<憲法について、学んでみる その3>

<憲法について、学んでみる その3>

 「小さな政府論の蹉跌」という連載で、「法律(憲法)・人権」について扱ってきました。この憲法について、高校で教えられている内容を再確認したいと思います。
 
憲法は、基本法中の基本法ですが、実は案外、知られていないことも多いのです。

<経済的自由権>

 憲法第22条

何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。


 この経済的自由権ですが、「公共の福祉」によって制限を受けています。その種類は次の通りです。

(1)
社会公共の安全と秩序を維持することを目的とするもの
消極目的規制

①特定の資格を有する者に限る。
 医師 薬剤師 弁護士 税理士 教員免許など

②行政官庁の許可を必要とするもの
 旅館 飲食業 風俗営業 質屋など
 

 ①の場合、確かに医師免許のない(ということは、医学に関してシロウト)医者には診てもらいたくありません。
 ②の場合は、許可や認可、届出が必要となっています。例えば、パチンコ屋や、ラブホテルは、学校の周りでは営業できませんよね。
 

(2)
経済的弱者の保護、経済の共和的発展を目的とするもの
積極目的規制

①デパート スーパーなどの大型店舗の制限
②独占禁止法による独占の禁止
 

 ①には、例えば「大規模小売店舗立地法」があります。地域との融和を図ることが目的とされています。
 ②は、不当な取引制限、いわゆるカルテルや談合を禁止します。

 これらは、自由な競争を促進し、経済の効率的運営を実現するために規制されるものです。

<クイズ>

 ○×で答えましょう(正解は一番下です)

1 
 小売市場の開設経営について、都道府県知事の許可を必要とする法律については、中小企業保護を理由として合憲である。

2 
 公衆浴場を開業する場合の適正配置規制(250メートル離れること)については、健全で安定した浴場経営による国民の保健福祉の維持を理由として合憲である。

3 
 薬局の開設を許可制とし、許可の基準として、隣の薬局との距離制限を定める薬事法の規定は、営業の自由を保障する憲法違反である。



<薬事法距離制限>
 

 これは、高校の教科書や、資料集で、必ず扱われている事例です。

内容

 県知事に、薬局開設の許可を求めたが、適正配置基準(隣の薬局との距離制限)に反するとして、不許可にされた。薬事法による薬局開設に関する規制は違憲であるとして訴えた。

争点

 薬局の開設を許可制とし、許可基準として、配置の距離制限を定める薬事法の規定は営業の自由を保障する憲法に違反しているのではないか。

判決の考え方

 先ほどの、制限の種類を見てみましょう。

(1)
社会公共の安全と秩序を維持することを目的とするもの
消極目的規制

①特定の資格を有する者に限る。
 医師 薬剤師 弁護士 税理士 教員免許など

②行政官庁の許可を必要とするもの
 旅館 飲食業 風俗営業 質屋など
 

(2)
経済的弱者の保護、経済の共和的発展を目的とするもの
積極目的規制

①デパート スーパーなどの大型店舗の制限
②独占禁止法による独占の禁止
 


 この(1)(2)について、判例は、2つの異なる基準を適用しています。


(1)
社会公共の安全と秩序を維持することを目的とするもの消極目的規制

 こちらについては、「厳格な合理性の基準」を適用します。これは、「規制が必要かつ合理的であり、他の緩やかな規制という代替手段がない場合に、その規制は合憲である」とするものです。厳しい基準です。

k1.jpg

(2)
経済的弱者の保護、経済の共和的発展を目的とするもの
積極目的規制

 一方、こちらは、「その規制が著しく不合理であることが明白な場合に限って違憲」とする、「明白性の原則」が適用されます。緩やかな基準です。

k2.jpg

 そして、薬事法距離制限は、(1)の厳格な合理性の基準で判断されます。

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判決要旨

 薬事法の目的は、薬局等の偏在、競争の激化によって、一部薬局等の経営が不安定化し、それによって不良医薬品の供給の危険等の弊害が生じるをことを防止することであり、国民の生命および健康に対する危険の防止という、消極的、警察的目的のための規制措置の(消極目的規制)である。

 距離制限をしないと、こうなるというのです。

薬局などの偏在(隣との距離が近いなど)

競争の激化

一部薬局等の経営の不安定

不良医薬品の供給が起こる

国民の生命および健康に危険がおよぶ


 さて、こうなると思いますか?判決はこれを否定しました。

(上記の)因果関係は、合理的に裏付けることができない。規制の目的は許可制ではなく、行政上の取り締まりの強化など他の方法によっても十分に達成することができる。従って、薬事法による規制については、全体としてその必要性と合理性を肯定することはできず、憲法22条1項に違反する。
最高裁大法廷 昭和50年4月30日

 「合理的ではなく、他の代替手段でも目的は達成できるので、違憲」ということです。

<ほかには・・・>

 さて、薬局の距離制限は「違憲」でした。では、「公衆浴場がとなりと250メートル離れなければいけない」というのは違憲でしょうか、合憲でしょうか?

事件名

公衆浴場を距離制限事件


内容

 県知事の許可を得ずに公衆浴場を営業した者が、公衆浴場法等違反の罪に問われた。公衆浴場の営業を許可制とし、許可基準としてその距離制限を定める、公衆浴場法等の規制は、営業の自由を保障する憲法22条1項に違反しないか。


判決要旨

 公衆浴場の設立を競争の自由にゆだねると、その偏在により多数の国民が、公衆浴場を利用する場合に不便をきたし、無用の競争を生じ、その経営を不安定にし、浴場の衛生設備の低下等の影響をきたすなど、公共の福祉に反する結果を生じる恐れがある。

 公共浴場が近いと、まずいようです。

 従って、このような公衆浴場の現在及び乱立を防止するために、配置の適正を保つための措置を講ずることは、憲法22条1項に違反しない。
最高裁大法廷 昭和30年4月30日

 公衆浴場の距離制限は、合憲なのです。

k2.jpg


事件名
小売市場事件


内容

 無許可で小売市場を開設したものが小売市場の開設を許可制とする小売商業調整特別措置法違反の罪に問われた。


争点

 小売市場の開設を許可制とし、その許可基準としてその配置の距離制限を定める小売商業調整特別措置法の規定は、営業の自由を保障する憲法22条1項に違反しないか。


 小売市場の距離制限は、合憲なのでしょうか?


判決要旨

 小売市場の許可規制は、中小企業を保護する政策の一方策として取った措置である(積極的目的規制)。

 立法府がその裁量権を逸脱し、当該法規的規制措置が著しく不合理であることが明白である場合に限って、これを違憲として、その効力を否定することができるものとする(明白性の原則)。
 小売市場の強化規制はその目的において、一応の合理性を認めることができないわけではなく、その規制の手段・態様においても、それが著しく不合理であることが明白であるとは認められない。したがって、憲法違反ではない
最高裁大法廷 昭和47年11月22日

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 距離制限がいつでも違憲となるわけではないのです。



クイズの回答

すべて○です。
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