かんべんしてよ 日経

<かんべんしてよ 日経>

H23.6.29「新しい日本へ」

提言
●海外で稼ぎ国内に再投資する仕組み作る
●M&A活用し新興国でシェア首位目指す
●世界の人・技術取り込み輸出産業を創出
 

 まったく、何言ってるのでしょう。原理的に、できもしないことを述べています。上の●の1番目と2番目は完全に矛盾しています。

…日産自動車社長のカルロス・ゴーン(57)は「現地の生産能力が必要」とロシア最大手のアフトワズを仏ルノーと共同買収する方針を表明。武田薬品工業は1兆円強で新興国に強いスイス企業を買収した。…M&A(合併・買収)の自由度は高まり、経営者に覚悟を迫る。

 次に海外の稼ぎをどう還流させるか。10年度に日本企業が海外子会社などから受け取った配当は2兆9129億円。09年度から8%減った。円高のほかに、日本に利益を戻しても、成長を描きにくいという実態もある。


<輸出はもうけ、だが国内には回らない>

 輸出は、個々の企業の儲けになります。輸出企業は「円」で支払額を受け取ります。従業員への給与の支払いや、取引先への未払い金の支払いその他、すべて「円」で行われます。一方、為替銀行には「ドル(外貨)」が残ります。

 輸入業者は「ドル」で支払います。外国からモノを買ったら、通信販売でも「ドル」決済です。石油の輸入代金もドル決済です。

日経 H23.7.1『円高傾向が定着 輸出企業が円買い』
 …震災直後は「いずれ円安が進む」とみて輸出で稼いだドルを円に替えずにそのまま手元にもっていた。しかし円高が定着しつつあることで、ある大手生産メーカーは「…円買いを復活していく」と語る。
 …一方、輸入企業は震災後も円売り・ドル買いを進めてきた。原油を輸入する際にドル建てで決済する石油会社は「輸入金額に対してほぼ毎日、同額程度のドル買い予約をしている」(出光興産)。


 日本の、輸出―輸入はプラス(貿易黒字)なので、結局「ドル(外貨)」が残ります。これが、貿易収支黒字=資本収支赤字(ドル:外貨増)のことです。こららは、海外資産に投資された額のことです。
 
 これ以外にも、純粋な資本取引(外国の企業買収:M&A)や、株の購入、債券(社債や国債)の購入などが、行われています(国債収支表には載ってきません)。

…日産自動車社長のカルロス・ゴーン(57)は「現地の生産能力が必要」とロシア最大手のアフトワズを仏ルノーと共同買収する方針を表明。武田薬品工業は1兆円強で新興国に強いスイス企業を買収した。…M&A(合併・買収)の自由度は高まり、経営者に覚悟を迫る。

 たとえば、日本企業が外国から投資された場合、以下のようになります。

外国人の株保有率 出典 日経H22.6.19 2010年3月末現在
オリックス 50.5%
パイオニア 31.3
日本電気硝子 44.4
三井化学 31.5
住友重機械工業36.6
日本郵船35.2
野村HD 44.1
レオパレス21 32.4

 これらの企業は、すでに「外国の企業」ということです。日本が、海外に出資した場合、この逆で、「海外にありながら日本企業」ということです。
 
 ただし、ここで注意が必要なのは、「海外からの投資=外国からの借り入れ=対外債務=借金」ではないということです。

高増明他『経済学者に騙されないための経済学入門』ナカニシヤ出版2005 
p20
…豊かさというのは、いろいろな財を消費して満足を得ることです。けっして、輸出が輸入より大きいことが豊かではないのです。…対外債務(筆者注:経常、貿易赤字=資本収支黒字)というのは、住宅ローンとは違って返済しなければいけないものではありません。対外債務というのは、たんに外国の企業が自国の土地や株を買ったということです。けっして日本人が(筆者注:外国が)外国からお金を借りてそれを毎月返済しなければならないということではないのです。
 

