円高・ドル安
< 円高・ドル安 >
日経『大機小機』H22.8.19
外国為替市場では円か一時1ドル=84円台となり、1995年7月以来15年ぶりの円高となった。16日に公表された4~6月の経済成長率の減速からも分かる通り、日本経済の先行きが怪しくなる中で円高は大きな懸念材料である。
今回の円高は日米の金融政策決定会合を機に、あまりに市場の思惑通りに進んだのではないだろうか。8月10日、日本銀行は金融政策決定会合で追加的な金融緩和を見送った。一方、日本時間の11日米明に聞かれた米連邦準備理事会(FRB)の連邦公関市場委員会(FOMC)は、国債の購入を拡大する「追加措置」を決めた。米国の
「金融緩和」に対して「動かない日銀」日米金利差の縮小を材料に円高・ドル安が加速した。
…8月6日、米国の雇用者数が減少し米景気の減速が懸念されると、市場はFRBのFOMC、そして日銀の政策決定会合に注目した。日米の中央銀行は何をやるのか、やらないのか。できあがったストーリーの下で円高が進んだ。
こうした動きを日銀も予想していただろう。にもかかわらず動かなかったのはなぜか。景気判断を変えていないのに金融政策を変えるのはおかしい、というのが日銀の言い分かもしれない。しかしゼロ金利の下では伝統的な金利の波及経路は限られている。そうした状況下で為替レートや株価は、金融政策が実体経済に影響を与える重要なチャネルである。
景気の現状からすれば円高が進んでもよい、と日銀が考えているわけではあるまい。実際円高が進んだ12日には 「為替や株価を注意深く見ていく」と言っているのだ。しかし政策決定会合の開かれた10日には「為替市場の動向で金融政策を決めるわけではない」と言っていた。これでは市場に明確なメッセージは伝わらない。(与次郎)
<ドル安(ユーロ安)>
なぜ、ドルやユーロ安なのでしょう?
読売新聞『日本型デフレ 欧米懸念』H22.8.21
…米連邦準備制度理事会(FRB)はリーマン・ショック後の2008年12月から事実上のゼロ金利政策を続け、さらに1兆7500億ドルに上る、住宅ローン担保証券(MBS)や国債などを購入することで、市場に大規模な資金を供給する量的緩和策にも踏み切った。欧州中央銀行( ECB) も金融機関が希望する基金を担保の範囲で全額供給する、「無制限オペ」を続けている。
岩田規久男『日本銀行は信用できるか』2009 講談社新書 P43グラフ

このグラフの中央銀行の資産増加=民間からの国債買い取りなど=市中への金融緩和(量的緩和)→経済危機からの脱出のための積極的政策です。
なぜ、「デフレに悩むのは日本だけ」か、一目瞭然です。日銀だけが、「量的緩和」を行っていないのです。
このように、ドルもユーロも、大規模な金融緩和政策を続けています。そうすると、円の量<ドル・ユーロ・ポンドの量となってしまいます。
各国 マネタリー・ベース 推移
出典: http://blogs.yahoo.co.jp/suzukieisaku1/17114313.html のグラフを改

『米金融緩和の長期化』日経H22.8.25
…米マネタリーベース(資金供給量)は08年9月のリーマン・ショック以降に急増。08年8月の8千億ドル台から09年11月には2兆ドルに拡大した。


