非正規雇用者を守りたいなら、正規雇用者が痛みを分かち合うこと

<非正規雇用者を守る=正規雇用者が痛むこと>

 北海道新聞 H24.1.4 社説

「競争より共存の働き方を 地域で雇用の機会を開拓する/生きがい・やりがいあってこそ」

 …完全失業率は4%台で高止まりし、新卒でも正規雇用の道が開かれない場合がある。
 働くことができても、十分な収入を得られない人は多い。年収200万円未満のワーキングプア(働く貧困層)は、1千万人を超えた

…生活が成り立つ収入を確保しなければならない。まずは、企業労働者のうち39%を占めるようになった非正規社員の待遇を改善するべきだ。

 正社員と同じ仕事のパートや派遣など有期契約労働者の6割が、年収200万円以下のためだ。正規、非正規の差別を解消するため、同一価値労働、同一賃金に近づけたい。

 広島市内を中心に路面電車を運行する広島電鉄は09年に、車掌と運転士について、正社員と契約社員の賃金を一本化した。

 財源を捻出するためにベテラン正社員の給与の一部を削る形となったが、「仕事の内容に違いがない」として労使が歩み寄った。正規社員でつくる労働組合も、非正規の待遇に無関心であってはならない。

 そして、仕事の分かち合いだ。雇用機会を確保するには同世代ばかりでなく、高齢者と若者のワークシェアリングを図る必要がある。

 …ワークシェアリングは労働時間を減らし、趣味や生きがいに費やす時間を増やす。働くことによって人生の可能性が広がる社会にしたい。
 

 前回記事、「ワーキングプアって本当にいるの?」もあわせてご覧ください。

浜島書店『最新 図説政・経』p283
正規 非正規雇用 年収
実教出版『新政治・経済資料』p263非正規雇用 年収

 道新(北海道では、北海道新聞のことを、ドーシンという。沖縄の地元新聞シェアにつぐ、圧倒的シェアを誇る)の給与です。

 週刊ダイヤモンド2008.9月16日号

新聞社 給与


 表は、新聞・通信各社における想定モデルの基準内賃金(月給)と今年夏の賞与。一見すると普通だが、基準内賃金に残業代や各種手当が加算され、実際の月給が倍近い会社もある。
 新聞社では、朝日新聞社、読売新聞社、日本経済新聞社の年収が高く、大体30代前半で1000万円を突破する。実際、全国紙に勤める記者(28歳)の年収は約800万円。


ご覧ください

http://careerconnection.jp/review/weekly20110606.html
ガラパゴス業界なのにボーナス100万円
朝日、毎日、読売、日経……新聞社の給与格差
 


 そもそも、独占業界(TVやラジオの電波、東電や東ガスの公共、交通機関)は、給与が高いですよね。TV業界なんて、軽く1000万を超えている・・・それなのに、実際に、TV番組制作を請け負っている下請け、2次3次4次請けは限りなく、低賃金・長時間労働と聞きます。同一労働・同一賃金なんて、「よく言うよ」という感じです。


 新聞、これも、「再販制」という規制に守られた「独占」業界です。ある1社が値上げすると、ほかの新聞もそれとなく値上げします。横並びです。しかも、再販制(雑誌や、図書って、定価販売で、値引きはないですよね・・これと同じ)ですから、値引きはありません。「競争」「市場メカニズム」全く働いていない、おいしい世界です。

 「再販制維持」のためには、業界あげて反対キャンペーン、いわく、「活字に触れられない地域を作るな!(競争で淘汰される)」。

 既得権益を(つまり自分たちの生活を)守るというのは、どこも同じですね。
 人口減、若年層の新聞離れで、今のスタイルが維持できるわけもなく、長期で見ると、「ジリ貧」業界です。

ご覧ください

http://www.casphy.com/bbs/test/read.cgi/sinhaitatsu/1215668819/l50
道新配達の経験ある方教えてください。

http://jinji.hokkaido-np.co.jp/keiyaku/index.html
北海道新聞社 採用情報 
契約スタッフ (フルタイム・アルバイト)採用情報

http://hoppojournal.kitaguni.tv/e1667897.html
北方ジャーナル
「道新グループで終焉へ向かう“菊池体制”」

http://www.hokkaido-np.co.jp/cont/oh-sapporo/12004.html「官が高すぎ?民が低すぎ? 現業部門 給与格差 (2007/07/28) 」
 


 ワーキング・プアなるものを何とかしたいなら、まず「隗より始めよ」、「再販制度なくせ」「ドーシン内での非正規雇用と正規雇用の格差をなくそう」って言わないと、お話になりません。

