大学教授のトンデモ論その4
<トンデモ論その4>
<追記>
土井丈朗『経済成長しても財政悪化 一体改革を断行せよ』週刊東洋経済H24.3.24
…増税をしなくても経済成長さえ高められれば日本の財政再建は実現できるとの見方は、客観的な根拠を欠く。
…経済成長率が1%上昇した時に税収が何%増加するかを示すのが「税収弾性値」だが…経済学的に認められる客観的手法を用いれば…1.1という分析結果が認められている。この値に基づき機械的に計算すれば、名目成長率を4%と高めに見ても、国と地方の税収の自然増は対GDP比で約0.1%、約5000億円でしかない(筆者注:毎年4%の高成長を見込み、弾性値を4%と高めに見積もっても2兆円)。…経済成長率が高まったとしても税の自然増収は多く期待できないのである。
http://shuchi.php.co.jp/article/495
簡単な数学でわかる「消費税増税は要らない!」/高橋洋一

高橋洋一(嘉悦大学教授)
以下、同氏ツイッター説明文より
嘉悦大学教授、(株)政策工房会長、博士(政策研究) 政治と経済の間を彷徨。財政・金融政策、年金数理、金融工学、統計学、会計、経済法、行政学。もともとは数学。役人の時は大蔵省、経済財政諮問会議特命、総務大臣補佐官、官邸(総理大臣補佐官補)
事実を見れば、増税不要は一目瞭然!
教授 こと消費税に限れば、「上げ潮派」のロジックって単純なんだよ。「名目成長すると消費税の増税がいらなくなる(または少なくなる)」。ただ、それだけ。で、これは、主義主張とかではなく、単なる事実なの。そのことを示すグラフがあるんだけどね。
S君 あるんですか!
教授 あるよ~。ほら、これ。

この話も、データだけあると、もう完全に「Q.E.D.」。証明終わりなんだよ。これは、縦軸に比率(パーセンテージ)、横軸に年月をとって、「名目GDP成長率」っていうのと、「プライマリーバランス(基礎的財政収支)対名目GDP比」っていうのを、それぞれドットして比較したものなんだ。普通のグラフで書くときには、両方の縦軸に異なる比率を書く。それぞれの比率の数字が、多少違っているからね。で、年月でとるんだけど、過去20年ぐらいとると ―― まあ、20年とっても30年とっても一緒なんだけどね ―― 名目GDP成長率が、昔はけっこう高くて、最近はもうゼロとかマイナスになっているのがわかるわけ。あ、忘れていたけど「名目GDP」というのは、国民の給与などをすべて合算したものだよ。
S君 名目GDPはよく国民所得とかいいますね。この成長率が高ければ、まあ、景気がいいと。これくらいなら、わかります(笑)。では「プライマリーバランス対名目GDP比」っていうのは、何を表しているんですか?
教授 プライマリーバランスっていうのは、過去の債務にかかわる元利払い以外の支出と、公債発行などを除いた収入との差の収支のことをいうんだ。まあ、民間企業でいう金融収支を除いた営業収支のことだね。で、これを、どうして名目GDPと比べるかというと、後でもう1回説明するけれど、財政の健全性を示す指標である「債務残高対名目GDP比」が「プライマリーバランス対名目GDP比」の動きに連動するからなの。ちょっとはしょって説明すると、プライマリーバランスが黒字であれば、「債務残高対名目GDP比」は大きくならず、「財政は健全である」ってことになるんだ。あ、念のために付け加えておくと、「A(の)対B比」といった場合は、A÷Bということね。
S君 なるほど。片や景気のよさ、片や財政の健全性を示すグラフなんですね。
教授 そういうこと。
S君 で、2つの曲線を見てみると……、あ、ほとんど一緒の変化をしていますね!
「名目GDP成長率」(=景気のよさ)が高ければ、「プライマリーバランス対名目GDP比」(=財政の健全さ)も高いし、前者が低ければ後者も低い。
教授 そう、そう。これで見るとね、ほとんど同じなの。だから、これは何をいっているかっていうと、名目GDP成長率を上げたら、プライマリーバランスも上がって財政が健全になるということ。それだけの話。以上、証明終わり。だから、与謝野さんがどんなに反論したって、データを見せたら終わりなんだよ(笑)。
S君 このグラフだけで全部示していると。単に蓄積されたデータだけですからね。
教授 そう、細工も何もしていない単なる事実の記述。そのまんま(笑)。こういうデータを持っているから、「名目GDP成長率を上げたら財政再建は終わる。だから、消費税増税は要らない」っていっているだけよ。
<その4>
「名目GDP成長率を上げたら財政再建は終わる。だから、消費税増税は要らない」のではなく、「名目GDP成長率を上げても、債務残高が減るわけではない。消費税増税は、必要」が正解です。
消費税を増税せず、プライマリーバランスを赤字(要するに、国債に頼る財政運営)を続けても、2015~2030年(最近は、もっと早くなると言われている)までには、経常収支赤字(資本収支黒字)になるので、海外からの借金に頼るしか方法はなくなります。海外からの借金=海外並みに金利が上がるということです。
好況時の金利アップなら、歓迎ですが、ギリシャのようにGDPマイナス成長下での金利アップは、最悪です。
現在の、長期金利(国債10年物)です。日本は、世界一の低水準です。