注)マネタリー・ベースについては、ブログ記事2010-08-10 藻谷浩介『デフレの正体』日本政策投資銀行 参照
市場に、ドルや、ユーロや、ポンドが供給される一方、円の量は変わっていません。これを見ても円高・ドル安になるのが分かると思います。
さらに、米国ではデフレ圧力がささやかれ、一層の金融緩和が求められています。
読売新聞『日本型デフレ 欧米懸念』H22.8.21
…米国で追加緩和策として有力視されているのは大規模に国債を買い入れて長期金利を押さえることだ。
日経H22.8.21『成長鈍化 いま何が必要か』
…米連邦準備理事会は、長期国債の購入拡大に限らず、住宅ローン担保証券等の買い入れ再開にも動く公算が大きい。日本が今の金融政策を維持すると日米金利差の縮小を通じて円買いドル売りが進みかねない。
ますます、円高・ドル安の傾向に拍車がかかりそうです。
<どうしたらよいのか>
それに対して、これを阻止することはできるのでしょうか。方法は2つあります。日本が①為替介入し、ドル買いをするのと、②量的緩和です。
①については、難しそうです。
読売新聞『日本型デフレ 欧米懸念』H22.8.21
…現状では欧米も景気後退や、デフレ懸念を乗り切るため、自国の通貨安を黙認し、輸出を促進せざるを得ない。このため、日本の為替介入に協調する可能性は低く、仮に日本が単独介入に踏み切っても、海外市場での円高進行を阻止することは難しい
日経H22.8.21『成長鈍化 いま何が必要か』
…米欧がドル安やユーロ安を容認している現状では為替介入のハードルは高い。主要7か国 (G7)の合意抜きで日本単独介入に踏み切れば国際的な批判を招く恐れもある。
そうなると②量的緩和しか方法はありません。 「円量<ドル・ユーロ量」を、「円量=ドル・ユーロ量」にすればよいのです。
日経H22.8.21『成長鈍化 いま何が必要か』
…量的緩和を進める以外にない。金融政策のスタンスを市場にしっかり示さなければならない。国債の保有残高をお札の発行残高以内に押さえる「日銀券ルール」にとらわれず、長期国債を思い切って買い増すべきだ。
注)日銀ルールについては、ブログ記事 2010-08-18 藻谷浩介『デフレの正体』日本政策投資銀行 参照
岩田規久男 『世界的な長期金利の低下 需給ギャップ拡大が原因』日経H22.8.25
…8月前半に、1ドル=80円台前半をうかがう勢いで円相場が急上昇した…「必要な時には一層積極的な政策をとる用意がある」…FRBは必要な時には一層の金融緩和の用意があるが、日銀にはその用意が無いことを、市場が知っているからであろう。
日銀は…非伝統的金融政策(長期国債の買いオペなど)に極めて消極的である。
一方、FRBは「標準的な金融政策と非伝統的な金融政策の両方を採用し…」、非伝統的な金融政策としては、「長期国債、政府支援機関債、…住宅貸付担保証券などを大量に購入」…してきた。加えて、「必要な時には追加的緩和措置をとる用意がある」と宣言している。
日銀が非伝統的金融政策の採用も辞さずにデフレと戦う姿勢を見せない限り、さらなる円高が進むであろう。
注)FRBは、米連邦準備理事会のことで、日本の日銀に相当する中央銀行
日経『大機小機』H22.8.19
外国為替市場では円か一時1ドル=84円台となり、1995年7月以来15年ぶりの円高となった。16日に公表された4~6月の経済成長率の減速からも分かる通り、日本経済の先行きが怪しくなる中で円高は大きな懸念材料である。
今回の円高は日米の金融政策決定会合を機に、あまりに市場の思惑通りに進んだのではないだろうか。8月10日、日本銀行は金融政策決定会合で追加的な金融緩和を見送った。一方、日本時間の11日米明に聞かれた米連邦準備理事会(FRB)の連邦公関市場委員会(FOMC)は、国債の購入を拡大する「追加措置」を決めた。米国の
「金融緩和」に対して「動かない日銀」日米金利差の縮小を材料に円高・ドル安が加速した。
…8月6日、米国の雇用者数が減少し米景気の減速が懸念されると、市場はFRBのFOMC、そして日銀の政策決定会合に注目した。日米の中央銀行は何をやるのか、やらないのか。できあがったストーリーの下で円高が進んだ。
こうした動きを日銀も予想していただろう。にもかかわらず動かなかったのはなぜか。景気判断を変えていないのに金融政策を変えるのはおかしい、というのが日銀の言い分かもしれない。しかしゼロ金利の下では伝統的な金利の波及経路は限られている。そうした状況下で為替レートや株価は、金融政策が実体経済に影響を与える重要なチャネルである。
景気の現状からすれば円高が進んでもよい、と日銀が考えているわけではあるまい。実際円高が進んだ12日には 「為替や株価を注意深く見ていく」と言っているのだ。しかし政策決定会合の開かれた10日には「為替市場の動向で金融政策を決めるわけではない」と言っていた。これでは市場に明確なメッセージは伝わらない。(与次郎)
<ドル安(ユーロ安)>
なぜ、ドルやユーロ安なのでしょう?
読売新聞『日本型デフレ 欧米懸念』H22.8.21
…米連邦準備制度理事会(FRB)はリーマン・ショック後の2008年12月から事実上のゼロ金利政策を続け、さらに1兆7500億ドルに上る、住宅ローン担保証券(MBS)や国債などを購入することで、市場に大規模な資金を供給する量的緩和策にも踏み切った。欧州中央銀行( ECB) も金融機関が希望する基金を担保の範囲で全額供給する、「無制限オペ」を続けている。
岩田規久男『日本銀行は信用できるか』2009 講談社新書 P43グラフ

