至上命題だった、国体(天皇制)護持 天皇制維持のために、憲法は、押し付けられ,日本が飲んだ

<至上命題だった、国体(天皇制)護持 その2 天皇制維持のために、憲法は、押し付けられた>

 さて、日本国憲法です。これは、天皇制維持(国体護持)のために、GHQによって、押し付けられました。日本は、天皇制維持(国体護持)のために、これを受け入れました。

 この記事は、「押し付け憲法だから改憲しろ」という意見主張を目的とすることではなく、事実として「憲法は押し付けられた、日本は受け入れざるをえなかった」を述べるものです。

日本国憲法はどう生まれたか? 原典から読み解く日米交渉の舞台裏 (ディスカヴァー携書)日本国憲法はどう生まれたか? 原典から読み解く日米交渉の舞台裏 (ディスカヴァー携書)
(2013/07/07)
青木 高夫

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 この本は、GHQ側のマッカーサー、ホイットニー、ケーディスらと、日本側 松本国務相、白洲次郎などの交渉記録を、英文から掘り起こし、丹念に追ったものです。

 日本国憲法がどのような思惑によって誕生し、日本が受け入れたかが、詳細に記されています。憲法を語るうえで、必読書となっています(以下引用は全て同書 ページは前後するので省略)。

GHQの思惑


 すべては、この図のとおりなのです。GHQも、日本側も、「天皇制維持をしなければいけないこと」は、必須であり、共通項だったのです。

<日本国憲法制定の経緯>

1946年に1月26日に、豪州政府が天皇を戦争犯罪人として出廷させたい(筆者注:東京裁判)との要望を出してきますが、これに対するマッカーサーの回答…。

 Practically all Japanese…believe rightly or wrongly that the Potsdam Agreement were intended to maintain him as the emperor of Japan

 rightly or wronglyは、「間違っているか、正しいかはともかく」…「日本国民はポツダム合意が彼を日本の天皇としておくことを意図したものだと信じているのである」と回答しています。

 …この時点でマッカーサーは、天皇を、内実はともかく、その地位に留めておく意思決定をしていました。

…グル―国務長官代理は、「天皇が日本を自由化する有力な力となる」との見解を持っていたようですが、マッカーサーの意図もこれとほぼ同じものでした。

…アイゼンハワーに宛てた電信…

He is a symbol which unites all Japanese. Destroy him and the nation will disintegrate.

「彼は日本人を統合するシンボルである。その人物を斥けることは、国家の崩壊につながるのではないか・・・マッカーサーも1946年初頭には、日本国民にとって天皇がどんな存在であるかをある程度は理解できていたようです。

 マッカーサー(GHQ)は、最初から最後まで、その上部組織である極東委員会の意向(筆者注:ソ連含む…ということは共産主義思想が入り込む)に振り回されるのを回避しようとします。

 12月27日 モスクワ宣言…宣言の内容は、米英中、ソ連の他に豪州、フィリピンなど11カ国で構成される極東委員会の設置を宣言したもの…元々…参加国は、米国主導の対日方針決定に不満を抱いており、その権限を…政策決定に拡大したのです。後にGHQを悩ませた改憲に関する宣言文書…。

 …Any directive dealing with fundamental change in the Japanese Constitutional structure…will be issued only following consultation following the attainment of agreement in the Far Eastern Commission.

改憲に関わる指示を出して良いのは「極東委員会との協議と賛成を得た後でなければならない」と書かれており…

 当然のことながら、極東委員会はGHQの上位組織となるため、この委員会が機能し始めると、マッカーサーは自信の意志のみで、改憲を推し進めることができなくなります。
 後のGHQの改憲作業の慌しさは、この委員会の動きと追いかけっこをするような形になったことが原因です。



 

2月13日の会談

 …この会談に出席した白洲次郎が…GHQの草案を「押し付けられた」と言っています。GHQによる「憲法の押し付け論」は今日でも根強く存在します。その主たる論拠の一つが、この会議で述べられた(とされる)ホイットニーの脅迫ともいえる発言です。…「このままで納得しろ。さもないと…」といった脅迫的なニュアンスが感じられる部分が存在します。

 He feels however, that acceptance of the provisions of this new Constitution would render the Emperor practically unassailable.

全文を訳すと、「マッカーサーは、この新しい憲法にある条項が受け入れられるなら、天皇は安泰であろうと考えている」という意味になります。

 この文章の前に、「天皇を戦犯として調査しようという外部からの圧力が増している(increasing pressure from the outside to render him subject to war criminal investigation)との記述があるので、この場合の「安泰 unassailable」というのは、いわゆる「戦犯として訴追されはしない」ということでしょう。

 日本側がこだわる天皇の立場が安泰であることを保障する部分ですが、当然、その裏には「受け入れないなら、その保証はないぞ」との脅しも隠されています。

 …松本国務相のメモにはどう書かれているのでしょうか。

4.日本政府が此の提案の如き憲法改正をすることは、右の目的達成のため、必要なり、之なくしては天皇の身体(person of the Emperor)の保障を為すこと能わず。

 ホイットニーは、そのままを押し付けた形ですが、松本国務相はそれを「自主改正案の提示」と理解したことになります。
 松本国務相のメモにあるperson of the Emperorは「天皇個人」を意味するものと理解できますが…かなりきわどい表現でしょう。

 …間違いがないのは、天皇の地位の保障を条件にホイットニーがマッカーサー三原則の受け入れをせまったということ…。



 

 マッカーサー3原則は、次のことです。

1.Emperor is at the head of state. His succession is dynastic.
天皇は国家元首の地位にあること。天皇の地位は、天皇家で継承されること。

