裁量なんかに任せると、とんでもない国家になる・・ハイエク 日銀白川元総裁
白川総裁、民主党が参院で過半数をとった時に、選ばれました。当時は、武藤(緩和派)の総裁就任も選択肢に上がっていたのですが、民主党は、武藤が財務次官経験者なので、「天下りだからダメ」という論理で、人事同意せず、結果として「日銀出身」の白川副総裁が繰り上がったのです。
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2008年、日銀総裁を決める際に、国会で民主党によって、不同意にされた人物の1人は、①東大教授 伊藤隆敏(ウイキペディア:最近は、インフレターゲットの提唱者として知られ、日本銀行の金融政策に批判的な論陣を張っている)です。
もう1人は、当時日銀副総裁ながら、ゼロ金利解除に、ただ1人反対した②武藤敏郎です。民主党が反対した理由は、「財務次官経験者という、官僚OB」だったからです。
日銀総裁には、「国会同意」が必要で、民主党は参院で、過半数を取っていたので、「自分たちの意見を通せる」状態だったのです。
その後に続く民主党政権の迷走は、ここに端的に示されています。その理由(行動原則)が、「天下りだからダメ」という、裁量(その時々で、用いられる、旨先三寸の話)だからです。
「天下りだからダメ」「天下り廃止」は、構いません。但し、「ルール」として明瞭であれば。
しかし、民主党のやったことは、ルールではなく、「民主党政権が支持されたから、その時だけ民主党政権では裁量でそれを行うという」という、原理原則でもなんでもなく、最悪でも将来的にそのルールが担保されるのでもなく、結果的に最初の勢いだけで、採用されたものです。
民主党政権下でも、天下りが容認される結果になった単なる「裁量」だから、ダメなのです。
裁量とは、その時々の為政者(政治・行政)の判断で、ころころ変わる決定権を、為政者に与えると言うことです。
これをされたら、民間は、どう対処してよいか、全く分かりません。合理的行動が取れなくなってしまうからです。
行政に強大な「裁量権」を与える・・・許可でも認可でも、行政の胸先三寸・・・これが一番たちが悪いものです。予想が立てられず、民間はその時々で、「右往左往」するしかないからです。
現状、日本は、この行政・政治の裁量権がものすごく強いです。ですから、民間は「合理的」に行動して、行政・政治に擦り寄ります。情報を得、「こうなるよ」という方向に基準を合わせます。
しかし、その情報を得る為に、莫大な時間とエネルギーとコストをかけます。だから、「癒着」になるのです。
だから、ハイエクが、「裁量ではなく、ルール」をと言ったのです。行政や、政治に裁量権を与えると、ろくでもないことになるからです。「道徳の押し付け」さえ、起こります。(ナチス・ドイツ)
それで、ハイエクは、裁量権を与えると、「国家に隷従する」ことになる、「国家が道徳まで押し付ける」と言って、全体主義を徹底批判したのです。
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日経26.5.9
自治体の存続 人口減で厳しく
・・・日本創生会議の人口減少問題検討分科会…人口減を食い止めるため…企業ごとに社員の出生率を公表させて家庭との両立を促すべきだとした。
お、恐ろしい・・・
裁量は、「官僚は優秀」「優秀な人に任せておけば安心」と言う思想です。
ハイエクは、人間の合理性には限界があり、だから、信用できない、だから、無数の人々による「市場」に任せろと言ったのです。「優秀?なるものにゆだねるとダメ」だからです。
それゆえ、裁量に任せる、ケインジアン・・・その時々で適切に対処する「裁量」を批判したのです。
また、ルーカスらの「合理的期待(予想)形成」にも、立場の違いを明確にします。なぜなら、人間の理性には限界があり、「合理的だ・・何度何度も経験を重ねると、もっと合理的だ」など、チャンチャラおかしいとしたからです。
それで、ちょっとずつ、あらゆる分野で少し合理的(一般庶民は、みな、少し知っている部分ありますよね、ゲームでも、情報世界でも、音楽でも、ダンスでも、動物でも、医学でも、法律でも、経済学でも・・ちょっとは他の人より知っている・・でも、それはちょっとの差)ですよね。
絶対者「神」を前にしたら、「学問的に優秀だと威張る」ことなど、アリが、人間の足元で、「俺の触覚は、お前より0.00000000000001ミリ長い!」と威張っているようなものです。
