高橋洋一bs
<国際収支>
2011/09/05(月) 02:21 (18 日前)に、このような高橋洋一氏のツイッターが。
思い込み誤爆もある。私のBS本に国際収支記述がないから知識不足でデタラメとクレーム。私の他の本で詳細に説明していたのに未読のようでした
RT @genkuroki: 【経済】ぼくも紹介、おすすめサイト。「高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門 政治経済 現代社会」
氏の話は、完全におかしな話です。
ここには、高橋氏のトンデモ論が載っており、また、引用している方が、あまりご理解していないようです。以下、全文を掲載し、間違っているところを、解説します。
http://iwashi50.blog57.fc2.com/?mode=m&no=146
高橋洋一氏のしばらく前のツイート
いろいろな本を書いているとおバカな批評をみる。国際収支の話はもちろん知っていて、他の著作で経常収支+資本収支=0をよく使う。外貨準備残高が減らないのは利子と元本償還を円転しないからだ。これらの話は公式の場で財務省にもいったことがある。事実誤認といわれたことはない
2011/02/22 0:10:05 webから
(link)
経常収支+資本収支=0の話は「日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える (光文社新書)」 http://amzn.to/hurNw0 のP84にでている。大学で国際金融論の講義をしているのでもちろん授業でもやっている
2011/02/22 1:09:37 webから
(link)
これがなんのことかわからなかったのだが、菅原晃氏のブログのことだったのか。たぶん。
論語(経済学)読みの論語知らず 高橋洋一 嘉悦大(link)
確かに菅原氏の批評記事はよくわからないところがある。ただでさえ氏のブログ記事は文字色や文字サイズがどういう基準で使い分けられているのか不明で読みづらい(つまり書式がよく分からない)ところ、この記事は内容もよくわからない。針小棒大のためにする批判にみえる。
菅原氏の記事の主張をまとめると、
○バランスシートを述べるなら国際収支表を説明しなければならない(という前提を置く)
○国際収支表を説明しないのだから高橋本は不足である(と結論付ける)
○高橋氏は国際収支表を理解していない(という仮定を置く)
○以下長々と菅原氏による国際収支表解説(これを高橋洋一氏が理解していないという論証はない)
○外債を持つのは外貨準備を持つことでそれは国際取引を円滑にするためだ(高橋自身がそう書いてるではないかと指摘)
○外国債には利息が付くからどんどん増える(はい論破)
といったところだろう。しかし高橋氏の本と付き合わせるとなんでそうなるかなと思うのだ。以下、囲み中は菅原氏の文で、菅原氏による高橋氏の引用をさらに囲む。
「『なぜ借金までして130兆円もの外債を用意しているのでしょうか。はっきり言ってこれはミステリーです。少なくとも私は合理的な理由を述べることはできません。』」
「理由は、本人が述べています。」
「『130兆円の外国為替は外貨準備です。本来の外貨準備は金融当局が対外債務の返済や輸入代金の決済など国際取引を円滑にするために準備するものです。』」
この返しは変だ。高橋氏が「ミステリー」だとしているのは「なぜ外貨準備を持たなければならないか」ではない。持つにしてもなぜそれが130兆円もの大きさでなければならないかを問題にしているのだ。そもそもこの文章が出てくるのは変動相場制をとっている日本が為替介入するのは好ましくないよねという文脈である。以下高橋本86ページより引用
日本は不公正な国?
変動相場制を採りながら、政府が巨額の外貨準備を持ち、為替市場に介入するのでは、本当の意味の変動相場制にはならないし、何よりも一国の政府が市場に介入することは、本来の市場の機能を損なわせることになってしまいます。
(中略)
実際に日本は、不公正な為替操作国としてこれまでもたびたび欧米から非難されてきました。にもかかわらず、相変わらず日本は為替介入のための外貨準備を一三〇兆円も抱えています。この金額は、およそ五〇〇兆円といわれる日本のGDPの二〇%以上にものぼります。自由主義経済圏の先進国で、こんな国はほかにありません。
(中略)
日本は自由主義経済を標榜し、自由貿易の恩恵を最大限に受けている国です。その国の政府が、不公正な為替介入のためにこれほどの外貨準備を持っていること自体、きわめて不正常なことです。
だから130兆円も持つ必要はないでしょ、なんで持たなきゃいかんのかミステリーだね、と主張しているのである。※なお上記引用文最後の青字部分は菅原氏自身も引用しているのだが。
「『五年たったらそのアメリカ国債は償還されます。つまり、5年間何もしないで放っておけば、この100兆円は自然になくなるのです。』」
「あの、無くなることはありません。増える一方です。」
これも変。高橋氏の「何もしない」を菅原氏は「元本同額をそのままずっと保有し続ける、償還されてもまた外債を購入する」に読み替えているようだがなぜだろう。五年ものは五年経ったら償還される、利息はそりゃつくけれど、だからなに?と思う。
「130兆円の外債は、日本にとって「負担にはなっていない」事が分かります。」
最後までずれている。「 」でくくっていて高橋氏からの引用のような印象を持たせるが、負担になっていることを高橋氏は問題としているのだろうか。少なくとも「負担」の語は菅原氏のエントリー中でここにしか出てこない。高橋氏の問題意識は別の所にあるのだから当然である。
結局、菅原氏の本エントリーは引用もつっこみもアンフェアで曲解こじつけが多く正直なんのために書いているのかよくわからない。たぶん批判するためなのだろう。
どこから手をつけていいか、分からないのですが、とりあえず、順番を追って説明します。高橋氏が、ツイートしていたようですが、やはり、外貨準備について、全く分かっていません。
(1)経常収支は、日本の貯蓄超過から生じる
まず、貿易黒字ですが、日本の貯蓄超過から生じます。貯蓄投資差額:ISバランス論です。
チャールズ・ユウジ・ホリオカ『経済教室』その1 日経H21.9.30
…ある経済またはある制度部門の貯蓄投資差額(貯蓄-投資)は「ISバランス」という。なお、経済全体のISバランスはネットで貯蓄がどのくらい海外に流れているかをとらえており、資本収支の赤字を意味する。
また、国際収支は全体として均衡しなければならないため、ISバランスが正(筆者注:プラス、貯蓄超過の状態)であり、資本収支が赤字であれば、貿易収支を含む経常収支はほぼ同額の黒字にならなければならず、逆にISバランスが負であり、資本収支が黒字であれば、経常収支はほぼ同額の赤字にならなければならない。

