藤巻健史 オカルト論

<藤巻健史 オカルト論>

「1ドル50円 アブない日本企業」『週刊文春』10月6日号

 日本銀行が20日に発表した今年4~6月期の資金循環統計によれば、個人の金融資産から負債を引いた「金融純資産」は1,138兆円。
一方、国と地方自治体などの借金の総額である政府債務残高は、1,076兆円となっている。その差はわずか62兆円。
つまり、日本国民全員のお金を全てあてがっても、国の借金に追いつかないという危機的状況がすぐそこに迫っている現実…。

 「日本破綻」に警鐘を鳴らし続けてきた、経済評論家・藤巻健史氏が解説する。
…「早ければ明日。遅くとも5年後には破綻します。…『欧州危機』という強風か『国債の未達』というひと押しがきっかけになるか。あるいは同時に起こるかもしれない」
…「日本は近年、毎年40兆円以上も国債を発行していますが、実はこれは毎月入札を行って購入資金を集めているのです」

…「しかし、この10年間、個人金融資産はほとんど伸びていません。購入の原資が増えていないのにどうして、毎年30兆~40兆円もの国債が買えたのかといえば、不景気だから銀行が融資を引きはがして国債を買ったり、保険会社が融資を減らして、その分を国債に回してきた。購入原資が増えない中で、やりくりだけで国債を何とか買ってきたのです」

…「株も、債権も、大暴落。97年に通貨危機に陥り、 IMF の管理下に置かれた韓国と同じ状態になるでしょう。株価は3分の1になり、失業率は3倍になる。円の価値は3分の1になり、ガソリンも天然ガスも買えなくなる。年金も3分の1になるでしょうし、公務員の給料も半分になる。国全体が縮小均衡になる。その後、長い目で見ればウォン安を生かして大回復した韓国と同じプロセスをたどるかもしれませんが、その前の闇はとても深くて暗い」
 


 
(1)もうすでに、家計資産<公債に

 ありましたよね。家計金融資産<国債発行額=破綻だ!!っていうトンデモ論が。

論説委員長平田育夫『日本国債いつ火を噴くか』日経2009年12月20日

 …日本は、外貨建ての国債を出していないし、国債の93%も国内の金融機関や、個人が持つ。だから、両国の(筆者注:外国資本が、逃げ出し長期金利の上昇した、ギリシャ・スペイン)のようにはならない、というのが、常識的な見方だ。
 …個人の金融資産は、個人負債を除き、1065兆円。一方、国と地方の長期債務残高は、825兆円で今後も増える。2010年代中には、個人資産を、全部充てても、公債費を、買い切れなくなる
 …日銀の国債買い入れ拡大も、もろ刃の剣。これまでの買い入れ拡大は、賃金の上昇を押さえるのに役立ったという見方もある。だが、やり過ぎれば、制御不能のインフレや、金利上昇を招く。
 …いま、年1.2%台の10年物国債利回りが、米国と同じ。3.6%になるとしよう。国の利払い費は新規国債を出さなくても、7~8年後には、約12兆円膨らむ。今年度の消費税収9.4兆円を上回る額で、財政をさらに悪化させ、後世代の負担を増やす。金利の上昇は、設備投資を冷やすなど経済への打撃も大きなものになる。
 …財政再建は進まず歳出の半分程度を国債に頼り続ける。日銀は大幅な国債購入に乗り出す。インフレ懸念や財政悪化懸念が高まり、長期金利も急騰する。その惨劇の幕が上がるのはズバリ来年、財政運営への不信感がきっかけになる。
 


 惨劇の幕?は未だ上がっていません。しかも、個人資産<公債額には、既になっているようです。


国と地方の借金、個人資産1110兆円上回る?

