないでください」

…宍戸先生の礼状…「このメッセージを見た瞬間、私は小学校で子供たちの前に立ち、教育に携わる者の一人として背筋が伸びるのを覚えました。決して宿題に出して、お父さんお母さんのお話が反映されているのではないのです。子どもたちは…素晴らしい力を発揮できるのだと思います」



『菅総理政治主導の隠された大罪』週刊文春 6月16日号

…医学の世界で指摘されている、人間の生存限界期間「七十二時間」
…それら東北の住民たちを助けるべく向かったのは…警察、消防庁、海上保安庁、そして自衛隊だ。
…その自衛隊が<生存限界期間>中、実は、一歩手前まで追い込まれていたことは、ほとんど知られていない。
…トラックなどの車両、航空機の「燃料」が枯渇する寸前だったのである。
…「需品科」…彼らが見れば備蓄量が何日持つか、一発で答えが出せる。…それも時間単位で…。
…震災の翌日、すでに、燃料が「危機的状況にある」との報告を…上げていた…。
…震災直後、自衛隊は、交通が遮断された孤立地域へ突入し、人命救助を行い、避難民へ物資を持ち込まなくてはならなかった。
…「燃料元売り企業が、供給を止めている」…ある燃料元売り企業の幹部は…「経済産業省からの…業務指導で、燃料の供給は統制された。よって自衛隊への直納は中止せよ、と」
…「被災地へ集中配給するため―そう聞いています」…「官邸の意向だと」-なんと稚拙(ちせつ)な考えなのだ。
…官邸は、東北での燃料不足を見込み、政治主導を見せつけようとしたのだ。…このままでは自衛隊は動けなくなる。特に、航空自衛隊は、あと一日で、ヘリコプターや輸送機が飛べなくなるのだ。…官邸からの指示で燃料供給は経産省で一括してさばこうとしていたのだ。
…官邸が主導した“統制”は、パワフルに展開しようとしていた自衛隊の動きをストップさせた。
…最後には北沢俊美防衛大臣の英断により、燃料供給が復活したのだった。
…経産省が仕切ったとする、それらガソリンスタンドへ燃料を運ぶよう要請された組織こそ、自衛隊なのだ。肝心のその自衛隊が燃料枯渇に陥ってしまった。
…民主党政権がこだわった政治主導―これが、その実態なのだ。

theme : マクロ経済学 ミクロ経済学
genre : 政治・経済

財政政策・金融政策の実際

DSGE モデル.jpg

<財政政策・金融政策の実際>

 実際に、リーマン・ショックの後、各国(EU含む)政府は、「財政・金融」政策をフル出動させました。

 2008年9月におこった、リーマン・ブラザーズというアメリカの投資会社の倒産に端を発する、世界的金融危機は、「100年に1度の危機」と言われました。
2008年11月15日,その金融危機を受けて,主要20カ国・地域(G20)緊急首脳会合(金融サミット)がワシントンで開かれました。
 首脳宣言は,(1)自由貿易の支持と(2)保護主義反対を唱え,G20の足並みがそろいました。「今後1年間は投資やモノとサービスの貿易に新たな障壁を設けない」具体策など、首脳レベルで「自由貿易の堅持を確認するのは異例」のことでした。
さらに、2009年4月2日の金融サミットでは、首脳声明として、次の2点が確認されました 。

(1)成長を回復するために必要な規模の継続した財政努力を行うこと
(2)中央銀行はあらゆる金融政策を活用し、緩和政策を維持すること

「首脳声明では、成長と雇用の回復に向けて各国が必要な規模の継続した財政努力を行うことにコミットするとともに、中央銀行は、非伝統的な手法を含むあらゆる金融政策の手法を活用しながら、必要とされる間、緩和政策を維持することを誓約」したのです。

財政政策

アメリカ
 過去最大規模の総額7,872億ドル(約75兆円、GDP比約5.5%)
(1)環境エネルギー対策や科学技術振興策、医療情報のIT化促進
(2)道路、橋梁の近代化や高速鉄道への投資といった公共投資  
(3)失業保険の給付期間延長の継続やフードスタンプ(食料引換券)の増額等