S = ①I + ②(G-T) + ③(EX-IM)
Yの残り 企業投資 政府投資・消費 外国の投資・消費
公債 貿易黒字
まずおさえておかなければいけないのは、日本は「貯蓄超過」だと言うことです。 日本人が、その所得をすべて使わず、貯蓄する(貯蓄超過)と、財政赤字+貿易黒字は必ず発生するのです。消費を抑え、外国に貯蓄=投資(日本に貯蓄:投資先がないから)した結果が、貿易黒字です。儲け:利潤を求めて、海外投資するということを理解しましょう。
(1)カネ余り→外国投資
この結果、日本の三面等価は次のようになります。

(2)国際収支表
さて、上記三面等価は、「EX‐IM」部分は、「貿易・サービス黒字」でした。GDPでは、貿易・サービス黒字になります。

この国際収支表では、左側は「経常黒字(①貿易収支②所得収支③経常移転収支)」となっています。
②所得収支は、日本の持つ海外資産544.8 兆円(21年度末:株や債券)からの収入です。
現在の日本は、所得収支黒字が経常黒字の大部分と言って構いません。貿易黒字は、その1/6しかありません。
経常移転収支は、対外援助やIMFへの出資金などです。
この左辺:経常収支黒字=広義資本収支(資本収支・外貨準備・誤差脱漏):右辺です。
①経常収支黒字=②資本収支赤字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)
GDP
=GDI
=GDE
GDPの場合、EX-IMは「貿易・サービス黒字」のことです。
EX-IMを経常黒字として所得収支等を含めると、GNP(国民総所得)になります。

GNP
=GNI
=GNE
さて、この国際収支表は、複式簿記で書かれていますから、必ず
経常収支黒字=資本収支赤字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)
となります。この意味で、下記の文は、一部合っています。
高橋洋一氏のしばらく前のツイート
いろいろな本を書いているとおバカな批評をみる。国際収支の話はもちろん知っていて、他の著作で経常収支+資本収支=0をよく使う。外貨準備残高が減らないのは利子と元本償還を円転しないからだ。これらの話は公式の場で財務省にもいったことがある。事実誤認といわれたことはない
2011/02/22 0:10:05 webから
(link)
経常収支+資本収支=0の話は「日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える (光文社新書)」 http://amzn.to/hurNw0 のP84にでている。大学で国際金融論の講義をしているのでもちろん授業でもやっている
2011/02/22 1:09:37 webから
(link)
この国際収支表こそ、高橋氏お得意?のバランス・シートです。でも、彼はこの作り方を知っているわけではありません。
高橋洋一『バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる』光文社新書2010
P51
経理や簿記を学校で学んだ経験はありませんが、現物のバランスシートを見た経験では人に負けるつもりはありません。
見ているのは、作られた結果であって、製作過程ではありません。ですから、
経常収支+資本収支=0の話は「日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える (光文社新書)」 http://amzn.to/hurNw0 のP84にでている。

といっても、上記の図が、頭の中にあるわけではありません。
経常収支13兆2,782億円は、必ず右辺△13兆2,782億円(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)になるのです。外貨準備は必ず右辺を形成する数字になるのです。
高橋洋一『バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる』光文社新書2010
p83~
…日本は自由主義経済を標榜し自由貿易の恩恵を最大限に受けている国です。その国の政府が不公正な為替介入のためにこれ程の外貨準備を持っていること自体、極めて異常なことです。
…やめるのは難しくありません。借金をしてつくったこの100兆円のお金で買っているのは主に5年物のアメリカ国債です。ということは五年たったらそのアメリカ国債は償還されます。つまり、5年間何もしないで放っておけば、この100兆円は自然になくなるのです。
p120~
これまでの説明でわかる通り、自由主義経済の建前からも不適当なものであり、実効性も疑われているのに、なぜ借金までして130兆円もの外債を用意しているのでしょうか。はっきり言ってこれはミステリーです。少なくとも私は合理的な理由を述べることはできません。
要するに、外貨準備を減らせ、必要ない、ほうっておけば(5年で満期なので、なくなる)と言うのです。
こんなこと、原理的にできません。日本国内で持つ、外貨準備(要するにドル債券)は、トータルで減ることは無いからです。
できないというのは「太陽を西から昇らせろ論」という意味です。「やれるかやれないか」の「できるできない」ではありません。
中谷巌 「入門マクロ経済学 第5版」日本評論社 2007 p155
経常収支が黒字であった場合、外国から受け取った外貨は、外国の債券を購入したり、外国に工場を建てるなど、対外投資に使われる(使われなかったぶんは外貨準備の増加となる)。これが資本収支の赤字になる。
左辺の経常収支が黒字であれば、必ず、右辺の外貨準備は、増大△するのです。バランス・シート:貸借対照表だからです。
(このバランスシートの作り方については、一番最後に掲載しておきます)
そもそも、外貨準備(海外のお金)は、「日本政府」が持つか、東京にある「外為市場(為替銀行など)」が持つかの違いでしかありません。
以下は、コンソル・シンジケートetcを省いた、最も単純な外貨の流入図です。

経常収支黒字分は、日本国全体に、上図のようになります。東京外為市場(世界三大市場)に入ってきた外貨は、そこでドル→円に交換され、経常黒字主体(トヨタとか、海外投資をしている証券会社・保険会社・貸付をしている銀行etc)に払われます。
日本国全体に海外資産(ドル)は残ります。
外貨準備は、政府(金庫は日銀)がこの外為市場から、ドル買い円売りするものです。上記の資本収支赤字を、ドルと表示してみます。

経常収支分の外貨は、必ず、上図のようになります。日本政府は、ドル札をただ持っていても仕方がないので、ドル債券に投資します。また、東京外為市場のドルも、結果的に海外に積みあがります(海外への株・債券・土地・建物・外貨預金etc)

もう一度、経常収支黒字はなぜ生じるのか、思い出してみましょう。
まずおさえておかなければいけないのは、日本は「貯蓄超過」だと言うことです。 日本人が、その所得をすべて使わず、貯蓄する(貯蓄超過)と、財政赤字+貿易黒字は必ず発生するのです。消費を抑え、外国に貯蓄=投資(日本に貯蓄:投資先がないから)した結果が、貿易黒字です。儲け:利潤を求めて、海外投資するということを理解しましょう。
(1)カネ余り→外国投資
国内に投資先がないから、海外投資:資本収支赤字→経常黒字になるんでしたよね。(ISバランスから見た貯蓄投資差額は、国際収支表の記入原則とは丁度逆になります。ですが、結果的には同じ額なのはおわかりだとおもいます)
カネ余り→国内に貯蓄:投資先がない→海外投資→「経常黒字:外国資産の積み上げ」
これが、日本の「対外純資産」の一部を構成します。日本の約260兆円の対外純資産のうち、外貨準備は約100兆円を占めます。
以上のような投資(海外へのお金の貸し出し)が,日本の対外資産です。その残高は約544兆8000億円(21年末)で,世界一となっています。そのうち,直接投資(海外の工場建設など)は,約68.2兆円です。また,外貨準備96.8兆円のうち,証券(外国国債含む)は約80%以上を占めています。
海外資産から外国の日本国内資産288.6兆円を引いた、純資産は、21年末時点で266.2兆円と、もちろん世界一になっています。
桑原進 『史上最強 図解 マクロ経済学入門』ナツメ社 2010


