至上命題だった、国体(天皇制)護持 その1
天皇制維持、天皇の戦争責任(アメリカ国民は、天皇処罰・・・処刑を望んでいました,ソ連やオーストラリアは、もっと露骨に処刑を望んでいました)を回避する・・・とにかく、戦争終結をめぐって、東京裁判をめぐって、為政者たちの目標(国民もそうでしょうけど)は、この1点でした。
<ポツダム宣言>
5. 吾等の条件は左(以下)の如し
吾等は右条件より離脱することなかるべし 右に代る条件存在せず吾等は遅延を認むるを得ず
6.吾等は無責任なる軍国主義が世界より駆逐せらるるに至る迄は平和、安全及正義の新秩序が生じ得ざることを主張するものなるを以て日本国国民を欺瞞し之をして世界征服の挙に出ずるの過誤を犯さしめたる者の権力及勢力は永久に除去せられざるべからず
7.右の如き新秩序が建設せられ且日本国の戦争遂行能力が破砕せられたることの確証あるに至る迄は聯合国の指定すべき日本国領域内の諸地点は吾等の茲に指示する基本的目的の達成を確保する為占領せらるべし
8.「カイロ」宣言の条項は履行せらるべく又日本国の主権は本州、北海道、九州及四国並に吾等の決定する諸小島に局限せらるべし
9.日本国軍隊は完全に武装を解除せられたる後各自の家庭に復帰し平和的且生産的の生活を営むの機会を得しめらるべし
10.吾等は日本人を民族として奴隷化せんとし又は国民として滅亡せしめんとするの意図を有するものに非ざるも吾等の俘虜を虐待せる者を含む一切の戦争犯罪人に対しては厳重なる処罰を加へらるべし 日本国政府は日本国国民の間に於ける民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障礙を除去すべし 言論、宗教及思想の自由並に基本的人権の尊重は確立せらるべし
11.日本国は其の経済を支持し且公正なる実物賠償の取立を可能ならしむるが如き産業を維持することを許さるべし 但し日本国をして戦争の為再軍備を為すことを得しむるが如き産業は此の限に在らず 右目的の為原料の入手(其の支配とは之を区別す)を許可さるべし 日本国は将来世界貿易関係への参加を許さるべし
12.前記諸目的が達成せられ且日本国国民の自由に表明せる意思に従ひ平和的傾向を有し且責任ある政府が樹立せらるるに於ては聯合国の占領軍は直に日本国より撤収せらるべし
13.吾等は日本国政府が直に全日本国軍隊の無条件降伏を宣言し且右行動に於ける同政府の誠意に付適当且充分なる保障を提供せんことを同政府に対し要求す 右以外の日本国の選択は迅速且完全なる壊滅あるのみとす
余談ですが、日本はこのとおり、条件付で降伏をしており、「無条件降伏」したのではありません。「無条件降伏」は軍隊についてのみです。ドイツは政府が崩壊していたので、無条件降伏でした。
なお、高校の教科書記述「無条件降伏」をめぐり、山川を始め、教科書会社とやり取りし、その記述を削除してもらいました。
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ポツダム宣言は、「無条件降伏」ではない
この受諾をめぐり、内閣は、右往左往です。最初は黙殺し、その間に、原爆が落とされ、ソ連が参戦し、天皇のご聖断があり、「天皇制維持」を暗黙の了解として含まれていることを前提に受け入れを決定します。
日本は、「国体(天皇制)護持」が保障されていないので、連合国に問い合わせます。連合国の回答は、昭和20年8月11日、バーンズ米国務長官による、
「日本の政治形態は、ポツダム宣言に従い日本国民の自由に表明せる意思により確立するものとする」
「降伏の時より、天皇及び日本国政府の国家統治の権限は降伏条項の実施の為其の必要と認むる処置を執る連合軍最高司令官に"subject to"する」
だけでした。天皇制維持、天皇の戦争責任回避について、あいまいなままです。subject toは隷属なのか、従うことなのか、解釈でもめましたが、最終的に受け入れを決定します(8月14日)。
本当は、ポツダム宣言に「天皇制維持」は書かれていたのです。しかし、それを書くと、日本はすぐに降伏すると考え、アメリカ大統領トルーマンはわざとその条文を削除しました。理由は、日本が降伏すると、原爆が落とせなくなるからです。日本にわざと受諾を遅らせようと画策したのです。
