三権分立 行政 その1

<行政 その1>

 では、司法に続き、三権分立の「行政」について扱います。

東学 資料政・経 2013
東学 資料政・経 2013 2


 まず、初めに、「小さな政府」「大きな政府」についてです。「政府部門をできるだけ小さく、民にできることは民に、政府は経済にはなるべく関与するな」という前者と、「市場メカニズムに任せると、必ず失業・貧困・疾病・不況という問題が生じるので、政府(国・自治体)がカバーし、不況の際には適切なマクロ政策を政府が行う」という後者の考え方があります。
 
 このブログでは、実際には、小さな政府は、戦後成立したことがなく、政府は大きくならざるを得ない(事実)ということを、何度も検証してきました。ブログカテゴリ「市場原理主義?小さな政府 」参照。

 小さな政府論者は、「べき論」「理念」として考え方を語るのみで、具体論は、実はそこにはありません。「べき論」は、価値観なので、正誤判定できません。
 
 とにかく、「公務員の数を減らせ、国会議員の数を減らせ」ですから、合理的な基準があるとも思えません。「公務員の数を2割減らせ、給料を2割減らせ」とか、国会議員を「56減らせ、いや、180減らせ」ですから、単なる減員競争のようです。

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EUが加盟6カ国の財政目標を緩和。とうとう緊縮路線からの転換を表明


 ユーロ圏、行き過ぎた放漫財政を何とかしようと、一斉に「財政赤字を、GDP比3%以内に収める」という本来の基準を追求し、各国が緊縮財政を採用した結果、不況に陥り(各国、軒並みマイナス成長、おありを受けて健全財政のドイツまで)、失業率は過去最高に跳ね上がっています。
 結局、財政再建は延長、猶予することになりました。何をやっているんだか。



 GDPは、C(家計消費)+I(企業投資)+G(政府支出)+EX-IM(貿易)です。G支出を減らせば、GDP減になります。Gを減らしたからといって、CやIが増える訳でもありません。

 ただし、私は「大きな政府論者」ではありません。「大きな政府にならざるを得ない」という現実を直視するだけで、「大きな政府にするべき」とは考えていません。

 では、「どこによって立っているのか」ですが、ただ一つ、「経済学」「経済」的観点に立っているということです。

 経済=エコノミー=節約のことです。経済学=エコノミクス=それを追求する学問です。
節約とは、「最少費用で、最大効果」つまり「効率」を追求することです。時間や、費用や、人員をいかに合理的に使うか、いかに効率的に使うか、これが経済学です。

 自動車会社のマツダでは、「一歩、一秒、一円」というスローガンを工場で掲げています。「一歩余分に動けば、一秒時間を無駄に使い、一円のコスト増になる」というものです。

 これが、合理性追求、効率追求の具体例です。

 ただし、仕事はこれで構わないのかもしれませんが、「人生、ライフスタイル」という視点で考えると、「合理性」「効率性」追求一辺倒では、成り立たないことも分かります。

 「ムリ、ムダ、ムラ」を省くのが仕事の合理性だとしたら、私生活など、「ムリ、ムダ、ムラ」のかたまりです。

 趣味の車、オートバイ、ジーンズ収集、ギター収集、鉄道マニア、女性でも、そのブランドを極端に集める、旅行、etc・・etc・・。

 2人乗りの高級オープンカーや、バイクのハーレー、無駄の極致です。何か仕事に使えますか?ただ、ガソリン消費し、時間消費し、環境に悪いことをまき散らかしているだけです。1000万円の高級車を何台も所有するなど、本当は、生活には必要ありません。ですが、本人にとっては、至福の時間です。靴や、バッグや、宝石をたくさん集めるのも同様です。

 しかし、このような「ムダ」=本人にとっては、「至福」が、GDPを増やします。趣味の世界など、「ムダ」で成り立っている世界です。ですが、このような「ムダ」産業がどんどん増えてきた=豊かになったということです。

 食べるだけ、着るだけの生活から、少しでも快適に、少しでも楽しく、少しでも面白く…このように人類が考え、そして、第1次産業の時代から、第2次産業、趣味と娯楽の第3次産業へと産業構造が転換し、豊かになればなるほど、どの国も、第3次産業の比率が大きくなってきたのです。