2.War as a sovereign right of the nation is abolished. Japan renounces it as instrumentality for settling its disputes and even preserving its own security.
国権の発動たる戦争、国際紛争の解決、それだけでなく、自国の安全保障の手段としても、戦争を否定する。

3.日本の封建制度は廃止される。貴族の権利は、皇族を除き、現在生存する者一代以上には及ばない。華族の地位は、今後どのような国民的または市民的な政治権力を伴うものではない。予算の型は、イギリスの制度に倣うこと。

…幣原首相の決断…。…当然、閣議は紛叫します。その結果が、GHQ草案に対する回答期限の延期と21日の幣原・マッカーサー会談。首相はマッカーサーの「天皇の地位、戦争放棄に関する部分さえ受け入れれば、その他は交渉が可能」との説得を受け入れ、翌22日、その報告も兼ねた閣議でGHQ草案を基礎に改憲をする姿勢を表明します。

 …which in turn elevates the sponsorship well above party or other local political considerations.

「我々の考えは、マッカーサーの指示を受けることで、日本の政党や日本政府の意見などよりも上位となる」と言いたいのでしょう。




 日本の改憲草案は、完全に否定されます。

That the Diet would receive the instrument in the manner you suggest if it bear the stamp of joint approval both by the Government and the Supreme Commander is unthinkable.

…「日本政府とマッカーサー双方が承認した草案が国会に上程されるというあなた方の提案は、我われの考慮に値するものではない」…。
 …この一文で、今日の憲法の概要が決したと言っても過言ではありません。

もう一つのダメ押しは目の上のタンコブである極東委員会について、その名は出さずに触れた部分です。

 …it is quite possible that a constitution might be forced upon Japan from the outside which would render the term ‘drastic’, as used by you in your letter to describe the document submitted by me on the 13th, far too moderate a term with which to describe such new constitution…

 外部から憲法が押し付けられる可能性があるという警告です。…極東委員会のことや、もっと具体的には日本の領土に野心のあるソ連を筆頭に、反日感情の強い豪州なども念頭に置いてのことでしょう。事実、天皇をいわゆる「戦犯」として裁くことを主張しているのは、こうした国々です。
…「あなた方は13日の草案を『過激』だというが、外部の押し付けてくる憲法はその程度の『過激』さではないぞ」となります。

 幣原首相の最大の関心ごとは天皇の地位でした。マッカーサーは「GHQ案を了解して、天皇の戦争犯罪を主張する極東委員会の批判を逸らすしかない」と説明します。
 
ここに至り、幣原首相個人はGHQ草案を基礎とした改憲を決断したようです。

結局、閣議は、…GHQ草案を基礎に松本国務相が正式な草案を作成するという方向に決します。この日の午後、首相は拝謁して状況を報告、天皇はその内容を承認します。

マッカーサーは「天皇を守るためには、この憲法を世界に公表して、ソ連や豪州などの天皇戦犯論を牽制しなければならない」と首相に伝え、草案受託を促しているのです。

…次の松本国務相の記録…

…余において、助手として佐藤法制局第一部長を委嘱し、速やかに翻案全部を作り翻訳のうえ、3月11日を期限として先方に交付することの了解を得たり。

…英語に「翻訳」し戻したうえ、マッカーサーに提出することを閣議が了承しました。
ここで大勢は決したと言ってよいでしょう。わが国が、GHQの作った憲法草案を基礎に新しい憲法を定めると決めたということです。この日は偶然にも、GHQが常に憂慮する極東委員会の第一回会合が開かれた日でもありました。

憲法の押し付けを嫌い、必死で防戦するもののGHQには抗えない日本政府、独自の統治政策で連合国のみならず、本国の意向さえ無視して突っ走るGHQ。結局、意図の違いこそあれ、天皇を守るという利害で一致する日本政府とGHQが、俯瞰すれば「共謀」する形で新憲法を作り上げてしまった形になっています



…新憲法が翻訳であるとわからぬように懸命に草案を推敲しています。

…1964年、憲法調査会が報告書を公表していますが、これを読んだ白洲次郎が次のような言葉を残しています。

この憲法は、占領軍によって強制されたものであると明示すべきであった。歴史上の事実を都合よくごまかしたところで何になる。後年そのごまかしが事実と信じられるような時が来れば、それはほんとに一大事であると同時に重大な罪悪であると考える。

…自身の草案は出席議員の3分の2が賛同すれば承認されますが、それを改定したければ、議員3分の2の賛同と、明治憲法にはなかった国民投票での過半数の賛成が必要という厳しい条件を課しているわけです。
占領が終了した後も、自分たちが作成した草案による憲法を簡単に変えてほしくないというGHの意図が明白です。…日本における民主主義の成熟度が低いとして、1955年までは改憲を不可能とする案も提案されていました。

 そうした利害の調整の結果、生まれたのが現在の日本国憲法です。

 …ルールというのは、単に利害調整の産物であるかもしれず、決まったルールは守る必要があるにせよ、ルールそのものは神聖なものでも、命を懸けて守るプリンシプルでもありません。「絶対のルールなど人間には生み出せない、それは神の領域だ」というのが欧米人の認識なのです。



 本書を読むと、白洲次郎の皮肉など、知的好奇心を刺激されます。

<事実>

 前回、今回の記事に書いたとおり、

東条らは天皇を守るために、東京裁判に臨み、幣原らは天皇を守るために、憲法を受け入れます。

 さて、平成25年、今、現下、このような状況に巻き込まれたら、今の日本国民は、どのように行動すると思いますか?

 あなたは、どのように行動しますか? 

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