 五十嵐文彦財務副大臣は18日、テレビ朝日の番組に出演し、日本銀行が20日発表する6月末の統計で、国と地方自治体の借金の総額が、国内の個人の金融純資産額を初めて上回る可能性があるとの見通しを示した。
五十嵐氏は「今年の(個人)金融資産は伸びていない」と指摘し、双方の数字が「クロスする可能性がある」と述べた。
 五十嵐氏が指摘したのは、日銀が発表する2011年4~6月期の資金循環統計(速報値)で、個人の金融資産から負債を引いた「純資産」と、国・地方の中長期債務残高に政府短期証券などを加えた「借金の総額」についてだ。
 個人金融純資産と国・地方の借金の差は縮まっている。3月末時点では個人金融純資産(1110兆円)に対する中長期債務残高(894兆円)と政府短期証券などの合計は1045兆円だった。
(2011年9月18日23時47分 読売新聞)



(2)国債を買うのは家計だけではない

 なぜ、個人(家計)の金融資産が、公債を上回ると、「破綻」するとか、「破綻のスイッチが入る」というのか。それは、この人たちには、国の金融資産全体のバランス・シートが見えていないからです。

21年末現在
金融資産 21年末現在

 上の21年末のバランス・シートを見ると、政府の借金「975兆円」を、負担しているのは、家計資産だけではないことが分かると思います。


…「しかし、この10年間、個人金融資産はほとんど伸びていません。購入の原資が増えていないのにどうして、毎年30兆~40兆円もの国債が買えたのかといえば、不景気だから銀行が融資を引きはがして国債を買ったり、保険会社が融資を減らして、その分を国債に回してきた。購入原資が増えない中で、やりくりだけで国債を何とか買ってきたのです」


三面等価 2008

 この図の、S部分が、毎年毎年積み重なって、「金融資産総額」になります。


金融資産 21年末現在


 このSを供給している一番の主体は、「家計」ではなく、「企業等(金融機関含む)」です。



http://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf#search='家計 政府 企業 金融資産' 

部門別 資金過不足 貯蓄



(3)カネ余り→国債




 「購入の原資」は、個人(家計)金融資産だけではないのです。日本の金融資産を一番持っているのは「企業(金融業含む)」です。ここが、カネ余りで、投資先がないので、「国債」に殺到=「債券価格高=金利低」しているのです。


日経『銀行の国債保有最高』H22.3.14H22.3.14 銀行 国債保有


 国内銀行の国債保有が過去最高を更新している。…残高は…1年あまりで1.5倍に脹らんだ。企業の資金需要が低迷し、預金で集めたお金を貸し出しではなく国債に振り向ける傾向が強まっている。…背景にあるのが資金需要の低迷だ。…企業の多くは業績が回復しても,銀行借り入れには慎重…。…預金がどれだけ貸し出しに回ったかを示す「預貸率」は75%程度と、過去最低水準…。

国債保有状況 H22.3.14

 『企業資金、投資に回らず』
 国内企業が手元にお金を貯めておく…稼いだお金から,投資に使った費用などを差し引いた「準現金収支(フリーキャッシュフロー)」は2009年10~12月期に、年換算で26兆円と過去最大に…。…新規投資に消極的になっている要素も…。日本は供給力に比べた需要不足を示す需給ギャップが、なお年間で30兆円あり、設備の余剰感も強い。…「企業がリスクをとって投資する力が低下…。…将来の成長を阻害しかねない」(第一生命研究所の熊野英生氏)…。

H22.3.14 企業 手元資金


 彼は、こう言います。

…「しかし、この10年間、個人金融資産はほとんど伸びていません。購入の原資が増えていないのにどうして、毎年30兆~40兆円もの国債が買えたのかといえば、不景気だから銀行が融資を引きはがして国債を買ったり、保険会社が融資を減らして、その分を国債に回してきた。購入原資が増えない中で、やりくりだけで国債を何とか買ってきたのです」 


「融資の引き剥がし=貸し渋り」とか、「保険会社が融資を減らす」なんていうことをやって、国債を「買っている」と言うのです・・・・・



(4)発行額は、40兆円どころではない


…「日本は近年、毎年40兆円以上も国債を発行していますが、実はこれは毎月入札を行って購入資金を集めているのです」 

 しかも、「毎年40兆円以上も国債を発行」どころではありません。毎年170兆円もの国債が売買されているのです。



 2011年度一般会計予算案で、租税収入409,270 公債金442,980と、「公債金>租税」の予算案と言われています。これを見ると、「日本は1年間に約44兆円の国債を発行しているのだ」と考えそうです。
 