ユーロ圏
 ドイツ1,000億ユーロ、フランス284億ユーロ、イタリア800億ユーロ、スペイン490億ユーロ、イギリス600億ポンド(約672億ユーロ)
(1)失業保険給付の増額、職業訓練、求職支援等の「雇用対策やセーフティネットの構築」
(2)減税、一時金の支給、公共投資等の「有効需要の創出」
(3)省エネ化へ向けた住宅改修支援と低公害車への買換え補助や税制上の優遇措置等

日本
 2009年度13兆9,256億円の補正予算
定額給付金による緊急的家計支援、緊急雇用対策、中小小規模企業対策、高速道路料金の大幅値下げ等、エコポイント・エコカー減税

金融政策

アメリカ
(1)FRB政策金利を過去最低0~0.25%とし、事実上のゼロ金利政策
(2) 流動性確保(マネタリーベース)以前の1000億ドル以下から、12月には2200億ドル
①長期国債買い取り
②コマーシャル・ペーパー買い取り

ユーロ圏
(1)欧州中央銀行(ECB)
②政策金利を大幅に引き下げ
③カバードボンド(金融機関が発行する担保付債券)の買取
(2)イングランド銀行(BOE)
①政策金利を大幅に引き下げ
②CPや社債の買取等を実施

(3)各国政府
金融機関への資本注入、銀行間取引への政府保証の付与等を継続

日本
(1)政策金利を引き下げ、0.1%に
(2)CPや社債の買取等を実施

各国の、政策金利は、次のように低下しました。

データ出典 『三菱商事フューチャーズHP 各国政策金利』 

リーマンショック後 各国金利.jpg
 
 また、財政出動は、過去最大規模に上り、政府支出の割合も過去最高の水準となりました。

『政府支出GDPの45%に』日本経済新聞 H22.2.19
 政府支出の規模が主要国で急速に膨らんでいる。経済協力開発機構(OECD)の2009年の統計によると、加盟28カ国の政府部門の支出は国内総生産の(GDP)の約45%に達し、過去最高の水準を記録した模様だ。・・・1960年の比率は30%弱。福祉政策の充実などを背景に70年代、80年代とほぼ一貫して上昇…。


 さらに、賛否両論はあったものの、アメリカは、史上空前規模の金融緩和(QE2)を行い、デフレを回避し、失業率を改善させました。
2011-03-08 記事カテゴリ:デフレとは 
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-entry-511.html 参照
 

 これらの政策理論は、すでに各国政府が採用している、「ニューケインジアン理論」から、導きだされているものです。

 以下は、現在、市場経済学者の間に、合意されている事実です。

齊藤誠他 『マクロ経済学』有斐閣 2010 p646
 何らかの市場メカニズムの限界で、実際のGDPが潜在GDPを一時的に下回る不況に陥ることがある。その場合、財政政策や金融政策などのマクロ経済政策によって総需要を刺激し、実際のGDPを潜在GDPにまで引き上げることは、理論的にも、実際的にも十分に正当化できる。

…市場経済を前提にマクロ経済を考えている研究者のなかで、上述…に対して真正面から異論を唱えるものは少数派であろう。
…需要サイドとともに供給サイドが考慮され、マクロ経済政策に置き換えていくプロセスにおいて、需要サイドとともに供給サイドが考慮され、…新しい古典派…が十分に反映されている。

注)ただし、財政政策の出動に関して,学者の意見が分かれるのは,費用と効果の評価に違いがあるからです。

参考文献 谷内満『効果に過大な期待抱くな』日経H21.3.28 読売H21.8.23
財政政策賛成派
クルーグマン(プリンストン大学)
スティグリッツ(コロンビア大)
アロー(スタンフォード大)
サミュエルソン
フェルドシュタイン(ハーバード大 財政刺激策否定派だが,今回は必要)
懐疑派
☆バロー(ハーバード大)
☆ルーカス(シカゴ大)
サージェント(ニューヨーク大)
ブキャナン(ジョージメーソン大)
ベッカー(シカゴ大)
プレスコット(アリゾナ州立大)
★マンキュー(ハーバード大)
★テーラー(スタンフォード大)

☆はケインズ経済学を否定し,理論的にも実証的にも効果がないと考えている。
★はケインズ経済学の立場で,理論的には効果はあるが,実証的にはかなり限定的と考える。

 現在の経済学は、もはや、「新しい古典派」だの、「ニューケインジアン」だのと、分けることができなくなっています。「市場に任せておくだけでOK」理論など、リーマン・ショックでぶっ飛んでしまいました。

