コンクリートかヒトか その1

<コンクリートかヒトか その1>

朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機
(2011/05/25)
根本 祐二

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『朽ちるインフラ』日本経済出版社


…落橋が現実的な危険だということである。実際に死傷者が発生していないのは「日本の橋は落ちない」からではなく、今までのところ「落ちないように管理できてきた」という結果論に過ぎない。

橋 通行止め

「危険だから通行規制」→「結果的に橋の事故を防いだ」に過ぎないのです。

読売新聞『腐食進む築50年の橋』H24.8.30

高度成長期に作られた道路や橋、上下水道など各地の社会インフラの老朽化が進んでいる。
…徳島県の吉野川。この川を渡る徳島市の吉野川大橋(1137メートル)は、今年1月路面下の鋼材の溶接部分に約240か所の亀裂が見つかった。完成から40年が経過し、「道路が陥没する恐れがあった」ため、車線を規制して工事を急いだ。
 四万十川にかかる高知県四万十市の屋内大橋は、一部の橋脚が沈み込み、11年12月には橋げたが落下した。


 
 橋は、築50年以上で、更新時期になります。それが、20年後には、急増します。

読売 H24.8.30
築50年 橋


…「過去それだけの公共投資を行ったのだから、今後はさほど必要ではない」と感じる人がいても不思議ではない。「公共投資不要」の右下がりの矢印が、そのような直感的理解を示している。2009年の衆院選前後に展開された「コンクリートから人へ」の主張が一見合理的に思える理由はそこにある。

実際に、公共投資の額は、削減され続けてきました。

公共投資 額
公共投資 率

だが、老朽化及びそれに伴う更新投資の必要性を考えると、この主張には明らかな欠陥がある。社会資本は耐用年数が有数の固定資産である。ある年限が来れば物理的に使えなくなる。使い続けたければ新しくする必要がある。これが更新投資である。

 同じ土地に住み続けたければ、家を建て替えなければならない。自家用車に乗り続けたければ、一定年経過後には乗り換えなければならない。それと同じことが社会資本にもいえる。

公共投資 イメージ図


…数十年経過すれば、必然的に更新投資が必要になる。耐用年数が同じだとすれば、形は同じだ。右上がりの矢印は、今後は更新投資圧力が強まることを意味している。

…目に見える公共建築物の老朽化はある程度わかりやすい。古くなれば建て替えないといけないことは常識として理解できる。だが、道路や地中にもぐっている上下水道管もいつかは更新しなければならないことは、簡単には理解されない。無意識のうちに、何もしなくても、未来永劫使い続けられると思いがちである。


 つまり、「公共投資費で、補修すれば、今後も使える」のではなく、「そっくり入れ替えないと、使えない」のですね。
 確かに、点検、補修などのメンテナンス費用は少なく済みますが、耐用年数がくれば、橋もトンネルも、下水管も、そっくり入れ替えなければなりません。

公共投資 イメージ図


 だから、上記の山は、そのまま50年たてば、次の山にならざるを得ないということになります。

読売新聞H24.12.4
年度別 橋 建設

 この山は、50年後にはそっくりそのまま、同じ山になるということです。「コンクリートからヒトへ」は、耳触りはいいのですが、現実的にはまずいのです。

年度別 橋 建設 2


 日経『高齢インフラ管理不備のツケ』H24.12.16

…自民・公明両政権は財政再建の目標の下、毎年度の公共事業費を前の年に比べ3%削った。毎年1兆円の規模で増える社会保障費を他の支出を削って充てた。民主党政権も基本的な認識は同じ。「コンクリートから人へ」を掲げた手前、まず公共事業を切り詰めた。



読売 H24年6月18日
社会保障費100兆円


 社会保障費、20年で2倍です。


日経H24.12.11
公共事業費

 その結果、公共事業費は、国の予算だけでも、ピーク時の半分に減っています。さらに、公共事業費は、実は地方の方が多く(当たり前と言えば、当たり前ですが、国道の量<県・市町村道の量です)、その地方が悲鳴を上げています。

日経H24.12.16
公共事業費 国 地方

 国が保有する築50年以上のトンネルは全国で145本に対し、地方自治体は10倍以上の1699本を抱える。

読売新聞『選択と集中 悩む自治体』H24.8.31

…下水道管の状況も深刻だ。国土交通省によると、10年度に下水道管の破損で、道路が陥没したのは全国で約5300か所。老朽化が主な原因とみられる。各地のインフラが耐用年数を迎える中、維持管理を担う地方自治体の多くは財政難にあえぐ。



 
 どのくらいのカネが必要で、どのくらい足りないのでしょうか。

根本祐二『インフラ、更新優先明確に』日経H24.12.19

 筆者の試算によれば、日本全国のインフラを現在のまま更新していくには、年間8.1兆円の更新投資を50年間続ける必要がある。期間を限って公共事業予算を過去のピーク時に戻すという考え方もあるが、現実には難しい。…今後消費税増税が実現しても、大半が社会保障費に振り向けられる以上、公共事業予算を大幅に増やすのは無理だ。




 国交省の試算でも、カネが明らかに足りなくなることが分かっています。

読売『老朽高速 甘い見通し』H24.12.29
 …同省は今年8月の審議会で、今後50年で道路、港湾施設など、インフラの維持に必要な費用は190兆円との試算を提示。「現状の公共投資額では、25年後に維持更新費用すらまかなえなくなる」と指摘した。



 これは、「国」だけの話です。はるかに多い地方自治体分は、入っていません。

日経H24.12.16
…国交省所管の道路や港湾、空港などの維持管理・更新にかかる費用が10年度の4.2兆円から56年度に10兆円まで膨らむと推計した。新規投資を含めたインフラにかかる総費用を10年度の8.3兆円から横ばいとすると、37年度に新規投資の余裕がなくなり、その後は必要な更新費用すら賄えなくなる。



 社会保障費は毎年1.5兆円も増えるわ、インフラ維持費用も足りなくなりそうだわ、それでもこの「解」を出さなければなりません。現状では、「コンクリートかヒトか」ではなく、「コンクリートもヒトも無理」という次元にまっしぐらです。

続く
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