洋の東西を問わず、同じ その2
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ペイン:じゃあピーター、あなたはインフレに対しては、どういう立場なんですか。これが2010年の大きな問題になると思いますか。
シフ:だからね、つまり、私は2010年にインフレが悪化すると確信してるんです。それが手に負えなくなるか、あるいは2011年か2012年までかかるかもしれないけれど、大規模な通貨危機が間もなくやってくるの私にはわかってます。金融危機なんかがかすんで見えほどのものになり、消費者物価は完全に常軌を逸したものになり、金利と失業もそうなります。
「オーストリア派」の経済学者ピーター・シフ、ラジオトークショー、「グレン・ベック」にて、2009年12月28日
FRBが、QE2、QE3で金融緩和をすると、制御できないインフレになるという説です。
参照ください
↓
日銀理論
日本でも同じです。
参照ください
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池田信夫 インフレは起こらないがハイパーインフレは起こる
日本では、金融緩和はしてはいけない、効かないという説も、たくさんあります。
週刊ポスト12月14日号
「アベノミクスで景気回復か地獄への転落か」
小幡績(慶大)
デフレが貨幣現象だというのは、学会では否定されています。マネーの量を増やしただけでは、物価は動かない。また、世界の中央銀行の中では日銀の評価は高い。
…安倍さんの金融政策は、経済を破綻させるリスクがある。…おカネをいっぱい刷ると「モノ」の値段が上がるんじゃなくて、「資産」の値段が上がる。…実体経済へのプラス効果は非常に小さいので、持たざる者にとっては家が買えなくなり、家賃も払えなくなりマイナスです。
…資産インフレが起きると、現金に近い日本国債が売られることです。…国債の暴落リスクが出てきます。国債を大量に保有する銀行が破綻し、国有化される。
…財政危機から金融危機という、ヨーロッパで起きた流れが日本で同じか、それ以上の規模で起こることを憂慮しています。
朝日新聞H24.12.9
上野泰也 みずほ証券
マインドコントロールのようなインフレ期待で物価が上がるというのは幻想だ。円の信用が失われ、金利も急上昇して財政危機に陥りかねない。人口減少を食い止めて成長産業を興すべきで、それは政府の役割だ。
一方で、学会では否定されている??そうですが、下記の先生は、金融緩和を支持しています。
日経H25.1.16『大胆な金融緩和 一致』
4月8日に任期満了を迎える白川方明日銀総裁の公認選びが本格化した。・・・デフレ脱却に向け、大胆な金融緩和が必要との意見で大筋一致した。
読売新聞H24.12.5
若田部昌澄(早大)『金融緩和でデフレ脱却』
…デフレを脱却し本来の成長軌道に戻すため、金融政策などを駆使したリフレーション政策をとるべきだ。
リフレ政策については、ノーベル賞経済学者ポール・クルーグマン博士の著名な論文「日本が陥った罠」が論点を整理している。①ゼロ金利下では、単純な貨幣数量説に基づく金融政策は効果がない。単に資金を供給するだけでは物価は上がらない。②だからインフレ目標でインフレ期待を高めるのが有効。③補助的な手段として財政政策もある-というものだ。
日銀の政策は①にとどまっている。金融緩和が効かないと言っているだけだ。②に踏み込んだ自民党の安倍総裁の方向性は正しい。長期国債を買うとか、外債を買うとかといった手段は日銀に任せるべきだが、政府と日銀が政策協定(アコード)を結び、インフレ目標を共有することは絶対必要だと思う。
同書では、ほかにも、このような説を唱える人が紹介されています。
…金融経済学者として有名で、 FRB の歴史にも詳しいアラン・メルツァーは2009年5月3日に「ニューヨークタイムズ」紙に寄稿して恐ろしげなメッセージを出した。
FRB が左右する金利はゼロ近い。そして銀行準備金の急増 -FRB による国債や住宅ローン購入で生じたもの-は、このままではまちがいなく激しいインフレをもたらす。(中略)我が国のように巨額の財政赤字、マネーサプライの急増、持続的な通貨下落の見通しに直面した国で、デフレを経験した国はない。こうした要因はインフレの先駆けなのである。
でも、彼は間違っていた。この警告から2年半後に FRB の左右する金利は相変わらずゼロ近い。 FRB は国債や住宅ローン購入を続けていて、銀行準備金を増やし続けている。そして財政赤字が巨額のままだ。でもこの間の平均インフレ率はたった2.5%…。
とはいえメルツァーの警告は、なかなかもっともらしく聞こえますよね?
FRBがやたらにお金を刷り-というのもざっといえば、 FRB は国債や住宅ローンを買うのにお金を刷るからだ。連邦政府が1兆ドルを超える赤字支出をしているのに、なぜインフレが急上昇していないんだろうか。
答えは不況の経済学にある。特にすでにおなじみになったと願いたい「流動性の罠」の概念にある。…「流動性の罠」にはまっていなければ、確かにお金をたくさんすれば本当にインフレになる。でも罠にはまっていたらそうはならない。実は FRB が刷るお金の量は、ほとんどどうでもよくなる。
流動性の罠については、こちらをご参照ください。
参照ください
↓
岩本康志 東大 「経済教室」日経H21.6.1
岩本康志 東大 「経済教室」日経H21.6.1 その2
岩本康志 東大 「経済教室」日経H21.6.1 その3
岩本康志 東大 「経済教室」日経H21.6.1 その4
また、金利を上げろという説もあります。
たとえば、シカゴ大の ラグラム・グラシャンは「フィナンシャルタイムズ」紙に「バーナンキは超低金利時代を終わらせなくてはならない」と題する記事を載せた。その中で彼は低金利が「リスクの高い行動を招き、資産価格を高騰させる」と警告した。
…要するに、現在の雇用なき回復が示唆しているのは、アメリカが根本的な構造改革を行ってサプライサイド(供給側)を改善しなくてはならないということだ。金融セクターの質、その物理的インフラと人的資本は、全て大規模で政治的にもむずかしい改革が必要だ。もしそれを目指したいなら、惨劇に繋がったのと同じ金融政策を採って不景気前の需要パターンを復活させようとするのとは懸命とは言えない。
…特にラジャンの議論は、ジョセフ・シュンペーターの悪名高い一節を忠実になぞっているのだ。
…ここで分析した2例だけではなく、あらゆる場合に回復はひとりでにやってきた。…我々の分析を見ると、回復がしっかりしたものであるのはそれがひとりでにやってきた場合だけである。
…この学派は要するに、不況で起こる苦しみはよいもので自然であり、それを解消するようなことをやってはいけないと主張する。
…もう一つ別の説明を追加してみよう。オーステリアン(緊縮論者)たちの求めるもの-雇用創出よりは財政赤字に注目、インフレのかけらですら偏執狂的に抑えようとし、大量失業に直面しても金利引き上げを求める。
日本でも、同じ議論があります。
(1)
読売新聞H24.12.5
河野龍太郎BNPパリバ証券「潜在成長率引き上げを」
…金融・財政政策の本質は、所得の先食い、需要の前倒しでしかない。マクロ安定化策だけで豊かになった国はいない。…低成長社会を認めたくないので、即効性を求め、政治は金融、財政政策で対応しようとして事態を悪化させてきた。
(2)
参照ください
↓
内需刺激へ金利正常化を? 金利UP?の主張
前回と今回、2回にわたって取り上げてみましたが、議論の本質は、洋の東西を問わず、同じようです。
theme : マクロ経済学 ミクロ経済学
genre : 政治・経済