 そういう意味では、マクロ経済学という分野さえ、事実上存在しないとも言えます。

 ラムゼー・モデルや、RBC(リアル・ビジネス・サイクル)モデル―(視点を変えればニューケインジアンモデルも同じ)、DSGE(動学的一般均衡)モデルなど、最先端のモデルでは、「ミクロ的基礎づけ」のない理論はあり得ないといっても過言ではありません。

 一方、新しいIS-LMモデルでは、期待所得や、期待インフレ率など、将来予測を含み、AS曲線を導出しています。

注)ルーカスも、フリードマンも、クルーグマンも、キドランド・プレスコットも、ノーベル経済学賞受賞者です。 

 確実に言えることは、「一つの理論だけで、全てを解説できるというのは、詭弁」「経済学のカンどころですが、常に2つあるいは、それ以上の視点が、『同時』に必要」ということです。

 どうにか、「問題を解決する方法はないだろうか」を模索しているのです。ですが、この新しい理論は、世間には知られていません。知られていないというのは、実際に政府内に入って、政策に影響を与える世代にはなっていないからです(日本の場合)。


 「病気(不況)」のときに、「構造改革」といって需要を縮小させたり、金融緩和を「ジャブジャブにして効果なし」、財政政策を「ばらまき」と言ったり、「インフレはとんでもない」と言ったり、「デフレは大したことではない」と言ったり・・・

経済学→政策


 理論は科学ですが、その政策(実践)には価値観が伴います。理論と実践の間に横たわる、「永遠の課題」です。

 TOO LATE 「ミネルヴァのフクロウは夜に飛ぶ」のです。

<日系は、マッチポンプ>

H23.6.9『経常収支、悪化は一時的』
日経

「経常赤字転落」「国内で自由に使えるお金が少なくなり」という、否定的記述です。

 一方、日経ビジネスオンラインでは、法政大学小峰先生がH23.6.8『貿易赤字国転落の誤解』としています。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20110606/220468/
http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/141.html


 経済の中でも国際経済の分野は、「エコノミストの常識」と「一般の人々の常識」の食い違いが特に多く見られる分野である。その食い違いがあまりに多いので、私は『日本経済・国際経済の常識と誤解』(中央経済社、1997年)という本を書いてしまったほどである。

 その誤解に満ち満ちた国際経済の分野でこのところ話題になっているのが、日本の貿易収支が赤字となっていることだ。このままいくと経常収支も赤字になる可能性があるとも言われている。これについては既に多くの議論が展開されつつあり、例えば、週刊東洋経済は6月4日号で「貿易赤字転落で発生する日本経済最悪シナリオとは」という記事を掲載し、週刊エコノミストは6月7日号で「ニッポン 経常赤字国転落」という特集を組んだ。

 この貿易(経常)赤字国転落論にもエコノミストと一般人の常識の食い違いがあり、私から見ると、その食い違いの数はちょっと半端な数ではないように見える。以下、詳しく考えてみよう。


 日経は、社内情報を共有していない様です。

<追記>

 この記事内容について、日経(読者応答センター)に問い合わせた所、次のような回答でした.

1「経常赤字転落」は慣例的表現で、ずっとこうなっています。
2 その記事内容を受けて、あとは、読者が判断して下さい。
3 国際収支については、読者が勉強することが必要です。
4「『赤字になると国内で自由に使えるお金が減る』」は事実ではないのでは?」に対し、私は詳しくないので、分かりません。

との事でした。年配の男性でした。

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genre : 政治・経済

ケインジアン vs 新しい古典派

ケインジアン vs 新しい古典派 正解.jpg

ケインジアン マネタリスト 新しい古典派.jpg

ケインジアン vs マネタリスト 正解 IMG.jpg

注)IS曲線が水平になるのは、投資弾力性が高い場合です。投資量が利子率に大いに左右される場合です。
 この場合、利子率が下がると投資需要が拡大し、結果総需要が増大します。そのため、総供給も増加しなければ財市場が均衡しなくなります。


