マクロ経済学のミクロ的基礎づけ 短期 長期
<マクロ経済学のミクロ的基礎づけ 短期と長期>
(1)
「人々が将来を織り込んで、行動することを想定に取り入れる」:合理的期待形成
(2)
IS-LMモデルは、「現在」だけを考え、「将来」を考慮していないのです。「動き」がなく、「止まっている」のです。
(3)
このように、ベースには、動的に考える視点が、必要です。そこで、「合理的期待形成」説は、IS-LMモデルを徹底的に批判したのです。
この考え方によって、ケインズモデルはどのような欠陥があるのか、もっともシンプルな例を使って検証します。
参考文献 『マンキュー経済学Ⅱ応用編』 東洋経済新報社 2004 p147~
ケインズの仮定は次の3つでした。後の批判は、この仮定に対するものです。
(1)限界消費性向は、0<1の間にある。
(2)平均消費性向は、所得が増加すると、低下する。
(3)消費は所得に依存し、利子率の影響は少ない。
(1)です。限界(追加的)消費性向とは、例えば、臨時収入があった場合です。ボーナスが増えたとか、親戚のおばさんが来て、お小遣いをもらったとかの場合です。
お小遣いを1万円もらったとします。以前から欲しいものがありました。ゲームソフトです。そこで、ゲームソフトを6000円で購入し、残り4000円を貯蓄しました。
あるいは、高校を卒業したら、自動車免許を取得したいと考え、10000円を貯蓄しました。
このように、臨時の追加収入があったら、0円~10000円の間で消費することが分かります。つまり「0<1(追加収入)の間で消費する」というものです。10,000円のうち、6000円を使ったら、限界消費性向は0.6になります。
(2)です。平均貯蓄性向とは、普段もらっている給料とか、お小遣いとかで考えます。
年収300万円の人が、270万円を消費に回し、30万円を貯蓄に回すとします。この場合、消費性向は270÷300なので、0.9になります。
毎月3,000円のお小遣いのうち、2700円を使い、残りをためたとします。この場合も、2700÷3000なので、消費性向は0.9になります。
実際に、日本の平均消費性向は(最も単純に考えた場合です)0.57、限界消費性向は0.58です。 両者にあまり変化はありません。日本人はGDPの約6割を、消費に充てています。
家森信義『基礎から分かるマクロ経済学 第2版』2007 p50

ボーナスが臨時に増えたから、「その分、全部使ってしまう」という消費行動は、日本人の場合、あんまり見られません。
さて、次に、(2)「平均消費性向は、所得が増加すると、低下する」についてです。高所得者は貯蓄を多くし、消費性向は低いというものです。
年収300万円の人が、転職により500万円にしました。先ほどの消費性向では、270万を消費に使い、30万を貯蓄するのだから、消費性向は0.9でした。
では、この人が年収500万に増えた場合、450万を消費に回し、50万を貯蓄に回す=消費性向0.9をそのまま実践するでしょうか?
ケインズはそう考えませんでした。「貯蓄は余裕のある人こそできる、贅沢なものだ」と考えました。確かに年収120万円だと、貯蓄に回す余裕はなく、すべて消費に回ると考えられます。
年収3000万の人は、全て消費に回すのではなく、貯蓄額も大きくなると、考えます。
2000万を消費し、1000万を貯蓄に回すと、消費性向は、2000÷3000なので、0.67になります。
これは(3)「消費は所得に依存し、利子率の影響は少ない」の根拠ともなっている考え方です。
マンキュー p164

実際には、(3)の仮定は、生き延びました。貯蓄は利子率には依存していないのです。
まとめると、ケインズの消費関数は、次の3つの式で表せます。
C=C+cY C>1 0<c<1
Cは消費、Yは所得、Cは定数(平均消費性向)、cは限界消費性向です。
マンキュー p150

このように、消費関数は、直線になります。利子率とか、将来予測に影響されないと考えればです。
<実証>
さて、このケインズの示した、消費関数ですが、例外が発見されました。
(1)限界消費性向は、0<1の間にある。
(2)平均消費性向は、所得が増加すると、低下する。
(3)消費は所得に依存し、利子率の影響は少ない。
ケインズによれば、世界経済が成長すれば(Y所得が増えれば)、消費割合が減り、貯蓄割合が増えます(消費減退による不況?)。しかし、第2次大戦後、そのようなことはありませんでした。Y所得の増加は、貯蓄率の大幅な上昇にはつながりませんでした
また、消費と所得について、長期のデータを用いれば、所得の増加につれて、平均消費性向が低下するという仮説は当てはまらなかったのです。平均消費性向は、長期では一定だったのです。
マンキュー p152