ギリシャは、不況(GDP減)なのに、金利上昇しています。

<金利上昇>
東学『資料政・経2012』
政府が100万円を金利10%で1年間借りる国債を発行するとしよう。金利は1年後に10万円払われ、元本100万円と合わせて110万円が返済される。

この1年後に110万円戻ってくる金融商品(債券)を「いくらで買うのか」ということになる。この商品を買いたい人が多く、価格が高くなる(例:105万円)と、105万円で購入し5万円の金利が払われることになるので、5÷105=4.76%の実質的な金利になる(国債価格上昇=金利下落)。逆に買いたい人が少なく、価格が低くなると(例:90万円)実質金利は20÷90=22%(国債価格下落=金利上昇)となる。
債券価格高=金利低
債券価格低=金利高
すでに、必要なカネのうち、半分以上は、公債(未来からの借金)です。

実教出版『2012 新・政治経済資料』p233

現役世代が減少するので、所得税は減少することが分かります。
法人税は、「景気がいい時(2002年→2007年)」は伸びましたが、その後リーマン・ショックで、また低下しました。
「法人税引き下げは、大企業優遇だ。もっと大企業から取ればいい!」ですか?そもそも、法人税は、日本の7割の企業は払っていません。日本の企業は、なぜかみな赤字??だからです。
http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/hojin2008/pdf/hojinsu.pdf
このように、所得税、法人税に頼れない中、何に頼ったらよいのでしょう?それは、消費税しかありません。
GDP=国内総支出GDE
=C消費(家計が主)+I投資(企業が主)+G(政府支出)+EX-IM純輸出(海外)
GDPを支えているのは、この4つの主体です。そして、税の面からは、最も安定しているのが、C消費(家計が主)なのです。

よく、「不景気になると、消費が減る」と言われます。確かにリーマンショックで、がくんと落ち込んでいます。しかし、C消費のGDPに占める割合自体は、「安定」しているのです。
つまり、「C消費」は、日本の経済安定の「優等生」なのです(それに比べて企業投資Iの長期下落を見てください)。

はっきりしているのは、日本の税収を「安定的に」支えるのは、今のところ「消費税」しかないという事実です。
では、この消費税を引き上げず、プライマリーバランスを赤のままにして、現在のように財政赤字を続けたらどうなるか。結局、ギリシャのように、「不況下の金利上昇」に陥ります。
<経常収支赤字=海外からの資金借り入れ>
さて、昨年の「貿易赤字」は、新聞紙上を大いににぎわせました。
日経H24.1.26