 このような、マネタリストの主張つまり、ある時は需要サイド(IS-LMモデル)で論じたり、長期には供給サイド(完全雇用)で論じたりというのは、統一理論を重視する「新しい古典派」には到底受け入れられません。「ケインジアン批判」では同じなのですが、そのよって立つ根拠が違うのです。

 で、新しい古典派の説ですが、人間はすべて合理的で、情報もすべて持っているとする前提そのものが、「非現実的だ」ケインジアンからは非難されます。そのような前提を基にしては、いかに数学的な理論を駆使しても、「空理空論だ」と批判されます。

 一方で、ケインジアンIS-LMも、「空理空論で、政策効果について具体的なものではない」というのも、事実です。確かに、「ISは実質金利、LMは名目金利」ですから、ぐうの音も出ませんでした。経済学では「実質と名目」は厳密に区別して論じなければいけません。そもそもIS-LMは、その意味では、基礎部分の土台からしておかしいのです。

 この論争を経て、1990年代には、「新しいケインジアン」が登場します。これは、「新しい古典派」の、考え方の手法を使っても、ケインジアン理論を構築できることがわかったからです。

<新しいケインジアン>

 ケインジアンの主張は「価格は伸縮しないのだから、均衡しない」というものでした。

それに対し、新しい古典派の理論は次の3本柱でした。

1 価格や賃金は市場の需給で動く:「伸縮性」
2 人々が将来を織り込んで、行動することを想定に取り入れる」
  :合理的期待形成
3 マクロ経済学のミクロ的基礎づけ
 

 人々は、来期のデフレを予想するとします。将来もっと安くなる(全体の物価)のですから、今は消費を控えたほうが合理的です。しかも、借金は、「実質金利」が高くなるのですから、まるっきり損です。家のローンなど、「実質金利」が高くなるので、今はやめです。

実質金利 =名目金利-(予想)インフレ率
 20%  =  10%  -(-10)%


 企業の投資も同じです。今は実物投資をしても実質金利高いので、損です。来年になればもっと「実物」は安くなりそうだからです。しかも自社製品(個々の物価水準)の価格も「下がり」ます。
 逆に、過去の借金(例:名目金利2%で借りた)は、実質金利が高くなるので、できるだけ早く返さなければなりません。
 このように、「消費」も「投資」も落ち込んでしまいます。不況です。財・サービスが売れず、失業が増え、さらに全体の物価が下がります。最初の予想通り、デフレになります。  
 

 どうですか?事実(実際に起きたこと)は、「日本のデフレ」状態です。これは事実なので、「理論的におかしい」とは、否定できません。

 この流れには、新しい古典派の理論(3本柱)がすでに含まれています。

 1.価格は伸縮し、その結果デフレになっていますので、2.合理的期待形成理論も含みます。そのような条件下で、「消費は損」「投資は損」と消費者も企業も、一番合理的な選択をしています。つまり、3.ミクロ的基礎づけをベースにした行動です。

「新しい古典派の考え方」の手法を使っても、ケインジアン理論を構築できるのです。

 新しい古典派のいうように、「放っておけば、市場原理が働き、需要不足や失業は解消され、均衡に向かう」というのは、実現しなかったのです。

 一方、「価格や賃金は下がらないので均衡しない」という、ケインジアンの主張も事実(実際)ではありませんでした。

 これらの事実は、どのような理論を用いようとも、「強烈に、理論の前に立ちはだかる、壁のような事実」でした。日本のデフレは、理論に、めちゃくちゃに影響を与えたのです。

 では、「政府の介入」すなわち、「財政・金融政策」という、政策は「無駄」なのでしょうか?それとも有効?なのでしょうか。有効だとするのが、新しいケインジアン=ニューケインジアンです。

