経常収支の赤字?
http://blog.livedoor.jp/columnistseiji/archives/51575269.html
小笠原誠治
いんちき経済学に踊らされた日本経済の行く末
本日、2014年1月の経常収支が発表になりました。今年1月の経常収支は1兆5890億円の赤字で、単月では過去最大の赤字なのだとか。それに経常収支の赤字は、これで4か月連続になるのです。
グラフをご覧ください。過去10年間の経常収支の推移を示したものです。
(データ元:財務省)
このグラフは、本日発表になった原数値をプロットしたものではなく、季節調整済みの経常収支の推移を示したものです。何故季節調整済みの数値を使用したかと言えば、経常収支は季節によって一定のパターンを示す傾向があるので、そうなると毎月のブレが大きく、正確な動きが把握しにくいからです。
いずれにしても、この10年かの動きをみると、最近の経常収支の悪化ぶりに驚かされると思うのです。経常収支は、年間で見て赤字に転落するかもしれないではなく、赤字に転落したも同然ではないか、と。
1年は12か月間で構成され、そのうち連続4か月赤字が続いている訳ですから、1年間のトータルで考えても赤字になる可能性は大きい。そうなれば日本経済に対する対外的評価ががらっと変わることが考えられるのです。つまり、これまでは日本と言えば、経常収支が黒字の国で、世界一の債権大国ということが直ぐ頭に思い浮かんでいたのが、これからはそうではなくなる、と。
世界2位の経済大国の地位から陥落したばかりでなく、経常赤字に転落するとなれば、我が国経済の将来はどうなってしまうのでしょう?
私でなくても、心配して当然というもの。
しかし、最近、どういう訳か、経常収支が赤字になってどこが悪いのか、なんて議論がまかり通っているのです。
だったら聞きたい。
君たちは、戦後の経済の歴史がどんなものであったか知っているのか、と。
貿易収支が赤字で、そして、経常収支も赤字であれば、必要な外貨を調達するためにどれほど苦しまなければならないのかを知っているのか、と。
もちろん、仮に、外貨を融通してくれる奇特な国があれば、取り敢えず日本は困らなくても済むでしょう。
例えば米国のように、幾ら経常赤字が続いていても、世界中の国々は、米国経済が世界一であることを認める。そして、米ドルは基軸通貨である。だから、米国にお金を貸しつけることを敬遠はしない、と。
では、仮に日本が米国のように慢性的な経常赤字に陥ったとして、その時にどのような国が日本に喜んでお金を貸してくれるのでしょうか?
仮に、幸運にも日本にお金を貸してくれる国が存在したとしても、借りた金は何時かは返さなければいけない訳ですが、未来の日本にそのような力があるのでしょうか?
外国からお金を借りるということは、その借りたお金は基本的には外貨で支払うことが求められるでしょう。何故ならば、信用力のなくなった円を喜んで受け取る国がなくなるからなのです。
それに、仮にお金を貸してくれる国があったとして、結局そうなれば、そのお金を貸してくれる国が日本の運命の鍵を握ってしまうことになるでしょう。
新聞を読んでいると、またぞろ財務省が海外に対する国債の売り込みに力を入れるという記事を目にしました。国債の安定的消化という観点でそのようなことを考えるのでしょうが、しかし、海外の投資家が保有する割合が拡大すればするほど、日本経済の基盤はもろいものになってしまうのです。
今年に入って米国のテーパリングによって影響を受ける新興国経済に関心が集まっています。彼らはフラジャイル・ファイブなんて呼ばれ方もします。フラジャイルとはfragile のことで、脆弱なとか、もろいとか、壊れやすいということを意味します。つまり、経常赤字の国は、経済の基盤がもろく、ちょっとした外部要因の変化で経済がガタガタになる危険性があるのです。
日本は、今まで幾ら潜在成長率が低下しても、それでも経常黒字の国だから海外の信認が厚かった訳ですが、それがそうではなくなろうとしているのです。
そんな日本が今後目指す道とは、どういったものなのか?