連合国では、天皇に戦争責任をとらせる考え方が、圧倒的でした。
ウイキペディア「昭和天皇の戦争責任論」
アメリカでは1945年6月29日に行われた世論調査によれば、天皇を処刑するべきとする意見が33%、裁判にかけるべきとする意見が17%、終身刑とすべきとする意見が11%であった。
ただし、連合国側では、天皇制維持は、占領政策において、必要だとの考えですでに一致していました(日本側は知りません)。
以下の引用は『戦争裁判余録』(豊田隈雄著 泰生社 1986)です。ページは、前後引用するので、載せません。
天皇、天皇制問題は連合国側の占領政策にとっても、重大案件だった。連合国内部では天皇制の存否について激しい論争が繰返されたが、元駐日大使ジョセフ・A・クルー氏を中心とする知日親日派の努力により、英豪中ソ比等の反対を押し切って、一応天皇制存続の方針は決定を見たのであった。
これにともない、極東諮問委員会(のち極東委員会)の天皇不起訴の方針はマッカーサーの日本上陸以前から決定されていた。マッカーサーも勿論この方針を承知していたのであるが、日本側はこの方針を知る由もない。
天皇自身は、退位、責任を取っての処刑すら、覚悟していました。

マッカーサー總司令官は二十年九月二十七日、天皇がご訪問になったとき「戦争遂行のことはすべて私の責任であり、私の身は連合国にお委せするが、国民を助けてもらいたい」と述べられたお言葉とお人柄に深い感銘を受けた。
欧米では敗戦となると元首は国外等へ亡命、逃亡することが近代の常識であったから、マッカーサーは一層の感動を覚えたのであろう。
以後、マッカーサーはキーナン首席検事らと緊密に連絡しながら、豪中ソ等の検察団、裁判官のみならず、アメリカ本国、在日總司令部内の政治がらみの天皇訴追要求をも却け、くぐりぬけしながら裁判終了まで持って行くに至る。
このように皇位の継続は占領前から米国は保証していたわけだが、米国内にも天皇の責任を追求せよとの強い意見があったためか、駐留軍が進んで「天皇護持」を公表するようなことはなく、したがって日本側にとって、天皇問題は曖昧模糊としたものであった。
かかる情勢のなか、最初に天皇制存続の米国の方針を確認したのは恐らく米内光政海軍大臣であった。
元帥の部屋を出るとき、米内は思いきったようすでたずねた。「ひとつうかがいたいが、天皇は、ご退位にならねばならないことになっていますか」
この率直な質問に、マッカーサー元帥は面くらったような顔をした。
「講和がうまくゆき、連合軍の進駐がきわめて順調に行われたのは、天皇の協力によるところが大きい、と私は思っている。その天皇が退位しなければならないとは、私は考えていない。それは、日本国民が決定すべき問題でしょう」
その言葉を耳にしたとき、米内は、終戦いらい頭上をおおっていた暗雲が、一時にはれたような明るい気持ちになったという。
<東京裁判>
ポツダム宣言に基づいて、戦争責任が追及されます。日本側は、いかにして、「天皇の責任」を回避すべきか、模索します。結論は、「東条以下に責任を押し付ける」方針でした。
フェラー准将、天皇の裁判対策を指示
終戦の年が明けて東京裁判の開始が近づくにつれ、總司令部は天皇問題対策に腐心し、米内元大将等を通じて積極的にその対策を示唆するようになる。二復の記録によれば、總司令部のフェラー准将は米内元大将に天皇を裁判から守る方法にまで触れて話し、その後も念を押して「これはマッカーサーの本国における立場にも影響するのだ」と云っている。
フェラー准将の米内大将に対する話
二一・三・六(水)……二復記録
自分は天皇崇拝者ではない隨て十五年二十年先日本に天皇制があろうがあるまいが又天皇個人としてどうなって居られようが関心は持たない。然し連合軍の占領について天皇が最善の協力者である事を認めて居る現情に於て占領が継続する間は天皇制も引続き存続すべきであると思ふ
所が困った事には連合側の或国に於ては天皇でも戦犯者として処罰すべしとの主張非常に強く殊に「ソ(ソ連)」は其の国策たる全世界の共産主義化の完遂を企図して居る。隨て日本の天皇制とMCの存在とが大きな邪魔者になって居る。