 だから、豊かになるということは、そもそも矛盾だらけなのです。

 ただし、仕事の世界では、もちろん遊びや余裕も必要なのですが(機械じゃないので、効率一辺倒では人間壊れます)、組織としては、できるだけ効率的にというのは、どの企業でも行われています。

 ですから、組織としては、合理性追求、効率性追求=経済・経済学が成り立ちます。私の立場は、そこにあります。

 その理念は、実は法律でも具体化されています。

地方自治法第1編第2条第14項

「 地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」

同15項

「地方公共団体は、常にその組織および運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めて、その規模の適正化を図らなければならない


 なんて美しいのでしょう(笑い)。経済学の精神が、ものの見事に現れているではありませんか!!!涙が出ます(笑い)。

 行政はこうなるはずなのですが、実際はどうなのでしょうか・・・

 公務員だって、立身出世を考えます。ミクロ経済学的合理性です。官庁で、立身出世するには、その省庁の予算を増やし、仕事を増やし(例えば許認可権の拡充や、監督できる業界を増やす、天下りできる機構を増やす)、関係する法律を増やすことです。それができた人が、「仕事ができる」として、ポストが上がります。つまり、省益拡大は、その人にとっては、あるいは、その省にとっては、最大に、ミクロ経済学的合理性を追求することになります。

官僚行動の公共選択分析官僚行動の公共選択分析
(2013/02/07)
黒川 和美

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P39
実際、官僚が予算をゼロベースで見直し決定しようとすると、毎年毎年本当に必要な額を領域ごとに丁寧に分析・推計し、それを議会に訴え、予算決定しなければならないし、それに見合うだけの税収を確保しなければならないだろう。その結果、時間がなくなり、官僚は予算決定をすることだけにエネルギーを注がなければいけなくなってしまうという問題が起きてくる。

P42~
実際、官僚は限られた人材、予算、時間の中で適切な判断をすることが求められる。そのため官僚行動の当然の帰結として以下の点が考えられる。

ある分野の公共サービスの供給に極めて成立している官僚は、他の部局が予算や仕事を拡大しているとき、所属部局の予算も他分野に劣らず必要性の高いものであり、その予算拡大を求めようと考える。ある分野を専門的に理解している程自分自身の仕事が重要に思えているのである。

官僚組織とはいえ、膨大な政府組織の中の1部局に過ぎず、予算の小項目は1万を超える。官僚は国全体の予算動向を認知しつつも、担当予算のウエートを高めることで予算総額に膨張傾向を与えてしまうという官僚制度全体の結果についてあえて認識を深めようとしない。



 ですが、マクロ的には、予算が拡大し、規制が拡大し、余分な機構が乱立することになります。ミクロ的には合理的でも、マクロ的には不合理になる・・・これが合成の誤謬(ごびゅう)と呼ばれるものです。

 サッカー場や、コンサート会場で、よく見えるために立つ。これは合理的行動ですが、みなが個人的に合理的に立つことを選択すると、結局全員が立つことになり、全員が座っているときと何も変わらなくなってしまう・・・これが合成の誤謬です。

 官僚が、つまり政府が、産業振興を企図して、成功した例があるのでしょうか?

(1)

週刊ポスト
「気が付けば『下請け工場』シャープ屈辱のサムスン提携の真実」

…経産省幹部は告白する。「…実は00年代中頃、シャープは亀山モデルの大量生産を見込み、最新のテレビ用パネル製造工場を中国に建設する計画が進んでいました。しかし、先端技術の流出を恐れた経産省は、補助金などの優遇策をちらつかせてまで中国進出を全力で阻止したんです。結果、亀山にもうひとつ工場を建設することになった」
 これが現在の亀山第二工場である。

…一連のシャープ再建騒動は(筆者注:経産省)名誉挽回のチャンス…。…彼らはシャープ復活策を進言した。「公的資金で製造業支援を実現できれば、アベノミクスの3本の矢のうちの2本-財政出動と成長戦略を同時に達成できる。一時は、安倍首相の亀山工場視察プランまで計画されました」