日経H24.1.31

経常収支が赤字になると、国内だけではお金が足りず、海外に頼らないと政府も借金を賄えなくなる。
これについて、解説します。
まず、GDPの三面等価です。

この場合、EX-IMは、純輸出(貿易黒字)です。
で、GDPと、GNPの差ですが、
GDPとGNPの差
海外からの純所得、つまり、経常収支のことです。
経常収支=①貿易収支②所得収支③経常移転収支

このように、「経常収支黒字」=「資本収支赤字」のことで、資本(カネ)赤ですから、海外への資本貸付になります。つまり、海外の日本に対する借金のことです。
ブログカテゴリ 国際収支表参照
注)メカニズムは、資本収支赤字(海外投資)→経常黒字になります。カネの動きが実物経済を決めます。
資本(カネ)の動きは、実物経済の95倍です。それは、この国際収支表では「相殺」されて記載されません。

で、この2009年の13兆2867億円は、日本の海外資産増になるので、こうなります。

.jpg 挿入
つまり、「海外純資産260兆円(株や債券、土地など)」→「配当や利子など=所得収支」となり、過去の経常収支黒字(資本収支赤字)の積み上げが、今期の所得収支黒字を産み出し、さらに「海外資産」の積み上げになるのです。
ただし、海外資産をいくら積み上げても、ドルやユーロのことなので、日本国内に還流させることはできません。「貿易黒字はもうけ」ではないのです。
GNPの三面等価図です。


(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
(S)=(I)+(G-T)+(EX-IM)
このようになっていますね。
政府が歳出する金額(G)を、T(税金+公保険)が下回る場合、政府は借金をすることになります。図では(G-T)部分が、公債費(政府の借金)に相当します。
(G-T)を購入する原資は、国内総所得から税T(社会保険料などを含む)・消費支出Cを差し引いた残りである、国民の貯蓄Sです。これは、われわれ一人ひとり、企業の一軒一軒の貯蓄(…財布のなかのお金・タンス預金、金融機関への預貯金、株式や債券の購入、民間の生損保、医療保険、年金の支払い金etc)のことです。「家計の金融資産1500兆円」とは、毎年の貯蓄Sのうち、家計の貯蓄相当分の累積のことです。
つまり、現在は、この貯蓄Sが十分にあるので、政府(G-T)や企業(I)や海外(EX-IM)に貸し付けられるのです。この海外貸付分が、GNPのEX-IM=経常収支黒字のことです。
日経H24.1.31『ゼミナール 経常収支の黒字は続くのか』
経常収支を国内の資金需要からみると、経常収支と国内貯蓄は表裏一体の関係にある。経常収支が黒字だということは、国内での投資以上に貯蓄が存在する状態、つまりカネ余りの状況にあることを意味する。
ところが、その豊富な国内資金を支えてきた貯蓄S、特に家計貯蓄が低下しています。
新聞を解説 『国の借金 家計の貯蓄頼み限界』日経H22.12.30
…少子高齢化で家計の貯蓄率は07年度に過去最低の1.7%まで低下。「3~5年後にはマイナスに転じる」との見方もある。…日生基礎研究所の櫨浩一経済調査部長は「貯蓄率がマイナスになれば、海外からの投資増が必要になる…」と語る
ところが、「…少子高齢化で家計の貯蓄率は07年度に過去最低の1.7%まで低下。「3~5年後にはマイナスに転じる」との見方もある。」ということです。
櫨浩一『貯蓄率ゼロ経済』日本経済新聞社 2006年 p11 p106
2020年頃には家計貯蓄率はゼロに


現在の、S-Iがゼロ、あるいはマイナスになると言うことです。国民の貯蓄だけで、投資がまかないきれなくなる可能性があるということです。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
(1)左辺ゼロ=財政赤字マイナス+経常黒字プラス
(2)左辺マイナス=財政赤字マイナス+経常黒字マイナス
つまり、財政赤字をこのままにしておけば、将来的に、経常黒字がマイナス、つまり経常赤字=資本黒字(海外からの借り入れ)となるのです。

