新聞を解説(11) 社説 『農業を拓く』日本経済新聞 H21.5.11

社説 『農業を拓く』日本経済新聞 H21.5.11
…国内の食糧生産は需要に比べて大きく不足している。国民の健全な暮らしに必要な食糧の供給を外国に頼っているのが現状だ。カロリーベースの食糧自給率は約40%と先進国の中で極端に低い。
 
 さて、「将来、食糧危機が起こる」というのを前提にした、「カロリー自給率が低い」ですが、本当に「食糧危機」は起こるのでしょうか。結論から言うと、「起こらなかったし、これからも起きない」ということになります。

以下、引用・参考文献 川島博之『食糧危機をあおってはいけない』文藝春秋 2009 

p193
…たとえばFAOはもともと「世界の食糧の生産を増やして飢餓を無くそう」という趣旨で、第二次大戦後まもなく国連傘下に設立された団体です。…当然報告書にしても…「食糧は余っていますよ」とは書かずところが、大学の先生たちはそんな責任はありませんから「食糧なんて余ってるよ」と本音ベースで話してくれるわけです

 日本の場合、国内米価は下がり続け、乳価は横ばい、農家の経営は苦しくなる一方です。備蓄倉庫の米は毎年膨大な量となり、古米として処理するのに困っている状況です。行き場の無い米を備蓄倉庫に隠し、先の見通しはありません。昨年の「事故米騒動」は記憶に新しいところです。

P212 農林水産省「不測の事態」
レベル2 国民が最低限度必要とする熱量の供給が困難となるおそれがある場合(一人一日当たり供給熱量が2000キロカロリーを下回ると予測される場合)
要するに終戦直後を除いて、過去に例がない わけです。

P221 
 FAOの統計がそろい始めた1961年以来、世界的に大きく食糧生産が落ち込んだ記録はありません。第二次大戦後の63年間、「世界的な食糧不足が起きてどの輸出国も穀物も他の食糧も売ってくれない」という事態が起きたことは一度もない のです。

P210 
 仮に本当に食糧危機が起き、食糧価格が高騰したとしても、現代の日本には全国民に充分な食糧を確保する資力があります。…現在の一人当たり年間消費量は(米)60キロほどですから…金額は2万4千円ほど。…時給が千円として…1日8時間働くとして、3日分に過ぎません。…1日に必要なカロリー…すべてをお米から得ようとすると…12日働けば1年間食べていける…

P117
WTOの交渉で先進国が話し合っているのは穀物の押し付け合い なのです。アメリカ、ヨーロッパなどの先進国の輸出国同士が「俺のつくった穀物をお前買えよ」…と言って喧嘩しているわけです。

P104-105
…「世界の食糧生産がこれ以上伸びない」という説は全く見当が外れています。…世界の対部分の地域ではまだ生産力をめいっぱいに利用していません。…学者が学者向けに書いているような本…要約すれば「農地と穀物生産力は世界人口が90億人以上になっても全く心配が無い」ということです。

  その、穀物生産力の向上は、「化学肥料」中でも「窒素肥料」によるものです。次グラフの様に、化学肥料を使用した「緑の革命1950~」により、フランスの小麦の収量は7倍に増えた(注:その間に人口は1.4倍ほどしか増えていない)のです。肥料効果肥料×収穫量2


グラフ同書p97・103第2次大戦前、小麦の輸入国だったヨーロッパは、「緑の革命」で高収量地域になってしまい穀物や、その穀物を食べさせた牛・豚を輸出するようになったのです
ところが、農作物は、増えすぎても価格が下がって、農家は困るのです。

P115-116
 エチオピアではアメリカの財団から援助を受け…1980年代前半、化学肥料を使って穀物をつくった…データ的にも生産性の如実な増加として記録されています。ところが、…豊作のため現地の穀物価格が暴落してしまったのです。…エチオピア国民がいくら貧しいといっても「今年はたくさん小麦か穫れたから去年よりたくさんパンを食べるか」と…なりません。…肥料のおかげでたくさん収穫できたけれども価格の暴落で逆に貧しくなったエチオピアの農民は、翌年から肥料を入れるのをやめてしまったそうです。

 結論 食糧生産は今後も伸びますし、人口は2050年の90億人がピークアウトです。農水省のいう、「不測の事態」は起きない のです。これが学問的な結論です。
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