新聞の間違い(15) 日本経済新聞 H21.5.23 その2
相変わらず、 「貿易赤字は損」「貿易赤字は悪いこと」 という誤りを書いています。
『米の貿易赤字・貯蓄率改善 市況の法則』日本経済新聞 (グラフも)H21.5.23
…米国の経済指標の一部に好転の兆し がみえてきた。財政赤字と貿易赤字の「双子の赤字」のうち、貿易赤字は縮小。個人の貯蓄率はプラスに転じ ている。これらの指標の改善は ・・・
貯蓄が増えると、どうなるのでしょうか。三面等価の図(GNIのところ)を見て見ましょう。
私たちが,給料をもらったら,何に使うでしょうか。これには3つの使い道しかありません。「使うか,貯めるか,税金か」です。高校生がアルバイト代を1万円もらいます。6000円で服を買います。消費税は,5%なので,300円です。残り3700円は,預(貯)金します。ものすごく単純な例ですが,これですべてです。お父さんが給料をもらっても,「家族の生活のために使うか,税金を払うか,貯めるか」です。
ここで,「貯める」というのは,使わなかったお金すべてを示します。それは,財布の中にあろうと,銀行預金になろうと,誰かに貸そうと,要するに,「使わなかったお金全部」のことを言います。
会社が使っても同じです。「モノを作るために,原材料を買ったり(飲食店のようなサービス業なら,食材を購入したり,従業員の服をそろえたり)するか,法人税や,消費税などの税を払うか,残る(内部留保(りゅうほ))か」です。
分配(所得)が,会社に回っても,個人に回っても,あるいは,宮崎県のような地方自治体に回っても,すべて同じ結果になります。「使うか,貯めるか,税金か」です。この「使うか,貯めるか,税金か」を難しく言うと,「消費・貯蓄・税金」と言います。
「消費を英語のConsumptionの頭文字C,貯蓄をSavingのS,税金をTaxのT」であらわします。すると,②分配(所得)は「C+S+T」という式になります。
ところが,われわれが消費せずに貯蓄を増やすと,企業はモノ・サービスが売れないので,生産を縮小したり,値段を下げたり,新たな投資を控えます。GDP(国民総生産)が減ります。GDPが減るので,我々の所得(給料)も減ります。所得が減ると,ますますお金を使うことが出来なくなります。社会全体の経済が縮小します。これを不況と言います。
個人が貯蓄を増やすのは、個人にとっては良いことなのかもしれませんが、社会全体で消費が落ち込み、GDPが落ち込みます。これを、「合成の誤謬」といいます。
貯蓄率の増加は「良いこと・悪いこと」という価値判断の対象ではない のです。「個人の貯蓄率はプラスに転じている。これらの指標の改善… 」は、社会全体・企業の側から見ると、「社会全体の貯蓄率はプラスに転じている。これらの指標の改悪… 」となります。
以上、新聞の間違い(14)(15)について、日経に問い合わせたところ、以下の返事がきました。
お尋ねの米国の貿易赤字と貯蓄率の改善ですが、単純に「貿易赤字は悪いこと、貿易黒字は良いこと」「貯蓄率プラスは良いこと、マイナスは悪いこと」とは言えません。
その国の経済構造によって違いがあるからです。
記事で取り上げた米国の場合、世界から多くの製品を輸入しているため、もともと貿易収支は赤 字が続いています。
特に原油価格の上昇は輸入額を押し上げ、赤字幅を拡大、インフレを招きます。記事は原油価格 の高騰が収まったため多すぎた赤字額が縮小したことを改善と言っている わけです。
貯蓄率についても、原油価格の上昇に伴うガソリン価格のアップで家計の支出が増えたため、必 要以上に低下しました。原油価格の高騰が収まり、低くなりすぎた貯蓄率が戻ってきたことを改善と 言っているわけです。
これは結局「赤字縮小を善・貯蓄率アップを善」と言っているにすぎません・・・閑話休題
(1)貿易赤(黒)字は、資本収支黒(赤)字から生まれます。お金の貸し借りが先、貿易赤(黒)字が後です。原油価格が下落したから貿易赤字縮小ではありません。アメリカの資本収支黒字が減少したのが原因です。
(2)貯蓄率は、ガソリン価格の上昇で家計消費が増え、低下したのではありません。(グラフ参照)両者に全く相関がない事を、グラフは示しています。 貯蓄率低下→資本収支プラス拡大=貿易赤字拡大、貯蓄率上昇→資本収支プラス縮小=貿易赤字縮小なのです。
「カネの輸出入=モノの輸出入(二面性)」という原則に基づいていないので、モノという一面のみで語るから、全体像が見えません。このような理解が、「貿易摩擦」を生むのです。日経は、「そのような理解は間違い」と主張しなければならない新聞です・・・・