要するに、日本全体で持つ外国資本(海外への株・債券・土地・建物・外貨預金etc)は必ず経常収支黒字分だけ、増加するのです。その一部が外貨準備としてです。外貨準備はこのように、日本国内にあるドルを政府が持つか、民間が持つかの違いしかないのです。
政府が持つときは、短期証券(国債)を発行し、そこで得た「円」を「ドル」と交換します。

『バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる』p79

日本が、2003年~04年に32兆8694円の為替介入を行いました。その際、政府は「政府短期証券」を発行し、市場から「円」を調達し、その円を「外為市場」で売ります。
このドル資産は、日本国内で投資先がなかったので生じてしまった→経常黒字:資本収支赤字分でした。
この毎年の経常収支黒字が積みあがった結果が、日本の対外純資産になるのでしたよね。
高橋洋一『バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる』光文社新書2010
p83~
130兆円の外国為替は外貨準備です。本来の外貨準備は金融当局が対外債務の返済や輸入代金の決済など国際取引を円滑にするために準備するものです。
…これはほとんどがアメリカ国債なので、実は100兆円の借金をして外債投資をしているのと同じことです。
…日本政府は日本円で100兆円を国民から調達してそのお金で外国債を買っているのです。その中身はほとんどアメリカ国債です。
…日本は自由主義経済を標榜し自由貿易の恩恵を最大限に受けている国です。その国の政府が不公正な為替介入のためにこれ程の外貨準備を持っていること自体、極めて異常なことです。
…やめるのは難しくありません。借金をしてつくったこの100兆円のお金で買っているのは主に5年物のアメリカ国債です。ということは五年たったらそのアメリカ国債は償還されます。つまり、5年間何もしないで放っておけば、この100兆円は自然になくなるのです。
p120~
これまでの説明でわかる通り、自由主義経済の建前からも不適当なものであり、実効性も疑われているのに、なぜ借金までして130兆円もの外債を用意しているのでしょうか。はっきり言ってこれはミステリーです。少なくとも私は合理的な理由を述べることはできません。
要するに、「外貨準備」はいらない、変動為替相場制の日本でもつ必要は無い、5年もたったらアメリカ国債の償還が来るから、黙って返してもらえ、そうすればこの海外資産の130兆円・・は自然になくなるというものです。こんな事、無理です。
まず、基本的に、経常収支黒字=海外への資本提供(株や債券購入)だから、日本国内に回るカネではありませんということが分からないようです。
決定的なのは、「外貨準備残高が減らないのは利子と元本償還を円転しないからだ。」です。できないことを、語っています。
高橋洋一氏のしばらく前のツイート
いろいろな本を書いているとおバカな批評をみる。国際収支の話はもちろん知っていて、他の著作で経常収支+資本収支=0をよく使う。外貨準備残高が減らないのは利子と元本償還を円転しないからだ。これらの話は公式の場で財務省にもいったことがある。事実誤認といわれたことはない
2011/02/22 0:10:05 webから
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要するに、海外資産を、円に戻せ!でしょう。
これができない=カネ余りなので、海外に貯蓄:投資した、だから、私は、「経常収支はもうけではない」と説明しています。
その「海外純資産を、円に戻して国内に還元しろ」ですか?何のために?わけがわかりません。カネ余りの国に、また円を増やせ!って?
昔買ったドル国債=100万㌦=1億円(1ドル100円時)が今は、1ドル=80円だから、8000万円にしかならない・・・と言う話は抜きにして(実際には、最近のむちゃくちゃな円高で、含み損を何兆円単位で抱えています)、「できるか否か」を検証します。
いいですよ。やってみましょうか?
<政府の外貨準備をなくしてみよう>
谷内満 早稲田大学商学部学術院教授『政府は、外貨準備の8割を売却せよ』週間エコノミスト p26
…為券は、政府短期証券と呼ばれる短期国債の一種である…。
為替介入を行う際に、政府は、外国為替資金証券という、返済期間3~6ヶ月の政府短期証券(短期国債)を発行します。これを公募入札で金融機関に販売し、残りは日銀が引き受けます。この「円」で、外債を購入します。
つまり、短期国債が、外貨準備に化けるのです。

週間エコノミストp24

バランス・シートですから、必ず「資産」=「負債」になります。もしも、左側「外貨資産」79.9兆円分のドルを売れば、左側「政府短期証券(国債)」79.9兆円返済になります。つまり、このバランス・シートは、現在の「資産136.4兆円=負債136.4兆円」が、「資産56.5兆円=負債56.5兆円」になるのです。
さて、この短期証券を返済された方です。つまり、金融機関(銀行・保険会社・証券会社etc)はこの79.9兆円をどうしようとするのでしょうか。
まず、日本は、カネ余りです。貸出先がないので、金融機関は、国債を買って運用しています。
日本経済新聞「余剰マネー国債に流入」2010年.6月.25日
日本国債に投資マネーが流れ込んでいる。10年物国債利回りは前日比0.040%低下(債券価格は上昇)し、1.125%となった。2003年8月以来、6年10か月ぶりの低水準をつけた。
長期金利低下の理由の一つはカネ余りだ。個人や企業などが銀行預金などに資金を寝かせる一方、企業が設備投資を絞っていることから銀行の貸し出し需要は低迷。国内銀行の預金と貸出額の差額は4月末時点で前年同月比17.2%増の約159兆円となり、過去最大となった。
銀行はこの差額を国債に振り向けている。4月末時点で国内銀行が保有する日本国債の残高は約137兆円と27.6%増え、過去最高を更新した。

このグラフは,「都銀・地銀・第二地銀」の資金余りの状況を示しています。個人や企業から集めた預金額から,貸出額を差し引いたものです。130兆円のお金が,どこにも投資先がなく,放置されています。このお金は,銀行にとっては,ただ預かっているだけで,刻々と赤字になってしまう「お荷物のお金」です。預金者に金利をつけて返さなければいけないからです。
銀行も,一刻も早くお金を借りてほしいのです。
日経H22.3.14

政府から、ドル資産が売却され、円が買われ、その円は短期国債の返却に回り、貸出先のない円として、金融機関に滞留します。
また、外為市場で、日銀のドルと、円が交換されるだけです。

