水野和夫 『資本主義の終焉と歴史の危機』 4

フロンティアがなくなり、
p4つまり、地理的・物的空間(実物投資空間)からも、「電子・金融空間」からも、利潤を上げることができなくなってきているのです。

P15 紀元前3000年のシュメール王国から現在に至るまで・・ジェノバでは金利2%を下回る時代が11年続いた・・・日本の10年国債利回りは、400年ぶりにそのジェノバを更新し。2.0%以下と言う超低金利…経済史上、極めて異常な状態に・・・
p18 利子率が2%を下回る…資本家や投資家が満足できるリターンが得られなくなったこと…設備投資をしても…利潤を産み出さない…過剰な設備になってしまうこと…。
P16
なぜ 利子率の低下がそれほどまでに重大事件なのかと言えば、金利はすなわち資本利潤率とほぼ同じだと言えるからです。利潤率が極端に低いということは、資本主義が資本主義として機能していないという兆候。利子率=利潤率が2%を下回れば、資本側が得るのはほぼゼロです。革命と言えるほどに、利子率が低下したのです。「利子率革命」です。
超低金利が10年を超えて続くと、既存の経済・社会システムはもはや維持できません。
モノづくりが割に合わない・・ヴェトナム戦争終結によって、アメリカが…市場を拡大することが難しく、既存の「地理的・物理的」空間では…高い利潤を得ることができなくなった・・。
P36
リーマン・ショック後アメリカ・・2014年1月末時点2.7%台・・・超低金利は、日本と似ています。・・・プロセスも日本と同じ・・企業のリストラが加速い、賃金が下落・・デフレ化。アメリカが日本以上に深刻なのは・・・国際資本移動が縮小し、他国の貯蓄をそれ以前ほど自由に使えなくなっている点にあります。
アメリカが日本以上に深刻なのは・・・国際資本移動が縮小し、他国の貯蓄をそれ以前ほど自由に使えなくなっている点
(2014 年3月)
ロンドンシティ 外為市場の取引高⇨ 1 日あたり5 兆3000 億ドル(約530 兆円)
2013年4月 円ドル9780億ドル、ユーロドル1兆2890億ドル 円ドルは為替の全取引の18%
ニューヨーク株式市場、過去最高額の700兆ドル台へなったもよう(2014年6月現在)
増える一方です。
9月5日(ブルームバーグ):国際決済銀行(BIS)は、外国為替市場での取引高が2013年4月に1日当たり平均5兆3000億ドル(約530兆4800億円)に急増したことを明らかにした。円の取引拡大が全体を押し上げた。
BISが3年ごとに実施する為替トレーダー調査によれば、取引高は2010年4月以降の3年間に33%増加。10年までの3年間では20%増だった。主要通貨中で円の取引は最大の伸びを示した。一方でユーロは取引高で2位の座を維持したものの、全体におけるシェアは低下した。新興国通貨はシェアを伸ばし、メキシコ・ペソは取引高でトップ10入りした。
金利はすなわち資本利潤率・・であれば、アメリカの80年代の高金利、高インフレは、すごくアメリカ経済を潤したはずですが・・・
p27
アメリカ・・別の空間を生み出す「電子・金融空間」に利潤のチャンスを見つけ、「金融帝国」化していくという道・・。元年は1971年・・1985年以降、金融業シェアは、上昇基調・・確固たるものにしたのは1995年。…1980年代は、まだ国際資本の完全移動性が実現していませんでしたから、大きな利益を獲得することができず、アメリカ経済は激しく落ち込み、経常収支赤字と財政赤字が一気に膨らんでいきました。
1980年代は、まだ国際資本の完全移動性が実現していませんでしたから、大きな利益を獲得することができず
80年代の高金利は、資本利潤率が高かったのでは?

P19
異常なまでの利潤率の低下がいつごろ始まったのか。1974年と考えています。81年にはアメリカ10年国債利回りがピーク、それ以降先進国の利子率は数趨勢的に下落。
実際は、アメリカは、異常な高金利+低成長、まいった時代でした。これは、とにかくマネーサプライを絞った結果の高金利です。

