中学校公民教科書でさえ、貿易赤字は企業の赤字と違う!と言っているのに・・

<中学校公民教科書でさえ、貿易赤字は企業の赤字と違う!と言っているのに・・>

 さて、今は、中学校公民の教科書でさえ、貿易赤字と企業や家計の赤字は違うという時代です。予備校講師や、日経・読売新聞は、「中学校教科書が間違いだ!」とでも言うつもりなのでしょうか???

東京書籍 新しい社会 公民H26 p145

 貿易を拡大していくことは、その国の利益になります。しかし昔から、貿易をめぐる国家間の争いは絶えません。

 一つの理由は、輸入が輸出を大幅にうわ回って貿易の赤字が拡大すると国が貧しくなると考えられたことです。

 確かに家計の場合であれば、支出が収入をうわ回るとその差額は家計の赤字となり、その差額は借金でうめなければなりません。しかし、貿易の場合には、赤字は企業や家計の借金になるわけではなく…保有する外国通貨の残高がその分減少するだけです。…国が貧しくなるというわけではありません

 もう一つの理由は…安価な輸入品が国内にたくさん入ってくると、国内産業を保護する為に、国による輸入規制が行われることがあります。すると相手国が対抗措置をとり、これに対してまた報復するというように、報復合戦が繰り返されます。

 一国の輸入規制に他国もまた輸入規制で応じると、貿易そのものがしだいに縮小し、ときには戦争に発展していくこともあります。第二次世界大戦の原因の一つは、このような貿易紛争にあったといわれています



 
 さて、このように学んだ中学生が、高校に入り、現代社会(だいたいの高校では1年次に履修)を学びます。

清水書院 高等学校 新現代社会 最新版 H26 p186

清水書院 高等学校 新現代社会 最新版 H26 p186

 国際収支の総合計は、統計上つりあうようになっている。

(筆者注 昔 経常黒字=資本赤字 今 経常黒字=金融黒字)

 国際収支:外国から資金が入れば黒字、出て行けば赤字となる。これは単なる資金の移動を示すのみで、黒字がのぞましいわけでも、赤字が避けたい事態というわけでもない



  
 さて、高校3年生では、政治経済を学びます。現代社会か、政治経済は選択必修で、どちらかを必ず学ばなければいけません。 

清水書院 高等学校 新政治・経済 最新版 H26 p132~133

 高度経済成長期に日本の経常収支は「国際収支の天井」という制約の下にあった。好景気になると輸入が増え、外貨準備が底をついて赤字になるために、金融を引き締めて景気を後退させるという制約である。したがって不景気になると自動的に黒字化した。

 1960年代後半以降…輸出が拡大し、貿易黒字が定着すると国際収支の天井問題は解消され、以後黒字を続けてきた。

 一方、資本収支では投資収支が大幅な赤字となることが多く、それは海外に工場が進出したり、株式や債券の購入などの投資をしたためである。その収益は、経常収支中の所得収支として計上される。資本収支の赤字は、わが国が債務国から債権国に変化したことを示している。

 したがって、国際収支では単に「赤字か黒字か」で望ましさを論じるのは、ふさわしくない。…海外に投資すれば、貿易黒字が、資本収支の赤字となるのである。その赤字が、債権国である証拠であるとすれば、家計の赤字の意味とは異なることに注意したい



 筆者注:現在は 貿易黒字(経常黒字)=金融黒字です。黒字は債権増のことです。

貿易黒字ですが、その儲け???は、国内総生産(GDP)から出ています。日本人から儲けた、国内総生産(GDP:GDI)の一部を海外資産(簡単にドルとしましょう)にしているのが貿易黒字です。

本質的に、貿易黒字を経常黒字と変えても同じです。

経常黒字赤字模式図


 それが、浪人して予備校に入ると、予備校講師のトンデモ論です・・・

陰山克秀 代々木ゼミナール公民科講師 

「蔭山のセンター現代社会 パワーアップ版」2014

「レーガノミクス双子の赤字、財政赤字と貿易赤字で息も絶え絶え」
「日本の貿易赤字は解消しないといけない」



 社会人になると、日経でさえ、「経常黒字はもうけだ!」・・

http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-entry-995.html

いい加減にしろよ日経!読売!経常黒字が海外から稼ぐ力だと???ふざけるな

 中学生にも「ウソ!どっち?」と言われるでしょう。終わっています。

<追記 情報いただきました>

(2)
>他にも予備校の講師が現役生向けに書いた書籍に、「貿易黒字はもうけだから、ドンドン輸出を伸ばそう!」みたいなことが書いてあるものがありました…。

について。

http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-entry-995.html
<いい加減にしろよ日経!読売!経常黒字が海外から稼ぐ力だと???ふざけるな>

で説明したように、総供給=総需要は次の式で表されます。

総供給 = 総需要
  IM+Y = C+I+G+EX

輸入+総生産 = 内需+輸出

貿易黒字は、輸出を伸ばし輸入を抑え、差額を稼ぐことなのでしょう?