↓

経常収支黒字は、海外資産(外貨も含む)に積みあがる=国内に還元するのは不可能
この命題が理解できないようです。
桑原進 『史上最強 図解 マクロ経済学入門』ナツメ社 2010

日本国全体で持つ、海外資産に変化があるわけではありません。こんなドルもらっても、どうしようもありません。
それとも、高橋さんは、「とにかく政府にさえ、外貨がなければ良いのだ、民間が持つのはいいのだ」というつもりでしょうか?
どうもそのようです。
p88
…やめるのは難しくありません。借金をしてつくったこの100兆円のお金で買っているのは主に5年物のアメリカ国債です。ということは五年たったらそのアメリカ国債は償還されます。つまり、5年間何もしないで放っておけば、この100兆円は自然になくなるのです。
そして、「政府の借金を100兆円カンタンに減らす方法」として、図を掲載しています。政府の借金を減らすのが目的のようです。手放せって主張しているのですから。
高橋洋一『バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる』光文社新書2010
この図の政府のバランスシートのカネは、先ほどの図16細かい表のものです。
カネ余りの日本の金融機関が、短期証券分、円を返還されて、どうするのでしょう?今度はどこに投資したらよいのでしょう?
記事カット
外貨の裏には、短期証券があり、外貨処分=短期証券返済→現金が金融機関にたまる。
こんなに金余りの日本で、投資先がないから、国債買っているのに、その短期証券返却されて、どうするのですか?
また、「国債発行」ですか?短期証券を返済して、銀行(金融機関)に滞留し、そのカネを有効に使う為に、また国債100兆円分発行・・・全然借金減らないではないですか!
<おまけ 国際収支の記入方法>
国際収支は、複式簿記という記入方法で書かれている、会社で言う「貸借対照表=バランスシート」のことです。
モノ・サービスを売買すると、必ず同額のカネが動きます。ですから、モノ・サービスを売ると、貸し方(+)に記載された同額が、借り方(-)にも記載されます。ですから、経常収支黒字額=資本収支赤字になるのです。モノ・サービス金額=カネ金額です。
だから、2009年の日本は

となるのです。△は外国カネ(資産)増と覚えれば間違いないでしょう。ドル・ユーロや、外国国債、外国社債、外国株の購入額のことです。
例ア
日本の自動車会社が,車をアメリカに輸出します。代金は,10万円です。
自動車の輸出→財(モノ)の欄→貸し方(+)ア10
預金証書輸入→その他投資の欄→借り方(-)ア10
例イ
日本の輸入会社がアメリカの航空機を使い,代金を払う。代金は5万円です。
輸送サービス輸入→サービスの欄 →借り方(-)イ5
預金証書輸出 →その他投資の欄→貸し方(+)イ5
例ウ
日本が,地震に際し,食料援助を受けました。感謝状を輸出します。代金は3万円です。
食料の輸入 →財(モノ)の欄→借り方(-)ウ3
感謝状の輸出→経常移転の欄→貸し方 (+)ウ3
例エ
日本企業が,タイに子会社を作るため,子会社の株を買い,代金をタイの銀行に振り込みます。代金は2万円です。
株券の輸入 →直接投資の欄 →借り方(-)エ2
預金証書の輸出→その他投資の欄→貸し方(+)エ2
例オ
イギリスの投資家が,日本企業の株を購入します。代金は4万円です。
株券の輸出 → 証券投資の欄→貸し方(+)オ4
預金証書輸入→その他投資の欄→借り方(-)オ4
例カ
日銀が,民間銀行との間で,円売り・ドル買いをします。金額は1万円です。
日銀のドル輸入円輸出 →準備資産の欄 →借り方(-)カ1
民間銀行のドル輸出円輸入→その他投資の欄→貸し方(+)カ1

