為替・貿易論 その1
ニッポン放送 『ザ・ボイス』 H26年7月8日 『ザ・フォーカス』
宮崎哲弥(評論家) 飯田泰之(明大)
司会
間違いだらけの貿易収支・経済収支ということで、経済収支・貿易収支の仕組みを知ることは、経済学の初歩を理解する試金石だと。
注)・・・たくさんの説明が続きます・・・
飯田泰之
・・・人間の記憶とか、姿勢って、若いころに決まってくる。で、いま、大分年寄りですけども、60代70代の人は、勉強したころは、貿易収支に意味があった、経常収支にも意味があった時代なんですけども、その中で、何で意味があったのか、何で黒字が良かったのかスポーンと忘れて、変動相場制なのに、赤字だって言われるし、悪い悪いって言われているところにロックインして、思い込んでしまっているっていうところがあると思うんですよね。
宮崎哲弥
今の話を、もうちょっとこう、今度は本当に経済学に近い話になっているんだけど、今の話はもうちょっと専門的に言うと、例のほら、投資-貯蓄バランス論。
飯田泰之
そうですね。
宮崎哲弥
専門的に理解したい向きには、例えば、野口旭さんの『グローバル経済を学ぶ』という本があって、これはちくま新書ですけど、あと菅原晃さんの『高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学』。
飯田泰之
そうですね。
宮崎哲弥
これは河出書房新社から出ていますんで、ぜひとも参照にしていただくと、今の話がどういう経済学的な理論に基づいているのかということが、はっきり分かると思います。要するにもう、定義的な話で、議論するような内容じゃ、本当はないですね。
飯田泰之
そもそも、経済学の理論は間違えていることがあります。ただ、国際収支の統計のルールは、ルールですんで、間違えようがないんですよ。
宮崎哲弥
ということ。
司会
今日は経済の基本の基本、間違いだらけの貿易収支、経常収支について、飯田泰之さんに解説してもらいました。
拙著を参考資料として取り上げていただきました。
では、飯田先生の言う、国際収支についての、60代、70代の人たちによる、「当時の正論」です。
長いです(笑い)。


事実
1.貿易黒字・赤字は、経済成長と全く関係ない。
2.円高=輸出減、円安=輸出増にはならない。
3.円高は望ましい。
4.円安になると、株価は上昇する。
<1.貿易黒字・赤字は、経済成長と全く関係ない。>
日経H26.7.12
1面 特集 革新力
米国は貿易赤字国。だがGEやボーイングなど航空機産業で見ると約6兆円もの黒字を稼ぐ。一方、国際収支統計によると日本は昨年の貿易収支が8.8兆円の赤字だ。
8.8兆円をどう挽回するか。サービスや知財と稼ぎ方は様々だが、どれも中心にモノがないと収入は得られない。
一つの解はドイツにある。売上高順に世界企業を番付する米フォーチュン誌の「世界500社」に入ったドイツ企業は日本の半分の約30社にとどまるが、貿易黒字だ。主役は世界で稼げる「中小企業群」だ。
典型的です。
ファイザーをはじめとする、アメリカの巨大製薬会社。あんなに、費用の高騰している医療業界。薬で、アメリカは貿易黒字になったことがありません。アメリカ製薬業は「死んでいる?」のです。
経常収支や、貿易収支は、世界全体のGDP(生産)を、どう消費しているか(GDE)の話で、勝ち負けや、GDPの伸び(経済成長)には、全く関係がありません。

しかも、世界の経常(貿易)収支不均衡(外需)は、世界全体のGDPの、2~3%です。
これは、世界のGDPが、毎年平均で3.5%成長している現在、翌年の「内需」に、すっぽりと収まってしまう額に過ぎません。
日本の場合は、過去、貿易収支の黒字や赤字(外需)は、GDPの1%内外で、翌年GDPが1%成長したら、前年の外需など、今年の内需にすっぽりと覆われてしまう数値に過ぎません。

500円玉(GDP約500兆円)のうちの5円を、「5セント」に交換しただの、「0.4ユーロ」に交換しただの、その程度の話です。「海外資産をそれだけもつ・・・だから、それがなんだっていうんだ?」という話です。
本当に、どうでもいいんです。
<2.円高=輸出減、円安=輸出増にはならない。
3.円高は望ましい。>
円高は、日本の輸出業に不利、円安は有利。円高で輸出減、円安で輸出増・・・本当に、化石論だっていうことが、全く分からないんですねえ。
世界のGDPは、毎年3.5%平均で伸びています。
円高だと輸出減→ユーロ・ドル・元・ウォン国(通貨安)は、輸出増????
円安だと輸出増→ユーロ・ドル・元・ウォン国(通貨高)は、輸出減????
こんなことが、あるわけないでしょう!
だから、こんなことを述べている人は、典型的な「経済オンチ:反経済学思考」です。頭が「ゼロ・サム」思考そのものです。
どっちかが増えれば、どっちかが減る・・・