クズネッツが1869年~1940年のデータを検証した結果です(この功績で、ノーベル経済学賞を受賞しました)。
<批判>
この長期と短期の差異は、どのように説明したらいいのでしょうか。
1950年代に、ミルトン・フリードマンが補足解説しました。
この理論のベースには、アービング・フィッシャーの「異時点間の選択=将来加味」があります。ミクロ経済学の参加です。まず、こちらについて見て行きましょう。
1.
われわれが豊かになりたいのは、より豊かな消費がしたいからです。美味しいものも食べたいし、コンサートや野球場にも行きたいし、高級車にも乗りたいです。
アダムスミス「すべての生産活動の存在理由と目的は消費である」
ですが、われわれには、予算制約があります。収入です。収入以上に消費はできません。
カテゴリ リカード ミクロ経済学 家計の予算線 参照
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-49.html
その所得Yのなかで、どれだけを消費に回すか、どれだけを貯蓄に回すかを考えます。
消費は今使うことです。貯蓄は今の消費をあきらめて、将来の消費に回そうということです。
(借金もあります。将来消費分を、現在に使ってしまうというものです。家のローンが典型です)
若者と老人(退職後)を考えます。
若者時期(第1期)は、所得Y1=消費C1+貯蓄Sです。
老人期(第2期)は、 消費C2=その時の所得Y2+過去の貯蓄S2(利子が加わるため増)
これを1つの式にします。
C+(C2/S2)=Y1+(Y2/S2):S2には利子率が加わっています

点A⇔点Bの間では、第1期の所得Y1をC+Sにし、貯蓄をしている状態です。点A⇔点Cの場合は、借り入れにより、第1期のY1<消費Cが大きい場合です。
次に、選好(無差別曲線)です。
カテゴリ リカード ミクロ経済学 無差別曲線 参照
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-50.html

例えば、(点う)から(点い)へと、1期の消費を減らすと、2期の消費が増えなければ、同じ満足度は得られません。(点あ)の場合、第1期の消費をあきらめれば、より多くの第2期の消費を増やさなければ、満足度が上がらないことを示します(点う⇔点いより、傾きが大きい)。

まとめると、このようになります。線wは、予算線を越えているので、選べません。線zは、まだ、最適な効用点ではありません。この場合、点アが、この消費者にとって、最適点となります。
さて、では、この消費者の所得Yが増えたらどうなるでしょうか。Y1(第1期)Y2(第2期)が増えた場合です。