上記の表で、経常収支+5=資本収支-5になります。
「経常勘定(かんじょう)」の欄に記載された取引きは,経常移転収支(お金の無償援助)を除いて,資本勘定の欄に記載されるということです。つまり,経常収支+は,資本収支-に記載され,経常収支-は,資本収支+に記載されるのです。
正しい見方は,「国際収支表は,複式簿記で,プラス・マイナスが同時に記入される。だから,経常収支黒字ならば,資本収支赤字(経常収支赤字=資本収支黒字)になる」というものです。
その結果,「経常収支+資本収支(外貨増減・誤差脱漏含む)=0」に,必ずなります。
国際収支=0= 経常収支 + 資本収支
<追記1>
『<為替介入>限度15兆円引き上げ 165兆円に』
毎日新聞 9月30日(金)11時54分配信
安住淳財務相は30日の閣議後会見で、政府・日銀が外国為替市場に介入する際に発行する外国為替資金証券について、発行限度額を15兆円引き上げ、165兆円とする方針を明らかにした。限度額と実際の発行額の差は46兆円となり、過去最大規模。為替介入に十分な額を確保し、円高水準が続く市場をけん制する狙いがある。
来月開催予定の臨時国会に提出する11年度第3次補正予算案に盛り込む。安住財務相は円相場で1ドル=70円台後半が続いていることについて「日本経済の上昇に冷や水を浴びせかねないレートで、投機的な動きがさらに加わる流れは何としても防がなければいけない」と述べた。また、国内の金融機関に対し、外国為替の持ち高報告を求める措置が9月末で終了することを受け、期限を12月末まで継続する方針も明らかにした。【小倉祥徳】 政府は、さらに介入資金を上積みするようです。
外貨準備を円転することの問題は、以下の点になります。
①政府から市場金融機関にドルが移るだけ。結局市場金融機関がドルを運用しなければならない。(ドルは国内に回すことができない)
外貨の運用主体が、政府→民間になっただけ。ただ、ドル札持っていても構いませんが。
②100兆円、市場金融機関に返ってくる。→依然として使い道がない。そもそも、国内市場に投資先がないので、海外投資=ドル債権、国債投資した。
それを返却されても、国内市場に投資先がないことには変わらない。
③結局、また政府が新たに国債を発行し、その100兆円を吸収し、政府投資しなければならない。政府の負債額は変わらない。
④5年で100兆円の政府新規投資(毎年20兆円GDPを増やす)はできるのか?
ストックをフローに回せ論。現状の政府投資に、20兆円毎年上積み。GDP500兆円に対し、20兆円=4%もの経済成長率を無理やり達成するということになる。
生産設備・サービスは急に増やせない。そこに20兆円の現金が投入される→「財・サービスの需給バランス崩れ」でインフレ。
命題
①「経常黒字=資本赤字」:海外純債権:ドルは、国内にまわすことができない。
②ストック→フローにまわすことはできない。
2011/09/05(月) 02:21 (18 日前)に、このような高橋洋一氏のツイッターが。
思い込み誤爆もある。私のBS本に国際収支記述がないから知識不足でデタラメとクレーム。私の他の本で詳細に説明していたのに未読のようでした
RT @genkuroki: 【経済】ぼくも紹介、おすすめサイト。「高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門 政治経済 現代社会」
氏の話は、完全におかしな話です。
ここには、高橋氏のトンデモ論が載っており、また、引用している方が、あまりご理解していないようです。以下、全文を掲載し、間違っているところを、解説します。
http://iwashi50.blog57.fc2.com/?mode=m&no=146
高橋洋一氏のしばらく前のツイート
いろいろな本を書いているとおバカな批評をみる。国際収支の話はもちろん知っていて、他の著作で経常収支+資本収支=0をよく使う。外貨準備残高が減らないのは利子と元本償還を円転しないからだ。これらの話は公式の場で財務省にもいったことがある。事実誤認といわれたことはない
2011/02/22 0:10:05 webから
(link)
経常収支+資本収支=0の話は「日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える (光文社新書)」 http://amzn.to/hurNw0 のP84にでている。大学で国際金融論の講義をしているのでもちろん授業でもやっている
2011/02/22 1:09:37 webから
(link)
これがなんのことかわからなかったのだが、菅原晃氏のブログのことだったのか。たぶん。
論語(経済学)読みの論語知らず 高橋洋一 嘉悦大(link)
確かに菅原氏の批評記事はよくわからないところがある。ただでさえ氏のブログ記事は文字色や文字サイズがどういう基準で使い分けられているのか不明で読みづらい(つまり書式がよく分からない)ところ、この記事は内容もよくわからない。針小棒大のためにする批判にみえる。
菅原氏の記事の主張をまとめると、
○バランスシートを述べるなら国際収支表を説明しなければならない(という前提を置く)
○国際収支表を説明しないのだから高橋本は不足である(と結論付ける)
○高橋氏は国際収支表を理解していない(という仮定を置く)
○以下長々と菅原氏による国際収支表解説(これを高橋洋一氏が理解していないという論証はない)
○外債を持つのは外貨準備を持つことでそれは国際取引を円滑にするためだ(高橋自身がそう書いてるではないかと指摘)
○外国債には利息が付くからどんどん増える(はい論破)
といったところだろう。しかし高橋氏の本と付き合わせるとなんでそうなるかなと思うのだ。以下、囲み中は菅原氏の文で、菅原氏による高橋氏の引用をさらに囲む。
「『なぜ借金までして130兆円もの外債を用意しているのでしょうか。はっきり言ってこれはミステリーです。少なくとも私は合理的な理由を述べることはできません。』」
「理由は、本人が述べています。」
「『130兆円の外国為替は外貨準備です。本来の外貨準備は金融当局が対外債務の返済や輸入代金の決済など国際取引を円滑にするために準備するものです。』」
この返しは変だ。高橋氏が「ミステリー」だとしているのは「なぜ外貨準備を持たなければならないか」ではない。持つにしてもなぜそれが130兆円もの大きさでなければならないかを問題にしているのだ。そもそもこの文章が出てくるのは変動相場制をとっている日本が為替介入するのは好ましくないよねという文脈である。以下高橋本86ページより引用
日本は不公正な国?
変動相場制を採りながら、政府が巨額の外貨準備を持ち、為替市場に介入するのでは、本当の意味の変動相場制にはならないし、何よりも一国の政府が市場に介入することは、本来の市場の機能を損なわせることになってしまいます。
(中略)
実際に日本は、不公正な為替操作国としてこれまでもたびたび欧米から非難されてきました。にもかかわらず、相変わらず日本は為替介入のための外貨準備を一三〇兆円も抱えています。この金額は、およそ五〇〇兆円といわれる日本のGDPの二〇%以上にものぼります。自由主義経済圏の先進国で、こんな国はほかにありません。
(中略)
日本は自由主義経済を標榜し、自由貿易の恩恵を最大限に受けている国です。その国の政府が、不公正な為替介入のためにこれほどの外貨準備を持っていること自体、きわめて不正常なことです。
だから130兆円も持つ必要はないでしょ、なんで持たなきゃいかんのかミステリーだね、と主張しているのである。※なお上記引用文最後の青字部分は菅原氏自身も引用しているのだが。
「『五年たったらそのアメリカ国債は償還されます。つまり、5年間何もしないで放っておけば、この100兆円は自然になくなるのです。』」
「あの、無くなることはありません。増える一方です。」
これも変。高橋氏の「何もしない」を菅原氏は「元本同額をそのままずっと保有し続ける、償還されてもまた外債を購入する」に読み替えているようだがなぜだろう。五年ものは五年経ったら償還される、利息はそりゃつくけれど、だからなに?と思う。
「130兆円の外債は、日本にとって「負担にはなっていない」事が分かります。」
最後までずれている。「 」でくくっていて高橋氏からの引用のような印象を持たせるが、負担になっていることを高橋氏は問題としているのだろうか。少なくとも「負担」の語は菅原氏のエントリー中でここにしか出てこない。高橋氏の問題意識は別の所にあるのだから当然である。
結局、菅原氏の本エントリーは引用もつっこみもアンフェアで曲解こじつけが多く正直なんのために書いているのかよくわからない。たぶん批判するためなのだろう。
どこから手をつけていいか、分からないのですが、とりあえず、順番を追って説明します。高橋氏が、ツイートしていたようですが、やはり、外貨準備について、全く分かっていません。
(1)経常収支は、日本の貯蓄超過から生じる
まず、貿易黒字ですが、日本の貯蓄超過から生じます。貯蓄投資差額:ISバランス論です。
チャールズ・ユウジ・ホリオカ『経済教室』その1 日経H21.9.30
…ある経済またはある制度部門の貯蓄投資差額(貯蓄-投資)は「ISバランス」という。なお、経済全体のISバランスはネットで貯蓄がどのくらい海外に流れているかをとらえており、資本収支の赤字を意味する。
また、国際収支は全体として均衡しなければならないため、ISバランスが正(筆者注:プラス、貯蓄超過の状態)であり、資本収支が赤字であれば、貿易収支を含む経常収支はほぼ同額の黒字にならなければならず、逆にISバランスが負であり、資本収支が黒字であれば、経常収支はほぼ同額の赤字にならなければならない。