だから、その「ちょっとずつ知っている人が無数で形成する市場」を信頼するしかないとしたのが、ハイエクです。
では、「政治・行政」に求められるのは何か。それが裁量ではなく「ルール」なのです。行政や・政治も従わざるを得ない、ルール・・・これが明確化されているから、民間が「ちょっとの合理性」を使って、未来を予測して、行動できる・・・これが一番合理的、時間的ロスも、コスト的ロスも、エネルギー的ロスも使わなくてすむからです。
だから、「市場に任せろ」ではなく、行政・政治の必要性も十分にあり、それらがやることは、「ルール」を市場に対して明確化しろというものです。
「市場原理主義」ではなく、「行政・政治」の役割を、ものすごく重視した「市場活用」派なのです。
人間の理性なるものを、全く信用していない、ハイエクだから、ちょっとした理性を最大限に活用して「ルール」を作れ・・・これがハイエクの思想なのです。
だから、その時々の「裁量」、「裁量権を与える」「裁量権を大きくする」などを、徹底的に排除したのです。
裁量にまかせると、どうなるか、ハイエクは、「道徳まで押し付けられる国家になる」と言っています。
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なぜベーシックインカムは賛否両論を巻き起こすのか――「転換X」にのっとる政策その1 - 松尾匡
ルールではなく、裁量にゆだねる・・・人間のあやふやな判断にゆだねることなのです。
民主党政権は、「天下りはダメ」という、恣意的な裁量で、物事を決定したのです。それは、「ルール化されたもの」だったことはありませんし、少なくともその時以降、「ルール化」させようと、現実にそうなったものでも、ありません。
「雲散霧消」した「裁量」、民主党人気あった時代の「初期」の判断「裁量」だったに過ぎないのです。このように、「裁量」で総裁になったのが、「白川元総裁」です。
日銀審議委員・・・これも、ハイエクに言わせると、「最悪」です。「裁量」だからです。「女性を入れておこう」「民間エコノミストも入れておこう」「バランス考えよう」・・・「財務次官と、日銀出身者を交互に総裁にしよう」・・・全部裁量です。ルールなどないのです。
ECBも、FRBも、みな「経済学者(博士、最低でも修士)」です。イエレン、バーナンキ、英国銀行総裁(元カナダ総裁)も、インド総裁ラジャン・・・バリバリの学者です。それが「ルール」です。
http://www.twitlonger.com/show/k303b2
浜田宏一教授からの安倍総裁へのレターを全文掲載しておきます。
日銀法改正以来、日本経済が世界諸国のほぼテールエンドの足跡を示していることから、そこでの金融政策が不十分であったことは明らかです。日本経済の望ましくない症状として、デフレ、円高という貨幣的な症状が出ているのですから、それに対するのは金融拡張が当たり前の処方箋です。
野田首相は、金融に訴えるのは世界の非常識といわれますが、
<Wall Street Journal>金融に訴えないという議論こそ、現在の世界の経済学から見れば非常識です。
野田首相は、地動説の世界で天動説<日銀流金融理論>を信奉しているようなものです。このことは、最近私がマンキュー、ハバード、ノードハウスなど超一流学者とインタビューして確認しました。
政策手段としてはインフレ目標が望ましいと思います。IMFのチーフ・エコノミストのブランシャール<ブランシャード>も4%まではいいといっているようなので、これだけ長いデフレが続いて、人々のデフレ期待が定着している日本経済に活を入れるのは、安倍総裁の2~3%がまさに適当といえると思います。
また、インフレ目標は、金融緩和が行過ぎてインフレが始まりそうになるのを防ぐという、インフレから国民経済を保護する機能を持っています。
デフレ脱却のためには、日銀の国債引き受けでもいいですが、それが強すぎるというのなら、総裁のおっしゃったように日銀が国債を大規模に買い入れればよいのです。ただ、ゼロ金利に近い現状では、買い入れ対象が短期国債では効きません。長期国債、社債、株式の買い入れも必要となるわけです。バーナンキ議長がやっている抵当証券の買い入れも必要となるわけです。バーナンキ議長がやっている抵当証券の買い入れも、このような考え方に基づいています。