それよりも、大切なのは、今世紀は、実物取引1:金融取引100(国際収支表では相殺されて載ってこない)だということです。
貿易は「犬のしっぽや、糞」程度の、どうでもいい話です。
では、債券投資、株投資、預貯金に有利なのは、円高ですか?円安ですか?
海外の企業を買収(M&A)や、海外の土地購入や、海外に店舗・工場を立てる・・・これに有利なのは、円高ですか?円安ですか?
だから、円高で有利100(金融取引):円高で不利1(実物取引)の割合だっていうことです。
で、どっちが、円高・円安を決める要因ですか?100の方ですか?1の方ですか?
答えは、金融取引です。
だから、
野口旭『グローバル経済を学ぶ』
答えは、資本収支が赤字(黒字)「筆者注:国際収支表記載マニュアルの変更により、現在は『金融収支が黒字(赤字)』」だから、経常収支が黒字(赤字)になるしかありません。そしてまさにそれが正しい答えなのです。
経常収支が動くためには資本収支(筆者注:現在は金融収支と表記)が動かねばならず、その為には貯蓄・投資バランスが動かなくてはならないからです。これが経常収支の定義と、それについての論理的推論から導かれる真実です。
カネが先、実物取引は後なのです。


<4.円安になると、株価は上昇する。>
ただし、株価上昇は、日本にとって、好ましいことです。この株価は、円安で上昇します。
トヨタ、6期ぶり最高益 14年3月期1.8兆円公開日時2014/5/9 2:00記事保存
トヨタ自動車(7203)が8日発表した2014年3月期連結決算(米国会計基準)は、純利益が1兆8231億円と前の期に比べ89%増え、6期ぶりに過去最高を更新した。09年3月期に世界的な金融危機の影響で最終赤字に転落した後、抜本的な合理化を推進。円安も収益を押し上げた。15年3月期の純利益は1兆7800億円と前期比2%減るものの、高水準が続く見通しだ。
14年3月期の売上高は25兆6919億円と16%増えた。連結販売台数は911万6千台と3%増。日本で消費増税前の駆け込み需要があったほか、北米でSUV(多目的スポーツ車)「RAV4」や高級車「レクサス」が伸びた。中国の持ち分法適用会社などを加えたグループの販売台数は1013万台と、世界の自動車メーカーで初めて1千万台を突破した。
営業利益は74%増の2兆2921億円。対ドルでの円安など為替変動が9000億円、原価改善が2900億円の増益要因となった。09~10年に米国で起きた大規模リコール(無償回収・修理)に絡み米司法当局に支払った制裁金やオーストラリアでの生産撤退関連費用を吸収し、大幅な増益を確保した。配当は年165円と75円増やす。
なぜ、円安になると、トヨタは最高益をたたき出すのでしょうか。
それは当然です。
円安→現地価格下げる こんなことは、しないからです。つまり、20%円安→20%売り上げ増になるのです(単純化しています)。

トヨタは(他のメーカーも、他の商品メーカも同様)、円安になったからと言って、現地の価格を安くなんかしないのです。現地価格を、為替変動のたびに、動かすなんて、絶対にしません(メニュー・コスト)。
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円高が望ましいのか、円安がのぞましいのか 2
日経H24.2.21『経済教室』
愛宕伸康 日本経済研究センター主任研究員
自動車の輸出数量は円高の影響を受けにくい。…図は…実効ベースの海外物価だ。輸出物価が海外物価と連動し、国内物価と別の動きをしていることがわかる。つまり、自動車メーカーは輸出価格について、現地の市場価格を参考に決めている。このことは、現地需要が回復すれば、為替に関係なく輸出が伸びることを示唆する。

…同じ財はどこで買っても同じ価格になる「一物一価」は、少なくとも自動車では成立しないという点だ。図を見れば価格設定方法が国内と海外で異なることは明らかだ。
車の価格は、どこの国でも同じではなく、日本メーカーは現地物価に合わせて車の価格を決めているのです。
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ギリシャ、これじゃあ、ドイツも怒るなあ
朝日新聞 平成23年12月31日
『ユーロ一時100円割れ』
…欧州の共通通貨ユーロが一時99円97銭をつけ2001年6月以来約10年半ぶりに1ユーロ100円の大台を割り込んだ。
・・・08年7月には1ユーロ169円台の最高値を付けた。・・・わずか3年半で4割も値下がりした。
あの、これらの会社の車、全然値段下がってませんよね。4割下げろとは言いませんが、円高ユーロ安で、1~2割は下がっても、当然ではないでしょうか?
なんでドイツのカローラであるゴルフが、日本では、「外車だから高くて当然」になるのですか?
2008年 6月17日販売終了モデル
ゴルフ 2004年モデル TSI トレンドライン価格:2,480,000