S = ①I + ②(G-T) + ③(EX-IM)
Yの残り 企業投資 政府投資・消費 外国の投資・消費
公債 貿易黒字
まずおさえておかなければいけないのは、日本は「貯蓄超過」だと言うことです。 日本人が、その所得をすべて使わず、貯蓄する(貯蓄超過)と、財政赤字+貿易黒字は必ず発生するのです。消費を抑え、外国に貯蓄=投資(日本に貯蓄:投資先がないから)した結果が、貿易黒字です。儲け:利潤を求めて、海外投資するということを理解しましょう。
(1)カネ余り→外国投資
この結果、日本の三面等価は次のようになります。

(2)国際収支表
さて、上記三面等価は、「EX‐IM」部分は、「貿易・サービス黒字」でした。GDPでは、貿易・サービス黒字になります。

この国際収支表では、左側は「経常黒字(①貿易収支②所得収支③経常移転収支)」となっています。
②所得収支は、日本の持つ海外資産544.8 兆円(21年度末:株や債券)からの収入です。
現在の日本は、所得収支黒字が経常黒字の大部分と言って構いません。貿易黒字は、その1/6しかありません。
経常移転収支は、対外援助やIMFへの出資金などです。
この左辺:経常収支黒字=広義資本収支(資本収支・外貨準備・誤差脱漏):右辺です。
①経常収支黒字=②資本収支赤字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)
GDP
=GDI
=GDE
GDPの場合、EX-IMは「貿易・サービス黒字」のことです。
EX-IMを経常黒字として所得収支等を含めると、GNP(国民総所得)になります。

GNP
=GNI
=GNE
さて、この国際収支表は、複式簿記で書かれていますから、必ず
経常収支黒字=資本収支赤字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)
となります。この意味で、下記の文は、一部合っています。
高橋洋一氏のしばらく前のツイート
いろいろな本を書いているとおバカな批評をみる。国際収支の話はもちろん知っていて、他の著作で経常収支+資本収支=0をよく使う。外貨準備残高が減らないのは利子と元本償還を円転しないからだ。これらの話は公式の場で財務省にもいったことがある。事実誤認といわれたことはない
2011/02/22 0:10:05 webから
(link)
経常収支+資本収支=0の話は「日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える (光文社新書)」 http://amzn.to/hurNw0 のP84にでている。大学で国際金融論の講義をしているのでもちろん授業でもやっている
2011/02/22 1:09:37 webから
(link)
この国際収支表こそ、高橋氏お得意?のバランス・シートです。でも、彼はこの作り方を知っているわけではありません。
高橋洋一『バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる』光文社新書2010
P51
経理や簿記を学校で学んだ経験はありませんが、現物のバランスシートを見た経験では人に負けるつもりはありません。
見ているのは、作られた結果であって、製作過程ではありません。ですから、
経常収支+資本収支=0の話は「日本の大問題が面白いほど解ける本 シンプル・ロジカルに考える (光文社新書)」 http://amzn.to/hurNw0 のP84にでている。

といっても、上記の図が、頭の中にあるわけではありません。
経常収支13兆2,782億円は、必ず右辺△13兆2,782億円(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)になるのです。外貨準備は必ず右辺を形成する数字になるのです。
高橋洋一『バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる』光文社新書2010
p83~
…日本は自由主義経済を標榜し自由貿易の恩恵を最大限に受けている国です。その国の政府が不公正な為替介入のためにこれ程の外貨準備を持っていること自体、極めて異常なことです。
…やめるのは難しくありません。借金をしてつくったこの100兆円のお金で買っているのは主に5年物のアメリカ国債です。ということは五年たったらそのアメリカ国債は償還されます。つまり、5年間何もしないで放っておけば、この100兆円は自然になくなるのです。
p120~
これまでの説明でわかる通り、自由主義経済の建前からも不適当なものであり、実効性も疑われているのに、なぜ借金までして130兆円もの外債を用意しているのでしょうか。はっきり言ってこれはミステリーです。少なくとも私は合理的な理由を述べることはできません。
要するに、外貨準備を減らせ、必要ない、ほうっておけば(5年で満期なので、なくなる)と言うのです。
こんなこと、原理的にできません。日本国内で持つ、外貨準備(要するにドル債券)は、トータルで減ることは無いからです。
できないというのは「太陽を西から昇らせろ論」という意味です。「やれるかやれないか」の「できるできない」ではありません。
中谷巌 「入門マクロ経済学 第5版」日本評論社 2007 p155
経常収支が黒字であった場合、外国から受け取った外貨は、外国の債券を購入したり、外国に工場を建てるなど、対外投資に使われる(使われなかったぶんは外貨準備の増加となる)。これが資本収支の赤字になる。
左辺の経常収支が黒字であれば、必ず、右辺の外貨準備は、増大△するのです。バランス・シート:貸借対照表だからです。
(このバランスシートの作り方については、一番最後に掲載しておきます)
そもそも、外貨準備(海外のお金)は、「日本政府」が持つか、東京にある「外為市場(為替銀行など)」が持つかの違いでしかありません。
以下は、コンソル・シンジケートetcを省いた、最も単純な外貨の流入図です。

経常収支黒字分は、日本国全体に、上図のようになります。東京外為市場(世界三大市場)に入ってきた外貨は、そこでドル→円に交換され、経常黒字主体(トヨタとか、海外投資をしている証券会社・保険会社・貸付をしている銀行etc)に払われます。
日本国全体に海外資産(ドル)は残ります。
外貨準備は、政府(金庫は日銀)がこの外為市場から、ドル買い円売りするものです。上記の資本収支赤字を、ドルと表示してみます。

経常収支分の外貨は、必ず、上図のようになります。日本政府は、ドル札をただ持っていても仕方がないので、ドル債券に投資します。また、東京外為市場のドルも、結果的に海外に積みあがります(海外への株・債券・土地・建物・外貨預金etc)

もう一度、経常収支黒字はなぜ生じるのか、思い出してみましょう。
まずおさえておかなければいけないのは、日本は「貯蓄超過」だと言うことです。 日本人が、その所得をすべて使わず、貯蓄する(貯蓄超過)と、財政赤字+貿易黒字は必ず発生するのです。消費を抑え、外国に貯蓄=投資(日本に貯蓄:投資先がないから)した結果が、貿易黒字です。儲け:利潤を求めて、海外投資するということを理解しましょう。
(1)カネ余り→外国投資
国内に投資先がないから、海外投資:資本収支赤字→経常黒字になるんでしたよね。(ISバランスから見た貯蓄投資差額は、国際収支表の記入原則とは丁度逆になります。ですが、結果的には同じ額なのはおわかりだとおもいます)
カネ余り→国内に貯蓄:投資先がない→海外投資→「経常黒字:外国資産の積み上げ」
これが、日本の「対外純資産」の一部を構成します。日本の約260兆円の対外純資産のうち、外貨準備は約100兆円を占めます。
以上のような投資(海外へのお金の貸し出し)が,日本の対外資産です。その残高は約544兆8000億円(21年末)で,世界一となっています。そのうち,直接投資(海外の工場建設など)は,約68.2兆円です。また,外貨準備96.8兆円のうち,証券(外国国債含む)は約80%以上を占めています。
海外資産から外国の日本国内資産288.6兆円を引いた、純資産は、21年末時点で266.2兆円と、もちろん世界一になっています。
桑原進 『史上最強 図解 マクロ経済学入門』ナツメ社 2010