多くの人は、こんなことを言うと否定的な反応を示すかもしれませんが、先ずは我が国の借金体質を少しでも改めることから始める必要があるのです。
しかし、この際、誤解のないように言っておきますが、今や1000兆円もあると言われる借金をゼロにするような計画を立てるべきだ、なんていうつもりはさらさらないのです。そんなことは無理なのです。そうではなく、私が言いたいのは、借金の残高が増えないようにする程度の努力は惜しむべきではないということなのです。
借金が増えないようにする程度の努力が、それほど無茶なことなのでしょうか?
では、借金の残高が増えないようにするためには、どんな目標を立てるべきか?
それは、プライマリーバランスが赤字にならないようにするということなのです。ご存知ですよね、プライマリーバランス。基礎的財政収支とも言いますが、要するに、借金に関わるお金の出入りを除外した上で、財政収支の帳尻を合わせるということなのです。
我が国政府は、既に多額の国債を発行しているために、毎年度、その元利払いの財源を確保する必要がありますが、国が毎年度新たに国債を発行して得たお金は、全てそうした国債の元利払いに充てるだけで、それ以外の用途には充てないというのがプライマリーバランスの考え方なのです。もう少し言えば、国が行う公共事業の経費や防衛費、或いは教育のための経費などを、今後は一切国債の発行に頼らずに借金を除いた税収等の収入だけで賄おうという考えなのです。
もちろん、こうした考えを毎年度厳格に守らなければいけないとしたら、逆に様々な弊害も発生するので、過度に神経質になる必要もないのですが、但し、長期的に見て、そうした原則が維持されることが必要であることは当然でしょう。
今の日本について考えるとき、そのような原則が守られているどころか、大いに踏みにじられているとしか言いようがないのです。
でも、日本の経常収支が黒字である限り、そのような問題が顕在化するまでには至らなかった。何故ならば、政府の借金の問題はあくまでも日本の国内問題にとどまり、対外的にみたら、日本は依然として債権国家であったので、それほど憂慮する必要がなかったからなのです。
しかし、本日発表された経常収支統計によれば、日本経済は、今や年間ベースで見ても赤字転落寸前の状態になっているのです。
ここで財政立直しに二の足を踏みようであれば、近い将来、中国を始めとする海外の国々が我が国の国債を大量に保有するようになり、日本経済もフラジャイルなカントリーの一つになってしまうでしょう。
「日本政府は、埋蔵金を保有しているので、増税など必要がない」
「需給ギャップがあるので、財政出動するのは当然だ」
この10年間ほど、そのような議論に踊らされてきた日本!
そのツケが今、回ってこようとしているのです。
↓
何が根本的におかしいのか、挙げてみます。
(1)輸出で外貨を稼ぎ、輸入でその外貨を使用する。
(2)外貨は輸出分しか入ってこなく、輸出入差額=貿易黒字分、外貨が日本に残る。
(3)世界は、資本取引していない、固定相場制である。
これ、1971年に終わった、ブレトン・ウッズ体制時代、1ドル=360円の固定相場制時代の話です。
上の3つの正解は、
(1)輸出入で使用する外貨は、株や債券、土地や建物、預貯金などをする資本取引に使う外貨の1/100に過ぎない。
(2)日本の場合、ドル買い取引は、貿易額の240倍、円買い取引は、140倍ある。
(3)世界は、資本取引を自由化した、変動相場制である。
解説しましょう。
まず、外貨取引は、1.実物取引と、2.資本取引(株や債券、土地建物、預貯金ほか)の2つがあり、実物取引1:100資本取引 になっています。
日本の場合、ドル買い取引は、貿易額の240倍、円買い取引は、140倍あり、為替の直物取引や先物、スワップ、オプションをあわせた1日あたり売買高は、3,481億ドル(約35兆円)です。(2013.8.14)
つまり、外貨など、毎日毎日、貿易(実物取引)の200倍以上も動いているのです。どうやって、その外貨が枯渇するとでも???

