経済学を学ぶとはどういうことか

<経済学を学ぶとはどういうことか>

 デフレについて、また、日銀の金融政策について、お二人が解説しています。

読売H24.4.26

1人は経済学者、1人は銀行員から大学教授になった方です。

伊藤.jpg

真壁.jpg

1.

真壁昭夫 信州大学経済学部教授 H23.2.28 日経『VIEW POINT』
「日本には1500兆円を越す個人金融資産が蓄積している。それをうまく掘り起こせれば、国内需要を盛り上げるだろう」


 「ストックを使え」・・これは、絶対に出来ない話です(・・・ストック・・借金を増やせば、フローには回せますが)。これから食べる食事(フロー)に、昨日の夜食べてしまった(既に自分の体重に化けてしまっている)食事を回せと言っているようなものです。

 フロー(GDP)は、これから作るもの、ストック(体)は、フローを産むために使用するものです。

 
 余談ですが、この「ストック→フローは原理的に出来ない」ことを、後日、別な形で、必ず発表します。分かりやすくするために、分量は長くなりました。ご期待ください。

2.


 デフレの原因は、供給に比べて需要が足りない「デフレギャップ」にある。・・・需要が不足しているのは消費者が欲しがる商品を企業が作り出せていないからだ。・・・売れる商品を出さない限り業績は改善しない。


 私は、かねてから、デフレについては、以下の2つの要因を指摘してきました。

(1)需要<供給 需給ギャップ 実物要因
(2)日銀の貨幣供給量 金融要因


(1)だけで説明するのは、おかしいし、(2)だけが要因でもありません。

 そのおかしさは、ワルラスという経済学者の一般理論で十分に説明できています。初歩も初歩、誰も崩せない(きちんと科学的に証明できている理論)イロハの話です。



 まず、財(モノ・サービス)の世界で30兆円の需給ギャップ=供給超過があります。そうすると一方、カネの世界では、その分だけ30兆円の需給ギャップ=需要超過がある事を示します。カネ>財(モノ・サービス)になっているのです。ですから、貨幣が重要で、財(モノ・サービス)に需要が回らないのです=デフレ。

財市場=貨幣市場

 財市場と、貨幣市場を同時に示す、「IS-LM」分析があります。ケインズ理論を、ヒックスという経済学者が簡潔に示したもので、経済学では、初歩の入門理論です。

 竹森俊平(慶大教授)『資本主義は嫌いですか』日本経済新聞社2008
P97~
 …ワルラスの考察にしたがって…両市場(筆者注:財市場と資産市場)で同時に需給均衡が満たされるようになるのだとすれば…答えは、超過需要が発生している「金融資産」が、超過供給の発生している「実物財」に対して高価になる相対価格の調整である。

…「金融資産」の価格上昇…「株式」と考えるなら…先進国の株式市場は好況で潤い…新興国についても…大幅な価格上昇を記録していたところがあった。
(筆者注:サブプライム危機前まで)

…「金融資産」を国債や社債のような「債権」と考えるなら…その価格上昇とは「金利」の低下を意味する。…「金融資産」の市場で超過需要の傾向があるならば、「金利」は低下傾向になる。…世界金利の低下傾向はこのように説明できる。

…もう一つの「実物財」の市場…「超過供給」が発生しているのだから、実物財の価格が低下しなければならない。すなわち「デフレ」の発生だ。


…「デフレ」もしくは「ディスインフレ」の傾向を、「金融資産」市場における「超過需要」の傾向の裏腹である「実物財」の市場における「超過供給」の傾向の産物と解釈するなら、何もかも辻褄が合う。要するに「世界的な低金利」と「世界的な低インフレ」とは、盾の両面だということである。


 そうすると、「貨幣が重要」という状態を解消すればよいことになります。貨幣の価値が下がる=インフレです。その為には、カネを供給すればよいのです。

ですから、日銀の金融政策も大変重要なのです。




 (1)財(モノ・サービス市場)と、(2)貨幣市場の均衡を扱う、「IS-LM理論」があります。経済学の初歩の初歩理論で、とりあえず、経済学を奥深く学ぼうと思えば、必ずまなばなければならない階段の1段目の理論です(次段階として、IS-LMを否定する理論を学ぶので、絶対に避けて通れない理論なのです)。

 この初歩中の初歩理論を学べば、

(1)需要<供給 需給ギャップ 実物要因
(2)日銀の貨幣供給量 金融要因

 において、デフレの要因は「(1)だけだ」あるいは、「(2)だけだ」などという話が出てくるはずがありません。両者は密接にかかわっているからです。


参照ください

流動性のわな その1
流動性のわな その2
流動性のわな その3
流動性のわな その4
金融政策(LM曲線シフト)の実際

3.