ゴルフ 2009年モデル TSI Trendline Premium Edition
価格:2,630,000
ベンツなんか、ユーロ安なのに、逆に値上げ!してます
Cクラス セダン 2007年モデル
2007年6月発売~現在販売中のモデル
C 200 BlueEFFICIENCY

マイナーチェンジ前 2011年~5月価格:4,400,000
マイナーチェンジ後2011年5月~価格:4,450,000
これなんか、もともと、2007年6月の値付けなのだから、今年春には、300万程度になっていても、全くおかしくありません。
これが、最終製品を作るメーカーの「あたりまえ」なのです。特に1年や2年の短期では、価格は変えません(長期になると、○○還元などと、製品価格を値下げすることはあります)。
素材メーカーや、卸は違います。鉄鉱石、石油、一次産品、建築資材、IT産業用部品etcは、それこそ、毎日のように、価格が変動します。

ですから、トヨタは最高益なのです。
しかし、よく考えると、2012年→2013年、円安になったので、最高益ですから、
2013年→2014年、円の価格が変わらないと、利益増率は、今度は円安の恩恵は受けません。今度は、製品そのものや、売り上げ台数の伸びや、コスト削減に取り組まなければ、最高益の更新はできません。本当の実力勝負になります。
で、円安になると、トヨタのような大企業が業績を伸ばします。
日本の輸出額の90%は、10%の大企業:東証一部企業に集中しています。そうすると、東証一部の株価が上昇するのです。
しかも、東証一部市場は、「円安でトクする」企業割合が、多く、日本全体の企業(円高メリットも円高デメリットも同時に発生するはず)割合を、反映してはいないのです。
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円高が望ましいのか、円安がのぞましいのか 2
円安になると、株価が上昇します。ですが、ここにはからくりがあります。
http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/research/r101001japan1.pdf#search='%E5%86%86%E9%AB%98+%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88'
みずほ総合研究所 経済調査部 石川祐介
「円高は景気にプラスかマイナスか」
(注:GDP)を用いて業種別の円高の影響を試算すると、鉱業や食料品のほか、化学・一次金属などの素材型製造業では差益が発生する。一方、一般機械類や輸送用機械などの加工型製造業、卸売業等では差損が大きくなる。
ここで、(注:GDP)産出額ウエートをみると、円高によって為替差益が出る「円高メリット型」の業種が37.3%、差損が出る「円高デメリット型」業種が37.5%、影響のない「中立型」業種が25.2%と、メリット型とデメリット型は拮抗している。

ある意味、予想どおりです。輸出型産業と輸入型産業は、拮抗しているからです。
一方、上場企業ベース(注:日経平均で使われる225企業)ではメリット型42.2%に対しデメリット型が50.2%とデメリット型の方がウエートは高くなる。
さらに (注:GDP)ベースで、メリット型に分類される業種でも、上場企業だけに限れば輸出比率が高く、デメリット型になる場合もある。したがって、現実には株式市場におけるデメリット型業種のウエートはもっと高い可能性がある。日本の株式市場が円高に敏感である背景には、こうした全体の産業構造と上場企業の業種ウエートの違いもあると考えられる。