DSGE モデル.jpg
注)DSGE(動学的一般均衡)モデル

 新しいIS-LMモデルは、RBC(リアル・ビジネス・サイクル)モデルに、「不完全競争市場」「名目価格の硬直性」を加えたものです。 

 続く

全文引用です。

高山正之 『ぼろは着てても』週刊新潮’11.6.9

…90年代半ば、ルワンダ内戦で…自衛隊派遣を言い立てた。
…難民キャンプにも武装ゲリラが出没…エイズは流行る。危険千万で…西欧諸国も尻ごみしていた。
…装備は小銃のほか機関銃1丁とほとんど丸腰で送り出した。
…自衛隊は…任期を無事務め上げたうえ、武装ゲリラに襲われたNGOの日本人医師の救出もやってのけた。
…任務終了後…制服の着用は仰々しいので認めない。各自私服で帰れと。
お前らは目立つことはないという意味だ。
…誰もましな着替えなど持っていない。…ロンドンから日航機に搭乗したとき周囲の乗客はひどい身なりの集団にちょっと驚いた。
…機長アナウンスでだった。
「このたびは任務を終え、帰国される自衛隊員の皆さま、お国のために誠にありがとうございました。国民に成り代わり機長より厚く御礼申し上げます。当機は一路日本に向かっております。皆さま故国でよい年を迎えられますよう」
 …客席から拍手が沸き、その輪はやがて機内一杯に広がっていった。
 機長は…「当然のことをしただけ」…。
 成田に着いたあと65人の隊員はコックピットの見える通路に整列し機長に向かって敬礼した。

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genre : 政治・経済

動きを取り入れたマクロ経済学

<動きを取り入れたマクロ経済学>

経済学史 サミュエルソン.jpg

 1960年代までは、「ケインズ経済学(ケインジアン)=新古典派総合」全盛期でした。1930年代の不況の後、「政府は景気を良くするために、市場に介入し、失業者をなくすべきだ」という、ケインズの考え方が継承され、Y=C+I+G+NXのG政府支出を拡大して、景気を良くしようという「ケインジアン」という経済学者が、世界中に大きな影響力を持ちました(需要重視)。
 西欧では「福祉型」の政府支出、アメリカでは「軍」の政府支出拡大が行われたのです。「大きな政府」路線です。実際に、1960年代は、世界的に成長した時代でした。

 ところが、1970年代に入ると、「スタグフレーション」と呼ばれる、「不況なのに、インフレ」という状態になったのです。今の新興国を見ても分かるように、景気の良い時はインフレ、景気の悪い時は日本のようにデフレになるというのが、通常です。
 ところが、日本でも、1974年には、「狂乱物価」というすさまじいインフレが起こり、なおかつ、前年の石油危機を受け、戦後初のマイナス成長を記録しました。
 各国は、ケインズ政策により、景気を良くしようとしたのですが、失業者は減らず、財政負担が大きくなるばかりでした。
 
 そこで、経済学では、ケインズ政策に対する批判が起こります。マネタリストや、合理的期待形成説に基づく、新しい古典派の人たちが台頭し、ケインズ経済学は「ミクロ的基礎がない」と、徹底的にたたかれました

 合理的期待形成説は、1970年代末,ルーカスやサージェントなどによって主張された説です。「人々が利用可能な情報を効率的・合理的に利用すると,その予想は客観的確率に等しくなる」という考えから,政府が裁量的財政・金融政策を行ったとしても,企業も個人もその結果を正しく予想し行動するところから,その政策は無効というものです。

 金融政策を拡大しても、マネーサプライ増加率を人々が合理的に予想する(将来インフレになる)とすれば、それがGDPに与える効果はないといいます。

 また、財政政策についても、無効であると主張します。経済学者バローによれば、国債を発行しても、「将来増税だろう」と国民が予想すれば、国民はそのために貯蓄を増やし、消費を減らすので、財政政策の効果は「相殺」されるとするものです。

 だから、需要不足が生じても、市場にまかせることで解決するから、「政府は余計な介入をするな」とする「小さな政府」路線を主張します。

 1980年代は、この「小さな政府」路線が各国で採用されました。アメリカのレーガン大統領時代、英国のサッチャー首相時代、日本の中曽根総理時代は、規制改革や、民営化、福祉の削減などの財政改革など、構造改革(供給側重視)が行われました。
 小泉改革も、供給側重視の理論を、1980年代に、アメリカに学んで帰国した、竹中平蔵や、中谷巌世代の経済学者の政策を採用したものです。

 ケインジアンは、そもそも、不況で失業が生じるのは、「価格の下方硬直」があるからだと考えました。失業者が出ても、賃金は下がらない、不況になっても財価格はすぐには下がらない、だから、政府が需要を作り出せというものでした。その結果、多少のインフレになってもかまわないと考えました。

