小黒一正説
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新安倍政権、本性が試される「1月の試練」 財政危機深刻化、国債市場枯渇の恐れ
(文=小黒一正/法政大学経済学部准教授)
12月に緊急出版した拙著『財政危機の深層 増税・年金・赤字国債を問う』(NHK出版新書)で説明しているが、政府債務の多くはいうまでもなく国債であり、これだけ大量の国債を発行すれば、国債価格が下落し長期金利が上昇しても不思議ではない。約1000兆円もの政府債務がある状況で長期金利が急上昇すれば、借金の利払いも急増し、財政が危機的な状態に陥るのは明らかである。
しかし現在、長期金利は1%を切る水準で低下している。この理由は、アベノミクスの第一の矢、つまり日本銀行が異次元緩和で大量の国債を市場から買い入れていることにある。市場に流通する国債が減るため、国債価格は上昇し、長期金利は低下するからだ。
さらに10月31日に日銀は年間のマネタリーベース(「日銀が供給する通貨」、具体的には「現金通貨+中央銀行預け金の合計」を指す)の増加額をこれまでより年間で約10~20兆円多い、約80兆円まで拡大すると発表した。12年末に約130兆円(うち保有する長期国債は89兆円)だったマネタリーベースについて、14年末に275兆円(同200兆円)に増やすことになる。また、同時に日銀は、これまで年間約50兆円のペースで増やすとしていた長期国債の保有残高を同80兆円規模になるペースで増加するよう買い入れを行う予定である。そのためには日銀が保有する長期国債のうち償還分も買う必要があり、実質的な買い入れ総額(グロス)は110兆円程度になるはずだ。そして、長期国債の平均残存期間(満期になって償還されるまでの時間。デュレーションともいう)も現状の7年程度から7~10年程度に延長する。
●国債市場が干上がる可能性
だが、この異次元緩和にも限界がある。なぜなら、このまま日銀が買い入れ額を増やしていけば、近い将来、市場で取引される国債は底を突くからだ。
理由は単純である。大雑把であるが、財政赤字(新規の国債発行額)が約30兆円としよう。日銀が異次元緩和で市場から毎年約80兆円の国債を買い入れると、金融機関が保有する国債のうち50兆円(80兆円-30兆円)を日銀が吸収してしまう。14年時点で国債発行残高は約800兆円であり、すでに日銀は約200兆円の長期国債を保有しているから、「(800-200)兆円÷50兆円」という単純計算の結果、約12年間で日銀はすべての国債を保有し、国債市場が干上がってしまうことになる。
もちろん今後の財政赤字の状況や、日銀以外の各保有者の動向によっても、結果は違ってくる。例えば生命保険会社等は、資産運用のために国債が必要だ。だから実際には12年も待たないうちに国債市場は枯渇することになる。
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なんで、日銀が「2年間」と限定しているのに、その後も国債を買い続けなければいけないのか?それも12年間?何のために?