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現実否定・

ご連絡

タケシタシンジ(とお読みするのでしょうか)さんから、当記事にメールを頂きましたが、文字化けしていて、回答できません。すみませんが、コメント欄に、連絡いただけますでしょうか。

<現実は否定>

すいません。池田信夫ネタです。


http://blogos.com/article/67011/?axis=g:0

池田信夫 2013年07月25日 16:12

量的緩和で実質金利は下がるのか

細かい話で恐縮だが、きのう山崎元氏からコメントをいただいたので、少し補足しておく。問題は彼のダイヤモンドオンラインのこういう記述だ(テクニカル)。

アベノミクスの中核である金融緩和政策は、(1)期待実質金利を引き下げることによって、(2)円安と資産価格の上昇に働きかけ、これらの効果をもって(3)投資と消費を喚起して、(4)景気回復と雇用の改善につなげて、その後に(5)賃金も上がってインフレ予想が定着する、という波及経路で効果をもたらす。

まず「期待実質金利」という言葉は経済学にないが、これは実質金利(名目金利-予想インフレ率)のことだろう。量的緩和で、実質金利は下がるのだろうか。ケインズも述べたように、実質金利は均衡状態では資本の限界効率(資本収益率)で決まるので、中央銀行が動かすことはできない。

ただ不均衡状態では、中銀が実質金利を操作できる場合がある。その一つが自然利子率がマイナスになって名目金利がゼロに貼りつく流動性の罠である。この場合、中銀がインフレ予想を起こすことができれば実質金利は下がるが、ゼロ金利では現金と短期債券が完全代替的になるため、日銀がいくら量的緩和をしてもインフレは起こらず、したがってインフレ予想も起こらない。これが2000年代の量的緩和で証明された事実である。

したがって山崎氏のいう「期待実質金利」は長期金利のことだろうが、これはゼロではないので均衡に近いと思われ、黒田総裁も認めたように日銀は操作できない。異次元緩和では、逆に長期金利は上がってしまった。

いずれにせよ中銀が操作できるのは名目金利だけで、実質金利(自然利子率)は実体経済で決まるというのが、現代マクロ経済学の標準的な理解である。現状ではBEIも下がっており、日銀が「金融抑圧」で長期金利の上昇を抑えているので、むしろ(リスクプレミアムを加えた)実質金利は上がっていると考えたほうがいいのではないか




<まず、簡単な方>


いずれにせよ中銀が操作できるのは名目金利だけで、実質金利(自然利子率)は実体経済で決まるというのが、現代マクロ経済学の標準的な理解である。現状ではBEIも下がっており、日銀が「金融抑圧」で長期金利の上昇を抑えているので、むしろ(リスクプレミアムを加えた)実質金利は上がっていると考えたほうがいいのではないか。



事実は、実質金利は、マイナスになっているようです。

読売H24.6.20「黒田総裁 物価上昇に自信」
 企業や家計の活動に大きな影響を与えるのは実質金利とされる。黒田総裁は、「実質金利は一部ではマイナスになっている」とも述べた。「量的・質的緩和」が、予想物価上昇率を引き上げているとの見方だ。


 こんな話は、理論的にも示されています。現在では、スタンダードです。

浅田統一郎『マクロ経済学基礎講義 第2版』中央経済社H17
P89・154
…人々の物価予想に働きかけることによって、流動性のワナのもとでも金融政策が有効になり得る、という理論がクルーグマンによって提唱されている。…中央銀行が、伝統的な金融政策にこだわることなく金融政策を運営すると宣言し…実質利子率はマイナスになり、投資は刺激される。



<難しい方>


したがって山崎氏のいう「期待実質金利」は長期金利のことだろうが、これはゼロではないので均衡に近いと思われ、黒田総裁も認めたように日銀は操作できない。異次元緩和では、逆に長期金利は上がってしまった



 さて、「長期金利は日銀は操作できない」についてです。

①日銀は、短期金利(コール市場 オーバーナイトもの)を「直接」操作できます。

 短期金利(コール市場 オーバーナイトもの)についてです。

 銀行の金庫には、カネがありません。預かった預金は、貸し出しや、投資に使われます。だから、金庫は空っぽです。
 しかし、銀行は、口座開設者の、電気代振込みだとか、企業の決済だとかで、カネを別な銀行に振り込まなければなりません。