日本経済の高度成長期には一桁、5%未満のインフレが通常でした。2度の石油危機の時には二桁のインフレになったこともありましたが、それを日銀は見事に克服しました。言い換えれば日本経済の奇跡的成長は緩やかなインフレと共存していたのです。そして日銀はインフレが昂進しそうになればいつでも制御した実績があります。このような歴史から見れば、デフレを克服するとハイパーインフレになるというのは非現実的な脅しに過ぎないのです。
ゴルフにたとえれば、今の日銀は雇用改善、景気回復という目標のホールを目指さずに、ホールの向こう側には<ありもしない>崖があると称して、バンカーに入ったボールをホールの方向に打たない、あるいはパターでしか打たないゴルファーのようなものです。
http://toyokeizai.net/articles/-/11808
安倍自民党総裁の金融政策を全否定
白川日銀総裁会見 2012年11月20日
9月、10月と2カ月連続の金融緩和を決めた後、景気の減速がさらに強まるような状況ではなかったため、11月20日の金融政策決定会合で、金融政策が現状維持と決まったのは予想通り。むしろ、市場が注目していたのは、衆議院解散後、自民党の安倍晋三総裁が発している日銀への過激な”注文”に、白川方明日銀総裁がどのような見解を示すのか、だった。
結論からいえば、白川総裁は「あくまで一般論」と繰り返しつつ、ことごとく否定的だった。
安倍総裁は講演で、2~3%のインフレ目標を設定し無制限に金融緩和を行うべきとの考え方を示したことが報じられている。一方、日銀が2月に設定した事実上のインフレ目標は「当面1%」。「今の日本経済で物価目標を3%にすることが現実的と考えるか」との質問に白川総裁は、バブル期の1980年代後半でも物価上昇率が平均1.3%だったことを挙げ、「(3%は)現実的ではない」と答えた。
「国民が望んでいるデフレ脱却は単に物価だけが上昇する事態ではなく、企業収益や雇用、賃金増加を伴って経済全体が回復し、その結果、物価がゆるやかに上昇していく状態だと思う」(白川総裁)と説明。かねて白川総裁は、政策目標の追求には「最適なスピードがある」と話しており、インフレ目標3%の設定はそれに沿わないということだろう。
ほかにも安倍総裁は、民間金融機関が日銀に保有する当座預金に対してつけられる金利(現状は0.1%)をゼロないしマイナス(日銀に預けるとコストが発生する状態)にし、当座預金に滞留するおカネが実体経済へ出るようにすべきとの考えを示している。これに対し白川総裁は「4つの論点が指摘されることが多い」と説明した。
①金利をゼロにすると、(短期金融市場での取引のインセンティブが低下し)市場参加者がいざというときに資金調達ができるという安心感がなくなる。
②額面が保証されてマイナス金利のつかない銀行券へ大規模な資金シフトが生じる。
③マイナス金利のコストを民間銀行が貸し出し金利に上乗せすると、結果的に金融環境が引き締まることになる。
④中央銀行のオペレーションに応じて資金調達するとコストがかかるので、民間銀行がオペに応じなくなる。
というもので、弊害が多いことを強調している。
12月は米FRB→総選挙→日銀の政策会合
安倍総裁は「金融政策については日銀法改正も視野に入れる。大胆な金融緩和を行っていく」と話しているが、今のところ、具体的にどのような変更をするのかは不明だ。法改正議論について白川総裁は、「中央銀行の独立性は長い経験の中で培われたもの。あくまで一般論として、独立性というものをぜひとも尊重してほしい」とし、「仮に、日銀法のような経済、金融の基本法について改正議論を行うのであれば、十分に時間をかけて慎重な検討を行う必要がある」と述べた。
また、「(大胆な金融緩和を)やってもみないでどうなのかという議論がある」との問いに対しては、白川総裁は「やってもみないでという言葉を使われたが、日銀はまさに、やってきている」といくぶん語気を強める場面も見られた。
政策金利がゼロに到達し、政策金利を引き下げて金融緩和を図るというオーソドックスな手法を失った今、何とかひねり出している金融緩和策は複雑化するばかり。実際、「ごく普通の人からすると、金融政策の細かい技術的なことは理解しにくいというのが現実」と、白川総裁も認めるところだ。
