アベノミクスを、ちゃんと理論的に説明してみよう・・その1
下記の本は、大学の先生が書かれたものです。でも、例えば、財政政策の効果(明大 飯田先生)について、専門的に書かれているので、経済学を知らない方には、難しいです。
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「安倍新政権でもインフレにはならない」荻原博子が断言
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経済学的思考のすすめ
経済学的思考のすすめ (筑摩選書)
(2011/01/15)
岩田 規久男
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P27
日本では、経済学を学んだことのないビジネスマンや新聞記者はもちろん、文芸作家であれ、漫画家であれ、医者であれ、テレビのニュースーキャスターであれ、お笑いタレントであれ、誰もが円高や不況やデフレなどの原因、さらに日本の財政破綻などについて、経済学の専門家顔負けで語る。まさに、シロウト経済学花盛りである。
しかも、シロウトが書いた経済本は経済学者の書いたものより分かりやすいらしく、よく売れる。
確かに、「太陽は地球の周りを回転している」という説明(つまり、シロウト経済学)のほうが、人々の観察と一致しており、「いや、実は地球が太陽の周りを回転している」(つまり、経済学者の議論)という説明よりもはるかに分かりやすいであろう。
しかし、第2章で示すように、シロウト経済学にはでたらめが多い。それらがよく売れるのだから、それだけ、日本国民の中にでたらめを信じている人が多いことになる。これは捨てて置けない状況である。
これで、日本の経済があらぬ方向に引っ張られる(政治的に)としたら、それは私としても同じ「日本丸」に乗っかっているので、困ります。日本で生きている以上、日本円で給料をもらい、日本円で消費活動をし、ドル資産など、持てないからです。
そりゃあ、少しのおカネ(『十万~最大限百万単位』)なら、ドル資産に移すことができますが、家や車は、ドル資産にできませんし、毎日の日常生活必需品はドルで購入できません。
困るのは、素人論だけではなく、自称専門家「経済学者」の本でも、「理論」に基づいてて批判していない(できないのでしょうが)ことです。
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「バブルを煽る“アホノミクス”は0点」と同志社大教授
「アベノミクス」を「アホノミクス」とばっさりと切り捨て、その採点を0点とするのが、同志社大学大学院ビジネス研究科の教授・浜矩子さん。
浜矩子「アベノミクス」の真相
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円安は危険とか、国債がバブルだとか、暴落の定義を示さないとか、銀行の自己資本が毀損するとか(金利上昇によるメリットもあります)、理論ではなく、想像の域です。
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アベノミクス 関連本特集
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アベノミクスに迫る
そこで、きちんとアベノミクスを、理論的に説明しようと思います。
本来、このような「短期」の話で、アベノミクスがどうのこうの、述べたくはありません。少なくとも、1年、2年の経過観察が必要です。
2年後に2%の物価上昇目標ですよ。しかも、財政出動は、1年間で支出されるカネですよ。
貿易についても、「Jカーブ効果」というものがあり、円安効果はすぐに出なく、半年のタイムラグはあります。
それを何で、わずか半年の株価の動きで程度の「今」で評論、検証しなければならないのか、全く理解できません。本当に、デマを流す、自称エコノミストの多いこと多いこと。
また、自民党側も、「短期」の評価を誇示するものだから(まあ、これは選挙上、政治上の不可避な要請でしょうけど)、ますます、批判側も「適当なこと」を言うわけです。
本来的には、長期で判断する話であることを、まず先にお断りしておきます。
経済学の教科書には、とっくに掲載されている話です)。
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浜矩子教授はアベノミクスの本質を知らない
マネックス証券 チーフ・エコノミスト村上尚己氏に聞く
アベノミクスの本質は、まず金融緩和策強化で脱デフレを目指すことを「第一の矢」と適切に定めた政策パッケージということ。だから、アベノミクスは、標準的な経済学の視点から評価できる。思い込みだけで、経済事象を語る評論家の手に余るテーマと言えるのではないか。
ですが、難しいですよ。覚悟してくださいね。・・・ただし、経済学的には初歩も初歩、入り口の入り口です。
<IS-LM分析>
経済学の学部レベル、IS-LMモデルで、アベノミクスを説明します。
1本目の矢 金融政策
2本目の矢 財政政策
これを、いっぺんに説明するのが、上記IS-LMモデルです。
実教出版『2012 新政治・経済資料』p191
ケインズは,国民所得決定の仕組みを解明し,有効需要の不足に,不況下での失業発生の原因があるとした。不況を克服して完全雇用を達成するためには,新しい投資需要が必要であり,そのために国家が経済に介入(財政・金融にわたる政策)するべきであるとした。
これは、基本モデルで、欠陥も抱えています(価格は変化しない、価格は所与)。
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マクロ経済学のミクロ的基礎づけ その4/5
ですが、未だに使われているモデルですし、そもそも、最先端モデルだって、部分的にしか使用できません。完璧なモデルなどありません。
ケインズの「有効需要」の原理を,ヒックスという経済学者(ノーベル経済学賞受賞)が簡潔に示したものです。もちろん,「IS-LM分析」で,すべての経済政策を説明できるわけではありませんが,政策の全体像を見るには適した理論(モデル)です。ケインズ経済学ですから,古いモデルではありますが,実際に,内閣府でも日本のシンクタンクでも活用されています。EUでも、FRBでもです(改良モデルです)。
桑原進(内閣府)『図解マクロ経済学入門』ナツメ社2010 p156
…最新のマクロ経済学では動学的一般均衡モデル(DSGEモデル)という短期モデルと長期モデルを総合したモデルが用いられている。…しかし米国でも,政策を実行するうえでは今でも,内閣府と同様の構造を持つモデルの結果を参考にしており,必ずしも最新のモデルが信頼されているわけではない。
江口允崇(慶大)日経『やさしい経済学 財政政策の効果9』
経済学というのは,前提によって結果が全く変わる。伝統的モデルにしろ,DSGEモデルにしろ,完璧なモデルなど存在しない。有用な点と間違っている点があるので,使いようが肝心なのである。
最先端モデル(DSGE・ニューケインズモデル)など、リーマンショックには全然使えませんでした。
では、このIS曲線、LM曲線がどのように導出されるのか、まず下記をご覧ください。
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岩本康志 東大 「経済教室」日経H21.6.1 その2
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岩本康志 東大 「経済教室」日経H21.6.1 その3
で、本来は、「財政政策」+「金融政策」を組み合わせると、Y(GDP)が増えるのです。
財政政策だけではなく,金融政策を加えると,どうなるか検証してみます。

日本が財政出動すると,IS曲線は上図のようにシフトします。
Y①=C+I(r)+G①+(EX-IM)
ここで,金融政策を追加します。拡張的金融政策で,貨幣の供給=マネタリー・ベースを増やし,利子率rを下げます。

新しいLM②曲線のもとで,新しい均衡点はE②になります。このとき,GDP=Yは増加していますY②。財政政策に金融政策を組み合わせると,利子率rを上昇させることなく,GDP=Yを増加させることが可能です。
ですが、日本の場合、上記のようになっていません。「流動性のわな」と言われる状態だからです。
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岩本康志 東大 「経済教室」日経H21.6.1 その4

この状態で、金融政策(利子率下げる・量的緩和)をしても、無効です。Y(GDP)は伸びません。

難しいですが、ここまで、きっちり理解してください。
アベノミクスは、この「流動性の罠」の下で、金融政策(LM曲線)+財政政策(IS曲線)を動かして、Y(GDP)を増大させる政策なので、ここまで理解したあとでないと、説明できません。
次回は、いよいよ「アベノミクス」の本丸です。
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