加ふるに米に於ても非亜米利加式思想が当局の相当上の方にも勢力を持つに至って天皇を戦犯者として挙ぐべきだとの主張が相当強い
右に対する対策としては天皇が何等の罪のないことを日本人側から立証して呉れることが最も好都合である。其の為には近々開始される裁判が最善の機会と思ふ。殊に其の裁判に於いて東條に全責任を負担せしめる様にすることだ
即ち東條に次のことを言はせて貰い度い。「開戦前の御前会議に於て仮令陛下が対米戦争に反対せられても自分は強引に戦争迄持って行く腹を既に決めて居た」と
右に対し米内大将
全く同感です
東條(元首相)と嶋田(元海相)に全責任をとらすことが陛下を無罪にする為の最善の方法と思ひます。而して嶋田に関する限り全責任をとる覚悟で居ることは自分は確信して居る。
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全責任を、東条以下が負うようにすること、そして、東条自身も、そうなるように、自覚して、東京裁判に臨んだのです。
キーナン検事
それでは真珠湾攻撃の前夜に、天皇は戦争を欲しておらず、かつこれを回避するごとくあらゆる努力をしておられたと、あなたは確信をもって云えるか。
岡田啓介証人
それは確信をもって云える。天皇陛下は負けるとか勝つかなど考えておられないので(あって)戦そのものがおいやなのです。
キーナン
しかしながら陛下の勢力を以てしても、これを回避できなかったわけか。
岡田
その通りです。
キーナンが岡田証人から、天皇に責任がなかったという証言を引き出そうとしているのを察したウエッブ裁判長は「ただいまの質問と本裁判の関連は理解できない。どう思います。首席検事」と割り込む。
キーナン
関連性はある。被告らは共同謀議をして国民を欺き、開戦の大詔を発布することによって、陛下が戦争を支持しておられたと国民に信じこませた。それに伴って国際法に違反を来したのだと検事側はいうのである。
ウエッブ
そういうことを聞くのはいまが初めてである。検事側か提出している証拠に反することを云ったのは、この永い裁判で初めてのことである。
キーナン
首席検事として法廷の注意を喚起したい。今被告席にすわっている被告は、検事側が、実際戦争に対する責任を持っていると考える人々である。もしほかに戦争に責任ある人がいるなら、やはり被告席に列しているはずである。

キーナン
(開戦と天皇と東條の問題に移り)あなたはすでに法廷に対し、日本の天皇は平和を愛する……といっていることは正しいか。
東條
もちろん正しい。
キーナン
また日本臣民たる者は何人たるも天皇の命令に従わないということは考えられないといいました。それは正しいか。
東條
それは私の国民としての感情を申しあげた。天皇の責任とは別の問題です。
キーナン
戦争をおこなえというのは裕仁天皇の意思であったか。
東條
意思と反したかもしれません、か、とにかく私の進言、統帥部その他の進言によってしぶしぶ御同意になったのが事実です。
而して平和愛好の御精神が……明確になっておりますのは、昭和十六年十二月八日の御詔勅のうちに明確にその文句が加えられております。しかもそれは陛下の御希望によって政府の責任において入れた言葉です。それは、まことに巳むを得ざるものであり、朕の意思にあらずという意味の御言葉であります。
東條被告が述べた開戦の詔書(筆者注:天皇)の言葉は
……而して列國との交誼(こうぎ)を篤くし、萬邦共栄の楽を偕にするは、之亦帝國が常に國交の要義と為す所なり 今や不幸にして米英両國と晋端(きんたん)を開くに至る洵(まこと)に已むを得ざるものあり豈(あに)朕が志なむや……
とあるのを指す。
東條被告は戦争の責任が統帥部と政府にあったことを明瞭に挙げ、平和を望まれる陛下の言葉を詔書という全き証拠によって証言し、法廷における天皇問題論争に終止符を打ったのである。
天皇制を守る、天皇の戦争責任を回避する、天皇を処罰(最悪処刑)させない、これが、当時、日本人為政者だった人たちが、一番優先した課題でした。
東条たちは、戦争責任を背負って、処刑されます。命で、天皇に責任が及ぶのを回避したのです。
命で償う以上に、責任を取る方法が、あるのでしょうか。
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日本は、戦争を命でつぐなった これ以上、何ができるというのか
