中越沖地震 柏崎刈羽原発 日本機械学会が表彰

コメントのしようがありません。そのまま引用させていただきます。

高山正之『日本人がいた』週刊新潮’09.6.4　p146
　
中越沖地震は…マグニチュード6.8．震源からわずか20キロほどの東電柏崎刈羽原発の揺れは半端でなかった。
　
原子炉は危ない揺れを感知すると自動的に炉を止める仕組みを持つ。例えば制御棒の挿入。原子炉はウランに中性子をぶつけて分裂させ、その際に出る熱エネルギーで発電する。制御棒はその中性子をみな吸着する。中性子がなければ炉は止まる。
　
…この日の地震は想定の6倍の大きさだった。炉の運転停止どころでなく予想を超えた不具合の発生もあり得た。
　4号機の当直班長、入沢義孝は、まず部下に机の下にもぐるよう指示した。

…左手の燃料棒貯蔵プールには満々と水が湛えられている。水は危険なα線やβ線を通さない…遮蔽材だから使用済みを含め燃料棒は真水のプールで保管される。…泳いでもいい。まったく危なくない。
　
ただ今回は様子が違った。激しい揺れで水面がうねり、岸壁に寄せる波のようにしぶきを跳ね上げていた。…揺れが収まったとき、制御室の計器は緊急停止装置が作動し、炉が正しく停止したことを示していた。緊急冷却装置も機能を保ちプールの水もゆっくり静けさを取り戻していった。
　
原子炉制御は「止める」「冷やす」ともう一つ「閉じ込める」がある。高放射性物質が詰まる炉を外界と完全遮断することだ。これも正しく作動したが、問題が残った。運転中だから高温の蒸気が…遮断され…炉心内のパイプには280度の高圧蒸気が残っている。それを解除するには長時間の…作業が必要だった。
　
入沢は部下に言った。「悪いが、自宅に電話をしないでくれ」揺れは凄かった。耐震性に万全を期した原発の建屋の外では路面に亀裂が走り、陥没もあった。それで変電室ボヤも起きた。…後の調査では社員の家31戸が全壊し、82戸が半壊していた。
　
家だけではなく、家族の安否もある。それを今は考えるなという班長の言葉に全員が頷いた。…汗みどろの20時間が過ぎて圧は見事に抜けた。3号機も…夜勤明けの社員や駆け付けた非番社員の協力で正常値に戻した。
　
一段落した3日目、部下の一人が帰宅したいと班長にお伺いを立てた。…なぜだ。…「自宅の取り壊しがあるので」と部下は答えた。
　
家庭より原発の安全性を優先させた責任感を日本機械学会が表彰した。…国際原子力機関（ブログ筆者注：IAEA）が調査にきて汚染水流出を否定した上で、7段階の事故評価を「０」つまり安全上の問題はなしとした。