17年ぶりに、国際収支表の書き方が大・大・大変更!!!という話
今年3月発表分(数値は1月分)の、国際収支表から、基準が変わります。どれくらい変わるかと言うと、天地がひっくり返るほど、変わります。
今までは、「経常赤字=資本黒字」で、「海外の国内投資額>日本の海外投資額」のこと、「経常黒字=資本赤字」は、「海外の国内投資額<日本の海外投資額だから、対外純資産増加のこと」となっていました。
「赤字が増えれば、黒字も増え、黒字が増えれば、赤字が増え」と説明してきました。
しかし、今回の改訂(IMF)からは、「赤字が増えれば赤字増」、「黒字が増えれば黒字増」というように、赤字増=赤字増、黒字増は黒字増となります。
また、今の時代は、「モノ・サービス取引額1:100カネ取引額」の時代ですから、カネ=金融の動きのほうこそ、重要な時代になっています。そこで、今回は、「資本収支」ではなく、そのものずばり、「金融収支」と名前が変わりました。
まとめると、次のように変更になります。
旧表記
経常黒字=広義資本収支赤字
新表記
広義経常黒字=金融黒字
です。金融が主役です。
さらに
旧表記
経常収支+資本収支+外貨準備+誤差脱漏=0
新表記
経常収支+資本移転収支-金融収支+誤差脱漏=0
となります。解説していきます。
(1) 国際収支表の作成

日銀資料


このように、金融メインの時代にともなって、「金融収支」が、メイン表記になりました。この金融は、旧表記の「資本+外貨準備」合計額のことです。要するに、「株・社債・国債・現金」などの、まさにフィナンシャル=金融資産のことです。今後は、
経常黒字=資本赤字
ではなく、
金融黒字=経常黒字
としたほうが、わかりやすいです。
(2)金融赤字・黒字とは

上記の、2013年9月は、金融黒字(広義経常黒字)だったのが、10月には金融赤字(広義経常赤字)になっています。
昔で言えば、9月「経常黒字=資本赤字」が、10月「経常赤字=資本黒字」になったことです。
金融黒字とは、
金融黒字=日本の海外資産増額>海外の日本資産増額
のことです。

この表で、次の年に、日本の海外投資>海外の日本投資=対外資産純増のことです。

金融赤字とは、
金融赤字=日本の海外資産増額<海外の日本資産増額
のことです。

となります。「対外純資産」が、赤字分、少なくなります。
見かけ上、日本の「対外資産」が、減るように見えますが、日本も上の図の「青」部分のように、海外投資を続けていますから、「対外資産」が減るわけではありません。
でも、「対外純資産(日本の持つ海外資産と海外の持つ対内資産の差額)」が減りますので、「大変だ大変だ!」と騒ぐ人は、きっと出てくるんでしょうねえ(笑)。
http://www.sinkan.jp/news/index_4339.html
2014年02月13日 19時配信
「貿易赤字=不況」は古い グローバル時代の経済学
景気回復を大きな柱の一つとしている「アベノミクス」ですが、長年日本経済を支えてきた輸出はいまだ伸び悩んだままで、1月27日に財務省が発表した2013年の貿易統計では過去最大の貿易赤字となっています。
一般的な見方は「黒字はいいことで、赤字はまずい」ですから「過去最大の貿易赤字=相当まずい」という気になりますが、ちょっと待ってください。
『高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学』(菅原晃/著、河出書房新社/刊)は、普段真剣に向き合うことの少ない「経済」について、素人にもわかりやすく教えてくれます。
それによると、『貿易赤字=悪いこと』と捉えるのはすごく危険なのだそうです。
■貿易黒字・貿易赤字に意味はない?
本書の著者、菅原さんは、一つの国単位に区切って輸入や輸出を量ることにはもう意味がないといいます。なぜなら、トヨタにしろユニクロにしろ、今の企業は多国籍化が進んでいるからです。
たとえば、一つの企業の中がA国、B国、C国に工場を抱えて、その企業内で部品や原材料のやりとりをすると、それぞれの国の輸出入にカウントされます。事実、日産のマーチは月に4000台ほど売れていますが、これはタイの工場で製造された「輸入車」であり、売れれば売れるほどタイの輸出と日本の輸入が増えるわけです。
一つの国の中でモノの製造過程が完結していた時代なら、貿易収支が黒字か赤字かということに意味があったのですが、多国籍企業・国際資本によって経済が動いている今の時代に、貿易を国境で区切って「赤字だから不調」「黒字だから好調」と考えてしまうと、経済の現状を見誤ってしまいます。
そもそも貿易において、比較すべきは個々の企業同士であって、国ではないのです。
他国と経済状況を比較するのであれば、GDPを見た方が確実です。GDPの値や一人あたりGDPの伸びを見れば、その国の経済の規模や伸びがわかりますし、GDPが伸びれば輸出入も必ず拡大するので、表向きの数字に騙されることは少ないはずです。
本書は、現役の高校教師が、タイトルの通り高校生くらいの知識でも理解できるほど平易に経済学の基礎を解説しており、「経済学の最高の教科書」として専門家からも注目され現在5万部を超えるベストセラーになっております。
社会人になると話のネタになることが多い分野ですから「今さら人に聞けない!」と思っている人は、入門編として本書を参考にしてみるといいかもしれません。
(新刊JP編集部)
↑
補足すると、「貿易赤字・黒字」は、どうでもいいので、「金融赤字・黒字」が大切ですという、話です。
カネの移動が、「貿易赤字・黒字」を決めます。
これが、アブソープション・アプローチ、ISバランス論です。