 新しい古典派は、「その政策のせいでインフレになった」と主張します。「市場に任せれば、需要=供給が均衡する点まで、価格は下がる。下がらないのは、政府の規制や、労働組合が強いからだ。それらを改革せよ。それでも失業するなら、仕事内容と、求職者のスキルのミスマッチだ、職業訓練を充実させよ。」と言います。
「政府が需要拡大しても、その結果『インフレになる』と人々が予想(合理的期待形成)すれば、何の効果もない!」「インフレは需要拡大政策のせいだ!」です。

 これは、当時としては、結構説得力がありました。

ルーカスの、新進気鋭時のエピソードがあります。

エール大学の(ジェームズ・トービン教授ケインジアン)セミナーに参加した時の話です。 

「非自発的失業」について、ルーカスが教員から質問され、
“エールでは未だに非自発的失業などと訳のわからぬ言葉を使う人が、教授の中にすらいるのか。シカゴではそんな馬鹿な言葉を使う者は学部の学生の中にもいない”吉川洋『構造改革と日本経済』岩波書店2003 p191

「非自発的失業」とは、ケインズ経済学で頻繁に使われる言葉です。働く意思はあるのに、労働賃金が高止まりしていて(価格の硬直性)、職を得られない人々のことです。余談ですが、今の最新の経済学ではもう使われていません。いずれ消えていく言葉とされています。

 シカゴは、ミルトン・フリードマンらの「マネタリスト」の牙城です。アメリカの場合、学校ごと、地域ごとに全然思想が違うんですね。シカゴ学派は、五大湖沿岸なので、「真水の経済学」と言われました。これが、「市場主義」として、アメリカ国内から(結果的には世界的にも?)、共産主義を駆逐する大きな原動力になりました。

 このエピソードには続きがあります。ジェームズ・トービンは、ルーカスに対し、「お若いの、世界恐慌を見たことがあるのかね。私は見た」と言って答えたそうです。世界恐慌時の失業を目の当たりにした、トービンならではの回答ですね。

 トービンも、ルーカスも、ノーベル経済学賞受賞者です。

<新しい古典派の理論>

 彼らは、次の3つの手法を導入します。

1 価格や賃金は市場の需給で動く:「伸縮性」
2 人々が将来を織り込んで、行動することを想定に取り入れる」
  :合理的期待形成
3 マクロ経済学のミクロ的基礎づけ
  

 将来を予想したうえで、個々人や企業は、自分にとって最適な消費・生産・投資を決めるとし、それを前提に、消費関数や、投資関数の式を導出しました。

 ケインジアンは、GDPや消費額のデータから、いきなり、消費関数や、投資関数の式を導出していました。そこから、政策の効果や、景気を予想しました。
 ですが、人々の将来の予想が変われば、これらの式も変わります。それらを抜きに,全体論を始めたり、「価格は変わらない」を前提にしたりしても、矛盾が生じます。

 このような点を突かれ、ケインジアンはコテンパンにやられてしまったのです。そしてその論争が、学会から次第に世間に流布していったのです。「需要を増やす(政府による)のではない、構造改革が必要だ!」と。

 でも、「構造改革」が世間に流布した時には、「ケインジアンvs新しい古典派」論争は学会ではすでに「過去のもの」になっていました。そうです、さらに新しい時代へと移っていたのです。
 
 ここで、新しい時代に入る前に、「マネタリスト」はどこへ行ったのか?と疑問を持つ方もいると思います。そうですよね、ケインジアンをたたいた大御所には、ミルトン・フリードマンがいますよね。は、徹底的に「市場原理」を信奉し、政府による総需要管理政策(ケインジアン)など、長期的には全く意味のないことを、主張しました。

 マネタリストと、新しい古典派は、同じ立場(理論)で主張したのでしょうか。

ケインジアン vs 新しい古典派 間違い.jpg

 これが、ちがうんですね。マネタリストは、新しい古典派とも、もちろんケインジアンとも、また違う立場(理論)なんです。

ケインジアン vs 新しい古典派 正解.jpg

 このような図式になります。(続く)

<続 日経はやっぱり変われない>

H23.6.1 『生産回復、円高圧力へ』
…日本の貿易収支は4月に赤字に転じたが、「…貿易収支の改善によって円高圧力が高まる」(三菱東京UFJ銀行の内田稔シニアアナリスト)との観測が広がっている。