 で、この時、その金融機関では「足りないカネ」を、他の金融機関から融資を受けます。

それが「呼べば答えるコール市場で、オーバーナイト(一夜限りの、担保なしの貸し借り)」なのです。

 実際には、銀行間で、資金のやり取りは毎日行われています。このときの金利が「短期金利」です。

 で、日銀は、政策金利(短期金利)を、2013年5月現在、0.3%にしています。

 実際は、銀行間で、これより低いレートで貸し出されており、どこの金融機関も融通してくれなくなったとき(懐かしいですが、1997年北海道拓殖銀行の倒産は、これが原因です)、日銀が、最後の貸し手として、0.3%で貸し出すわけです。

 だから、0.3%は、「コール市場で、オーバーナイト」の上限金利なのです。ですから「短期金利」は、日銀が直接コントロールできます。

②日銀は、長期金利を、直接にコントロールできない?

 長期金利の目安は、10年物国債です。国債は市場で自由に売買されます。

金利上昇とは、どういうことか、見てみましょう。

国債価格下落=金利上昇

 上の図で、額面100万円の国債が発売されたとします。この国債には、「○○%の利率をつけます」と、財務省がアナウンスします。

 
 証券会社は、その利率と、市場動向を考慮し、応札価格(買ってもよい価格)を決め、日銀ネットに数字を打ち込みます。

 「表面利率20%・100億円(表面価格)」の国債は、1年後に利息を含め、「120億円」返ってきます。この1年後に「120億円」返ってくる国債を、いくらで買うかを、オークションするわけです。

 この「120億円返ってくる国債」を、「110億円(取引価格)」で落札すると、実際の利率は「9.09%=利息10億円」となります。

 この取引価格が高くなると、金利は低くなります。つまり、国債の人気が高いと、取引価格は高くなり、実際の利率は低くなるということになります。

https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/data/jp10yt.html
長期金利 推移

10年もの金利は赤で示されています。2013年 08月 01日 終値: 0.795%です。


 このように、日銀は、直接「長期金利」をコントロールできないのですが、実際には、「短期金利操作」で、「長期金利」に影響を及ぼすことができます。

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P121 長期金利と短期金利

中央銀行が対策の対象とするのは銀行間の取引市場である短期金利です。つまり、日銀が行う政策運営の基本は、公開市場操作や公定歩合による貸し出しによって市中銀行の手持ち現金(流動性ポジション)に働きかけ、そのことによってインターバンク市場に代表される短期金融市場の需給と金利に影響を及ぼすことをめざしているのです。

一方、…現在の(実現している)短期金利と将来の(予想)短期金利と平均値であるという側面があります。

というのはもしも長期金利が短期金利よりも高かったとしましょう。この場合投資家は短期で資金を運用し、満期が到来するたびに同じ借り入れを何度も更新すれば、結局、短期金利で運用する方が長期金利で運用するよりも有利になるはずです。そこで資金に対する需要は長期金利資金から短期資金へとシフトします。このような調整(これを裁定と呼んでいます)が続けば早晩短期金利は上昇し、長期金利は低下をはじめるはずです。

…反対に短期金利が長期金利よりも高かったとすれば、今度は資金需要が短期金利から長期資金へとシフトを起こすはずです。こうしたメカニズムが作用する結果、長期金利と短期金利は互いに接近し、最終的に両者が市場参加者の金利予想からなる、長短金利の関係に符合するように裁定が行き着くものと考えられます。

このような裁定メカニズムが作用するのを受けて、中央銀行は必要に応じて国債に代表される公開市場に介入して、債券の売買に働きかけていけば、長期金融市場の需給にある程度は影響を与えることは可能だともいえましょう。

また中央銀行は、介入を通じて当局者の強い意志を示すことで、結果として市場関係者の行動や予想に少なからず影響を及ぼすことが考えられます。(アナウンスメント効果)