要するに、日本全体で持つ外国資本(海外への株・債券・土地・建物・外貨預金etc)は必ず経常収支黒字分だけ、増加するのです。その一部が外貨準備としてです。外貨準備はこのように、日本国内にあるドルを政府が持つか、民間が持つかの違いしかないのです。
政府が持つときは、短期証券(国債)を発行し、そこで得た「円」を「ドル」と交換します。

『バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる』p79

日本が、2003年~04年に32兆8694円の為替介入を行いました。その際、政府は「政府短期証券」を発行し、市場から「円」を調達し、その円を「外為市場」で売ります。
このドル資産は、日本国内で投資先がなかったので生じてしまった→経常黒字:資本収支赤字分でした。
この毎年の経常収支黒字が積みあがった結果が、日本の対外純資産になるのでしたよね。
高橋洋一『バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる』光文社新書2010
p83~
130兆円の外国為替は外貨準備です。本来の外貨準備は金融当局が対外債務の返済や輸入代金の決済など国際取引を円滑にするために準備するものです。
…これはほとんどがアメリカ国債なので、実は100兆円の借金をして外債投資をしているのと同じことです。
…日本政府は日本円で100兆円を国民から調達してそのお金で外国債を買っているのです。その中身はほとんどアメリカ国債です。
…日本は自由主義経済を標榜し自由貿易の恩恵を最大限に受けている国です。その国の政府が不公正な為替介入のためにこれ程の外貨準備を持っていること自体、極めて異常なことです。
…やめるのは難しくありません。借金をしてつくったこの100兆円のお金で買っているのは主に5年物のアメリカ国債です。ということは五年たったらそのアメリカ国債は償還されます。つまり、5年間何もしないで放っておけば、この100兆円は自然になくなるのです。
p120~
これまでの説明でわかる通り、自由主義経済の建前からも不適当なものであり、実効性も疑われているのに、なぜ借金までして130兆円もの外債を用意しているのでしょうか。はっきり言ってこれはミステリーです。少なくとも私は合理的な理由を述べることはできません。
要するに、「外貨準備」はいらない、変動為替相場制の日本でもつ必要は無い、5年もたったらアメリカ国債の償還が来るから、黙って返してもらえ、そうすればこの海外資産の130兆円・・は自然になくなるというものです。こんな事、無理です。
まず、基本的に、経常収支黒字=海外への資本提供(株や債券購入)だから、日本国内に回るカネではありませんということが分からないようです。
決定的なのは、「外貨準備残高が減らないのは利子と元本償還を円転しないからだ。」です。できないことを、語っています。
高橋洋一氏のしばらく前のツイート
いろいろな本を書いているとおバカな批評をみる。国際収支の話はもちろん知っていて、他の著作で経常収支+資本収支=0をよく使う。外貨準備残高が減らないのは利子と元本償還を円転しないからだ。これらの話は公式の場で財務省にもいったことがある。事実誤認といわれたことはない
2011/02/22 0:10:05 webから
(link)
要するに、海外資産を、円に戻せ!でしょう。
これができない=カネ余りなので、海外に貯蓄:投資した、だから、私は、「経常収支はもうけではない」と説明しています。
その「海外純資産を、円に戻して国内に還元しろ」ですか?何のために?わけがわかりません。カネ余りの国に、また円を増やせ!って?
昔買ったドル国債=100万㌦=1億円(1ドル100円時)が今は、1ドル=80円だから、8000万円にしかならない・・・と言う話は抜きにして(実際には、最近のむちゃくちゃな円高で、含み損を何兆円単位で抱えています)、「できるか否か」を検証します。
いいですよ。やってみましょうか?
<政府の外貨準備をなくしてみよう>
谷内満 早稲田大学商学部学術院教授『政府は、外貨準備の8割を売却せよ』週間エコノミスト p26
…為券は、政府短期証券と呼ばれる短期国債の一種である…。
為替介入を行う際に、政府は、外国為替資金証券という、返済期間3~6ヶ月の政府短期証券(短期国債)を発行します。これを公募入札で金融機関に販売し、残りは日銀が引き受けます。この「円」で、外債を購入します。
つまり、短期国債が、外貨準備に化けるのです。

週間エコノミストp24

バランス・シートですから、必ず「資産」=「負債」になります。もしも、左側「外貨資産」79.9兆円分のドルを売れば、左側「政府短期証券(国債)」79.9兆円返済になります。つまり、このバランス・シートは、現在の「資産136.4兆円=負債136.4兆円」が、「資産56.5兆円=負債56.5兆円」になるのです。
さて、この短期証券を返済された方です。つまり、金融機関(銀行・保険会社・証券会社etc)はこの79.9兆円をどうしようとするのでしょうか。
まず、日本は、カネ余りです。貸出先がないので、金融機関は、国債を買って運用しています。
日本経済新聞「余剰マネー国債に流入」2010年.6月.25日
日本国債に投資マネーが流れ込んでいる。10年物国債利回りは前日比0.040%低下(債券価格は上昇)し、1.125%となった。2003年8月以来、6年10か月ぶりの低水準をつけた。
長期金利低下の理由の一つはカネ余りだ。個人や企業などが銀行預金などに資金を寝かせる一方、企業が設備投資を絞っていることから銀行の貸し出し需要は低迷。国内銀行の預金と貸出額の差額は4月末時点で前年同月比17.2%増の約159兆円となり、過去最大となった。
銀行はこの差額を国債に振り向けている。4月末時点で国内銀行が保有する日本国債の残高は約137兆円と27.6%増え、過去最高を更新した。

このグラフは,「都銀・地銀・第二地銀」の資金余りの状況を示しています。個人や企業から集めた預金額から,貸出額を差し引いたものです。130兆円のお金が,どこにも投資先がなく,放置されています。このお金は,銀行にとっては,ただ預かっているだけで,刻々と赤字になってしまう「お荷物のお金」です。預金者に金利をつけて返さなければいけないからです。
銀行も,一刻も早くお金を借りてほしいのです。
日経H22.3.14

政府から、ドル資産が売却され、円が買われ、その円は短期国債の返却に回り、貸出先のない円として、金融機関に滞留します。
また、外為市場で、日銀のドルと、円が交換されるだけです。