正規雇用 非正規雇用 壁

 正規雇用者解雇は、ものすごくハードルが高いです。

http://r25.yahoo.co.jp/fushigi/rxr_detail/?id=20100819-00003300-r25
「日本の正社員はどうしてクビにされにくいのか?」
OECDは、「日本はOECD諸国の中で実質的に最も解雇規制が厳しい国のひとつ」「正規雇用への保護が手厚すぎる」と指摘している。

正規社員 解雇 要件

とうほう 『政治・経済資料2012』 P273

日本の解雇規制 判例の積み重ねとして、最高裁が下した「整理解雇の四条件」が基本。
1.人員整理の必要性(余剰人員を削減しなければ経営維持不可能という程度の必要性が認められることが不可欠)。
2.解雇回避努力義務の履行を
3.被解雇者選定の合理性
4.手続きの妥当性(説明・協議・納得の手続き等)。

この要件適合しないと不当解雇とされ、解雇無効となる。



 雇用する側に立ってみましょう。仕事はいつも一定ではありません。年によって、月によって、長期で変ります。職種によっては、ある時期のみ忙しくなる職種はあります(宅配、引っ越し、不動産etc)。繁忙期(好調期)に合わせて、正規雇用者の数を合わせることができません。
 
 フランスの若者の失業率、突出しています。

日経H24.1.19
若者 失業率

 とにかく、フランスの無期限契約(正規雇用)は、日本以上に鉄壁で、事実上、ほとんど、解雇はできません。そのしわ寄せが若者に行っています。以前は、3か月間の試用期間内であれば自由に解雇だったものが、2年に延長され(よかれと思って導入した)、若い人が雇用弁になっています。そもそも、退職者の補充の際に新規者を雇うので、就職先が常にあるわけではありません。
正規雇用 非正規雇用 壁


<空理空論>


http://nipposo.net/article/125562742.html
非正規雇用の公務員、6割以上が「ワーキングプア」 <北海道新聞>

 道内の自治体で働く非正規雇用の公務員のうち、平均年収200万円未満で働く「官製ワーキングプア(働く貧困層)」が6割以上を占めていることが、連合北海道と川村雅則・北海学園大准教授が初めて実施した共同調査で分かった。

 道内地方公務員のうち非正規は3割、約2万人とされる。

 昨年の収入(勤続1年以上)は150万~200万円未満が27%と最多で、100万~150万円未満(22%)、200万~250万円未満(20%)、100万円未満(14%)と続いた。

 非正規雇用に多い60歳未満の女性の職種別(勤続1年以上)では、学校用務の93%、学校給食の86%、保育士の83%が年収200万円未満だった。学校職員が多いのは、夏休みや冬休み中に一度解雇され、次学期が始まる際に再雇用される例が多いためという。

 また、生活のための主な収入について、50%が自分の収入と回答。配偶者の収入が37%、親の収入が7%で、川村准教授は「従来の『補助的な稼ぎ』というイメージと実態がかけ離れていることが分かった」と言う。
 川村准教授は「財政悪化を背景に劣悪な環境で働かせる官製ワーキングプアが横行している」と指摘している。


 川村先生。「生活のための収入が、配偶者の収入37%、親の収入7%(合計44%)」って、「100万円未満14%、100万~150万円未満(22%)」の36%が完全に含まれているのではないですか?

 つまり、主婦のパートで、年収を103万円、130万円に抑えている人たちではないのですか?

 どうして、この層を抽出する、「年収と世帯収入」のデータを、出さないのですか?どうしても、意図的にとしか思われません。そのようなクロス集計を出さないのはなぜですか? まずいのですか?


http://www.econ.hokkai-s-u.ac.jp/~masanori/2011hiseiki-hakusyo
川村雅則 北海学園大学 「非正規労働者白書」

P42
 北大の資料によると、2011 年度の場合、契約職員(フルタイム労働者)が約800 人、短時間勤務職員(パートタイム労働者)が約4500 人も働いています。医員、研究員や学生アシスタントあるいは非常勤講師らをここから除いても、合計で約1500 人もの一般職非正規職員が働いています。さらに北大と直接雇用の関係にない、派遣労働者や請負労働者も数多く働いています。

 しかしながら年間総収入のピークは、短時間勤務職員は130 万円前後であって、フルタイムで働く契約職員でも、「200~250 万円」が最も多いという状況です(図表6-2)。
非正規雇用 年収 北大
こうしたなかで、自分の給与が正当に評価されていないという回答も多く寄せられています。




 だから、短時間勤務の130万前後の人の、世帯年収はなぜ出さないのですか?