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だから、当時の国民は、圧倒的多数で、戦犯を、日本の法律においては戦犯としない署名を、法律を通したのです。
赤穂浪士のお墓には、未だに線香の煙が途絶えません。テロと言えばテロですが、日本で、仇を取った例は、2例しかありません。秀吉と、赤穂浪士だけです。「いざ鎌倉」が武士道とされたのですが、親分の仇など、武士は取ったことがないのです。赤穂浪士は、命で償いました。
まったく架空の話ですが、今の天皇制において、終戦時の状況だったと仮定します。
さて、今の日本国民は、今の天皇に戦争責任を負わせるでしょうか?天皇制放棄や、天皇退位や、天皇処刑を、望むのでしょうか。
日本国憲法
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
天皇が署名捺印「御名御璽」をしなければ、法律は公布できません。もちろん、この国事行為は、「内閣の助言
と承認」によって行われるもので、天皇の意思は入らないとされていますが・・・されていますが・・・
内閣・・・安倍首相以下・・・が「責任を取る」「裁判に臨む」「処刑もいとわない」「天皇に責任は負わせない」という姿勢で東京裁判に臨むとします。
これを、あなたは、どのように受け止めますか?
<天皇無答責>
大日本帝国憲法は、天皇に責任はない「天皇無答責」が明記されています。
大日本帝国憲法一章
第1条 大日本帝国は万世一系の天皇之を統治す
第2条 皇位は皇室典範の定むる所に依り皇男子孫之を継承す
第3条 天皇は神聖にして侵すへからす
第4条 天皇は国の元首にして統治権を総攬し此の憲法の条規に依り之を行ふ
第3条は、「君主無答責の規定」といって(当時、君主制を採用している、各国の考え方)、天皇は政治的・法的に責任を問われない、天皇を輔弼する国務大臣が負うと、はっきりと、うたわれているからです。「君臨すれども統治せず」とはこのことです。
左翼は、「天皇正反対」「天皇責任論」ですから、これを認めませんが、実質上、「君主無答責の規定」だったのは、事実なのです。
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『天皇制(皇室典範その他の後続関連法に関する調査を含む)に関する基礎的資料』
衆議院 憲法調査会事務局 5・6ページ
天皇制・・・世界最古の制度です。
PS
マッカーサーと、天皇の会談で、何が話されたか、本人たちは、述べていません。
http://www.newsp.biz/Amazon/_27351.html
@zittaikokuhaku @miyud経常収支が赤字でも黒字でも国内の経済状況には、なんら関連性はありません。経済好調なアメリカは赤字だし、デフレ下の日本は黒字でした。詳細は下記書籍 《高校生からわかる、ミクロマクロ経済学》 http://t.co/Y5Aam6Y593
ps
池田信夫某なる、デマゴーグが、当ブログを取り上げて批判していますが、貨幣数量説など、こちらが述べてもいないことで、またデマを流しています。
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貨幣数量説は死んだ
そもそも、貨幣数量説など、誰も信じていないことは、とっくに述べています。
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日銀理論 2011-06-24
この、池田信夫某なるデマゴーグについては、改めて扱います(予定稿詰まっているので、12月中旬以降になります)。本当に池田信夫某の言っていることは、害虫言説です。ウルトラマンに退治してもらわなければなりません。
http://book.akahoshitakuya.com/b/4309246281
Kimiyasu Igarashi
確かによい。GDPの三面等価について1章を割き解説したあと、貿易・国債に関する実際に触れ、最後はアベノミクスも。
theme : 政治・経済・時事問題
genre : 政治・経済