上の式で、左辺「輸入」を抑えつけてください。そうすると、右辺「内需+輸出」が伸びないことが分かると思います。

いいですよ。輸入を減らしたり押さえつけたり・・・それは、右辺内需の拡大を自ら抑えることです。こんなナンセンスな話、ないでしょう。

こんなもの、ISバランスを知らなくても、分かる話です。基礎の基礎の基礎、家の工事で行けば、基礎工事のための「木のくい」のような段階の話です。

<追記2 コメントより>

輸入>輸出 が継続すると支払う為の外貨が無くなる
外貨が得られないければ資源(原材料やエネ)のない日本では生産(総生産)も消費(内需)も縮小する、維持する事が出来なくなる
と思うのです
【輸入+総生産=内需+輸出 】はこの多くの大人の恐怖感を払拭する事が出来ないのでしょう
この恐怖感は実に困ったモノだと思います」



 1)やはり、世代の影響が大きいと思います。この世代が、必死に上記のトンでも論を流し続けています。

http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-entry-934.html
見事に、トンでも経済論の人たち 真壁昭夫 [信州大学教授]

 今は資本取引の自由化の時代で、ドルなどいくらでも(変な話、庶民の交換など無限大にできる状況)手に入ります。これが教科書で伝えられていないのですね。

 2)ここまで来ると、例のISバランスが必要になります。貿易黒字=海外への資金提供、貿易赤字=海外からの資金流入・・・これをしっかり伝えることが必要です。

 何しろ、「現代社会or政治経済」は、必修ですから、「九九」のように国民全員に伝えようとすれば伝えることが可能です(受け手が理解できるかどうかは別にして)。国民の半分にでも伝われば、200年も前に否定された「重商主義」思想もなくなるでしょう(笑い)・・・って逆に言えば、200年以上も「伝わらない」ことが実証されているので、やはり「伝わらない」のでしょう(笑い)。

 浅川さんたちが、「自給率に意味はない」と農水省キャンペーンを否定すると、教科書記述も変わります。

清水書院 高等学校 現代政治・経済 H26 p234

「農業への危機感はホンモノか」

 農業の危機として取り上げられることが多いカロリーベース自給率は、国民に供給されている食糧の全熱量(カロリー)合計のうち、国内で生産された割合を示したものである。しかし、総供給の3割にも及ぶと言われる廃棄分を消費量に含んでいること、畜産物の自給率を史z量の自給率から計算していることなどから、現在の計算方法による自給率は実態に比べて過小になっているとの批判も多い。

 また品目別農業産出額を見ると…カロリーが低い野菜・果実等の生産に転換が進んでいることも…計算上の自給率を低下させる原因となっている。

 野菜・果樹・畜産物に関する我が国の関税率は国際的にも低く、高い付加価値をもって…生き残りを目指す農家の姿はけっして農業の衰退を表すものではない。



 この教科書、明大の飯田泰之先生、一橋の宇南山卓先生とか、「まともな」「若い」先生が執筆陣に加わっています。アホ世代はもう勘弁してほしいです。
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comment

Secret

No title

何時も勉強させていただいています
中学校の教科書でも教えていたとは知りませんでした
殆どの大人が中学校以下なのですね

「貿易の場合には、赤字は企業や家計の借金になるわけではなく…保有する外国通貨の残高がその分減少するだけです」

それらの大人は「減少するだけ」を
「減少し続けたら払えなくなる」と
解する事でしょう

唯の守銭奴でもないのでしょうが、「減少し続けたら払えなくなる」
への恐怖心に如何する事も出来ないのでしょう

No title

 東京書籍、すばらしいですね。中学校は義務教育だから、これで「貿易黒字はもうけではない」が広まる・・・とはならないです。

 でも教える教師は、どう説明していいか分からず、困惑しているでしょうねえ。多分、校内テストでは出せない・・・(笑)

 義務の先生、ほとんど教育学部出身ですから、教養「経済学」でも学ばないんだと思います。

 「貿易赤字はソン」病退治には、長い年月がかかりそうですね。

No title

いつも参考にさせてもらっています。
昔、この蔭山という講師の政経の講習を取ったことがあるのですが、
「関税は、言ってみれば、ヤクザのショバ代と同じ。その仕組みがわかれば、他の受験生と差が付きます」
みたいなことを言ってました。
ショバ代って、ヤクザ屋さんが屋台とかのスペースを使わせる代わりに徴収するカネのこと…

この講師は分かっていないということで決まりでしょうか?

