新聞を解説(18) 近藤和行『ハゲタカはよみがえるか』 読売新聞 その2

新聞を解説 近藤和行『ハゲタカはよみがえるか』読売新聞H21.6.14 その2

…公開中の映画「ハゲタカ」は、日本の大手自動車会社に買収を仕掛ける中国系ファンド「赤いハゲタカ」がストーリーの軸になっている。…現実の中国も…数年前にIBMのパソコン部門を買収したかと思えば…(GM)の大型車ブランド「ハマー」を手中に収める勢い。…太田弁護士…は「世界的な低金利で資金はあふれており、規制が解除されれば、やがてハゲタカ的な動きは激しくなる
 
 
 ハゲタカは、M&Aで、安く会社を買収し、高く売って儲けようとする動きなどを示します。獲物に食いつく様子を、ハゲタカに例えています。株価下落で、日本企業を買収しやすくなった折、旧日本長期信用銀行を安く買い叩かれ、高く売られた例などがあります。
 また、郵政民営化をめぐっては、現時点で政府が100%保有する株を公開したときに、「欧米のファンド(ハゲタカ)が、郵便貯金会社が持つ、200兆円をねらっている」などと、喧伝されています。

<外資は今後ますます増える>

GDPは次の3つの要素で構成されます。

  ① 労働量(何人の人が何時間働いているか)
  ② 資本ストック(どのくらいの機械や工場が動いているか) 
  ③ 技術力(労働と資本を,どのくらい効率的に活用しているか)

 GDPは,①労働力,②資本ストック,③技術力をかけあわせたものです。このサイコロが約500兆円です。日本は今後、この②資本ストックが低下していきます
  日本は,高度経済成長時代に,大変な設備投資をしてきました。つまり,企業が,機械や工場設備をどんどん増やしたのです。
表24 とうほう 資料集『政治・経済資料2008』 2008年 p227
設備投資 とうほう 資料集『政治・経済資料2008』 2008年 p227
 この表のように,1955年~1970年まで,機械や工場設備(民間設備投資)の年平均増加率は,17.3%です。つまり,15年間もの間,前の年に比べて,17.3%ずつ,機械や工場設備を増やしてきた のです。日本がこの間に,GDPを増加させた要因のうち,27.1%が,設備投資によるものでした。
 このように,投資が増えた背景には,日本人の高い貯蓄率があります。貯蓄されたお金は,銀行を経由して,企業に貸し出され,設備投資に生かされたのです。

貯蓄 → 銀行 → 民間企業の設備投資

図57 東学 資料集『資料政・経2008』 2008年 p313
貯蓄率過去 東学 資料集『資料政・経2008』 2008年 p313
 日本の貯蓄率は,先進国の中で,最も高い水準だったのです。その貯蓄率は,今後どうなるでしょうか。実は,日本の貯蓄率は,すでにドイツ・フランスを下回り,2020年には家計貯蓄率はゼロになると予測されています。
貯蓄率今後 櫨浩一『貯蓄率ゼロ経済』日本経済新聞社 2006年 p11 p106
図58 櫨浩一『貯蓄率ゼロ経済』日本経済新聞社 2006年 p11 p106
 このように,①労働量×②資本ストック×③技術力=GDPの②資本ストック部分は,何もしないと,確実に低下します。
 それでは,この②資本ストックを増やすためには,どうしたらよいのでしょうか。それには,外国資本の導入しかありません。それは,外国の人に,日本の会社の株を買ってもらったり,社債を購入してもらったり,日本に工場や,店舗を建ててもらったりすることなどです。もちろん,外国の銀行や証券会社が日本に進出することも含みます。

 ただ、今後日本は、必然的に外資が増える ことになります。

   (S-I)   =  (G-T)+(EX-IM)
民間貯蓄超過   財政赤字    貿易黒字
    
     プラス2       = プラス1           プラス1 

 現在の日本では,左辺のSが高い(貯蓄率が高い)ので,右辺がプラスでしたね。2005年の民間貯蓄は,約144兆円,GNIの28%にあたります。しかし,この貯蓄率,特に個人の貯蓄率が低下しています。2020年にはゼロになることが予測されています

 そうすると,上記の式はどうなるでしょうか。左辺が縮小,もしくはゼロ,またはマイナスになります。財政赤字が少し減ったと予想してみましょうか。そうすると・・
   (S-I)  =  (G-T)+(EX-IM)
民間貯蓄超過   財政赤字 貿易赤字
   
        ゼロ    =   プラス1      マイナス1             
       マイナス1 =     ゼロ      マイナス1

 このように,左辺と右辺は必ず等しくなるので,日本は,必ず「貿易赤字」になります
 貿易赤字=資本収支黒字なので、外国から日本への投資が、増える ことを示します。

 「ハゲタカ」と共存する時代が、確実にやってきます。「ハゲタカ」などと、「善:悪」や「正義:悪」といった価値観を持ち込む時代ではないのです。
 
 07年、米スティール・パートナーなど、外資系ファンドなどによる増配要求が相次ぎました。08年、英チルドレンズ・インベストメント・ファンドが、Jパワーに増配を要求しました。ほかの株主から、委任状を取り合う争奪戦が展開されました。
 会社にとって、「増配」など短期の収益を求めることより、長期的な視点による経営の方が、利益になるのなら、経営陣は、その利点を強調し、株主を説得することが必要です。
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