日本国債について質問を頂きました

<日本国債について質問を頂きました>

>原理的にデフォルト(債務不履行)は起きません。
原則的にということはデフォルトが起きる可能性も何かの理由であるということでしょうか?


 原理的にできない=「太陽が西から上ることはできない」「Xにゼロをいくらかけても、ゼロ」ということで、「100%ありえないこと」です。「原則的に」ではなく、「理論上できない」ということです。
 明日、その原理の一部をご紹介します。

正直知哉 その2 ピムコジャパン マネージングディレクター 『政権 改めて論点を問う』日経H22.2.1

…国が借金を返せなくなる「ソブリンリスク」が日本に及ぶことも?
「財政リスクが市場で非常に心配されているのは事実。だが、日本は対外純資産国で財政赤字を国内貯蓄で賄えている。デフレで日本の実質金利は潜在成長率より高く、いい投資機会がない限り企業の貯蓄はふえる。数年はこの構図が続き、デフォルト(債務不履行)を心配する状況ではない
…世界でもソブリンリスクが注目されています。
「需要追加策や資本注入で各国とも財政が悪化した。先進国では潜在成長率が低下し、税収増での財政再建がしにくくなった…」


間違い部分は、赤で示しました。

<自国通貨建て債務の場合、デフォルトはできない>

 日本やアメリカは、「自国通貨建ての国債を発行」しているので、原理的にデフォルト(債務不履行)は起きません。その国債を購入しているのが、日本人であれ、外国人であれ、極端な話、宇宙人でもです。

 デフォルト(債務不履行)できるのは、①外貨建て債務の場合と、②外資に対してのみです。
 過去のアルゼンチン、ロシアがデフォルト(債務不履行)にしたのは、①外貨建て債務②外国資本(外資)に対してと、①外貨建て債務です。
デフォルト.jpg

<ギリシャはどうなるか>

 ではギリシャはどうなのでしょうか。ギリシャの場合、通貨は「ユーロ」なので、中央銀行は、欧州中央銀行になります。ギリシャ独自の通貨発行は行っていません。「ユーロ建てギリシャ債」になります。今、ギリシャで、「財政危機への市場の不安」があるという状態です。

 一昨年の金融危機以後、世界各国は、不況打開のため、財政出動や、金融緩和措置をとりました。ギリシャも財政出動を行いましたが、そのため、もともとユーロ基準を上回る財政赤字だったのが、さらに赤字を拡大させたのです。

 通貨は「ユーロ」なので、ギリシャ独自の金融政策は、採用できません。金利を下げるとか、マネタリーベースを増大させるという政策は採用できないのです。一方、ドイツやフランスなどの経済基盤が強固な国と、東欧の中小国・ギリシャなどの国の間には、はっきりと格差があります。たとえば、ギリシャでは、若年失業率が20%を超えています。このような格差の中で、「金利」は一律なのが、「ユーロ」なのです。

 不況の場合、ユーロ加盟各国は、おのずと「財政拡大政策」を採用せざるを得ないのです。現在同国は、GDP比12%の財政赤字で、金融市場では同国の財政状況への懸念が示されています。

 では「ユーロ建て国債」の場合、「デフォルト」は起こるのでしょうか

JBPRESS  http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2264

 ギリシャの公的債務の約3分の2は外国人が保有している。またドイツ銀行の試算によれば、同国は来年、310億ユーロの新規借り入れと160億ユーロの借り換えを計画している。ユーロ圏の支援が得られず、かつ債務の借り換えに支障を来した場合には、ギリシャは国際通貨基金(IMF)に駆け込まざるを得ないだろう。
 アルゼンチンと違ってギリシャは通貨の切り下げができないし、ユーロ圏を離脱するという政策も現実的ではない。そのため、デフォルトしてもしなくても、ラトビア式の緊縮財政を取るしかなくなる可能性が高い。
 ただ現政権にしてみれば、自発的に緊縮財政を行うよりも、外部から緊縮財政を押しつけてもらう方が政治的には楽かもしれない。このことも、EUが喜んでIMFに主導権を取らせるだろうと考えられる理由の1つだ。
 ギリシャの国民が緊縮財政を受け入れる用意ができていないように、投資家たちは自分たちを待ち受ける将来への備えができていない。筆者自身はまだ、あからさまなデフォルトにはならないだろうと読んでいる。しかし、現在のギリシャ国債のスプレッドが真のリスクを反映しているとは言えないのではないか、とも考えている。