早くて2015年、遅くても2030年と予測されています。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
アメリカの場合、
貯蓄不足(マイナス)=財政赤字(マイナス)+経常赤字(マイナス)となっています。
上記式の、左辺、財政赤字(マイナス)+経常赤字(マイナス)の様子です。
時事ドットコム 図解・国際 米国の財政状況2010年2月

財政赤字は、毎年!100兆円を超えています。
http://3rdworldman.jugem.jp/?eid=122

経常赤字(マイナス)=日本への資金流入となります。国債は海外からの資金に依存することになり、外国並みの金利にしなければ、売れなくなることを意味します。なぜなら、海外の投資家は、もうかる=「金利の高い」ところに投資するからです。日本の国債の金利が低くて、自国や、欧米各国の金利が高いのなら、日本の国債を買う意味がありません。
そうすると金利を上げなければ、国債は売れないということです。

その時、日本が「好景気」で、金利が上昇すれば全くないのですが、不景気なのに金利が上昇したら、最悪です。

高橋洋一
名目GDP成長率を上げたら、プライマリーバランスも上がって財政が健全になるということ。それだけの話。以上、証明終わり。
こういうデータを持っているから、「名目GDP成長率を上げたら財政再建は終わる。だから、消費税増税は要らない」っていっているだけよ。
こんなに単純に行くわけがないことが、お分かりでしょうか?だから、高橋さんの論は、「トンでも」、いえ、はっきり言って「害」なのです。
<追記 銀行が動く>
朝日新聞 H24,2.2

銀行は、38%もの国債を持っていますので、国債価格下落ということになれば、数兆円~数十兆円規模のバランス・シート破損(不良債権処理と同じ構図)になります。
日本国債は「借り換え(要するに新たな国債証書発行・・古い証書と新しい証書の交換)」で、まかなっていますので、国債価格下落=金利上昇は、どのような主体にとっても、ダメージが大きいのです。
<追記>
土井丈朗『経済成長しても財政悪化 一体改革を断行せよ』週刊東洋経済H24.3.24
…増税をしなくても経済成長さえ高められれば日本の財政再建は実現できるとの見方は、客観的な根拠を欠く。
…経済成長率が1%上昇した時に税収が何%増加するかを示すのが「税収弾性値」だが…経済学的に認められる客観的手法を用いれば…1.1という分析結果が認められている。この値に基づき機械的に計算すれば、名目成長率を4%と高めに見ても、国と地方の税収の自然増は対GDP比で約0.1%、約5000億円でしかない(筆者注:毎年4%の高成長を見込み、弾性値を4%と高めに見積もっても2兆円)。…経済成長率が高まったとしても税の自然増収は多く期待できないのである。
http://shuchi.php.co.jp/article/495
簡単な数学でわかる「消費税増税は要らない!」/高橋洋一

高橋洋一(嘉悦大学教授)
以下、同氏ツイッター説明文より
嘉悦大学教授、(株)政策工房会長、博士(政策研究) 政治と経済の間を彷徨。財政・金融政策、年金数理、金融工学、統計学、会計、経済法、行政学。もともとは数学。役人の時は大蔵省、経済財政諮問会議特命、総務大臣補佐官、官邸(総理大臣補佐官補)
事実を見れば、増税不要は一目瞭然!
教授 こと消費税に限れば、「上げ潮派」のロジックって単純なんだよ。「名目成長すると消費税の増税がいらなくなる(または少なくなる)」。ただ、それだけ。で、これは、主義主張とかではなく、単なる事実なの。そのことを示すグラフがあるんだけどね。
S君 あるんですか!
教授 あるよ~。ほら、これ。