他にも予備校の講師が現役生向けに書いた書籍に、「貿易黒字はもうけだから、ドンドン輸出を伸ばそう!」みたいなことが書いてあるものがありました…。

↓それが、コレです…。
執行康弘
定期テスト対策 政治・経済の点数が面白いほどとれる本

駄文失礼しました。

No title

(1)
陰山講師を例にしていますが、別に「間違い」でもいいんです。しかし、その間違いに気づいたら「直す」「調べる」「勉強する」というのが必要です。

陰山講師は、間違いを指摘されると、こちらのツイッターをブロックしたり、自己流トンデモ反論をコメントしてきたりと、「過ちて改めざる、これを過ちと言う」を実践しているから、おかしいのです。

本人、「倫理」を担当し、「倫理」の本を出しているのでしょう。それなのに、その中に書かれていることをまったく実践していない(できない)、典型例です。
王陽明の「知行合一」なんて、一体どうやって教えているのでしょう(笑)

(2)
他にも予備校の講師が現役生向けに書いた書籍に、「貿易黒字はもうけだから、ドンドン輸出を伸ばそう!」みたいなことが書いてあるものがありました…。

http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-entry-995.html
<いい加減にしろよ日経!読売!経常黒字が海外から稼ぐ力だと???ふざけるな>

で説明したように、総供給=総需要は次の式で表されます。
総供給=総需要
IM+Y=C+I+G+EX

輸入+総生産=内需+輸出

貿易黒字は、輸出を伸ばし輸入を抑え、差額を稼ぐことなのでしょう?

上の式で、左辺「輸入」を抑えつけてください。そうすると、右辺「内需+輸出」が伸びないことが分かると思います。

いいですよ。輸入を減らしたり押さえつけたり・・・それは、右辺内需の拡大を自ら抑えることです。こんなナンセンスな話、ないでしょう。

こんなもの、ISバランスを知らなくても、分かる話です。基礎の基礎の基礎、家の工事で行けば、基礎工事のための「木のくい」のような段階の話です。

No title

多くの人は
>輸入+総生産=内需+輸出
>
>貿易黒字は、輸出を伸ばし輸入を抑え、差額を稼ぐことなのでしょう?
>上の式で、左辺「輸入」を抑えつけてください。右辺「内需+輸出」が伸びないことが分かると思います
と内需が伸び経済が成長し豊かになると言われても

輸入>輸出 が継続すると支払う為の外貨が無くなる
外貨が得られないければ資源(原材料やエネ)のない日本では生産(総生産)も消費(内需)も縮小する、維持する事が出来なくなる
と思うのです
【輸入+総生産=内需+輸出 】はこの多くの大人の恐怖感を払拭する事が出来ないのでしょう

この恐怖感は実に困ったモノだと思います

No title

駄文を記事に引用していただき、ありがとうございます。
あの書籍は、大事な部分が少なく無駄な記述が多いという、とても教科書に勝てない、いや、そもそも教科書読んだ方がまだいいよ、という内容でした。

「人、学ばざれば智なし。智なき者は愚人なり」(実語教)という言葉を福沢諭吉は学問のすすめで引用していたのですが、慶大の出身者(池田信夫ら)、指導者(小幡績ら)は、「学び続け、間違いを正す」そんな基本的なこともできない。
まるで創立者の意思を継承していないのです。

この教訓を信じないものはどこの世にもいるようで、菅原さんが喝破されているインチキ経済学を吹聴する連中もその一派ですね。

話がずれます。教育全般に誤解はそれは長いことあるようです。

英語でいえば、グラマーの指導は、今はほぼなく、英語Ⅰ・Ⅱ辺りにちょっと付いていて、あとは自習。その代りに、英会話重視だとか言って、高校ですら薄っぺらで安っぽいフレーズを覚えさせられます。
元を辿れば、文科省のお高くとまった学習指導要領に行き着きます。

『日本の教育英語は、戦後ずっと、「読み、書き、話すの、三能力の発達」とか「コミュニケーションの重視」とかいうお題目があるだけで、具体的な方法は皆無の、きれいごとに終始している…』

『「三能力の均衡ある発達」は高校英語のタテマエであり、「カタコト英語以上に出られぬ学生」はそのホンネであって……フィーリングの過信、機能語と語法の軽視という袋小路に入りこんでいる』(伊藤和夫「予備校の英語」)

国語教育は、初等段階から、情操教育目的がミエミエの文章を使って、フィーリング読解の指導をせっせとしています。

結局、旧態依然とした国やひねくれ思想のデマゴーグがセンセーショナルに踊らされるフィーリング国民を教育し、ほんの一部の指導者が真実を伝えるという形式は、ずっとずっと、日本の課題のようです。
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