H22.2.16 日経『国債 揺れる市場』
ギリシャ国債の外国人保有比率は7割超、スペインも5割に達する。財政への不安をっ背景に、外国人が国債を売り、金利が上昇。


 ギリシャや、スペインの国債が、金融市場で高金利になるなど、財政懸念が拡大し、「デフォルト(債務不履行)」が懸念されています。「自国建て通貨の場合、デフォルトは起こりえない」のですが、夕張市や、ギリシャの場合「デフォルト」します

 「ギリシャの公的債務の約3分の2は外国人が保有」していることがポイントです。ギリシャ国債の保有者は、ドルや、ポンドで買っています。あるいは、ギリシャ以外の欧州国です。それらの投資家が、「ギリシャ国債は不安だ、今のうちにドルやポンドに戻そう」と考えると、「ユーロ売りドル・ポンド買い」になります。ギリシャに中央銀行があって、独自にそれに対応すれば、いずれ、同国の「ドル・ポンド」は底をつき、「外国資本に対するデフォルト(債務不履行)」をしなければなりません。

 ですが、相手は「欧州中央銀行」です。ギリシャ債権を売る、「ユーロ売りドル・ポンド買い」が発生しても、それに十分対応できる外貨があります。ギリシャ国債が売り浴びせられても、びくともしません。ギリシャのGDPは「ユーロ圏の2%(日経H22.2.13)」です。支援しようと思えば、100%可能です。

 しかし、「欧州中央銀行」にすれば、「ちょっと待てよ」ということになります。ギリシャの財政運営失敗のツケを、なぜ、自分たちが払わせられるのか(なぜ、ギリシャのためだけに金融政策が変化しなくてはいけないのか)ということになります。 「同国は、経済統計を粉飾してまで財政拡大をつづけた(日経H22.2.14)」のです。

 ユーロ加盟国は、「財政規律の維持」を目標としているのに、勝手に財政赤字を拡大し、そのツケを欧州中央銀行が払わされたのでは、たまったものではありません。ただし、リーマン・ショック以後の、各国財政支出拡大は例外中の例外です。財政赤字GDP比3%のユーロ加盟国の「財政協定」に、27か国中20カ国が大きく違反していますから(H22.1現在)。

 EUは、ギリシャに対し、「財政再建をしろよ」と迫っているのです。財政赤字GDP比3%のユーロ加盟国の基準に合わせるために、増税や歳出削減をしなければならないということです。

「ユーロ圏のギリシャ」=「日本国内の北海道夕張市」と同じです。それぞれ、一地方に過ぎません。中央銀行ももちろん持っていません。夕張市も、粉飾決算で、年度末時点での借金をすべて第3セクターに肩代わりさせ、本体では、借金は無いことにしていました。

「ギリシャ債」「夕張債」は「額面」ですので、「100万円(100万ユーロ)」とそこに書いてあったら、目減りしません。これを「名目価格」といいます。ギリシャに貸した銀行も、夕張に貸した銀行も、「100万円(100万ユーロ)」返せと言います。

「ギリシャ債」も「夕張債」も原理的にはデフォルトするのですが、前者はEUが「させない」といっているのです。

日経H22.2.11
 「EUは11日、ブリュッセルで臨時首脳会合を開き、ギリシャ支援策の調整を急ぐ。市場不安の一因となった統計処理の是正に協力するほか、資金繰り難に陥った場合の緊急融資などが案として浮上しており、会合では財政再建へのギリシャの取り組み支援も確認する見通しだ」

「ユーロ圏の財務相は10日…ギリシャ問題を協議した。…ドイツ政府筋が記者団に『債務不履行のリスクはない。このため支援が必要だと思っていない』と語った」


 一方、今後発行する同国の「ユーロ建て国債」は売れるでしょうか?たぶん買わないと思います。将来きちんと返してくれるかどうか不安だからです。ムーディーズは同国国債の格付けを「Baa1」に引き下げられるリスクがあるtとしました。非常に危ない、ばくちのような国債です。仕方ないから、ユーロ圏の各国が「買ってあげましょう」となります。ですが、そのばあい、当然、「財政再建しろよ」となります。

 統一通貨「ユーロ」の弱点が示されたケースです。
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