 さて、供給と需要の関係です。

三面等価ですから供給(生産)=需要(消費)になっています。

生産(GDP)=消費(GDE)

 生産したものが、全て消費されているのは、消費には、在庫が「投資」として含まれているからです。

生産(GDP)=消費(GDE)

Y=C+I+G+EX-IM

です。

輸入を移項すると、

Y+IM =C+I+G+EX

供給=需要
生産=消費


供給しているのは、

Y(国内総生産)+IM(輸入)です。

需要はC+I+G+EX(家計+企業+政府+輸出)です。

デフレの原因は、供給に比べて需要が足りない「デフレギャップ」にある。・・・需要が不足しているのは消費者が欲しがる商品を企業が作り出せていないからだ。・・・売れる商品を出さない限り業績は改善しない


が正解なら、左辺多>右辺少です。

Y+IM >C+I+G+EX

です。

また、(1)需要<供給 需給ギャップ 実物要因を説明する際に、「デフレギャップは、消費者が消費をしないからだ」という、誤った説明がされることがあります。

GDP=国内総支出GDE
  =C消費(家計が主)+I投資(企業が主)+G(政府支出)+EX-IM純輸出(海外


 GDPを支えているのは、この4つの主体です。


デフレの原因は、供給に比べて需要が足りない「デフレギャップ」にある。・・・需要が不足しているのは消費者が欲しがる商品を企業が作り出せていないからだ。・・・売れる商品を出さない限り業績は改善しない

 
Y+IM >C+I+G+EX

式において、「家計消費のCが伸びない、減っているからだ、それは企業が消費者の望む商品を供給していないからだ」という、先入観に基づく解説です。

 実際は、家計は消費を減らしてなんていません。

GDP C I G EX-IM


 家計消費は、いつも「順調」なのです。

・・・需要が不足しているのは消費者が欲しがる商品を企業が作り出せていないからだ。・・・売れる商品を出さない限り業績は改善しない。

のではありません。GDP=GDE(支出)において、Cは順調で、その割合も増えています。家計は消費の優等生なのです。(だから、消費税は、確実な税収が見込まれると考えられます)

GDPに占める C 消費割合.jpg


 需給ギャップがあるとすれば、I(企業投資)の減少です。本当に、政府投資+企業投資が激減しています。

参照ください

投資拡大→GDP増

 ・・・需要が不足しているのは消費者が欲しがる商品を企業が作り出せていないからだ。・・・売れる商品を出さない限り業績は改善しない。

 ではなく、「企業が投資していない」のが正解です。
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まとめtyaiました【経済学を学ぶとはどういうことか】

<経済学を学ぶとはどういうことか> デフレについて、また、

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No title

企業の「投資」を高校生にわかりやすく説明するにはどうしたらいいでしょうね。
彼らは「消費」や「貯蓄」「納税」はしていますが、「投資」はピンと来ないでしょう。

No title

例えば、「君たちが、蕎麦屋さんや、うどん屋さん、冷麺を提供する焼き肉屋さんを経営するとしよう。何が必要だろう?」と質問すると良いと思います。

 多分、「店舗や、いすや、テーブルや、食器、調理場の冷蔵庫、ガスコンロ、調理器具、食材、割り箸、電灯、配達用の車・・・」たくさん、必要なものがでてくると思います。それを「投資」と言います。

 評判がよければ、どんどん店舗を拡大できるでしょう(思い切って)。投資の拡大です。

 ですが、なかなかお客さんが入らなければ、食材だって購入量は減ります。割り箸も、減ります。

 投資は、こんな風に、将来予測や景気や、売上に左右されます。借金してやるのであれば、ケインズの「エイヤ!」っていう、アニマル・スピリットが必要になります。

No title

文化祭の模擬店係の生徒に準備の段階で話すと効果がありそうですね。
商業科ではどう教えているのだろう。連休明けに聴いてみますね。

それにしても日本経済全体の話になると、企業の先行き不安感が投資控えとなり、それが更にデフレをススメ、それがまた不安を大きくし…という負のスパイラルがあるみたいですね。
どっかの大企業が潰れるのを恐れずに暴走するかのように投資を拡大し、他者が「え?大丈夫なの?」と意欲を転じるとGDPは拡大するわけか・・・。