『米の貿易赤字・貯蓄率改善 市況の法則』日本経済新聞 (グラフも)H21.5.23
…米国の経済指標の一部に好転の兆し がみえてきた。財政赤字と貿易赤字の「双子の赤字」のうち、貿易赤字は縮小。個人の貯蓄率はプラスに転じ ている。これらの指標の改善は ・・・

貯蓄が増えると、どうなるのでしょうか。三面等価の図(GNIのところ)を見て見ましょう。

私たちが,給料をもらったら,何に使うでしょうか。これには3つの使い道しかありません。「使うか,貯めるか,税金か」です。高校生がアルバイト代を1万円もらいます。6000円で服を買います。消費税は,5%なので,300円です。残り3700円は,預(貯)金します。ものすごく単純な例ですが,これですべてです。お父さんが給料をもらっても,「家族の生活のために使うか,税金を払うか,貯めるか」です。
ここで,「貯める」というのは,使わなかったお金すべてを示します。それは,財布の中にあろうと,銀行預金になろうと,誰かに貸そうと,要するに,「使わなかったお金全部」のことを言います。
会社が使っても同じです。「モノを作るために,原材料を買ったり(飲食店のようなサービス業なら,食材を購入したり,従業員の服をそろえたり)するか,法人税や,消費税などの税を払うか,残る(内部留保(りゅうほ))か」です。
分配(所得)が,会社に回っても,個人に回っても,あるいは,宮崎県のような地方自治体に回っても,すべて同じ結果になります。「使うか,貯めるか,税金か」です。この「使うか,貯めるか,税金か」を難しく言うと,「消費・貯蓄・税金」と言います。
「消費を英語のConsumptionの頭文字C,貯蓄をSavingのS,税金をTaxのT」であらわします。すると,②分配(所得)は「C+S+T」という式になります。
ところが,われわれが消費せずに貯蓄を増やすと,企業はモノ・サービスが売れないので,生産を縮小したり,値段を下げたり,新たな投資を控えます。GDP(国民総生産)が減ります。GDPが減るので,我々の所得(給料)も減ります。所得が減ると,ますますお金を使うことが出来なくなります。社会全体の経済が縮小します。これを不況と言います。
個人が貯蓄を増やすのは、個人にとっては良いことなのかもしれませんが、社会全体で消費が落ち込み、GDPが落ち込みます。これを、「合成の誤謬」といいます。
貯蓄率の増加は「良いこと・悪いこと」という価値判断の対象ではない のです。「個人の貯蓄率はプラスに転じている。これらの指標の改善… 」は、社会全体・企業の側から見ると、「社会全体の貯蓄率はプラスに転じている。これらの指標の改悪… 」となります。
以上、新聞の間違い(14)(15)について、日経に問い合わせたところ、以下の返事がきました。
お尋ねの米国の貿易赤字と貯蓄率の改善ですが、単純に「貿易赤字は悪いこと、貿易黒字は良いこと」「貯蓄率プラスは良いこと、マイナスは悪いこと」とは言えません。
その国の経済構造によって違いがあるからです。
記事で取り上げた米国の場合、世界から多くの製品を輸入しているため、もともと貿易収支は赤 字が続いています。
特に原油価格の上昇は輸入額を押し上げ、赤字幅を拡大、インフレを招きます。記事は原油価格 の高騰が収まったため多すぎた赤字額が縮小したことを改善と言っている わけです。
貯蓄率についても、原油価格の上昇に伴うガソリン価格のアップで家計の支出が増えたため、必 要以上に低下しました。原油価格の高騰が収まり、低くなりすぎた貯蓄率が戻ってきたことを改善と 言っているわけです。
これは結局「赤字縮小を善・貯蓄率アップを善」と言っているにすぎません・・・閑話休題
(1)貿易赤(黒)字は、資本収支黒(赤)字から生まれます。お金の貸し借りが先、貿易赤(黒)字が後です。原油価格が下落したから貿易赤字縮小ではありません。アメリカの資本収支黒字が減少したのが原因です。
(2)貯蓄率は、ガソリン価格の上昇で家計消費が増え、低下したのではありません。(グラフ参照)両者に全く相関がない事を、グラフは示しています。 貯蓄率低下→資本収支プラス拡大=貿易赤字拡大、貯蓄率上昇→資本収支プラス縮小=貿易赤字縮小なのです。
「カネの輸出入=モノの輸出入(二面性)」という原則に基づいていないので、モノという一面のみで語るから、全体像が見えません。このような理解が、「貿易摩擦」を生むのです。日経は、「そのような理解は間違い」と主張しなければならない新聞です・・・・
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