この話も、データだけあると、もう完全に「Q.E.D.」。証明終わりなんだよ。これは、縦軸に比率(パーセンテージ)、横軸に年月をとって、「名目GDP成長率」っていうのと、「プライマリーバランス(基礎的財政収支)対名目GDP比」っていうのを、それぞれドットして比較したものなんだ。普通のグラフで書くときには、両方の縦軸に異なる比率を書く。それぞれの比率の数字が、多少違っているからね。で、年月でとるんだけど、過去20年ぐらいとると ―― まあ、20年とっても30年とっても一緒なんだけどね ―― 名目GDP成長率が、昔はけっこう高くて、最近はもうゼロとかマイナスになっているのがわかるわけ。あ、忘れていたけど「名目GDP」というのは、国民の給与などをすべて合算したものだよ。
S君 名目GDPはよく国民所得とかいいますね。この成長率が高ければ、まあ、景気がいいと。これくらいなら、わかります(笑)。では「プライマリーバランス対名目GDP比」っていうのは、何を表しているんですか?
教授 プライマリーバランスっていうのは、過去の債務にかかわる元利払い以外の支出と、公債発行などを除いた収入との差の収支のことをいうんだ。まあ、民間企業でいう金融収支を除いた営業収支のことだね。で、これを、どうして名目GDPと比べるかというと、後でもう1回説明するけれど、財政の健全性を示す指標である「債務残高対名目GDP比」が「プライマリーバランス対名目GDP比」の動きに連動するからなの。ちょっとはしょって説明すると、プライマリーバランスが黒字であれば、「債務残高対名目GDP比」は大きくならず、「財政は健全である」ってことになるんだ。あ、念のために付け加えておくと、「A(の)対B比」といった場合は、A÷Bということね。
S君 なるほど。片や景気のよさ、片や財政の健全性を示すグラフなんですね。
教授 そういうこと。
S君 で、2つの曲線を見てみると……、あ、ほとんど一緒の変化をしていますね!
「名目GDP成長率」(=景気のよさ)が高ければ、「プライマリーバランス対名目GDP比」(=財政の健全さ)も高いし、前者が低ければ後者も低い。
教授 そう、そう。これで見るとね、ほとんど同じなの。だから、これは何をいっているかっていうと、名目GDP成長率を上げたら、プライマリーバランスも上がって財政が健全になるということ。それだけの話。以上、証明終わり。だから、与謝野さんがどんなに反論したって、データを見せたら終わりなんだよ(笑)。
S君 このグラフだけで全部示していると。単に蓄積されたデータだけですからね。
教授 そう、細工も何もしていない単なる事実の記述。そのまんま(笑)。こういうデータを持っているから、「名目GDP成長率を上げたら財政再建は終わる。だから、消費税増税は要らない」っていっているだけよ。
<その4>
「名目GDP成長率を上げたら財政再建は終わる。だから、消費税増税は要らない」のではなく、「名目GDP成長率を上げても、債務残高が減るわけではない。消費税増税は、必要」が正解です。
消費税を増税せず、プライマリーバランスを赤字(要するに、国債に頼る財政運営)を続けても、2015~2030年(最近は、もっと早くなると言われている)までには、経常収支赤字(資本収支黒字)になるので、海外からの借金に頼るしか方法はなくなります。海外からの借金=海外並みに金利が上がるということです。
好況時の金利アップなら、歓迎ですが、ギリシャのようにGDPマイナス成長下での金利アップは、最悪です。
現在の、長期金利(国債10年物)です。日本は、世界一の低水準です。

ギリシャは、不況(GDP減)なのに、金利上昇しています。

<金利上昇>
東学『資料政・経2012』
政府が100万円を金利10%で1年間借りる国債を発行するとしよう。金利は1年後に10万円払われ、元本100万円と合わせて110万円が返済される。

この1年後に110万円戻ってくる金融商品(債券)を「いくらで買うのか」ということになる。この商品を買いたい人が多く、価格が高くなる(例:105万円)と、105万円で購入し5万円の金利が払われることになるので、5÷105=4.76%の実質的な金利になる(国債価格上昇=金利下落)。逆に買いたい人が少なく、価格が低くなると(例:90万円)実質金利は20÷90=22%(国債価格下落=金利上昇)となる。
債券価格高=金利低
債券価格低=金利高
すでに、必要なカネのうち、半分以上は、公債(未来からの借金)です。