エリエールの坊ちゃん。まだ懲りないそうですが、外国のカジノでスるくらいなら自社を拡大したり、起業意欲のある若者に貸したら良かったのに・・・。
ギャンブルとしたら、ずっと面白いはずだが。まぁカジノで100億スるような人は経営眼もないか。

No title

 今日の読売によれば、主要118社のうち、景気が回復していると答えた割合は、「62%」です。景気は持ち直しています。

 大丈夫です。日本は震災から必ず立ち直ります。

No title

 伊藤東大教授の指摘するように、財政政策と金融政策をうまく政策協調して活用できるか、ということが、一番大きな論点では。
 新日銀法が成立して以降、日銀が、財政政策が引き締め方向だと、金融政策も遅れてはならじと引き締める。
 金融政策の方は、国会の議決が必要な財政政策と違い、日銀が政策委員会で決めれば実施できるという、機動的なのだから、財政政策がそうならうちもまけずに同じ方向というような、組織の縦割りみたいな行動をしなければ、近時の日本の経済状況はもっとましだったのではないか。
 この点をあまり解明してくださる方がいないので、このブログでも、これまでの財政政策と金融政策の協調的な運用の分析についてご教示いただく機会がそのうちあればありがたいと思う。

No title

高橋洋一とか中川(女)とか、小泉政権の経済政策を考えていた人たちの話を直に聴く機会を得ました。
この方々は自身の経済政策の弊害は棚に上げて、現状を非難しています。私も現状に不満なので彼らが非難してくれて構わないのですが、問題は中身。

彼らは金融政策を過大評価しているのではないのか、と思うのです。
デフレ/インフレが通貨的な現象であり、通貨量の操作でコントロール出来ると言うのは良いとして、それで日本国内の景気のムラをどうにか出来るわけではないことには全く触れない。
日本は、同じ「日本経済」でありながら地方ごとに通貨の価値や流通速度に大きな違いあるので、中央政府/中央銀行が把握する日本全体の景気判断と多くの地域・国民が一致するとは限らない。というか必ずどこかで一致しない。
それに、実際の仕事なしに金融を通して通貨をばらまいても貸出が増えるわけではなく、企業は金利がゼロ、ちょっとくらいマイナスだったとしても借りません。(マイナスでも借りませんよ。-0.1~-1だと0と同じですから絶対額として利率で儲けたなんて思いません。もちろん-10とか-20なら話は違いますが。)

高橋は、救国国債で20兆なんていってましたが、それだと政府が主張する年間のデフレギャップに及びません。効果はあるでしょうが足りない。まして高橋たちは乗数効果は無いか小さいと言ってるのですから、もっと巨額でなければいけないはず。
だいたい高橋は財政政策に効果がないと言っておきながら30兆/年くらいは出しても良いかもとその直後に言う人です。自分で強く主張する金融政策の規模より大きいじゃないですか。だったら財政が主で金融が従のポリシーミックスのことを言ってるのではないのかい、と話の途中で何度もつっこみをいれたくなりました。
中川女については、GDP1000兆円構想の話を聞きたくて尋ねたはずなのに、60兆円/年の金融政策の話をされてきました。
60兆は年額としてはいいかもしれません。でも、それを辞めた後は反動で縮小するんじゃないですか? むしろ30兆~40兆でいいから数年掛けておこなうべきで、総額として100兆とか200兆の規模で金をつぎ込むものではないのか?と首をかしげました。
おそらく中川女は、通貨量さえ増やせば具体的な需要がなくても企業間の貸借は起こりえるし、そこから生まれる信用創造はその後の金融政策や財政政策を必要としないくらい大きくて継続的なものになると思っているようです。そういうもんでしょうか?
それじゃ、なぜクラインとの共著のなかでポリシーミックスを主張するクラインに対して中川女がコメントを加えなかったのでしょうか、これ、共著の紹介と売り込みもあったので是非説明して欲しかった。

なんだか、良いように煙に巻かれたような、まだ何か騙されているような、そういう感じでいます。
私が頭悪いからですかね? 高橋や中川にはまた話を聞きたいし、質問したいものだと思ってます。

きっと説明正しいのでしょうが、分かりづらいです。。。

No title

トームさん

 そうですよね、難しいですよね。拙著【高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門Ⅱ】を、最寄の図書館でリクエストしてみてください。
 必ず全国の図書館から取り寄せてくれるはずですので、ぜひ、全体像をつかんでみてください。

 あるいは「三面等価」だけなら、カテゴリ「GDPとGNIとは?」を順番に・・・すみません。
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