憲法について、学んでみる その1

<憲法について、学んでみる その1>

 「小さな政府論の蹉跌」という連載で、「法律(憲法)・人権」について扱ってきました。この憲法について、高校で教えられている内容を再確認したいと思います。
 
 憲法は、基本法中の基本法ですが、実は案外、知られていないことも多いのです。

<間接適用説>

事件名

三菱樹脂事件



内容

三菱樹脂株式会社に採用されたAさんは、入社試験中に、在学中の学生運動歴を隠していたことなどを理由として、試用期間後の本採用を拒否された。



争点

企業が労働者の思想・信条を理由として採用を拒否することは許されるか。



憲法

第19条
思想および良心の自由は、これを侵してはならない。



判決要旨

 憲法第3章の規定(人権規定)は、国や公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を規律するものではない(ゆえに、会社の行為が思想信条のおよび良心の自由を保障する憲法19条に違反するということではない)。

 ただし、人権侵害の様態・程度が社会的に許容しうる限度を超える時は、民法90条、不法行為に関する諸規定(民法709条など)の適切な運用によって、私的自治と人権保障の間の適切な調整を図るべきである(間接適用説)。

 企業は、原則として自己の営業のために、いかなる者を雇い入れるかを決定する自由を有するので、特定の思想・信条を有する者の雇い入れを阻んでも、違法ではない

 最高裁大法廷判決昭和48年12月12日。

1

 憲法は、国家という巨大権力を持ったリヴァイアサン(怪獣)の手足を縛る為に制定されたものです。何しろ、国家はやろうと思えば、人殺し(死刑)もできますし、財産没収(罰金~追徴金etc)だって簡単にできます。この権力を、縛るのが憲法です。

 ですので、「日本最初の憲法は、聖徳太子(この表現も最近怪しいそうですが)の17条憲法だ」などというのは、真っ赤な間違いです。

 また、例えば、「プロ野球選手は、ドラフト制度があり、意中の球団に就職することができないのは、憲法違反だ」などという意見は、勘違いです。

第22条
 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。


 これは、国(自治体)が、職業選択の自由を阻害してはいけないという事であって、日本プロ野球機構(民間)が、独自に、ドラフト制度を取り入れているのは、もちろん憲法違反ではありません。

 ただ、判例の「間接適用説」は、「私人間の人権侵害の自由」を認めているのではなく、憲法の人権保障は、民法などの私人間に適用される法(私法)の解釈・適用を通じて、私人間にも反映させるべきだという考え方です。

2

<クイズ>

 ○×で答えましょう(正解は一番下です)

1 
 憲法は国や公共団体と個人との関係を規律するものである。ゆえに、憲法の人権規定が私人間に直接適用されることはない。

2 
 憲法の人権規定は原則として私人間には直接適用されない。しかし、私人の行為が人権を侵害する場合、当然に、私法上も違法となる。

3 
 憲法の人権規定は、私人間に直接適用されないので、民間企業の労働者の労働基本権は憲法ではなく、法律(労働関係法規)によって初めて保証される。



<私人間に直接適用>

 実は、憲法は、私人間に直接適用されるのです。

第28条 

勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動する権利は、これを保証する。
 

 この条文は、直接適用の代表例です。労働組合法などの法律は、「労働基本権」を具体化するものであり、「労働組合法がないから労働基本権がない」とはならないのです。

 同様に、次の条項も同じで、「直接適用」です。

第27条 児童はこれを酷使してはならない。
 
 他にも、次のような条項があります。

第15条

 すべて選挙における投票の秘密は、これを犯してはならない。選挙人はその選択に関し公的にも私的にも責任を問われない。


第18条

 何人ともいかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。















クイズの答え

 すべて×です。憲法の人権規定は私人間に直接適用されないので、私人による人権侵害行為が当然に私法上違法となることはありません間接適用説によれば、「人権侵害の事実が民法90条等の解釈で考慮される結果、私法上違法と判断される一要素となるにすぎない」となります。

民法第90条

公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

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