実教出版『2012 新・政治経済資料』p233

現役世代が減少するので、所得税は減少することが分かります。
法人税は、「景気がいい時(2002年→2007年)」は伸びましたが、その後リーマン・ショックで、また低下しました。
「法人税引き下げは、大企業優遇だ。もっと大企業から取ればいい!」ですか?そもそも、法人税は、日本の7割の企業は払っていません。日本の企業は、なぜかみな赤字??だからです。
http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/hojin2008/pdf/hojinsu.pdf
このように、所得税、法人税に頼れない中、何に頼ったらよいのでしょう?それは、消費税しかありません。
GDP=国内総支出GDE
=C消費(家計が主)+I投資(企業が主)+G(政府支出)+EX-IM純輸出(海外)
GDPを支えているのは、この4つの主体です。そして、税の面からは、最も安定しているのが、C消費(家計が主)なのです。

よく、「不景気になると、消費が減る」と言われます。確かにリーマンショックで、がくんと落ち込んでいます。しかし、C消費のGDPに占める割合自体は、「安定」しているのです。
つまり、「C消費」は、日本の経済安定の「優等生」なのです(それに比べて企業投資Iの長期下落を見てください)。

はっきりしているのは、日本の税収を「安定的に」支えるのは、今のところ「消費税」しかないという事実です。
では、この消費税を引き上げず、プライマリーバランスを赤のままにして、現在のように財政赤字を続けたらどうなるか。結局、ギリシャのように、「不況下の金利上昇」に陥ります。
<経常収支赤字=海外からの資金借り入れ>
さて、昨年の「貿易赤字」は、新聞紙上を大いににぎわせました。
日経H24.1.26



日経H24.1.31

経常収支が赤字になると、国内だけではお金が足りず、海外に頼らないと政府も借金を賄えなくなる。
これについて、解説します。
まず、GDPの三面等価です。

この場合、EX-IMは、純輸出(貿易黒字)です。
で、GDPと、GNPの差ですが、
GDPとGNPの差

海外からの純所得、つまり、経常収支のことです。
経常収支=①貿易収支②所得収支③経常移転収支

このように、「経常収支黒字」=「資本収支赤字」のことで、資本(カネ)赤ですから、海外への資本貸付になります。つまり、海外の日本に対する借金のことです。
ブログカテゴリ 国際収支表参照
注)メカニズムは、資本収支赤字(海外投資)→経常黒字になります。カネの動きが実物経済を決めます。
資本(カネ)の動きは、実物経済の95倍です。それは、この国際収支表では「相殺」されて記載されません。

で、この2009年の13兆2867億円は、日本の海外資産増になるので、こうなります。

.jpg 挿入
つまり、「海外純資産260兆円(株や債券、土地など)」→「配当や利子など=所得収支」となり、過去の経常収支黒字(資本収支赤字)の積み上げが、今期の所得収支黒字を産み出し、さらに「海外資産」の積み上げになるのです。
ただし、海外資産をいくら積み上げても、ドルやユーロのことなので、日本国内に還流させることはできません。「貿易黒字はもうけ」ではないのです。
GNPの三面等価図です。


