ピケティ 『21世紀の資本』 公債編

<公債残高を、減らしたのは何?>

トマ・ピケティ(ピケッティ)『21世紀の資本』
Capital in the Twenty-First CenturyCapital in the Twenty-First Century
(2014/04/15)
Thomas Piketty

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21世紀の資本21世紀の資本
(2014/12/09)
トマ・ピケティ

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今、プライマリー・バランスを、ゼロにすることが、求められています。しかし、実際に、国債残高/GDP比率を下げるのは、「ゼロ」では無理で、プライマリー・バランスが黒字になることが必要です。

では、100年間頑張って黒字にしていたイギリスは、債務比がどうなったかを見てみましょう。

英 債務/GDP比率

債務レベルが高い=貸し手や子孫にとって良かった。政府に貸し付けるだけの財産を持つ彼らは、税を払うより、国に貸して数十年、利子を受け取る方が、利益になった。国債投資に経済的繁栄が委ねられる人々は、もっと儲かった

1815-1914年、インフレ率はゼロで、国債の利率は4-5%だった



 これは、国債を持っている資産家にとっては、ものすごいことですね。

経済成長率より、ものすごく高かった



 これは、資産家にはうれしい時代です。

で、1810年から、1910年にかけて、イギリスは、その債務/GDP比を下げたのですが、その間、プライマリー・バランスは黒字です。つまり、税収>支出です。イギリスは、修行僧のように、禁欲生活をしました。ところが、そんなことで債務/GDP比が下がったのではありません。答えは、

GDPの成長2.5%(1815-1914年平均)



なのです。

英 債務 GDP 1810年=100

 100年間、毎年、2.5%も経済成長すると、なんと、GDPは11.5倍、別の国になります。

竹森俊平(慶大)『経済危機は9つの顔を持つ』日経BP社 2009  p430

竹中平蔵(慶大)
…昔,大蔵省の時代,財政金融研究所にいたとき,変なリサーチをやらされたことがあります。それは経済学の手法なんかは全然使わないもので,こんなリサーチに意味があるのかと最初は反発したのですが,やってみてすごく面白かった。
  それは,ナポレオン戦争後のフランス,あるいは,第一次世界大戦の後のイギリスは,どのようにして赤字問題を解決したのかというものです。よく赤字を減らすとか,借金を返すとか言いますが,借金を返した国なんかないんです。借金を返すことなんてできません。

竹森
残高が相対的に小さくなっていったということですね。

竹中 
そういうことです。残高を増やさないようにして,その間に経済成長するから,2%成長で30何年したらGDPが2倍になるから半分になると。この手法しかありません。やっぱり成長をすることは,ものすごく重要なことだと思うんです。



拙著「図解 使えるマクロ経済学」

借金を返した国は,ありません。すべての国のGDPは,年々増加していますので,公債残高の額面そのものも増加しています(p101グラフ参照)。借金は,返すものではないのです。実際に、デフォルト(債務不履行)させないためには、経済成長(国債発行額減)し、30年後には、残高/GDP比率を小さくするというようなことしかできません。どこの国も「借り換え」「借り換え」であり,借り換えができるかどうかが重要なのです。



国債残高を減らした国はありません。残高/GDP比率を小さくすることしかできないのです。

あるいは、英国の戦後のように、インフレによってチャラにするか・・・

1950年には、GDPの200%超、1950年代のインフレ(4%超)、1970年代のインフレ(約15%)、イギリスの負債はGDPの約50%に減少した。インフレという、再分配のメカニズムはすごく強力だ。



2英 債務/GDP比率 
 
 ただし、日本の場合は、このようなことにはなりません。イギリスは、プライマリー・バランスを黒字化して、必死??でやったのですが、日本はプライマリー・バランスが赤字なので、どんどん拡散し、名目3%の成長でも、2060年には、国債残高/GDP比が560%になります。

英 債務 GDP 1810年=100
日本 債務 GDP 2014年=100

この試算だって、名目成長率3%ですから、いかにムチャクチャか(笑)。実際は1%内外ですから、公債/GDP比は、このグラフどころではないほど、拡散します。

だから、これも、ウソになります。

クリック

高橋洋一 [嘉悦大学教授] 2014年10月30日 「消費増税で財政再建できる」は大間違い


 「政府は、2020年のプライマリー・バランス黒字化を目指し、消費税率10%へ引き上げをする予定」・・・何だか、頭抱えたくなりますよね(笑い)
 
 日本の場合、もう、「高成長」はできないので、残高/GDP比率を小さくすることは、できません。

プライマリー・バランスを黒字化する・・・あとは、インフレ起こすかですね。

インフレによる、公的債務圧縮は、ドイツも同じです。

1930-1950年のインフレは17%。物価は300倍(フランスは100倍)。ドイツはどの国よりも、インフレで債務をなくしてしまった国



 でも、特に、戦後もインフレが続いたドイツは、インフレを極端に嫌います。まあ、公的債務も、ものすごく嫌っていますが(来年、ドイツは、赤字国債発行ゼロだそうです)。なにを目指してなのか、ドイツは厳格すぎて、よく分かりません(笑)。

20世紀に、インフレを最も活用して、債務をチャラにしたドイツは、(現在)2%以上のインフレを認めず、いつも債務返済を行い、たくさん払ってきたイギリスが、インフレを容認し、中銀が公債を購入して、インフレ率が上がっても、かまわないと考えている



 おいおい(笑)。

ドイツ 国債 考え方

ドイツ、固すぎ(笑い)。

でも、財政赤字だろうが、財政均衡だろうが、どっちでも、成長しますから、ドイツが間違っているわけでもありません。

英 独 GDP成長

 問題は、EUという通貨圏で、金融緩和を行う場合、ドイツ国債(一番信用度が高い)を、EU中銀が、購入できないことです(過去分は購入できますが)。国債をバカバカ発行してくれているのは、イタリアや、ポルトガルや、スペイン、ギリシャ…
 EU中銀が、頭抱えるのがわかります(笑い)。

ピケティ“21世紀の資本”、日本語版、発売直前です。必読!
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comment

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No title

片岡さんは、前々著から読んでいただいています。

財務省の試算、衝撃的ですよね。これ見たら、消費税を上げたくなる彼らの気持ちも分かります(笑)。

結局先送りが合理的になる・・・そしてインフレでしょうかね?

やはり、かかった保険代を後から回収・・しか方法はない?

No title

ピケティ、売れていますね。大著だから読むのは大変そうだけど、頑張ってみますか。
池田信夫の解説本は読まないほうがいいですか。

No title

すみません、池田本、中身読んでいないのでなんとも・・・

ただ、本文にも「矛盾」と出ているとか・・・・

おしてしるべし・・だとは思うのですが・・・

英語本には、矛盾とは、書いていません。「必然」だとは、書いてあります。
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