デフレの特効薬は人民元切り上げ?
倉西雅子 ブログ:万国時事周覧 『デフレの特効薬は人民元切り上げ?』
2010-05-03 15:29:47 | 日本経済
人民元の現預金、米を1兆ドル上回る “危ういバブル”膨張(産経新聞) - goo ニュース
ここ数年、デフレ傾向が続き、政府は、危機感をもっているようです。しかしながら、その原因が、外部にあるとしますと、自国の政策を駆使しても、デフレ傾向に歯止めをかけることはできないかもしれません。
輸入インフレという言葉はよく使われていますが、輸入インフレがあれば、輸入デフレもあるはずです。中国からの安価な製品の輸入が、我が国の物価水準を引き下げているとしますと、この問題の特効薬は、中国が、元安政策を是正することにあるかもしれません。マスコミなどで、中国製品による価格破壊が報じられていますが、この要因を抜きにして、デフレ問題を論じることはできなのではないかと思うのです。
インフレによってもたらされる混乱と国民の不利益を考えますと(借金を抱える政府にとっては利益になる・・・)、意図的にインフレを起こすことも考えものです。政府は、むしろ、中国政府に対して元高容認を働き掛けるべきなのではないでしょうか。
<安価な中国製品がデフレ要因?>
昔、野口悠紀雄、榊原英資、近頃は浜矩子が主張する「(中国をはじめとする)輸入品価格の下落が日本のデフレの要因」という説ですが、理論的にも、実証的にも事実ではありません。
まず理論ですが、「デフレ」は、モノ・サービスの物価全体が下がる(絶対価格下落)ことで、輸入品の価格低下は、一部の商品という、相対的価格の下落のことです。
「マクロのデフレ(日本全体の絶対的物価下落)」と、「ミクロのデフレ(ある製品が他の製品に比べて相対的に安くなった)」を混在させている、経済学的に典型的なあやまりです。このような間違いを犯すのは、「『アエラ(雑誌:当時)』や嶌信彦、宮崎哲弥といった、『素人』」論者と同じです。(同内容:野口旭『経済学を知らないエコノミストたち』日本評論社2002p178~180)
例えば、牛肉/オレンジの輸入自由化交渉が80年代にありました。その結果、牛肉も、オレンジ/グレープフルーツもそれ以前に比べ、圧倒的に安くなったのですが、それが「物価水準(絶対価格)」を下げたわけではありません。
日本のデフレは、「中国からの安価な製品の輸入が、我が国の物価水準を引き下げている」という理由によるものではないのです。
先進国の中で、「日本だけがデフレ」です。なぜでしょうか。また、日本1国の経済政策では、制御できないのでしょうか。世界中の国が、中国からの輸入を増やしたのに、日本だけがデフレでした。
世界中の国が、中国からの輸入を増やしたのに、日本だけがデフレでした。
岩田規久生『景気ってなんだろう』ちくまプリマー新書 2008 p157

どうして、日本以上に中国製品を輸入しているアメリカが、インフレだったのでしょう?
中井浩之 埼玉大学客員教授 グローバル化経済の転換点 中公新書 2009 p166-167

「グローバリゼーションを背景にした、供給サイドの要因」が、デフレの原因であれば、世界中にデフレが波及するはずです。にもかかわらず、日本だけがデフレ・・・。
グラフ 『週間ダイヤモンド』 2010.3.27 p49

このように、デフレの原因は、「輸入物価下落」ではありません。
2010-05-03 15:29:47 | 日本経済
人民元の現預金、米を1兆ドル上回る “危ういバブル”膨張(産経新聞) - goo ニュース
ここ数年、デフレ傾向が続き、政府は、危機感をもっているようです。しかしながら、その原因が、外部にあるとしますと、自国の政策を駆使しても、デフレ傾向に歯止めをかけることはできないかもしれません。
輸入インフレという言葉はよく使われていますが、輸入インフレがあれば、輸入デフレもあるはずです。中国からの安価な製品の輸入が、我が国の物価水準を引き下げているとしますと、この問題の特効薬は、中国が、元安政策を是正することにあるかもしれません。マスコミなどで、中国製品による価格破壊が報じられていますが、この要因を抜きにして、デフレ問題を論じることはできなのではないかと思うのです。
インフレによってもたらされる混乱と国民の不利益を考えますと(借金を抱える政府にとっては利益になる・・・)、意図的にインフレを起こすことも考えものです。政府は、むしろ、中国政府に対して元高容認を働き掛けるべきなのではないでしょうか。
<安価な中国製品がデフレ要因?>
昔、野口悠紀雄、榊原英資、近頃は浜矩子が主張する「(中国をはじめとする)輸入品価格の下落が日本のデフレの要因」という説ですが、理論的にも、実証的にも事実ではありません。
まず理論ですが、「デフレ」は、モノ・サービスの物価全体が下がる(絶対価格下落)ことで、輸入品の価格低下は、一部の商品という、相対的価格の下落のことです。
「マクロのデフレ(日本全体の絶対的物価下落)」と、「ミクロのデフレ(ある製品が他の製品に比べて相対的に安くなった)」を混在させている、経済学的に典型的なあやまりです。このような間違いを犯すのは、「『アエラ(雑誌:当時)』や嶌信彦、宮崎哲弥といった、『素人』」論者と同じです。(同内容:野口旭『経済学を知らないエコノミストたち』日本評論社2002p178~180)
例えば、牛肉/オレンジの輸入自由化交渉が80年代にありました。その結果、牛肉も、オレンジ/グレープフルーツもそれ以前に比べ、圧倒的に安くなったのですが、それが「物価水準(絶対価格)」を下げたわけではありません。
日本のデフレは、「中国からの安価な製品の輸入が、我が国の物価水準を引き下げている」という理由によるものではないのです。
先進国の中で、「日本だけがデフレ」です。なぜでしょうか。また、日本1国の経済政策では、制御できないのでしょうか。世界中の国が、中国からの輸入を増やしたのに、日本だけがデフレでした。
世界中の国が、中国からの輸入を増やしたのに、日本だけがデフレでした。
岩田規久生『景気ってなんだろう』ちくまプリマー新書 2008 p157

どうして、日本以上に中国製品を輸入しているアメリカが、インフレだったのでしょう?
中井浩之 埼玉大学客員教授 グローバル化経済の転換点 中公新書 2009 p166-167

「グローバリゼーションを背景にした、供給サイドの要因」が、デフレの原因であれば、世界中にデフレが波及するはずです。にもかかわらず、日本だけがデフレ・・・。
グラフ 『週間ダイヤモンド』 2010.3.27 p49

このように、デフレの原因は、「輸入物価下落」ではありません。
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