(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
(S)=(I)+(G-T)+(EX-IM)
このようになっていますね。
政府が歳出する金額(G)を、T(税金+公保険)が下回る場合、政府は借金をすることになります。図では(G-T)部分が、公債費(政府の借金)に相当します。
(G-T)を購入する原資は、国内総所得から税T(社会保険料などを含む)・消費支出Cを差し引いた残りである、国民の貯蓄Sです。これは、われわれ一人ひとり、企業の一軒一軒の貯蓄(…財布のなかのお金・タンス預金、金融機関への預貯金、株式や債券の購入、民間の生損保、医療保険、年金の支払い金etc)のことです。「家計の金融資産1500兆円」とは、毎年の貯蓄Sのうち、家計の貯蓄相当分の累積のことです。
つまり、現在は、この貯蓄Sが十分にあるので、政府(G-T)や企業(I)や海外(EX-IM)に貸し付けられるのです。この海外貸付分が、GNPのEX-IM=経常収支黒字のことです。
日経H24.1.31『ゼミナール 経常収支の黒字は続くのか』
経常収支を国内の資金需要からみると、経常収支と国内貯蓄は表裏一体の関係にある。経常収支が黒字だということは、国内での投資以上に貯蓄が存在する状態、つまりカネ余りの状況にあることを意味する。
ところが、その豊富な国内資金を支えてきた貯蓄S、特に家計貯蓄が低下しています。
新聞を解説 『国の借金 家計の貯蓄頼み限界』日経H22.12.30
…少子高齢化で家計の貯蓄率は07年度に過去最低の1.7%まで低下。「3~5年後にはマイナスに転じる」との見方もある。…日生基礎研究所の櫨浩一経済調査部長は「貯蓄率がマイナスになれば、海外からの投資増が必要になる…」と語る
ところが、「…少子高齢化で家計の貯蓄率は07年度に過去最低の1.7%まで低下。「3~5年後にはマイナスに転じる」との見方もある。」ということです。
櫨浩一『貯蓄率ゼロ経済』日本経済新聞社 2006年 p11 p106
2020年頃には家計貯蓄率はゼロに


現在の、S-Iがゼロ、あるいはマイナスになると言うことです。国民の貯蓄だけで、投資がまかないきれなくなる可能性があるということです。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
(1)左辺ゼロ=財政赤字マイナス+経常黒字プラス
(2)左辺マイナス=財政赤字マイナス+経常黒字マイナス
つまり、財政赤字をこのままにしておけば、将来的に、経常黒字がマイナス、つまり経常赤字=資本黒字(海外からの借り入れ)となるのです。

早くて2015年、遅くても2030年と予測されています。
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)
アメリカの場合、
貯蓄不足(マイナス)=財政赤字(マイナス)+経常赤字(マイナス)となっています。
上記式の、左辺、財政赤字(マイナス)+経常赤字(マイナス)の様子です。
時事ドットコム 図解・国際 米国の財政状況2010年2月

財政赤字は、毎年!100兆円を超えています。
http://3rdworldman.jugem.jp/?eid=122

経常赤字(マイナス)=日本への資金流入となります。国債は海外からの資金に依存することになり、外国並みの金利にしなければ、売れなくなることを意味します。なぜなら、海外の投資家は、もうかる=「金利の高い」ところに投資するからです。日本の国債の金利が低くて、自国や、欧米各国の金利が高いのなら、日本の国債を買う意味がありません。
そうすると金利を上げなければ、国債は売れないということです。

その時、日本が「好景気」で、金利が上昇すれば全くないのですが、不景気なのに金利が上昇したら、最悪です。

高橋洋一
名目GDP成長率を上げたら、プライマリーバランスも上がって財政が健全になるということ。それだけの話。以上、証明終わり。
こういうデータを持っているから、「名目GDP成長率を上げたら財政再建は終わる。だから、消費税増税は要らない」っていっているだけよ。
こんなに単純に行くわけがないことが、お分かりでしょうか?だから、高橋さんの論は、「トンでも」、いえ、はっきり言って「害」なのです。
<追記 銀行が動く>
朝日新聞 H24,2.2

銀行は、38%もの国債を持っていますので、国債価格下落ということになれば、数兆円~数十兆円規模のバランス・シート破損(不良債権処理と同じ構図)になります。
日本国債は「借り換え(要するに新たな国債証書発行・・古い証書と新しい証書の交換)」で、まかなっていますので、国債価格下落=金利上昇は、どのような主体にとっても、ダメージが大きいのです。
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