このグラフの中央銀行の資産増加=民間からの国債買い取りなど=市中への金融緩和(量的緩和)→経済危機からの脱出のための積極的政策です。
なぜ、「デフレに悩むのは日本だけ」か、一目瞭然です。日銀だけが、「量的緩和」を行っていないのです。
このように、ドルもユーロも、大規模な金融緩和政策を続けています。そうすると、円の量<ドル・ユーロ・ポンドの量となってしまいます。
各国 マネタリー・ベース 推移
出典: http://blogs.yahoo.co.jp/suzukieisaku1/17114313.html のグラフを改

『米金融緩和の長期化』日経H22.8.25
…米マネタリーベース(資金供給量)は08年9月のリーマン・ショック以降に急増。08年8月の8千億ドル台から09年11月には2兆ドルに拡大した。


注)マネタリー・ベースについては、ブログ記事2010-08-10 藻谷浩介『デフレの正体』日本政策投資銀行 参照
市場に、ドルや、ユーロや、ポンドが供給される一方、円の量は変わっていません。これを見ても円高・ドル安になるのが分かると思います。
さらに、米国ではデフレ圧力がささやかれ、一層の金融緩和が求められています。
読売新聞『日本型デフレ 欧米懸念』H22.8.21
…米国で追加緩和策として有力視されているのは大規模に国債を買い入れて長期金利を押さえることだ。
日経H22.8.21『成長鈍化 いま何が必要か』
…米連邦準備理事会は、長期国債の購入拡大に限らず、住宅ローン担保証券等の買い入れ再開にも動く公算が大きい。日本が今の金融政策を維持すると日米金利差の縮小を通じて円買いドル売りが進みかねない。
ますます、円高・ドル安の傾向に拍車がかかりそうです。
<どうしたらよいのか>
それに対して、これを阻止することはできるのでしょうか。方法は2つあります。日本が①為替介入し、ドル買いをするのと、②量的緩和です。
①については、難しそうです。
読売新聞『日本型デフレ 欧米懸念』H22.8.21
…現状では欧米も景気後退や、デフレ懸念を乗り切るため、自国の通貨安を黙認し、輸出を促進せざるを得ない。このため、日本の為替介入に協調する可能性は低く、仮に日本が単独介入に踏み切っても、海外市場での円高進行を阻止することは難しい
日経H22.8.21『成長鈍化 いま何が必要か』
…米欧がドル安やユーロ安を容認している現状では為替介入のハードルは高い。主要7か国 (G7)の合意抜きで日本単独介入に踏み切れば国際的な批判を招く恐れもある。
そうなると②量的緩和しか方法はありません。 「円量<ドル・ユーロ量」を、「円量=ドル・ユーロ量」にすればよいのです。
日経H22.8.21『成長鈍化 いま何が必要か』
…量的緩和を進める以外にない。金融政策のスタンスを市場にしっかり示さなければならない。国債の保有残高をお札の発行残高以内に押さえる「日銀券ルール」にとらわれず、長期国債を思い切って買い増すべきだ。
注)日銀ルールについては、ブログ記事 2010-08-18 藻谷浩介『デフレの正体』日本政策投資銀行 参照
岩田規久男 『世界的な長期金利の低下 需給ギャップ拡大が原因』日経H22.8.25
…8月前半に、1ドル=80円台前半をうかがう勢いで円相場が急上昇した…「必要な時には一層積極的な政策をとる用意がある」…FRBは必要な時には一層の金融緩和の用意があるが、日銀にはその用意が無いことを、市場が知っているからであろう。
日銀は…非伝統的金融政策(長期国債の買いオペなど)に極めて消極的である。
一方、FRBは「標準的な金融政策と非伝統的な金融政策の両方を採用し…」、非伝統的な金融政策としては、「長期国債、政府支援機関債、…住宅貸付担保証券などを大量に購入」…してきた。加えて、「必要な時には追加的緩和措置をとる用意がある」と宣言している。
日銀が非伝統的金融政策の採用も辞さずにデフレと戦う姿勢を見せない限り、さらなる円高が進むであろう。
注)FRBは、米連邦準備理事会のことで、日本の日銀に相当する中央銀行
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