税 その3 「税金の無駄を削れ、国会議員を減らせでは対応できない」「所得税、法人税は不公平税制」「結局、消費税増税しか、手はない」

<税 その3>

(3)消費税

① 安定性

 まず、消費税は安定した税です。

実教出版『2012 新・政治経済資料』p233税収 推移

 景気による変動も少なく、極めて安定した税収を確保できます。これは、日本人の消費は、好不況にかかわりなく、一定であることによるものです。

GDPに占める C 消費割合.jpg

②消費税は逆進的とは言えない

吉川洋(東大)日経『経済教室』H24.7.17

 消費税は逆進的(貧しい人の負担が相対的に大きくなる)といわれる。しかし、1年ではなく、一生涯を通してみると、人は稼いだ所得を(遺産として残す分は別にすれば)消費すると考えられるから、消費税はおおむね比例的だ。



 これはこういうことです。「低所得層は、収入のうち、ほとんどを消費に回し、高所得者層は貯蓄に回すので、消費税は逆進税だ」という考え方についてです。

消費税 イメージ図1

 実際の調査でも、低所得者ほど、総所得のうち、消費に回る率が高く、高所得者ほど貯蓄に回る率が高いことが示されています。

出典
平成21年全国消費実態調査から見られる高齢者の業態使い分け
http://www.dei.or.jp/opinion/staff_pdf/yamazaki01.pdf#search='%E6%89%80%E5%BE%97%E5%88%A5+%E9%A3%9F%E6%96%99%E5%93%81+%E6%94%AF%E5%87%BA%E9%A1%8D'

所得 消費額 割合 正

 ところが、これは、短期で見た場合です。長期(一生涯)で考えると、違ってきます。高所得者が貯蓄するのは、定年退職後に、その貯蓄で「消費」するためと考えられます。例えば、少し余裕のある暮らし、あるいは、病気・介護に備えて・・・ということです。

消費税 イメージ図2

結局、生涯を通じて、その人が得た所得は、最終的に「消費」に回るのです。

 相続財産が残っても同じです。相続人は、家の購入資金や、子どもの学費などに、相続財産を回します。つまり、所得は、長期で考えると、「消費」に回ります。ですから、結局、消費税は、「所得に応じて比例的」と考えられるのです。

佐藤主光(一橋大) 日経H24,10,29『第1章 税の仕組みと本質』 
…生涯の所得と費やす消費はおおむね等しくなります。今日の貯蓄も将来の消費に備えたものです。消費税は生涯ベースの課税とも言えます。



クリック

大竹文雄 阪大教授 『経済教室:消費税と所得税 どう違う』

③グローバル化時代に適した税

 その2で扱った、法人税は、企業の最終益に課税されます。一方、消費税は、原材料や機械設備を仕入れた際にかかる税については、還付されます。原則的に、課税される事業者が消費税を負担することはありません。生涯コストは上昇しないのです。

 また、消費税は、輸入品にはかかります。輸入ワインや、輸入したバナナ、ブランド宝飾品などです。
 その一方、輸出品にはかかりません。輸出価格を高めたりしないのです。最終的な商品価格に転嫁しない、ここが法人税との違いです。

 例え、車をヨーロッパに輸出(1台100万円:最終価格=1万ユーロ)して、消費税が25%の場合、最終的には125万円(1.25万ユーロ)になっても、100万円の段階(日本から輸出した段階)では、消費税がかかっていないので、ヨーロッパの1万ユーロの車と、対等な条件で、競争できます(税抜き1万ユーロの車と、税抜き100万の車)。

クリック

「トヨタ自動車は消費税還付金、毎年2000億円がなければ『赤字続き』の会社と判明!消費税1兆円以上儲けた会社」


ちょっと表題に問題はありますが、要するに、海外に売っても、その分の消費税は、トヨタに入らないので、負担した税を還付するというものです。トヨタにとって得とか損とかという問題ではありません。

 消費税の利点は、「薄く幅広く」「生涯所得で見ると公平」に、経済のグローバル化に適した(ヒト・モノ・カネの移動が自由)点にあるのです。

 つまり、「消費税」が、税の中では、3本柱の税の中でも、最も優れた税なのです。ヨーロッパ(EU加盟条件)が最低15%以上の消費税を課しているのは、このような理由からです。