この点に関する政策の有効性の判断は、日銀に対するインフレターゲッティングの導入、国債管理政策への要求などに繋がっていることが理解できるはずです。





したがって山崎氏のいう「期待実質金利」は長期金利のことだろうが、これはゼロではないので均衡に近いと思われ、黒田総裁も認めたように日銀は操作できない。異次元緩和では、逆に長期金利は上がってしまった。

 ↓
 これは、事実としては、違うのです。

http://d.hatena.ne.jp/Yasuyuki-Iida/20130728#p1

飯田康之 economics]消費増税と長期金利

消費増税を3%で断行か,引き上げ幅を細かく刻むか,先送りかがいよいよ当面の経済政策の分水嶺になっている.以前から書いているように,今回の話題とはちょっと別の観点から僕は刻む派だ.

・・・消費増税を先送りにすると追加措置なしなら長期金利は上がるよ.断行すれば...まぁ多少は下がるかも(現時点で低すぎて低下余地に乏しいが).でもそれは増税が必要だという議論には全然つながらないんだ.長期金利と短期金利の関係を考えなきゃ.

不確実性・手数料なしなら今後5年間短期金利が0なら5年モノの金利は0になる(もちろん現実はこんな理想状態ではないので,流動性プレミア分長期金利は高くなる傾向).

長期金利は将来短期金利がどうなるかで決まる.短期金利はコントロール可能*1.すると,現在の状況での長期金利は「中央銀行がいつごろ"そろそろ短期金利上げるぞ"と決断するか」その時期(への予想)にかかっている.

(*1:日銀の人も偉い経済学者の人たちも「日本銀行がコントロールできるのは短期金利だけだ!」って繰り返してたんだからこれは前提でよいよね?)

現在の日本・日銀の政策姿勢において,それは「いつ2%インフレを達成するかの予想」と同じ事だ.

増税を先送りにすれば,近い将来に2%のインフレ率を達成し,ゼロ金利解除を行う条件が整う可能性は高くなるだろう.これを見越して長期金利は上昇する.一方,増税は景気回復の芽を摘むのは間違いない.2%インフレ達成の時期が遠のくのだから長期金利には下押し圧力になる.*2.

(*2:ちなみに,「消費増税は経済成長に影響しない」的な話はかならず注意して読むこと.長期的(将来のいつの日にか到達する定常状態)での成長に影響しないという話をしているだけで,数年の景気に影響しないとは言っていないモノが多い(そりゃそうだ))


消費増税が先送りされたら必ず金利は上がる.米国を見ていてもわかるようにそれはかなり景気がよくなってからの話だ.要は本格的に金融引き締めが必要になり,それが実際の政策スケジュールに上るようになってからの話.

もしこの金利上昇を避けたければ,日本銀行は,現在の異次元緩和の解除条件に雇用や名目成長率などを加えて(要は解除条件を厳しくして),それにコミットすればよい.ゼロ金利が長期化するならその将来予想で決まる長期金利は上がりにくくなる.

財政破綻懸念で長期金利上昇って言う人がいるけど,それはちがう.日本の国債危機は(それがあるとしても)文字通りのデフォルトの形はとらない*3.現状で起きうる金利上昇は短期金利動向の将来予想の変化によるものだ.だから問題ないとは言わないけど,問題の構造を理解しないで騒いでいる人(新聞記者とか……)がどうも多いようなので.

(*3:だからハイパー論が出てきたわけで)



<PS>

 迷走につぐ迷走で、業績不振なのだから、責任を取るのは当然です。一つの時代(モデル)の終わりです。

日経 H25.8.27
日経 H25.8.27.jpg

PS

北海道の求人の様子です。やはり、雇用のミスマッチが生じています。

北海道新聞H25.8.30
北海道求人


PS2

 NAFTA(自由貿易協定)後の、メキシコの様子です。

北海道新聞H25.8.30
メキシコ 経済成長

農業は200万人減少し、車生産は、20年前の3倍で、世界第8位の生産国に・・・GDPは2倍に・・・

これが、貿易の利益「比較生産費」です。低生産性職→高生産性職に移動します。メキシコは、この20年(NAFTA)で、確実に豊かになったことが分かります。

農業従事者にも、高生産性の職が提供されたことを示します。

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