「官製ワーキングプア」とは、北大の非正規雇用者のような枠組みのことです。

 下記の人たちは、このような、官製ワーキングプアをなくそうと取り組んでいます。

http://www015.upp.so-net.ne.jp/hanhinkondo/
「公契約条例でなくそう 官製ワーキングプア集会」
 主催「反貧困ネット北海道」
代表  山口二郎(北海道大学)
     中島岳志(北海道大学)
    川村雅則(北海学園大学、建設政策研究所北海道センター理事長)
    木下武徳(北星学園大学)



http://www.hokudai.ac.jp/bureau/top-sub/johokoukai/zaimu/report_2011/pdf/contents/6.pdf 北海道大学の財務諸表が公開されています。

 経常費843億91百万円のうち、人件費が453億36百万円です。(ほかの項目に計上されている人件費もあるので、本当はもう少し増えます)

 税金が349億76百万円交付されています。授業料等が99億81百万円です。

北大 人件費

 さて、では、非正規雇用者の環境改善のために、税金投入や、授業料値上げをすべきだということなのでしょうか?

 地方公共団体と、国の公債、合わせて1000兆円を超えました。はっきりいって、これ以上税金投入(大きな政府化)はできないでしょう。では、彼らは、非正規雇用者の給与のために、どこからその収入を持ってこようとしているのでしょうか?
 
 学費の値上げでしょうか?でも、彼らは反対するのではないでしょうか?

http://www.hokudai.ac.jp/bureau/top-sub/johokoukai/18yakusyokukyuyo.pdf#search='北海道大学 教授 年収' 

 平成18年、北海道大学教員の平均年収は900万8千円(47歳)です。総額168億18百万円です。1割カットすると、彼らの年収は810万円になります。カットした総額16.8億円が「非正規雇用者」に配分されます。北大の非正規雇用者1500人に分けると、一人112万円の増収になります。

非正規雇用 年収 北大2

 山口先生、中島先生、川村先生、率先して、「自分たち、大学教員の給与を1割カットして、大学の非正規労働者に分配しよう」と、運動してはいかがでしょうか。総人件費は、これ以上増やせないようです。


 これらの人の最大の欠点です。それは、視点が「ミクロ」にとどまり、「マクロ」に全く考えが及ばないということです。

 ミクロはオープンな世界、マクロは閉じた世界という決定的な違いがあります。例えば、リストラで、その会社(ミクロ)の固定費を削減させることに成功した=マクロでは失業者増ということです。

 スーパーで一番目立つカップ麺コーナーの棚が、あるメーカーに占領されたら、ほかのメーカーははじき出されます。

 誰かが成功すれば、誰かにしわ寄せがいく・・・これがマクロの考え方です(全体のパイが大きくなっている場合は別に考えましょう)。

 非正規労働者の賃上げを!は結構ですが、そのカネは無尽蔵にあるわけではなく、必ず限界があります。

2010年 名目GDP 三面等価

 これが、今の日本で分配できるカネの総額です。このうち、国民所得は、2009年「生産=分配=支出」で、336兆27百億円です。どこからぞうきんを絞っても、日本人の所得は、これ以上1円も出てきません。つまり、パイは限られているのです。

 そして、労働分配率、つまり、その所得のうち、労働者(経営者も含む)にどのくらい配分されているかですが、日本は、ずっと拡大してきました。

http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je07/07f21040.html
平成19年度白書

労働分配率

とうほう『政治経済資料2012』P270
労働分配率


 実は労働分配率は短期的にみると、「不況になると上がる」のです。図を見ると、2002年からの戦後最長の景気拡大期には、分配率は低下しています。そして、2009年にボンと跳ね上がっています。(98年不況も同様)

 企業にとって、固定費(給与)は一定です。歩合給ではないので、不況になったら、すぐに下げられるというものではありません。
 だから、2009年の戦後最大の不況の時に、(給与/もうけ)である労働分配率は跳ね上がるのです。跳ね上がった時は、よくない(不況)ということです。

国民総所得 GDI 国民所得 NI 分配


 この図を見て分かるように、どこからか、給与が降ってくるわけではありません。要するに、打ち出の小づちはどこにもないのです。

 非正規雇用者の待遇を改善しろ! 給与アップしろ!って、あとはどこからおカネを持ってくるつもりなんでしょう?企業の所得を、さらに、労働者に回せって?


労働分配率小 大


 労働分配率は、大→中→小企業にいくほど、高くなっています。つまり、小さい企業ほど、利益のほとんどは人件費、人件費のために働いているといっても過言ではありません。小規模企業では、87%に上ります。

 一番大変な業界が、日本の事業所数で99%を占める中小企業です。そして、地方に行けばいくほど、最低賃金近辺での雇用になります。

 最低賃金を10円、20円上げると、この小企業を直撃することが分かります。冗談ではなく、10円、20円が、これらの企業にとっては死活問題になります。

 どこから、「人件費」がわいてくるのですか?