アメリカは、世界最大の投資受入(海外債務最大)国です。でも、この債務を借金とみなすのは、間違いなのです。

 この投資(海外へのお金の貸しだし=出資)が,日本の対外資産です。その残高は約610兆4920億円(07年末)で,世界一となっています。そのうち,直接投資(海外の工場建設など)は,約55兆円です。また,外貨準備1兆39億ドルのうち,証券(外国国債含む)は8588億ドル,約86%を占めています。
 海外資産から外国の日本国内資産を引いた、純資産は、2009年末時点で266兆2230億円と、もちろん世界一になっています。

日本 対外純資産残高.jpg

 この、海外債権から生み出される所得が、「所得収支」です。居住者・非居住者間の雇用者報酬と投資収益(直接投資、証券投資およびその他の投資収益)の受払いのことです。

 日本の所得収支は1年間に12.3兆円の黒字(’09年末)です。この「所得収支」は,近年,「貿易黒字」額を上回るようになりました。「日本が輸出中心の『貿易立国』から,『投資立国』に移りつつある」というのは,このことを示しています。その中味ですが,外国債券の利子収入が7割,直接投資の収益が2割,外国株式の配当金が1割です。

G:\ブログ 絵\2009年 国際収支表.jpg

 ですが、この国際収支表をみてわかるように、結局、所得収支黒字資本収支赤字のことであり、結局また、「海外資産増」の要因になっています。海外から配当をもらっても、その分、また「外国資産」が積みあがるのです。

2009 国際収支表 所得収支→対外純資産バージョン.jpg

貿易黒字=海外資産=国内に還流しないカネ

 ですから、日経の下記の主張は完全に間違いです。

●海外で稼ぎ国内に再投資する仕組み作る

 次に海外の稼ぎをどう還流させるか。10年度に日本企業が海外子会社などから受け取った配当は2兆9129億円。09年度から8%減った。円高のほかに、日本に利益を戻しても、成長を描きにくいという実態もある。
 

 さらに、経常黒字資本収支赤字ですので、

●M&A活用し新興国でシェア首位目指す

 これをやればやるほど、

●海外で稼ぎ国内に再投資する仕組み作る

 の「●海外で稼ぎ」が達成されているのです。ただし「国内に再投資する」ができないのです。

<日経記者は、社内情報を勉強せよ>

 同じ日経のウエブ上の記事です。

小峰隆夫のワンクラス上の日本経済論

「貿易収支の赤字」は「日本の競争力の衰え」なのか
国際収支を巡る議論 現状編
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20110620/221025/
日経ビジネスオンライン 6月22日(水)




 例えば、貿易収支が赤字になった(輸出よりも輸入が多くなった)という現象を目にすると、多くの人は「日本の競争力が衰えた」と考えるようだ。私は、これは「マクロとミクロの混同だ」と考えている。この点はやや複雑だが、次のようになる。

 本論における説明では、貿易収支を内外景気の動きや資源価格の動きで説明してきた。これは、貿易収支というマクロ(経済全体)的な現象はマクロ的な変数で説明するというのが基本だからである。ただし、ミクロ的な貿易収支、例えば、自動車の貿易収支、繊維製品の貿易収支には、日本の競争力が反映される。日本が自動車部門で黒字、繊維部門で赤字となっているのは、日本の産業が自動車で強い競争力を持ち、繊維製品では競争力が弱いからだ。しかし、こうしたミクロ的な競争力によってはマクロ的な貿易収支の変化を説明することはできないのである。

 競争力という概念を安易に持ち込むと、貿易が「勝った、負けた」の議論になってしまうことにも注意が必要だ。ミクロ的には競争力に優る産業で貿易収支が黒字になり、劣る産業では赤字になりやすいことは事実だ。その意味では「勝った、負けた」の世界なのかもしれない。しかし、これも前回説明したように、貿易においては、輸出が善で輸入が悪ということではない輸出が日本国民の所得と雇用機会の源となり、同時に海外の人々の暮らしをより豊かにしているのと同じように、輸入もまた海外の人々の雇用機会を提供するとともに、同時に日本国民の生活を豊かなものにしているのだ。