ところが、日経平均株価で指標とされる、225企業に限ってみれば、円高デメリット型が、途端に多くなります。
しかも、上場企業だけに限って言えば、さらにデメリット型が多くなるのです。
自公圧勝で円安・株高加速 日経平均、一時9900円台回復
日経 Web 2012/12/17 11:13
16日投開票の衆院選で自民党と公明党が圧勝したのを受け、17日の東京市場では円安・株高が加速した。日経平均株価は大幅高となり、上げ幅は一時160円を超え、取引時間中としては4月4日以来、約8カ月半ぶりに9900円台を回復した。自民党の政権公約である強力な金融緩和策が実行されるとの期待が一段と強まった。
自民党と公明党は合わせて325議席を獲得。参院で否決された法案を衆院で再可決できる3分の2を上回ったため、「日銀法改正を含む強力な金融緩和策が実現する可能性が高まった」(大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト)。こうした見方を受け、17日の東京外国為替市場で円相場は対ドルで一時1ドル=84円台前半に下落。朝方のオセアニア市場では一時1ドル=84円48銭前後と1年8カ月ぶりの円安水準をつける場面もあった。
東京株式市場では円相場の下落で輸出企業の収益改善への期待が強まり、トヨタ自動車や日立製作所など主力銘柄が買われた。東京証券取引所第1部では7割を超える銘柄が値上がりした。
円安で、株価が上昇しますので、新聞の見出しでは、「円安が望ましい」となりますが、この数値は、実は偏った数値なのです。
しかも、売買システムは、自動で動きます。「円高になりそうだ」「日本株は買いだ」など、人間の感覚に基づいた売り買いなどされていません。
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現在世界中の外為取引はプログラム化されており、1秒間に実に100回もの売り買いができるシステムになっています。
よくTVで外為市場(外為ブローカー)の取引の模様が押し映し出されますが、あれはテレビカメラを前にしての、言ってみれば「ショー」であり、実際にはボタン一つでどんどん電子化された売買取引が進んでいくわけです。
そのプログラムには、例えばブルームバーグ(経済・金融情報を配信する米総合情報サービス会社)が発信するニュースがリアルタイムで反映されるようになっています。
情報が飛び込んでくるとプログラムは過去の事例から、「これは売りか、買いか」と自動的に判断します。
…世界中のプロフェッショナルが朝から晩まで休みなく、わずかな相場の動きに注視しながら裏技的なものまで繰り出して、心理戦を展開しているのが最前線の現場です。
そこまでやっても「絶対」はありませんし、ウォール街のエリートたちでも市場を完全に見通せるような人はいないのです。
実際の為替相場では7兆円規模で市場介入しても「大海の中の一滴」なのですから、ましてや個人レベルでどんなに努力をしたところで、まったく太刀打ちできません。
それを家事の合間にパソコンをチラチラ見ながら売買するようなレベルでは、簡単には勝てないということがおわかりいただけると思います。
週刊現代 2013・1・5/12号
この十数年で、日本一の金融街・兜町の景色は様変わりしてしまった。
・・・とどめを刺したのが、2010年の超高速株式売買システム・アローヘッドの導入である。1000分の5秒という人間の知覚を越えたスピードでの注文が可能になった結果、市場の中心プレーヤーは、自動で売買を行うコンピュータープログラムになった。11年半ばからそれに対応できない中小の証券会社がバタバタと潰れはじめている。
楡周平『考えない葦』週刊新潮12年11月1日号
…外資の機関投資家に至っては、千分の1秒単位で自動的に売り買いを繰り返すシステムを用いているのだそうです。
…もう取引に人が介在する余地などありはしないのです。
…10月19日現在の日証協のホームページに記載されている会員数は273社。3月末から僅か半年の間に、12社も減っているのですから、凄まじいの一言につきます。
株高は、機械的合理性から導かれ、225銘柄の日経平均株価は、「円安が望ましい」企業によって構成されています。
<歴史的背景>
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臨時投稿 分かっていないのに、分かったような素人論 その2.5
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だから、隠れた金融取引が本質なの!!!対外資産が世界一!!なんて、大笑いの話
確かに、貿易黒字が良くて、貿易赤字がまずい時代はありました。41年前までは。