『マーケットウオッチャー』
…米低金利政策の長期化観測によるドル安の流れに日本の貿易収支の改善が加われば「年後半には80円を超える円高水準が定着する」(JPモルガン・チェース銀行の佐々木金融債権為替調査部長)との声もある。


アナリストも日経もやっぱり変です。経済教育(高校:現代社会or政治経済必修なのに・・・)の手抜きです。
  ↓
http://www.bk.mufg.jp/report/bfrw2011/Weekly110516.pdf#search='三菱東京UFJ 内田稔'

北海道紋別郡滝上町 芝桜公園 5月27日
IMGP2274.jpg

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短期:最も単純なIS-LMモデル

<短期:最も単純なIS-LMモデル>

 まず、「IS-LMモデル」について、学んでゆきましょう。

 ケインズの「有効需要」の原理を、ヒックスという経済学者(ノーベル経済学賞受賞)が簡潔に示したものです。もちろん、「IS-LM分析」で、すべての経済政策を説明できるわけではありませんが、政策の全体像を見るには適した理論です。

IS-LM曲線.jpg

 IS-LM曲線は、国民所得Y(=GDP)と、利子率を示します。

IS曲線は、財市場(モノ・サービス=いわゆる商品)を均衡(バランス)させるような利子率と国民所得の組み合わせです。ISのIはInvestment、投資です。SはSaving、貯蓄です。「投資-貯蓄曲線」です。財(モノ・サービス)市場を示します。

LM曲線は、貨幣市場(金融市場)の均衡(バランス)を維持する利子率と国民所得の組み合わせです。LはLiquidity Preference、貨幣への選び方の好み(流動性選好)です。MはMoney Supply、貨幣の供給量です。貨幣市場のL(需要)M(供給)を示します。

<金融政策>

 金融政策は,LM曲線をシフトさせます。

 日銀が景気を刺激するために,利子率rを下げます。貨幣の供給=マネタリーベースを増やし,利子率rを下げます。

IS-LM LM移動.jpg
 
 このシフトに基づいて,財政政策・金融政策の効果について検証しましょう。

 開放経済下(外国との資本移動が自由な場合=日本・米・EUなど)では,金融政策は有効だとされています。拡張的金融政策で,貨幣の供給=マネタリーベースを増やし,利子率rを下げます。

IS-LM LM移動 2.jpg

 新しいLM①曲線のもとで,新しい均衡点はE①になります。このとき,GDP=Yは増加していますY①。また,自国の利子率rは低下しています。

is-lm 4.jpg

 国内利子率rが外国より低い場合,利子率の高い国で資本を運用した方が利益は大きいので,資本が日本から外国に移動します。円売りドル買いになります。円安・ドル高で,輸出増・輸入減になります。輸出は総需要を増やします。

Y②=C+I(r)+G+(EX-IM)②

②効果により,新たな均衡点E②では,GDP=Yはさらに増加していますY②

 変動為替相場制で,資本の国際移動が行われる開放経済下では,金融政策は有効とされています。

<IS-LMモデルの欠陥>

 このように、財政政策・金融政策の効果を見るのには、大変適したモデルなのですが、欠陥も持っています。それは、「適切な量」が分からないというものです。
 
財政政策発動→GDP増→貨幣需要増→金利アップ→投資減・輸出減・・・・

金融政策発動→金利低下→投資増・輸出増・・・・
 

 どうですか?正反対の結果ですよね。ですから、「財政政策・金融政策」の両方を適切に組み合わせることによって、「望ましいGDP」を実現しようとするのですが…

 どちらの政策をどれだけ行えば(量)、最も適切な財政・金融政策なのでしょうか?これが、IS-LMモデルでは「わからない」のです。

 分かるのは、「とにかく財政政策と金融政策を行うこと」の必要性です。必要なことは、理解できるのですが、「どんぶり勘定で必要だ」では、「エイヤ!」で終わりです。

 IS-LMモデルが、答えを提供できないのは、ミクロ的な基礎がなく、「最適」を導き出せないからです。

 ミクロの需要曲線では、消費者効用の最大化が行われ、供給曲線は、企業にとって最大利潤点を結んだものでした。つまり、ミクロの考え方は、「最適水準」が分かるのです。

横山将義 嶋村紘輝著『図解雑学マクロ経済学』ナツメ社2006消費者余剰・生産者余剰 横山将義 嶋村紘輝著『図解雑学マクロ経済学』ナツメ社2006.jpg

 市場メカニズムの下で、生産者余剰も、消費者余剰(両者を合わせて総余剰といいます)も最大になっています。つまり、市場メカニズムの下で、「最も効率的な資源配分がなされている」ことになるのです。