このように、第1期or第2期、どちらかの所得が増加すると、予算制約線は外側にシフトします。この重要な点は、所得増が第1期に起きようと、第2期に起きようと、消費者は両期も消費を増やそうとすることです。消費者は、2つの期の間で、借入や貸付をできるので、所得がいつ得られるかと、今どれだけ消費をするかは、無関係ということです。
ケインズの仮定
(1)限界消費性向は、0<1の間にある。
(2)平均消費性向は、所得が増加すると、低下する。
(3)消費は所得に依存し、利子率の影響は少ない。
ケインズの消費関数
C=C+cY C>1 0<c<1
ケインズは、ある人の現在の消費は、その人の現在の所得に依存するとしました。フィッシャーモデルは、消費は生涯にわたる予測所得に依存すると主張したのです。
これは、後の時代の、下記(1)(2)の萌芽です。
(1)
「人々が将来を織り込んで、行動することを想定に取り入れる」
:合理的期待形成
(2)
IS-LMモデルは、「現在」だけを考え、「将来」を考慮していないのです。「動き」がなく、「止まっている」のです。
(3)
このように、ベースには、動的に考える視点が、必要です。そこで、 「合理的期待形成」説は、IS-LMモデルを徹底的に批判したのです。
2.フリードマンの恒常所得仮説
これは、将来の所得に関して、恒常所得と、変動所得に分けたものです。
恒常所得とは、将来にわたって、予想されるものです。例えば、高学歴で卒業した場合、将来にわたって恒常的に高所得が予想されます。
変動所得とは、一時的な所得増のことです。日本で、ある一部の地域が寒冷気候で、農産物が少なかった場合、別な地域の農家は、所得が上がる可能性があります。
宝くじが当たった場合も変動所得と考えられます。両者ともに、一時期の所得増と考えられるからです。
そして、消費に影響を与えるのは、前者の恒常所得と考えます。100万円給与が上がれば、その人の消費はその分増えます。気候変動で、100万円収入が増えても、全部を使い切らずに、貯蓄に回すだろうというものです。
フリードマンは、将来予測を加えることによって、ケインズの消費関数=現在の所得に関係付けようとしているのは誤りだと説明します。
IS-LMモデルによれば、減税は、消費を刺激し、需要を増やすと考えます。増税は反対に需要を減らすと考えられます。
ですが、恒常所得モデルでは、消費は恒常所得の変化に反応し、租税の一時的な変更(変動)は、消費と需要に、無視できる程度の影響しか与えないとい考えます。
実際に、アメリカでの税制改革は、この仮説を裏付けました。
①1964年の恒久減税は、永続的な減税だったため、経済を刺激する効果がありました。
②1968年の臨時増税は、1年限りのものでした。増税は消費を抑制せずに、失業は減り、インフレ率は上昇しました。
単純なケインズの消費関数では、説明できなかったのです。
現在は、経済学では、「消費は異時点間の決定に直面している」ことを認めた上で、下記の消費関数が、どのように影響を与えるのかを研究しています。
ケインズ
消費=関数(現在所得)
現在
消費=関数(現在所得、財産、期待する将来所得、利子率)
<2つの話>
齋藤由香 『闇の中の一筋の光』週刊新潮 6月16日号
…福島県矢祭町東館小学校の宍戸校長先生…日頃から教育者として「『心に響く言葉』『力のある言葉』とはどんな言葉だろう」と考えて…。
「…福島第一原発の事故では…被災者であるにもかかわらず、日夜、危険な作業にあたってくださっている作業員の方々に…生徒たちのメッセージカードを送ことを決めたのです。木曜日の三時限に二~四年生六十五人にそれを書いて貰いました。…二年生のはなまりあさんのメッセージカードを見ていただければ幸いです」
「日本じゅうをまもってくれている人たちへ ちきゅうにいる人たちが みんなをおうえんしています。つらくてもかなしくても 雨がふっても げんぱつにつなみがきても 木がねっこからおれても きれいなさくらのようにがんばってください」
「もしも、たいへんなことになっても、きぼうをすてずにがんばってください」
「とおくにはなれていても 思いはいっしょ。げんぱつにまけないで、がんばってください」
「あなたたちは、ひさいしゃのやみのなかのひとすじのひかりです。きぼうを捨てないでください」
…宍戸先生の礼状…「このメッセージを見た瞬間、私は小学校で子供たちの前に立ち、教育に携わる者の一人として背筋が伸びるのを覚えました。決して宿題に出して、お父さんお母さんのお話が反映されているのではないのです。子どもたちは…素晴らしい力を発揮できるのだと思います」
『菅総理政治主導の隠された大罪』週刊文春 6月16日号
…医学の世界で指摘されている、人間の生存限界期間「七十二時間」
…それら東北の住民たちを助けるべく向かったのは…警察、消防庁、海上保安庁、そして自衛隊だ。
…その自衛隊が<生存限界期間>中、実は、一歩手前まで追い込まれていたことは、ほとんど知られていない。
…トラックなどの車両、航空機の「燃料」が枯渇する寸前だったのである。
…「需品科」…彼らが見れば備蓄量が何日持つか、一発で答えが出せる。…それも時間単位で…。
…震災の翌日、すでに、燃料が「危機的状況にある」との報告を…上げていた…。
…震災直後、自衛隊は、交通が遮断された孤立地域へ突入し、人命救助を行い、避難民へ物資を持ち込まなくてはならなかった。
…「燃料元売り企業が、供給を止めている」…ある燃料元売り企業の幹部は…「経済産業省からの…業務指導で、燃料の供給は統制された。よって自衛隊への直納は中止せよ、と」
…「被災地へ集中配給するため―そう聞いています」…「官邸の意向だと」-なんと稚拙(ちせつ)な考えなのだ。
…官邸は、東北での燃料不足を見込み、政治主導を見せつけようとしたのだ。…このままでは自衛隊は動けなくなる。特に、航空自衛隊は、あと一日で、ヘリコプターや輸送機が飛べなくなるのだ。…官邸からの指示で燃料供給は経産省で一括してさばこうとしていたのだ。
…官邸が主導した“統制”は、パワフルに展開しようとしていた自衛隊の動きをストップさせた。
…最後には北沢俊美防衛大臣の英断により、燃料供給が復活したのだった。
…経産省が仕切ったとする、それらガソリンスタンドへ燃料を運ぶよう要請された組織こそ、自衛隊なのだ。肝心のその自衛隊が燃料枯渇に陥ってしまった。
…民主党政権がこだわった政治主導―これが、その実態なのだ。
(1)
「人々が将来を織り込んで、行動することを想定に取り入れる」:合理的期待形成
(2)
IS-LMモデルは、「現在」だけを考え、「将来」を考慮していないのです。「動き」がなく、「止まっている」のです。
(3)
このように、ベースには、動的に考える視点が、必要です。そこで、「合理的期待形成」説は、IS-LMモデルを徹底的に批判したのです。
この考え方によって、ケインズモデルはどのような欠陥があるのか、もっともシンプルな例を使って検証します。
参考文献 『マンキュー経済学Ⅱ応用編』 東洋経済新報社 2004 p147~
ケインズの仮定は次の3つでした。後の批判は、この仮定に対するものです。
(1)限界消費性向は、0<1の間にある。
(2)平均消費性向は、所得が増加すると、低下する。
(3)消費は所得に依存し、利子率の影響は少ない。
(1)です。限界(追加的)消費性向とは、例えば、臨時収入があった場合です。ボーナスが増えたとか、親戚のおばさんが来て、お小遣いをもらったとかの場合です。
お小遣いを1万円もらったとします。以前から欲しいものがありました。ゲームソフトです。そこで、ゲームソフトを6000円で購入し、残り4000円を貯蓄しました。
あるいは、高校を卒業したら、自動車免許を取得したいと考え、10000円を貯蓄しました。
このように、臨時の追加収入があったら、0円~10000円の間で消費することが分かります。つまり「0<1(追加収入)の間で消費する」というものです。10,000円のうち、6000円を使ったら、限界消費性向は0.6になります。
(2)です。平均貯蓄性向とは、普段もらっている給料とか、お小遣いとかで考えます。
年収300万円の人が、270万円を消費に回し、30万円を貯蓄に回すとします。この場合、消費性向は270÷300なので、0.9になります。
毎月3,000円のお小遣いのうち、2700円を使い、残りをためたとします。この場合も、2700÷3000なので、消費性向は0.9になります。
実際に、日本の平均消費性向は(最も単純に考えた場合です)0.57、限界消費性向は0.58です。 両者にあまり変化はありません。日本人はGDPの約6割を、消費に充てています。
家森信義『基礎から分かるマクロ経済学 第2版』2007 p50