日本にもありましたよね。「国際収支の天井」みたいな話。
日本景気がよくなる(貿易黒字で外貨稼ぐ)
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円高・ドル安になる
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固定相場制だから、ドル売り円高介入しなければならない
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生産するのに、原材料の輸入が増える(外貨が出ていく)のに、外貨がない
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外貨分しか原材料を購入できず、生産は縮小する
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景気が悪くなる
これ、1950年代の話です。固定相場制の時代、外貨がなくなったら、IMFが融資する、SDR(特別引き出し権)を使用する・・・・確かに、その時代は、そのようなことがありました。
固定相場を守るため、円買い・ドル(外貨)売り
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このためにも、外貨は、どうしても必要
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国民の外貨使用を制限
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ウイキペディア
外国への旅行は業務や視察、留学などの特定の認可し得る目的が無ければならず、1963年(昭和38年)4月1日以降は現金とトラベラーズチェックによる年間総額外貨500ドル以内の職業や会社などの都合による渡航が一般化されたが、これも旅行代理店を介して逐一認可された[1]。一般の市民が職業上の理由や会社の都合ではなく、単なる観光旅行として自由に外国へ旅行できるようになったのは翌1964年(昭和39年)4月1日以降であり年1回500ドルまでの外貨の持出しが許された。さらに1966年(昭和41年)1月1日以降はそれまでの「1人年間1回限り」という回数制限も撤廃され1回500ドル以内であれば自由に海外旅行ができることとなり[2]、これ以降、次第に物見遊山[3]の海外旅行が広がり始めた。
景気がよくなると、輸入も増え、ドルで支払うから、外貨が枯渇する・・・輸入が増えると、円安ドル高になるから、固定相場制を維持するために、当局はドルを売って、円を買う・・・外貨がなくなる(国際収支の天井)から、そこで、景気回復は終わる・・・
だから、「貿易黒字が望ましい=外貨を十分に持つことが必要だ」
という時代だったのです。
これを、未だに、引きずっているのです。
未だに、貿易赤字=外貨が出ていく、貿易黒字=外貨を稼ぐ?
1973年以降、変動相場制になり、固定相場維持のために、外貨(ドル)を使用する、ドルをできるだけ多く持っておく必要は、全くなくなりました。必要は「0ゼロ」です。
ところが、アメリカも、当時、貿易黒字=善、貿易赤字=悪という思想が世をおおっていました(固定相場を止めるまで)。今の日本と同じように、貿易黒字国から、赤字国への過渡期だったのです。
しかも、1970年代は、スタグフレーション(低成長なのに、高インフレ)で、おまけに2度のオイルショックで、マイナス成長になるし、もう、ボロボロといっていい状況でした。
何しろ、インフレが凄まじく、設備投資用に資金を預金しても、10年後に更新しようと思ったら、50%とか、35%しか更新できない・・・それほど、通貨価値が下落したのです。
インフレで、低成長で、失業率は高くて・・・それは日本のせいだ!となったのです。
日本の車、小型車ですから、燃費がいいのです。70年代から80年代にかけて、アメリカでバカ売れしました。ガスをガバガバ喰う、巨大アメ車は、売れなくなったのです。
だから、自分たちの低成長の原因は、「日本だ」となり、貿易摩擦、数量を制限させるぞ(スーパー301条!)となったのです。
誰ですか?アメリカが「自由主義経済」だって言っているのは。アメリカは国家の力を使って、なりふり構わず、規制をする、「反・自由主義経済」国家ですよ。
ニクソン時代、なんと、余りのインフレに、「価格統制90日!!!!」とやって、すべての価格を凍結した国ですよ。共産主義国家、顔負けですよ。しかも、この規制、何度も何度も行われたんですよ。
価格統制するわ、輸出(輸入)規制するわ、リーマンショック時には、証券会社にFRBが資本投入するわ、どこが「自由主義」経済?
閑話休題
だから、この1980年代までは、まさに、EXも、IMも、モノ・サービスの輸出入を示す(実物取引)記号だったのです。
そして、1991年、共産主義が、崩壊します。世界の市場は、一気に2倍になります。「黒だろうが、白だろうが、ネズミを捕る猫が良い猫(中国)」時代になったのです。
1990年代以降、アメリカは、ニュー・エコノミー、低失業率なのに、高成長・・・フリードマンも真っ青の、フィリップス曲線が成立しない、黄金の1960年代と同じ、好景気に沸いたのです。
今世紀、今度は、資本(カネ)の時代になります。イギリスも、アメリカも、この時代に、「資本(カネ)の国」になったのです(なぜそうなったのか、それは、予定稿で明らかにします)。
金融業が、アメリカのGDPの20%以上を稼ぐ、金融立国(ロンドンシティも同じ)になったのです。

だから、今の時代は、EXも、IMも、モノ・サービスの輸出入を示す(実物取引)記号ではなく、カネの輸出入を示す記号になったのです(国際収支表では、相殺されて、最後には1/100の額しか載らない)。
この40年余りで、経済がこのように激変し、ITの進化は、24時間の「時」を超越したスピードで、ますます、加速しています。
アダム・スミス「労働がすべてを生み出す源泉」といっても、寿司まで、ロボットが握ります。労働の質(価値あるモノ)が、頭脳労働に替わったのです。サービス業さえ、将来的には、ロボットが代替するようになるでしょう。誰でもできるような労働は、低賃金にしか、ならないのです。そういう時代です。
株取引も、「機械」が自動的に行う時代です。「さあて、株の動きは・・・」と、新聞を読んで、「人間」が、投資する時代ではないのです。
出来るのは、「今」の、歴史的枠組みを超えてしまった「資本主義・金融主義・ICT革命時代(後世、必ずこうくくられます)」を分析することです。それしか、できません。
高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学
直喜下
基本的に、経済についてはこれまでほとんど勉強していなかったので、購入。 読んでみても、まだまだ分からない箇所もあった。 経済について、これからゆっくりと理解を深めていきたい。