 ですが、日本で1年間に発行されている国債額は、「170兆円」です。

参考引用文献:日経H22.12.2 グラフ・図も
『国債発行額 最大に』
 2011年度の国債発行総額が170兆円台に乗せ、過去最大に膨らむ見通しとなった。…過去に発行した国債の借り換えが、10兆円程度増える…。
 


 この30年もの国債は、本当は、60年間で返済されることになります。借換債です。

 https://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/saimukanri/2006/saimu02b_01.pdf#search='第2章 国債'
国債 60年ルール.jpg

「10年満期=6兆円」という国債があったとしても、その償還は、「60年」償還ルールによって、完全に返済されるのが、60年後です。6兆円のうち、10年後に償還されるのは、6000億円、あとの5兆4000億円は、その時点で、「借換債」になります。

国債発行額

 図にあるように、国債は①新規国債②借換債③財投債の3種類があり、市場から見れば金融商品としては同じで、違いはありません。このうち、②の借換債は、2011年度110兆円以上に上ります。③の財投は15.5兆円程度です。圧倒的に借換債が多いことが分かります。


…「しかし、この10年間、個人金融資産はほとんど伸びていません。購入の原資が増えていないのにどうして、毎年30兆~40兆円もの国債が買えたのかといえば、不景気だから銀行が融資を引きはがして国債を買ったり、保険会社が融資を減らして、その分を国債に回してきた。購入原資が増えない中で、やりくりだけで国債を何とか買ってきたのです」 




…「早ければ明日。遅くとも5年後には破綻します。…『欧州危機』という強風か『国債の未達』というひと押しがきっかけになるか。あるいは同時に起こるかもしれない」

…「株も、債権も、大暴落。97年に通貨危機に陥り、 IMF の管理下に置かれた韓国と同じ状態になるでしょう。株価は3分の1になり、失業率は3倍になる。円の価値は3分の1になり、ガソリンも天然ガスも買えなくなる。年金も3分の1になるでしょうし、公務員の給料も半分になる。国全体が縮小均衡になる。その後、長い目で見ればウォン安を生かして大回復した韓国と同じプロセスをたどるかもしれませんが、その前の闇はとても深くて暗い」

 



<対策・・・冗談です>

円の価値は3分の1だから、インフレですね。インフレに備えて、インフレに強いモノを購入しておきましょう。土地とか、株とか・・・。あれ?「株も…大暴落。」???
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No title

結局、みな、自分のポジショントークなのでは。藤巻氏は、資産をすべて外貨に換えたといっておられたと思う。円が暴落しないとこのままでは、大損してしまう。
不況時には、一般に、金融緩和と財政出動を両方するのが、基本だと思う。クルーグマンも、その立場。あくまで、「リベラル派の良心」が彼の信条。
ところが、クルーグマンを都合よく使ってきた、高橋洋一氏をはじめとする「リフレ派」は、最近、クルーグマンとの違いが鮮明となってきた。クルーグマンが嫌いなティーパーティと同じで、小さな政府万歳である。その上で、どこの国もやっていない、日銀の国債直接引き受けによる、「国債」の信用棄損での、インフレ(国債価格上昇)を狙っている。これも、たぶん、ポジショントークなのではないかと推察している。
それは、いま、円建の債務を返済できないで困っている方々という、ポジショントークなのではないかと思う。

No title

 80年代半ばの「自由主義」路線が、リーマン・ショックを招きました。そのリーマン・ショックから立ち直るのに、各国政府が協調したのが金融+財政政策でした。

 クルーグマンは、ニューケインジアンですから、現状の危機存続に「まだ足りない」と主張していますね。昔日本が何もしないのを「批判」したけれども、われわれアメリカも「何もできない」から、日本に「ごめんなさい」と。

 別に「自由主義」だろうが、「ケインジアン」だろうが、一つの政策(理論)で全てを解決できるわけではなく、その時に合わせて適切に対処するのが必要ですよね。(ということは、小さかろうが大きかろうが政府は必要と言うことにもつながりますが)