↓

経常収支黒字は、海外資産(外貨も含む)に積みあがる=国内に還元するのは不可能
この命題が理解できないようです。
桑原進 『史上最強 図解 マクロ経済学入門』ナツメ社 2010

日本国全体で持つ、海外資産に変化があるわけではありません。こんなドルもらっても、どうしようもありません。
それとも、高橋さんは、「とにかく政府にさえ、外貨がなければ良いのだ、民間が持つのはいいのだ」というつもりでしょうか?
どうもそのようです。
p88
…やめるのは難しくありません。借金をしてつくったこの100兆円のお金で買っているのは主に5年物のアメリカ国債です。ということは五年たったらそのアメリカ国債は償還されます。つまり、5年間何もしないで放っておけば、この100兆円は自然になくなるのです。
そして、「政府の借金を100兆円カンタンに減らす方法」として、図を掲載しています。政府の借金を減らすのが目的のようです。手放せって主張しているのですから。
高橋洋一『バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる』光文社新書2010

この図の政府のバランスシートのカネは、先ほどの図16細かい表のものです。
カネ余りの日本の金融機関が、短期証券分、円を返還されて、どうするのでしょう?今度はどこに投資したらよいのでしょう?
記事カット
外貨の裏には、短期証券があり、外貨処分=短期証券返済→現金が金融機関にたまる。
こんなに金余りの日本で、投資先がないから、国債買っているのに、その短期証券返却されて、どうするのですか?
また、「国債発行」ですか?短期証券を返済して、銀行(金融機関)に滞留し、そのカネを有効に使う為に、また国債100兆円分発行・・・全然借金減らないではないですか!
<おまけ 国際収支の記入方法>
国際収支は、複式簿記という記入方法で書かれている、会社で言う「貸借対照表=バランスシート」のことです。
モノ・サービスを売買すると、必ず同額のカネが動きます。ですから、モノ・サービスを売ると、貸し方(+)に記載された同額が、借り方(-)にも記載されます。ですから、経常収支黒字額=資本収支赤字になるのです。モノ・サービス金額=カネ金額です。
だから、2009年の日本は

となるのです。△は外国カネ(資産)増と覚えれば間違いないでしょう。ドル・ユーロや、外国国債、外国社債、外国株の購入額のことです。
例ア
日本の自動車会社が,車をアメリカに輸出します。代金は,10万円です。
自動車の輸出→財(モノ)の欄→貸し方(+)ア10
預金証書輸入→その他投資の欄→借り方(-)ア10
例イ
日本の輸入会社がアメリカの航空機を使い,代金を払う。代金は5万円です。
輸送サービス輸入→サービスの欄 →借り方(-)イ5
預金証書輸出 →その他投資の欄→貸し方(+)イ5
例ウ
日本が,地震に際し,食料援助を受けました。感謝状を輸出します。代金は3万円です。
食料の輸入 →財(モノ)の欄→借り方(-)ウ3
感謝状の輸出→経常移転の欄→貸し方 (+)ウ3
例エ
日本企業が,タイに子会社を作るため,子会社の株を買い,代金をタイの銀行に振り込みます。代金は2万円です。
株券の輸入 →直接投資の欄 →借り方(-)エ2
預金証書の輸出→その他投資の欄→貸し方(+)エ2
例オ
イギリスの投資家が,日本企業の株を購入します。代金は4万円です。
株券の輸出 → 証券投資の欄→貸し方(+)オ4
預金証書輸入→その他投資の欄→借り方(-)オ4
例カ
日銀が,民間銀行との間で,円売り・ドル買いをします。金額は1万円です。
日銀のドル輸入円輸出 →準備資産の欄 →借り方(-)カ1
民間銀行のドル輸出円輸入→その他投資の欄→貸し方(+)カ1

上記の表で、経常収支+5=資本収支-5になります。
「経常勘定(かんじょう)」の欄に記載された取引きは,経常移転収支(お金の無償援助)を除いて,資本勘定の欄に記載されるということです。つまり,経常収支+は,資本収支-に記載され,経常収支-は,資本収支+に記載されるのです。
正しい見方は,「国際収支表は,複式簿記で,プラス・マイナスが同時に記入される。だから,経常収支黒字ならば,資本収支赤字(経常収支赤字=資本収支黒字)になる」というものです。
その結果,「経常収支+資本収支(外貨増減・誤差脱漏含む)=0」に,必ずなります。
国際収支=0= 経常収支 + 資本収支
<追記1>
『<為替介入>限度15兆円引き上げ 165兆円に』
毎日新聞 9月30日(金)11時54分配信
安住淳財務相は30日の閣議後会見で、政府・日銀が外国為替市場に介入する際に発行する外国為替資金証券について、発行限度額を15兆円引き上げ、165兆円とする方針を明らかにした。限度額と実際の発行額の差は46兆円となり、過去最大規模。為替介入に十分な額を確保し、円高水準が続く市場をけん制する狙いがある。
来月開催予定の臨時国会に提出する11年度第3次補正予算案に盛り込む。安住財務相は円相場で1ドル=70円台後半が続いていることについて「日本経済の上昇に冷や水を浴びせかねないレートで、投機的な動きがさらに加わる流れは何としても防がなければいけない」と述べた。また、国内の金融機関に対し、外国為替の持ち高報告を求める措置が9月末で終了することを受け、期限を12月末まで継続する方針も明らかにした。【小倉祥徳】 政府は、さらに介入資金を上積みするようです。
外貨準備を円転することの問題は、以下の点になります。
①政府から市場金融機関にドルが移るだけ。結局市場金融機関がドルを運用しなければならない。(ドルは国内に回すことができない)
外貨の運用主体が、政府→民間になっただけ。ただ、ドル札持っていても構いませんが。
②100兆円、市場金融機関に返ってくる。→依然として使い道がない。そもそも、国内市場に投資先がないので、海外投資=ドル債権、国債投資した。
それを返却されても、国内市場に投資先がないことには変わらない。
③結局、また政府が新たに国債を発行し、その100兆円を吸収し、政府投資しなければならない。政府の負債額は変わらない。
④5年で100兆円の政府新規投資(毎年20兆円GDPを増やす)はできるのか?
ストックをフローに回せ論。現状の政府投資に、20兆円毎年上積み。GDP500兆円に対し、20兆円=4%もの経済成長率を無理やり達成するということになる。
生産設備・サービスは急に増やせない。そこに20兆円の現金が投入される→「財・サービスの需給バランス崩れ」でインフレ。
命題
①「経常黒字=資本赤字」:海外純債権:ドルは、国内にまわすことができない。
②ストック→フローにまわすことはできない。
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