金融緩和を行っているにもかかわらず、企業の借り入れは増えず、超低金利でも家計の預貯金残高が膨らんでいる。おカネが実体経済へ出ていかない。日銀は金融面だけでなく、「成長力の強化」が重要だとかねて強調しているが、複雑な金融緩和の効果について広く理解を得ることが難しい状況でもある。
次回、日銀の金融政策決定会合は12月19、20日。その前週の11、12日には米FRB(連邦準備制度理事会)がある。FRBは12月末で現行のツイストオペ(短期債売却と同額の長期債を買い入れ)が期限切れを迎えるため、翌年1月29、30日の理事会を待たずして、長期債の買い入れ継続を決めるとの見方が強い。そして米FRBと日銀の決定会合の間、16日には総選挙だ。
米国の緩和継続と足並みを合わせ、新政権の”期待”に応える形で追加緩和を行うのか。「積極的、大胆な政策がいいか悪いかではなく、あくまで期待される効果と副作用を比較考慮して政策を追求する」(白川総裁)わけだが、外部環境次第では次回の金融政策決定会合は難しい判断を迫られそうだ。
民間で信用されるのは、「できるようにしようとしてみる」「できることを考える」「できることに最善を尽くす、でもできなかったら、仕方がないとあきらめてもらう」です。
↓「高校生からの・・・」の範疇を超えます
合理的期待(予想)形成説
ルーカスが提唱したもので、ここを境にマクロ経済学は、「ルーカス以前と以後」に分かれます。
政策発表、期待《予想)で、人間は、「現在の行動」を変えます。
株、金利、住宅ローンを見据えてのマンション購入、企業の価格設定・・・
経済行動は、期待(予想)に基づいて決定すると言っても、過言ではありません。
この期待(予想)をモデルに組み入れる・・・これが、現在の経済学の標準的モデルです。大学院生レベルでは、こればかりやっています。この期待(予想)を、過去や現在のデータ(変数)で示し、将来変数を現在・過去の変数と同じと仮定すると、「合理的期待(予想)」と表現します。
金融政策で採用されている「テイラールール」も、この「期待(予想)をモデルに組み入れる」から成り立っています。
名目金利=実質金利+インフレ率(予想物価上昇率)
期待(予想)なしに、現代の経済学は、語れません。これが、ルーカス以後の常識です。
「予想を基に、現在の行動を変える。」
リフレーション政策です。「金融緩和→カネの価値下がる→インフレになる」
だから、デフレも、期待(予想)により、自己実現します。
来年デフレになりそうだ→投資より現金・借金返済だ→企業は投資を止めて、現金を積み立て(銀行は投資先がなく国債購入するしかない)、家計は、将来不安で現金をため込み、消費に回さない→デフレが加速する・・・
実証的にあるのです。だから、これを逆に取って、「リフレ・インフレ目標」なのです。
↑ここまで
単純です。○○年○○月に諸費税が上がる、タバコ税が変わる、家電エコポイントが始まる・終わる・・みな、将来予想(予想の中でも、確実な確定)に基づいて、現在の行動を変えます。
難しい理論に基づいた、単純化した政策・・・これが、一番分かりやすい・・・庶民にも合理的判断が下せる事例です。
読売26.5.11
山崎正和「現代の正義 確かめ合う」
…日本では妊娠中絶は事実上、産む女性の自由として認められているが…これは生まれてくる胎児の人権と矛盾している。現実に外国にはこの理由から中絶反対の運動があり、理論的にはこれを保守的として切り捨てるのは難しいのである。
東日本大震災…孤立した病院で動けない患者を守った看護師たちは、同じく被災した家族と職場のはざまで引き裂かれることになった。家族を捨てて病院に残った看護師と、わが子のために職場を離れた看護師は、いずれも長く後ろめたさに苛(さいな)まれた…。
↑
「良いだの悪いだの」、深く洞察すればするほど、簡単な話ではないことが分かります。芸術(文学、絵画、戯曲etc)は、ここを主題にします。ここが理解できないものに、人間の苦闘・葛藤・矛盾・・人間の尊厳など、理解できるはずが無いのです。
http://book.akahoshitakuya.com/b/4309246281
galoisbaobab
すばらしいっ!経済知識と経済力0のオレでも腑に落ちた!いやー、読んでよかった。というか、高校生の時にこんな本があればなーと思いました。つまり「経済のこと」と「経済学」の橋渡しをしてくれる良書だと思います。 オススメ!
theme : 間違いだらけの経済教育
genre : 学校・教育