 第3に、以上のような説明にもかかわらず、多くの人が貿易赤字を大変気にするのはなぜか、という点も重要な論点だ。

 私は、この点は「言葉遣い」にも大きな原因があると考えている。前回説明したように、貿易収支、経常収支は黒字の方が望ましいとは必ずしも言えない。しかし、普通の人であれば「黒字」の方が「赤字」よりも望ましいと考えるのが自然だ。黒字だったのが赤字になったことを、黒字から赤字に「転落した」と表現されることが多いのも、「黒字が望ましい」という潜在的な価値判断があるからだ。しかし、これは一国全体の経済と家計経済を同一視しているからであり、誤解の元である。私の考えでは、貿易収支、経常収支は、景気、資源価格、貯蓄投資の関係などを反映して動くのであり、その背景を分析して初めて評価することが出来るものだ。結果的な黒字や赤字の大きさだけで「望ましいかどうか」を判断できるものではない。
 
 私は、「黒字」「赤字」「転落する」といった表現は、言葉自体に価値判断が含まれたもので、「経済的差別用語」に相当するものであり、撲滅すべきだとさえ考えている。言葉自体に価値判断が入ってしまうと、クールな議論が阻害されかねない。黒字ではなく「輸出超過」、赤字ではなく「輸入超過」、「赤字に転落した」ではなく「輸入超過に転じた」と表現すべきではないか。


<余りの無知・・・>

 日経記者の記事です。もう、自分の頭の妄想「貿易は黒字でなければならない」=バカの壁に固執し、自分の書いている内容の数字さえ、見えていません

 GDP成長率が、11%ということは、日本の高度成長期の数値です。GDP≡GDI≡GDEなので、国民の所得もガンガン伸びています。右肩上がり、行け行けどんどんの状態です。

 それなのに、「貿易赤字を抑えて、貿易黒字にしなければいけない・・・・」という記事なのです。本当に、何を考えているのでしょう?
 貿易赤字だろうが、黒字だろうが、「所得が伸びている」という、一番大事なことが見えていないのです。日本だって、高度成長期に「赤字」の時期がありました。
 
 日経の「バカの壁」も、いい加減にして欲しいです。

日経『トルコ経済 軟着陸が課題』H23.7.8

トルコ 経常赤字

花房良祐
 …1~3月期の経済成長率は前年同期比11%と、主要20カ国・地域では中国を上回る最も高い伸びを記録した。選挙前は引き締め策を手控えていたが、経常赤字の急拡大への対応などに市場の注目が集まっている。

 …内需過熱で輸入が急増し、経常赤字が拡大していることがある。トルコはエネルギーの海外依存度が高いため、経済成長は貿易赤字につながる。製造業も輸入した部品を組み立てて輸出する企業が多く、自動車などの輸出が増えても思うように貿易黒字につながらない
 5月の輸入は前年比43%増だったが、輸出は力強さを欠き、12%増にとどまった。1~4月の経常赤字は、前年同期比2.1倍に上る。
 

 日経は、所得(GDP)が増えているのに、どうしても資本黒字経常赤字を、資本赤字=経常黒字にしたくてたまらないようです。

<もはや、デマの域>


日経H23.7,9『6月中旬 貿易黒字』

 財務省…発表…貿易収支は6月中旬が495億円の黒字となった。…貿易収支が改善し始めた。
 …6月上旬と中旬を合わせた貿易収支は1159億円の赤字。中旬は黒字だったが、上旬(1~10日)の赤字(1654億円)を埋め切れなかった


日経(読者応答センター)に問い合わせた所、次のような回答でした.

1「経常赤字転落」は慣例的表現で、ずっとこうなっています。
2 その記事内容を受けて、あとは、読者が判断して下さい。
3 国際収支については、読者が勉強することが必要です。

 自分は間違いを書いて「読者は勉強しろ」って、学校の先生が言えば、暴論です。
スポンサーサイト

theme : 間違いだらけの経済教育
genre : 学校・教育

comment

Secret

check団体が必要

http://sites.google.com/site/fsinetwork/
これは私も何人か知っている方々のグループで食の安全に関するトンデモ記事等を見つけたら(かなりしつこく)問い合わせる活動をしているのですが、経済記事や図書においてもこんな活動をする団体が必要あるという気がします。