…サムスンのイ・ゴンヒ前会長は「シャープが中国に生産拠点を移していなくてよかった。日本に価格競争力が備わっていたら液晶分野で日本に追いつくことはできなかったかもしれない」と語り…



 現在、亀山第2工場は、サムスンに32インチのパネルを供給しています。まとまった数を買ってくれ、おまけに103億円も出資してくれました。

 第1工場は、2011年、1000億円の設備投資費のうち、700億円を出資してくれた、アップル、iPhoneの専用工場となっています。

 シャープは今年の9月に2000億円の社債償還を迎えます。正念場です。

(2)

 JRや、私鉄で使われている、「パスモ」や「スイカ」といったICカード乗車券が、3月から、全国のJRで相互利用が可能になり、JR北海道の「キタカ」からJR九州の「スゴカ」まで、約4300駅、19万9000店の加盟店舗で使用可能となりました。

 全国52私鉄、96バス事業者、20万店舗で使える「世界最大規模」の電子マネーです(おかげで、1円玉は、昨年とうとう製造されませんでした。5円玉は、もう3年も製造されていません)。

 ところが、北海道では、札幌市営地下鉄のICカード乗車券「SAPIKAサピカ」は、全く、利用者の利便性を考慮することはなく、依然として「サピカ」は、JR北海道の駅では使えません。「サピカ」は、09年1月から、34億円かけて導入されました。

読売北海道版 H25.3.24
サピカ.jpg

 両者の規格が異なるためで、6月からJR北海道のICカード「キタカ」が札幌市営地下鉄で使えるようになるのですが、そのために札幌市は5億5000万円の改修費用を出しました。
 JR側は、札幌市営地下鉄の「サピカ」が、JR側で使用できるようにするために、それだけの改修費用を出すことは考えていません。

 さらに、「キタカ」「スイカ」などは、全国大手のコンビニで使えますが、「サピカ」は北海道のコンビニ「セイコーマート」のみで使用可能です。
セイコーマート側では、どんなICカードにも対応していますが。全国チェーンで、「道内だけ」で使える「サピカ」に投資しようという企業は考えられますか?

 札幌市営地下鉄ICカード「サピカ」は、6月から市電やバスで使えるようになり、14年度からは、札幌市営図書館の本の貸し出しや、住民票の発行にも使用するとして、利便性のアップをうたっています。基本構想が、「市民1人に1枚(札幌市交通局)」です。

 社会的インフラ、電気、ガス、水道、交通網というのは、利便性を追求するもので、「発想の独自規格」など、全く必要ではありません。

 IC乗車カードに、「図書館の利用」「住民票発行」など、全く必要ありません。首都圏の都営地下鉄で使える「パスモ」に、「図書館の利用」など、求めますか?そんな独自規格で、都営だけ「別カード」になったら、非難轟々は、目に見えています。

 札幌市の「違いを求める」規格など、インフラには全然必要とされない発想です。そもそも、札幌市営地下鉄は、開業時から、利用者の利便性という発想ではなく、「札幌市独自規格」のみ、追及してきました。その発想には、いつも、利用者不在です(セブンイレブンの鈴木会長なら、問題外にされるでしょう)。

 まず、市営地下鉄の車輪が、車と同じ、ゴムタイヤです。導入理由の一つに、「静か」というのがありました。
最初から、JR(当時は国鉄)との将来的な相互乗り入れなど、全く考慮されていないのです。

地下鉄

 ですから、札幌市営地下鉄駅はこれだけの駅がありながら、JR駅と接続しているのは、たった2つ、「札幌駅」と「新さっぽろ駅」のみです。首都圏なら、考えられない、資源の無駄です。

(3)

 インフラと言えば、空港もその一つです。国、自治体が競って空港乱立をした結果、98空港が作られ、赤字空港の山です。

引用・参考日経H25.2.20『再考 日本のインフラ』

1 秋田県北部能代空港 午前11時以降、6時間発着がない。2012年利用10万人強、開業時の見通しの1/7.維持管理支出に4億4091万円で、着陸料など収入の12倍。県が差額を負担しなければ、雪の除雪もできない

