世界同時不況 日本は甦るか

榊原英資 早稲田大学教授 『世界同時不況 日本は甦るか』文藝春秋2008.12月号

 榊原さんは、世界同時不況と同時に円安バブルがはじけた と言います。日本低金利・各国高金利だったものが、今現在各国が利下げに走っているので、金利差が縮まり、円高はまだまだ進む と言います。文藝春秋誌の懇談会です。

 「小泉政権はデフレからの脱却を目標にゼロ金利政策を行いましたが、これが大間違いだった。この時期のデフレは景気の悪化が原因ではなく、アジアとの経済統合によって、中国への輸出が伸び、また中国から安易な食品や衣料が入ってきたのが原因だったのです。物価が安定して、しかも経済が拡大した。これは いいデフレだったのです。本来ならば景気が回復した2003年に金利を上げていなければならなかった」
 
 2003年の溝口財務官による、為替介入(円安誘導)については、こう言います。
「…私は…為替介入は間違いだったと思います。…つまり、悪いデフレだと思い込んでしまった。…①20兆円に迫るドル買い、円売りを行いましたが、このとき株は下がりました。これまでバブル後に、最も株価が下がったのはこの年の4月でした…」

 この「いいデフレ」「悪いデフレ」などというのは、経済学では相手にされていません
  この対談では、すぐさま高橋洋一東洋大学教授(当時)に一蹴されています
 「いいデフレなど、経済学的にはありえませんデフレが続くと実質金利が高くなり、実質賃金も上昇する。いずれも景気を悪化させる要因です」

 「良いデフレ論」は、2003年(2001年?)でしたか、経済白書でも一蹴されています。「中国から安易な食品や衣料が入ってきたのが原因だった」と言っていますが、①世界中の国が、中国からの輸入を増やしたのに、日本だけがデフレでした岩田規久生『景気ってなんだろう』ちくまプリマー新書 2008 p157インフレ率

 
  どうして、日本以上に中国製品を輸入しているアメリカが、インフレだったのでしょう?
 また、この説は②「マクロのデフレ(日本全体の絶対的物価下落)」と、「ミクロのデフレ(ある製品が他の製品に比べて相対的に安くなった)」を混在させている、経済学的に典型的なあやまりですこのような間違いを犯すのは、「『アエラ(雑誌:当時)』や嶌信彦、宮崎哲弥といった、『素人』」論者と同じです。(同内容:野口旭『経済学を知らないエコノミストたち』日本評論社2002p178~180)

  経済学者は、このような素人を「間違いだ」と指摘するのが仕事のはずですが・
 デフレは、物価が下がる=お金の価値が上がる事です。1000万円だった家が、翌年950万に下がるとします。このばあい、お金の価値は、50÷950×100=5.26%アップします。つまり、金利が5.26%ついたのと同じ=1000万円が1年後に1052万6千円になったことと同じなのです。このような状態の中、名目金利をいくら下げても(たとえば限りなく0%に近く)、実質金利は5%以上もついてしまうのです。金利政策は無効になります。 「0金利」政策を採用しても、物価が1%下落したら、実質金利は1%ついてしまうのです。
 お金をただ持っているだけで、金利がつくのです。1年待てば、「物価が下がる(デフレ)」というのは、こういうことです。これなら、誰もお金を使おうとはしません。黙っていても、高金利がつくのですから。これがデフレです。「良いデフレ」も「悪いデフレ」も関係ありません。そもそも、「良い・悪い」という価値観を持ち込む時点で「科学」ではなくなってしまいます経済学は「科学」です。価値観を述べる学問「哲学」ではありません
スポンサーサイト

theme : 間違いだらけの経済教育
genre : 学校・教育

comment

Secret

カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

06月 | 2017年07月 | 08月
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -


FC2カウンター
カテゴリ
記事を検索する
「国債」 「公債」 「食糧」 「貿易黒字」などで検索して下さい
プロフィール

菅原晃

Author:菅原晃
図解 使えるミクロ経済学 発売です!

図解 使えるミクロ経済学

図解 使えるマクロ経済学 発売です!

図解 使えるマクロ経済学


高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学発売です!

高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学


経済教育学会 
経済ネットワーク 会員
行政書士資格


注 コメントする方へ

このブログでは、個人的なご意見・ご感想(価値観 正しい・間違い、好き嫌い、善悪)は、千差万別で正誤判定できないことから、基本的に扱っておりません。
意見は書き込まないで下さい。こちらの見解(意見)を尋ねる質問も、ご遠慮願います。
経済学は学問ですので、事実を扱い、規範(価値観)は扱っていません。事実に基づく見解をお願いいたします。
カテゴリ『コメントに、意見は書かないで下さい』を参照願います。
なお、はじめてコメントする方はコメント欄ではなく「質問欄」からお願いいたします。

ご質問・ご意見(非公開でやりとりできます)
内容・アドレス表示されず、直接やりとりできます。

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
最新記事
最新コメント
検索フォーム
月別アーカイブ