 国債の日銀直接引き受けも、国債大量発行→市場経由で日銀購入も、結果的には同じことですから、後者でも目的は達成できます。

 でも高橋先生の主張、「政府資産350兆円はすぐ現金化できるから・・・借金返済できる」も、「政府現金化資産ゼロ=政府借金350兆円減(1000兆円→650兆円)」というだけで、じゃあ、「資産をもっていても処分してもかわらないじゃあないか」といえばその通りなので。

 金融資産(資産≡負債)は、相殺されるので、「資産」とはみなされていません。ということは、「負債も負債ではない」といえばその通りで・・

 藤巻さん、ポジショントークは分かるのですが、その理由付けの「実証」くらいは、事実を調べてはどうでしょうか・・・
 

No title

2008年には国債発行残高が、とっくに家計の金融資産を突破していたことを大阪市議の廣宮さんが指摘していました。

http://grandpalais1975.blog104.fc2.com/blog-date-20110922.html

国民経済の主体については高校1年生の一番最初に学ぶことなのに、何故か多くのエコノミストさんたちは企業の存在を忘れてしまいます。
それで飯を食えるのだからうらやましい限りです。

No title

 情報ありがとうございます。 

 廣宮さんの記事によると、竹中さんも「家計金融資産が日本国債の上限」と言っていたようですね。廣宮さんとは、コメントでやり取りしたことがあります。著書も買っていただいたように記憶しています(2年前)。

 企業(特に金融機関)がなんといっても国債投資では断トツなのですが。

 みなさん、見てないのか、見て見ぬふりなのか。不思議です。

 ニコ生動画で、早大若田部先生と、慶應の土居先生が飯田先生司会で、論争しているのを見ました。

 結局お二人とも一致していたのは、日本の場合、国債消化が不安になると、「インフレになる」ということです。公債発行派だろうが、増税派だろうが、「国家破綻」など、問題にしておりません。

 「国家破綻」と書けば本でも雑誌でも売れるのだから、おいしいんでしょうね。

No title

この藤巻さんと言う方ですが、一ツ橋大学を出て、三井信託勤務の後、アメリカのなんとか大学院を出てるんですねぇ。頭好さそうでうらやましい。
で、その後、早稲田とか神戸大とかの講師をしてたんだそうで・・・うーん。
これだけ勉強して、今回ブログで指摘されている点を分かってないなんてことは、ちょっと考えられない。
やっぱり、ちゃんと分かった上で我々を騙そうとしてるんでしょうかねぇ?

No title

 いろいろなところで述べられているので、本当にそう考えているかもしれません。

 小室直樹門下でも、副島さんとか、破綻論唱える人いますからねえ。

 トンデモ本はまだあって、徳川家の末裔(この方も慶應経済・・)と言う方も、破綻論と、その防衛論(矛盾だらけなんですが)を唱えています。あまりにもトンデモだったので、扱っていませんが、今度、暇があったら扱います。扱う値もない本だったのですが・・

No title

山川の日本史をみると、近代国家として、日本が歩みをはじめた明治以降、松方デフレ、高橋財政、ドッジライン、と掲載されているが、背景には、通貨問題があると思われる。いずれの記述でも、通貨に関する簡潔な記述が付随している。
管理通貨制度が最終的に確立したのは、山川の教科書にもかいてあるとおり、高橋財政だが、その後も、うまく運用できず、たびたびインフレが起こっている。
日本銀行の直接国債引き受けと、流通市場からの国債買い入れが等価というのは、管理通貨制度についての信頼が続いているということを暗黙の前提としているのではないか?
もう少し、「高校生の経済学」も、日本史や世界史の歴史的な制度構築について視野も広げられてはどうか?

No title

 世界史的為替の変化については、WTO・FTA/EPA・TPP その4 金融面
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-189.html

を参照下さい。

日本については、『危機下で学ぶべき高橋是清の教訓』 日経H21.6.16

http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-151.html
を参照下さい。
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