2 新潟空港
 08年まで5社あった貨物業者が撤退、地元の1社が残るのみ。9倉庫のうち、8はシャッター閉鎖。11年度の貨物量は95年の1/10。

3 静岡空港
 旅客は想定の3割で赤字。

98空港中、94空港は自治体が運営し、大半が赤字。

空港 赤字.jpg


(4)

 クール・ジャパン

 「かっこいい日本」とか、「いけてる日本」という意味です。海外で、日本製のアニメや漫画の人気が高くなり、02年(書籍「ジャパンズ・グロス・ナショナル・クール」)以後、自然に普及したことばです。

 それを、政府が、「日本の収益源にしよう」と取り組み始めました。予算は150億円(13年度)で、日本製の漫画、アニメ、ファッション、ゲームソフトなどコンテンツ産業を海外に売り込もうというものです。結局財務省は500億円の予算を認めました。

日経H25.3.23
クールジャパン.jpg

 フィギュア文化の、日本の雄、海洋堂社長宮脇 修一(みやわき・しゅういち)氏は、この政府の「売り出し」をはっきりと否定しています。「いらん。余計なことをするな」という立場です(TV東京系 カンブリア宮殿出演時)。

 2月26日~3月3日(6日間)、上海で開かれた経産省「クール・ジャパン戦略推進事業」の一つ、日本のファッションブランドを並べた「ファッション・ウイーク・トーキョー・イン・チャイナ」は、来場者1日平均500人、6日で、3000人です。

 民間主催の、東京ガールズコレクションは1日で2万人の観客を集めます。札幌や福岡でも開催され、北京でも行われました。上海では、8000人の観客を集めました(主催は、現地企業だそうです)。

(4)

 参考・引用文献週刊文春2013.4.11『成長戦略のウソを見逃すな』

 1985年設立総務省「基礎技術研究促進センター」。バイオテクノロジー、通信処理などの基礎技術へ投資する事業。
 2000年会計検査院の検査で、「4000億円の出資に対し、特許等収入は30億4627万円しかない。出資金の改修は困難。」結局、03年、2684億円が回収不能になり、解散。

 産業投資特別会計

「新エネルギー・産業技術総合開発機構」は、洋上風力発電、世界最高水準の超伝導ケーブルの開発をおこなっているが、出資金742億円に対し、回収は4400万円。

「情報通信研究機構」は716億円の出資で、2億4千万のリターン。

「医薬基盤研究所」は354億円で、750万円。

「農業・食品産業技術総合研究機構」は351億円で、300万円。

 すべての法人の回収率は1%に満たない。

 これは民間なら、全て倒産です。

今年2月発足
「農林漁業成長産業化支援機構」

 生産から加工、販売までを手掛ける農業事業者育成が目的。13年度予算350億円。社長には元農林中金副理事長の多和巌ほか、役員にJA関係者が並ぶ。

 あの、そもそも、農林水産業って、成長できるのですか?

 政府主導で、産業が新興した例が、何かありますか?私はよくわからないので、情報ある方、教えてください。

(5)

 一方、役所と、業界の既得権益で、規制改革は全く進んでいません。

参考・引用文献 日経H25.4.3

 保育所の基準見直し・解雇規制の明確化、混合診療の導入・・・2001年に当時の総合規制改革会議に上がったテーマですが、2013年の「安倍政権改革会議」に同じ宿題がずらりと並んでいます。これを太田弘子先生(早大)は、「岩盤規制」と言います。

 官僚の抵抗方法

その1 

 「牛歩」 改革には着手するものの、速やかに動かない。例)一般企業の農業参入

その2 

 「面従腹背」改革に応じたふりをしつつ、制度の使い勝手を悪くして、現状維持。例)新書便法。 手紙などの信書配達を一般開放したが、条件は「全国に10万のポスト」「週6日以上配達できること」。未だ1社も参入できず。

その3 

 「骨抜き」例外をたくさん作り、効果をすり減らす。
例)医療保険請求(レセプト)の電子化。保険を支払う側の、点検作業の効率化につながるが、例外、除外のてんこ盛り。医科の16%、歯科の55%は紙のまま。

 官僚、これも、省益最大化だけを考える(出世を考えたら当然です)、三角形ピラミッドです。最強官庁は、財布のひもを握る、財務省です。

行政
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