で、続ければよかったのですが、途中、余りの不況で、引き締めを止め、マネーサプライを増やしました。フリードマンは、この対応に激怒しています。
低成長率の原因は、
p27
…1980年代は、まだ国際資本の完全移動性が実現していませんでしたから、大きな利益を獲得することができず、アメリカ経済は激しく落ち込み、経常収支赤字と財政赤字が一気に膨らんでいきました。
アメリカは、経常赤字=資本黒字(世界からのアメリカ投資額)、日本は経常黒字=資本赤字(アメリカへの投資額)で、アメリカに、日本の貿易黒字を減らすために、「内需拡大しろ!」って責められていました。プラザ合意で、ドル安にしたのは、アメリカドルを買う=ドル買いが激しかったからです、高金利だったから・・・。
拙著 「図解 使えるマクロ経済学」p212 図 アメリカのドル高を参照
P16
なぜ 利子率の低下がそれほどまでに重大事件なのかと言えば、金利はすなわち資本利潤率とほぼ同じだと言えるからです。利潤率が極端に低いということは、資本主義が資本主義として機能していないという兆候。利子率=利潤率が2%を下回れば、資本側が得るのはほぼゼロです。革命と言えるほどに、利子率が低下したのです。「利子率革命」です。
利子率=利潤率とします。
アメリカや、ユーロ圏や、日本が、その「利子率=利潤率低下」。
p4つまり、地理的・物的空間(実物投資空間)からも、「電子・金融空間」からも、利潤を上げることができなくなってきているのです。
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ソローモデル
例えば、昭和40年代に、東京に上下水道・アスファルト道路を投資します。水道管・道路100mあたり・の、投資効率は、非常に高いことが分かると思います。
日本全国に、水道網・道路網が敷設されます。どんどん、田舎に広がります。田舎に行くと、当然人口密度が、東京より低くなります。
投資は、すればするほど、最後の1単位当たりの効率は、落ちます。これが、先進国の状況です。中国や、新興国とは、わけが違うのです。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO47710140W2A021C1W14001/
先進国の経済成長率、なぜ低い?
「成長の勢いが先進国と新興国で違うのはなぜだろう」。章司は慶応義塾大学の土居丈朗教授に聞いた。
「たとえば1日に食べるパンの数が、先進国では1人10個あるのに新興国では1個しかないとします。数が1個増えたとき、どちらの人の喜びが大きいと思いますか」。章司は「新興国でしょう」と答えた。
土居さんはうなずき「新興国の方がパンを増やそうと頑張るし、先進国の企業は潜在需要が大きい新興国に工場を建てたいと思いますよね」。パン1個を増やすと先進国の生産量の伸びは10%だが新興国では100%になる。ただ、必要なパンの数が確保されれば「生産量の伸びは先進国並みに鈍っていくでしょう」。日本も1960年代には成長率が10%を超えたが70年代には数%に下がった。
日米欧の先進国のGDP規模は、世界のおよそ6割です。


日米欧が、7%とか、高率の成長を達成できるかどうか?
成長は、
① 労働量(何人の人が何時間働いているか)
② 資本ストック(どのくらいの機械や工場が動いているか)
③ 生産性TFP(労働と資本を,どのくらい効率的に活用しているか)
です。①人口は、定常状態です(移民のアメリカは除く)。②資本ストックは、すでに、高レベル状態で、簡単に投資額を増やしても、効率が上がるわけではありません。
③の生産性TFPに、成長率はかかっています。
では、先進国が、この①②③で、合計7%の成長率を達成できるか???
日本は、1%台、アメリカでも、よく言って3%未満、EUでも、2%内外(25か国もあってです)です。

上の地図が、毎年7%も大きくなるのは無理です。
さらに、世界のGDP成長率は、全体で、3.4%ほど(IMF 2014予測)です。新興国は、中国やインドは、5%以上になっています。
で、GDPの6割を占める、日米欧が、2%成長するとしましょう。それがどのくらいの値になるのか・・。
2012IMF予測値 世界全体GDP 71277(10億ドル)
EU 16414
米 15653
日 5984
3地域で、3805(100億ドル)(3800兆円)です。
2%で、76(100億ドル)(76兆円)です。トルコ78兆円、オランダ77兆円です。
つまり、日米欧が2%成長すれば、毎年トルコやオランダが、この世に誕生するほど、絶対額が増えるということです。
これが、「利子率=利潤率低下」の元での、成長です。
成長率が、1%とか、1.5%は、実はすごいことです。
Capital in the Twenty-First Century
(2014/04/15)
Thomas Piketty
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「(これは)かなりの急成長、多くの人が思う以上に速いということ。30年単位では、年1%成長で、35%成長すること、1.5%成長で、50%成長すること。先進国で、今から30年前の80年は、ネットも携帯もなく、多くの人は飛行機に乗ったことがなく、先端医療もなく大学進学も少なかった」
「30年で35~50%増えるということ(筆者注:実際に、先進国はそうだった)は、今日生産されているものの1/4から1/3は、当時なかったものであり、職業の1/4から1/3も当時なかったものだ」
「年1%の成長社会は、深く、永遠の変化をともにする」

1%成長すると、別な国と言ってもいいほどになります。
さらに、今は、「金融立国」ですから、GDPを上回る、金融ストックになっています。

世界の金融資産残高は、世界GDPの3倍、227兆ドル(実数)です。金利が2%で、4.54兆ドル、454兆円になります。寝ていても、454兆円です。寝ていても、日本のGDPの9割の、金利収入です。
注)ここが重要ですが、「金融資産≡金融負債」なので、「負債」も同率で増えているということです。
これが、「利子率=利潤率低下」のもとで、資産家が、手にする、果実です。だから、「格差社会」になるのです。資本収益率>労働によるGDP率なのです。額に汗した働くGDPより、寝ていても金利収入がある、金融の稼ぐ力が大きいのです。
そうすると、資本(株や、債券や、土地や建物・・)を持つのは、資産家(一般に金持ち)なので、金持ちはより豊かに、労働力を切り売りするしかない層との、格差は拡大する・・・これがピケティの『21世紀の資本』のメインテーマです。
だから、低金利の世の中でも、「格差拡大」しているのです。金融資本の額が、でかすぎるからです。そういう時代なのです。
P16
なぜ 利子率の低下がそれほどまでに重大事件なのかと言えば、金利はすなわち資本利潤率とほぼ同じだと言えるからです。利潤率が極端に低いということは、資本主義が資本主義として機能していないという兆候。利子率=利潤率が2%を下回れば、資本側が得るのはほぼゼロです。革命と言えるほどに、利子率が低下したのです。「利子率革命」です。
p4つまり、地理的・物的空間(実物投資空間)からも、「電子・金融空間」からも、利潤を上げることができなくなってきているのです。
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