 日本の場合、消費Cは、GDP5000兆円のうち、300兆円になりますので、税率10%で、30兆円、税率20%で、60兆円の税収がまかなえることになります。

GDPに占める C 消費割合.jpg

 小さな政府で、歳出減? 無駄な使い道を辞めて歳出減?・・それは、どうやっても不可能なことは、「税 その1」で検証したとおりです。

・・・低所得者への補償は、税を集めてから分配すればよいのです。

 繰り返しますが、社会保障費は、毎年自然増が、1.5兆円です(現状制度)。高齢化社会で、「医療」「介護」「年金」は、絶対に減ることはありません。

 現状、後期高齢者は、医療負担1割です。(現役世代は3割)
 70歳以上の負担を1割→2割にする案は、選挙対策で、先送りされ続けています。

 「年金」は、本来、保険なので「万一の無収入」にそなえるためのものです。ですが、65歳になれば、会社の社長だろうが、医者だろうが、国会議員だろうが、日本銀行副総裁(岩田氏は70歳)だろうが、全員に無条件に支払われています。

 年収300万円代の、30代非正規雇用者、65歳以上であれば、年収500万円を超えていようが、無差別に支給される70万円の国民年金の共存・・となっています。

 介護・・日本人の1/4は、最終的には必ずお世話になりますが、自己負担は1割、残りは税+保険料です。

以上、「現状は」です。



<2つの視点>

 「税の公平」には、2つの視点があります。水平的公平と、垂直的公平というものです。

清水書院『高等学校現代政治・経済』H24 p113

 税の公平性という場合、所得水準等の経済状態の違いにおうじて税負担を求める「垂直的公平」と同じ経済状態の人に同等の税負担を求める「水平的公平」の2つが問題となる。一般に所得税の累進課税制度は、垂直的公平に、消費税は水平的公平に優れているといわれる。




 前者を「応能原則」といい、後者を「応益原則」といいます。ごみの収集など、公共サービスは所得に関係なく誰もが受けるので、自治体の財源である地方税は、一律課税です(個人住民税には、均等割という低額課税があり、一律4000円)。水平的に見れば、公平です。一方、垂直的にみれば不公平になります。

 税については、簡単に「公平」「不公平」とは言えないのです。
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No title

医療費はこれから増え続けますが大丈夫でしょうか?
いずれ自由化もしないと駄目な気もします。
今回のTPPで混合診療が解禁され可能性もありますし
自己負担分が増えると苦しいですが仕方ないのかもしれませんね。

No title

経済学では、インセンティブ(誘引)の問題でもあると考えます。

数をこなせば、その病院の売り上げは、医療保険制度による出来高払い制になっているため、多くの検査や投薬をして報酬を得ようとします。

CT検査は、子どもにもおこなわれ((放射線被爆)ますが、機械の数はイギリスの10倍、世界一医療費が伸びている米の3倍もあります。

OECD諸国では、単なる頭痛では,大学病院は受診できません。初期医療(家庭医)である1次診療=プライマリーケアシステムが出来ているからです。

また、日本は1950年代に「国民医療皆保険」制度が確立しましたが、当時の医療界(医師会など)は、こぞって反対!しました。

 要するに、国民皆保険でも自由診療でも、どっちでも構わない(日本の医療はどちらになってもしっかりできる)ということを示しています。

No title

返信ありがとうございます。
プライマリケアは医療費抑制の為日本でも導入しようとしていますね。
国民皆保険の未来はどうでしょう?
医療従事者には打撃はあまり無さそうですが患者特に老人には
皆保険が無くなるとダメージがありそうですが,,,,,,
あと日本は医師の給与が諸外国と比べると安いみたいですが
これも皆保険な為でしょうか?

No title

>経済学では、インセンティブ(誘引)の問題でもあると考えます。
>数をこなせば、その病院の売り上げは、医療保険制度による出来高払い制になっているため、
>多くの検査や投薬をして報酬を得ようとします。

確かにその通りなんですが、医師が「とりあえず検査しておきますか 」
という話になれば、ほとんどの患者は「お願いします」となりますね。

医師も患者も「検査結果」という客観的な事実が欲しいんですよね。

>国民皆保険の未来はどうでしょう?

 今のまま維持するのは不可能でしょう。
 
 維持しようというのなら、処方薬をドラッグストアで買えるようにしたら良いと思います。
 医療の自己責任の幅を拡大させれば、多少は医療財政が改善するでしょう。
 
>医療従事者には打撃はあまり無さそうですが患者特に老人には
>皆保険が無くなるとダメージがありそうですが…

アメリカでもお年寄り相手には、皆保険制度があると聞いています。
ある程度、負担額が増加するかもしれませんが、何の保障もない状態にはならないと思います。

No title

レスありがとうございます。

自由化も可能性は高そうですね。
でもこのままだと国の財政も危ないし仕方ないと思って受け入れるしかないですね。
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