日本経済立て直しのためにも。

No title

 2か月以上の前の記事に書き込みさせていただきます。

 本記事のコメント欄でストックとフローの議論が行われていたようですが、私も1点だけ質問させていただきます。

  本コメント欄のマッサージの例で、10万円が「私」の預金から「Zさん」の預金に移動するだけなので、GDPの増加にはならないという点は納得しております。しかし、「私」が預金から下ろした10万円を受け取った「Zさん」が5万円を預金し、残りの5万円を消費に回した場合は、5万円分GDPが増加するのではないでしょうか。

 

No title

 ストックが減る=フローに回す=貯蓄を降ろす=株や債券が売られること=誰かが買うこと=買うにはフローからストックへ

 ストック減れば(株や債券売る)=誰かが買う(フローからストックに回す)

トータルゼロです。

 ストックを崩す(債権下ろす)=別な主体がその債権買うことです。

フローに回ったカネの分、誰かがフローからストックに回しています。


詳しくは、
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-186.html
藻谷浩介『震災復興・全国民が貯金の1%を寄付しよう』のトンデモ

の、フロー⇔ストック循環図をご覧ください。

No title

 ありがとうございました。

 ストックをフローに回す=不可能 ということは経済学の教科書には載っているのでしょうか。それとも経済学を学んだだけでは不十分で、金融論や簿記なども学ばないと理解できないものなのでしょうか?私だけでなく多くの方が質問しているという事実や、本ブログで取り上げられていた三橋貴明氏のブログのコメント欄でも、「貯蓄を取り崩す=個人消費活性化でGDP増加」と語っている人がいたので、改めて質問させていただきました。

 

No title

>ストックをフローに回す=不可能 ということは経済学の教科書には載っているのでしょうか。それとも経済学を学んだだけでは不十分で、金融論や簿記なども学ばないと理解できないものなのでしょうか?



 まず「金融資産は、帳簿上存在するだけで、実体はない」=だから、金融危機で、カンタンに減るということです。

 ですから、年金基金の積み立てが、ストック債権としてあっても、年金は、フローから支払われます。

 簡単に言えば、金融資産(債権)=借金の総額(債務)のことです。

家計さん 100万貯金  50万借金
企業さん 200万貯金 200万借金
政府さん 100万貯金 150万借金

     400万貯金 400万借金


 家計さんが、10万降ろします。誰かが返済しないと、借りられないことが分かると思います。返済=フローから、降ろした10万もフローで使用します。(例えば政府さんが10万返済)

家計さん  90万貯金  50万借金
企業さん 200万貯金 200万借金
政府さん 100万貯金 140万借金

     390万貯金 390万借金


 ストックは、「たまった場所」で、「使う場所=働いて返す場所(フロー)」ではありません。

 会社の会計で、「貸借対照表→損益計算書」ができるかどうかなら、会計学んでいる人なら、すぐに答えられると思います。

 国家全体のストック・フロー論については、まずないと思います(過去に見たことがありません)。

 慶應(池尾先生のゼミあたり?)で、研究が盛んだということですが、この様な話(余りにも低レベル)を扱っているかどうか?

 データとしては、日銀HPの資金循環データ、国民経済計算の金融資産(日銀統計より)でしょうか。

 誰か「俗論を打つ!」とかって、本を書いてくれればいいですね。
カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

02月 | 2017年03月 | 03月
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -


FC2カウンター
カテゴリ
記事を検索する
「国債」 「公債」 「食糧」 「貿易黒字」などで検索して下さい
プロフィール

Author:菅原晃
図解 使えるミクロ経済学 発売です!

図解 使えるミクロ経済学

図解 使えるマクロ経済学 発売です!

図解 使えるマクロ経済学


高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学発売です!

高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学


経済教育学会 
経済ネットワーク 会員
行政書士資格


注 コメントする方へ

このブログでは、ご意見・ご感想(価値観)は、千差万別で正誤判定できないことから、基本的に扱っておりません。意見は書き込まないで下さい。こちらの見解(意見)を尋ねる質問も、ご遠慮願います。カテゴリ『コメントに、意見は書かないで下さい』を参照願います。

ご質問・ご意見(非公開でやりとりできます)
内容・アドレス表示されず、直接やりとりできます。

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
最新記事
最新コメント
検索フォーム
月別アーカイブ