小さな政府論

<小さな政府論>

 原則的に、効率よい政府(出来るだけ小さな政府)というのは、経済学的に支持します。政府は市場に比べて、効率が悪いからです。

地方自治法第1編第2条第14項

「 地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」

同15項

「地方公共団体は、常にその組織および運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めて、その規模の適正化を図らなければならない」



 一方、共産主義は、政府の力を限りなく大きくし(究極の大きな政府) ようというものです。国家が需要と供給量を決めます(例えば戦車とジャガイモ・肉)。

 戦車をたくさん作る→その分の労働力を国内で配分する→ジャガイモ生産しても、輸送力がない→国民は少ないジャガイモを目指して並ぶ・・・少ない供給量の肉に並ぶ・・・

 こんなことが行われて、共産主義は崩壊しました。

 一方、資本主義も、弱肉強食型資本主義から、修正を経て、政府が補完する福祉国家へと変貌しました。

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小さな政府論の蹉跌(さてつ) その1


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小さな政府論の蹉跌(さてつ) その2


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小さな政府論の蹉跌(さてつ) その3


このような歴史があるにもかかわらず、狂信的小さな政府論者は、むちゃくちゃなことを言います。

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小さな政府を語ろう


「大きな政府は国を滅ぼす」と言って、395年~1453年のビザンツ帝国の例を出して、「大きな政府になったので国は崩壊した」と言います。
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大きな政府は國を滅ぼす


 あるいは、「無政府社会(小さな政府の究極)」は可能だといって、ソマリアを例に出して、「ほらどうだ!」と言います。
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無政府社會は可能だ

厳密には、ソマリアと、ソマリア内のソマリランドは別ですが・・

 なんだか、もう、ついていけません。ソマリアを出して、「可能だ」と言われても…そりゃ可能は、可能でしょうが、無秩序(部族による秩序はあるらしいですが)地帯で、人(内国人・外国人)が住めるか?です。

 そもそも、そんなに、「小さな政府」が経済的にいいのなら、「小さな政府の方が、経済成長する」とか、「小さな政府の方が、一人当たりGDPは大きくなる」ということを、実証しなければいけません。

 でも、そんなデータはどこにもありません。というか、「小さな政府の方が経済的には優れている」など、事実上存在しないからです。

 そりゃ、「最小限の費用で、最大限の効率化=コスト・バリュー」の考え方はあり、ミクロでは企業では当たり前、地方自治体でも取り組んでいます。

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究極の図書館革命や!佐賀・武雄市図書館、民間提携で利用者5倍


この武雄市は、市立病院の民営化にも踏み切り、結果的には大成功です。

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視察報告Part2 入院患者数3倍・救急受入数12倍・手術件数8倍・新規患者数4倍をもたらした市民病院民営化!


 この市立病院の民営化を巡っては、地元医師会をはじめ、「地域医療が崩壊する」と反対運動をし、出直し市長選挙さえ行いました。

 しかし、結果的に、民営化で地域医療が崩壊することはなかったのです。

 さて、このように「民営化」は成功しますが、では、武雄市の予算は、減るのでしょうか?


https://www.city.takeo.lg.jp/shisei/yosan/

武雄市 歳出額


 別に減ったとは言えないことが分かります。つまり、目指しているのは「効率化」で、「小さな政府」ではないのです。

 武雄市の例で、説明しましたが、どこか、予算を減らし続けている町村がありましたら、教えてください(東京都は減らしています)。夕張市などは例外です。

地方財政白書平成25年度版
地方自治体 歳出 推移 


 では、マクロではどうでしょうか。「小さな政府の方が経済成長する」「小さな政府の方が1人当たりGDPは大きい」を検証しましょう。

(1)まず、「小さな政府の方が経済成長する」ですが、そんな相関は、全くありません。

小さな政府かどうかは、租税・社会保障負担率を使用します。

http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/238_large.gif
国民負担率 2010年 oecd


経済成長率は、リーマンショックまでの10年間の平均を使用します。リーマンショックのあとは、皆さんご存知のように、ガタガタで信用できないので、除きます。

OECD諸国のGDP成長率
http://search.yahoo.co.jp/search?p=oecd+%E6%88%90%E9%95%B7%E7%8E%87&tid=top_ga1_sa&ei=UTF-8&pstart=1&fr=top_ga1_sa&b=1


 で、両者をプロットすると、このようになります。

大きな政府 小さな政府 負担率 成長率


 全く相関はありません。r二乗=0.0009ですから、ほぼゼロ、無視できます。

 つまり、「小さな政府だから成長する、大きな政府は成長しない」ということは、現実には全くなく、「経済成長率と、政府の大小は関係ない」のです。

 逆に言えば、「大きな政府だから成長する」も言えません。

(2)次に、「小さな政府の方が1人当たりGDPは大きくなるはず(効率的だから)」についてです。

1人当たりGDP2010 名目 ドル
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h22/sankou/pdf/zuhyo.pdf#search='OECD+1%E4%BA%BA%E5%BD%93%E3%81%9F%E3%82%8AGDP'
 

 で、両者をプロットすると、恐ろしいことに「国民負担率が大きくなる(大きな政府)方が、1人当たりGDPも多い」ということになりました。

大きな政府 小さな政府 負担率 1人当たり名目GDP


 ルクセンブルクが突出して大きい値ですが、この国を除いても、相関はあります。
もともとの係数は、r二乗=0.2106です。

 それにしても、ルクセンブルクの10万ドル超えって・・・・いくら金融に特化しているからと言っても、ちょっとすごすぎませんか?
 といって、ルクセンブルクに移住しても、10万ドル手にするわけではありませんが。

1人当たりGDP


<結論>


「大きな政府は国を滅ぼす」などということは全くないのです。実際は真逆です。

 下記の本、さらっと読めます。経済学の一般的知識なんて、この程度で十分です。というより、この程度の知識は、本来は必須のはずです。

 高校で必修の「現代社会」「政治・経済」の正確な記述が求められます。

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