「生産者は利益を最大限にするように行動する」です。

供給.jpg

 ⑦の矢印部分が、この生産者にとって、一番利益(利潤)が大きい点です。あと1個でも、生産を増やせば(減らせば)、儲けは少なくなってしまう、限界点です。企業は、この最大利益(利潤)の点で、財・サービスの生産量を決定することになっています。

注)この線がどのような意味を持つ線かは、拙著『高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門Ⅱ』を参照下さい。このブログでは、スペースがなく、説明できません。 

 このように、需給曲線が導き出されるのです。

需給曲線.jpg

 もし、今年だけのGDP増を考えるのであれば、貯蓄Sも所得もすべて消費Cに充てればよいことになります。ですが、S貯蓄(I投資)をすべて使い切ってしまえば、来季の生産はできなくなります。単に、将来の消費を先食いしたことになるのです。
 これでは、最適な投資:財政政策など、導けません。つまり、IS-LMモデルは、「現在」だけを考え、「将来」を考慮していないのです。「動き」がなく、「止まっている」のです。

 IS-LMモデルでは、均衡時の消費・投資、そしてYが、望ましい状態にあるかどうかがわかりません。あくまでも、rとYの均衡を示し、「財政と金融政策の運用」について、モデルとして図示したものです。

 一方、ミクロ経済学で使用される重要・供給曲線は、効用の最大化=生産者と消費者の効用の最大点を示しています。ある意味、均衡状態とは、理想的な状態です。企業にとっては「利潤最大化」点であり、消費者にとっては「効用最大化点」です。

 ミクロ経済学では、右上がりの供給曲線で、「労働賃金」「売上」「限界費用」のもとに、企業にとって、一番効率的な状態を導出できます。

 いずれも、「費用対効果」コストバリューの最大点と考えられます。

 IS-LMモデルは、この「費用対効果」を検証することができません。Yを拡大する方法は分かりますが、それが望ましいか(ミクロで言う効用最大化とか、費用対効果が効率的なのかどうか)は検証できないのです。

ミクロ的基礎付けのある、需要 供給曲線.jpg

 さらに、IS曲線を動かして、財を一時的に使用して、Yを引き上げても、それは果たして2年後、3年後の影響、つまり、長期的に財・資源をどのように使ったら効率的なのかを分析することもできません。

 企業は、長期の見通しの中で、財・資源を使用します。たとえば、今季、1000億円借金して、財・資源を調達しても、工場と人の限界で、その1000億円分の財・資源を使いこなせなければ、まったく非効率になります。
 単に1000億円調達できても、それを財・資源・人・工場・土地にいかに振り分け、しかも、2年後、3年後を見通してそれぞれの資源が最大に効率的になるように(たとえば、新入社員がフルにその能力を発揮できるのは、2年後・3年後です)、を考えたうえで、資本を振り分けます。1年目工場拡張、2年目人材獲得、3年目財・資源調達・・・というようにです。

 そうすると、IS-LMモデル(財政・金融政策)によって、AD(総需要曲線)を動かしても、それはもともとミクロ的基礎づけがないので、結論的には「?」ということになります。両者に相互依存関係があるのに、「ASはASだけで考える、ADはADだけで考える(従来のIS-LMモデル)」のは、できなくなります。

 このように、ベースには、動的に考える視点が、必要です。そこで、 「合理的期待形成」説は、IS-LMモデルを徹底的に批判したのです。

経済学史 サミュエルソン.jpg

 その3に続く

<続:日経が変わった?>

H23.5.31
IMG_20110531074011.jpg


 貿易赤字・黒字記事が、囲み記事(メイン記事外れる)になりました。また、「赤字転落」という表現もなくなりました。今まで(毎月1回、財務省発表時に掲載)とは違っています。
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-entry-538.html
2011-05-22 「貿易黒字はもうけ」の誤り 参照


北海道湧別町 かみゆうべつチューリップ公園 5月27日
上湧別 チューリップ

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