 トヨタの07年から09年研究開発費2兆6000億円(日経H24.1.26)。このようなものを、労働者に回すのですか?こんなにかけてもディーゼルエンジンをBMWから調達せざるを得ず、「くやしい思い(トヨタ幹部)」をしているのにですか?

 そもそも、大変なのは、給与水準の高い大企業ではなくて、地方の中企業、小企業なのではないですか?ここで働いている人々の「労働環境改善」こそが、あなたたちの目指しているところではないのですか?


 大学教授らの言っている、「非正規労働者の給与UP」は、マクロの視点抜きには、そもそも考えられないことが分かるはずです。マクロで考えると、当然「正規労働者」と「非正規労働者」の給与総額が、考慮の対象になります。つまり、「自分の給与」も、避けて通ることが出来ない「要素」になります。


 ではどうしたらいいかです。答ですか?経済学ではものすごく単純です。どうすればパイ(GDP=GDIや、国民所得)を増やすかです。パイが大きくなれば、その配分も大きくできる・・・失業率改善や、時給UPは、これしか方法がありません(どのように配分するかは、政治問題です)。

日 中 米 名目GDP

 なぜ、日本だけ、一人勝手に足踏みしているのですか?「失われた20年?」日本の経済政策、ふざけてませんか?もう十分すぎるほど結果が出ているのに、未だに何をやっているんですか?

 日本の総人口が減っています。GDPは微増もしくは微減でしょう。そうすると、一人当たりGDPが重要です。ここを維持、もしくは、少しでもUPさせていくことが、労働問題の解決につながります。というより、これしか解決の方法はありません。

 「北大の非正規労働者の待遇を改善しろ!ただし、正規職員の給与に手を付けないで!」
 
 こんな、近視眼的(ミクロ)思考で済むような改善策など、どこにもないのです。

<追記 H24.2.22 朝日北海道版>

川村

 何の調査をやっているんだか・・。無作為抽出もせず、世帯年収も調べず・・・

このような調査は、学術的には価値はゼロです。ただのアンケート分析です。

表を見ると、パートタイムで100万円未満、150万円未満(要するに、主婦で103万以内、130万以内に所得を押さえていると思われる層が、95.8%です。

これを、「ワーキングプアと呼ばれる『200万円未満』も3割に上った」と結論付け・・・

同氏コメント

「指定管理者施設の職員は、公共サービスを担っている点では公務員と同じ。仕事に応じた賃金が支払われるべきで、賃金の決定水準をどうしていくかが今後の課題」

 課題は、あなたの恣意的な数値誘導、「べき論」にあります。
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genre : 政治・経済

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No title

根本的に、日本の教育予算が少なすぎるという話でしょう。
OECD加盟国で、日本の教育予算のGDP比が毎年最下位周辺にいます。国立大学の独立行政法人化後は、大学への予算は毎年1%削減されています。

教育へのパイの配分率が小さすぎる・どんどん小さくなっているという問題であって、経済全体のパイを大きくする話とは関係はあっても一応別の問題でしょう。

大学職員の官製ワーキングプア化は、教育予算をどんどん削っていることから発生しているわけで、その取り組みを非難するのはちょっとひどくないですか。





No title

>根本的に、日本の教育予算が少なすぎるという話

そうすると、その教育予算は、どこを削れば出てくるのですか?

No title

単に、諸外国並みの教育予算/GDP比率にというだけです。他の国にできて日本だけできないというならば、その説明責任は行政にあるでしょう。

ならぱ、あなたはどういう考えなんだといわれると、私は増税で賄えという考えです。消費税1%で約2.5兆円の財源になるわけですから、小中高の無償化や大学授業料の引き下げなどに十分な額でしょう。増税+所得再分配 or 安い税金 というのは結局は選択の問題で、私は前者なわけです。

少なくとも、官製ワーキングプアの問題への取り組みが、こうやってマスコミに報道されるなり行政に訴えることで何らかの対応がとられる可能性があるわけです。

国際比較で大学教員の給与が高いというなら別ですが、そうでもないなら、避難するより別の選択肢を提案する方が建設的と思えます。


No title

>消費税1%で約2.5兆円の財源になるわけですから、小中高の無償化や大学授業料の引き下げなどに十分な額でしょう。

 消費税については、現在記事の「大学教授のトンデモ論1~4」も合わせてご覧下さい。



 論点は、「ワーキングプアなど存在しない」です。「官製なんたら」は、103万、130万に所得を抑えている人たちのための職だということです。

 わざと、その所得に抑える人がいて、その所得でも求人募集ができるので、雇用者はその所得で人を雇います。

 それを、「ワーキング・プアだ」と言っている大学のセンセーが、デマゴーグを撒き散らしているのです。

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