これだけ動いて、当然「国際収支表」に記載されるのですが、「金融収支」の項目で、相殺されて、表に出てこないのです。
国際為替には、同時に達成できない、原則があります。 これを金融政策の「トリレンマ」=「3つとも達成できず、どれかを放棄せざるを得ない」と言います。
①資本移動の自由
②固定相場制
③金融政策の独立性


戦後のIMF=GATT体制(1ドル=360円時代)は,3つの要素のうち、①資本移動の自由化を放棄しました。資本移動の自由化とは、例えば外国の株や債券を買うなどの、海外投資のことです。②固定相場制の目的は、為替リスクの封じ込めにあります。③金融政策の独立性は、完全雇用の実現にあります。この3つは同時に達成することが不可能です。
例えば、ある国が「不況」だとします。「金融政策」を発動し、金融緩和をします。そうすると、金利が下がります。金利が下がると、資本(カネ)は、高金利の国へシフトします(資本移動)。そうすると、固定相場制が成り立たなくなります。
この場合、
①資本移動の自由○
②固定相場制×
③金融政策○
となります。現在の日本やアメリカです。
①資本移動の自由×
②固定相場制○
③金融政策の独立性○
ブレトン・ウッズ体制(1971年のドルショックまで)までは、①を放棄していました。
だから、1ドル=360円時代の日本は、外貨獲得が難しくて、「国際収支の天井」という、壁にぶち当たっていたのです。
外貨、持ち出し制限があったんですよ。昭和40年代まで。海外旅行なんて、できなかったんですよ。規制があって。日本の外貨少なかったから。ハワイに遊びに行けるのは「力道山(私は見たことがない)」とか、「三船敏郎」くらいだったんですよ。
「カネがなくて海外旅行に行けない」ではなくて、日本の外貨がないから、国として持ち出し禁止していたから、いけなかったのです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E5%A4%96%E6%97%85%E8%A1%8C
ウイキペディア
一般の市民が職業上の理由や会社の都合ではなく、単なる観光旅行として自由に外国へ旅行できるようになったのは翌1964年(昭和39年)4月1日以降であり年1回500ドルまでの外貨の持出しが許された。さらに1966年(昭和41年)1月1日以降はそれまでの「1人年間1回限り」という回数制限も撤廃され1回500ドル以内であれば自由に海外旅行ができることとなり、これ以降、次第に物見遊山の海外旅行が広がり始めた。
「国際収支の天井」
景気好調→輸入も増える→ドル高・円安になる→固定相場制1ドル360円±2%の範囲に抑えるために、当局が、円買いドル売りをして、為替相場に介入する→外貨枯渇する→輸入ができなくなり、景気は腰折れする。
仮に、幸運にも日本にお金を貸してくれる国が存在したとしても、借りた金は何時かは返さなければいけない訳ですが、未来の日本にそのような力があるのでしょうか?
↓
ホンダy日産がメキシコに建てた工場、ユニクロの店舗、中国のイオン、サントリーが買収したジンビーム、製薬会社の、ヨーロッパライバルメーカーの買収・・・
日本のマクドナルド、H&M、IKEA、6割を占める株の売買高、その結果、もはや海外の会社と言ってもいい、ニッサン、スズキ自動車、三井不動産、ヤマダ電機・・・

日本の650兆円の対外資産・・・
海外が、日本に持つ、350兆円の資産・・・
返す?
昔、アメリカが経済摩擦時に、日本の車を壊すデモンストレーションやったのと同じです。自分たちの国の生産性(GDPの成長要因の1つ)低下を、日本の輸出にぶつけたのです。「雇用が奪われた!」って。
インドなんて、すごく優秀なラジャン総裁を中銀に迎え、インフレ押さえるために、金利高くしているのに、政府は正反対の財政策・・・
整合性が取れていないのです。
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