ボーナスが臨時に増えたから、「その分、全部使ってしまう」という消費行動は、日本人の場合、あんまり見られません。
さて、次に、(2)「平均消費性向は、所得が増加すると、低下する」についてです。高所得者は貯蓄を多くし、消費性向は低いというものです。
年収300万円の人が、転職により500万円にしました。先ほどの消費性向では、270万を消費に使い、30万を貯蓄するのだから、消費性向は0.9でした。
では、この人が年収500万に増えた場合、450万を消費に回し、50万を貯蓄に回す=消費性向0.9をそのまま実践するでしょうか?
ケインズはそう考えませんでした。「貯蓄は余裕のある人こそできる、贅沢なものだ」と考えました。確かに年収120万円だと、貯蓄に回す余裕はなく、すべて消費に回ると考えられます。
年収3000万の人は、全て消費に回すのではなく、貯蓄額も大きくなると、考えます。
2000万を消費し、1000万を貯蓄に回すと、消費性向は、2000÷3000なので、0.67になります。
これは(3)「消費は所得に依存し、利子率の影響は少ない」の根拠ともなっている考え方です。
マンキュー p164

実際には、(3)の仮定は、生き延びました。貯蓄は利子率には依存していないのです。
まとめると、ケインズの消費関数は、次の3つの式で表せます。
C=C+cY C>1 0<c<1
Cは消費、Yは所得、Cは定数(平均消費性向)、cは限界消費性向です。
マンキュー p150

このように、消費関数は、直線になります。利子率とか、将来予測に影響されないと考えればです。
<実証>
さて、このケインズの示した、消費関数ですが、例外が発見されました。
(1)限界消費性向は、0<1の間にある。
(2)平均消費性向は、所得が増加すると、低下する。
(3)消費は所得に依存し、利子率の影響は少ない。
ケインズによれば、世界経済が成長すれば(Y所得が増えれば)、消費割合が減り、貯蓄割合が増えます(消費減退による不況?)。しかし、第2次大戦後、そのようなことはありませんでした。Y所得の増加は、貯蓄率の大幅な上昇にはつながりませんでした
また、消費と所得について、長期のデータを用いれば、所得の増加につれて、平均消費性向が低下するという仮説は当てはまらなかったのです。平均消費性向は、長期では一定だったのです。
マンキュー p152

クズネッツが1869年~1940年のデータを検証した結果です(この功績で、ノーベル経済学賞を受賞しました)。
<批判>
この長期と短期の差異は、どのように説明したらいいのでしょうか。
1950年代に、ミルトン・フリードマンが補足解説しました。
この理論のベースには、アービング・フィッシャーの「異時点間の選択=将来加味」があります。ミクロ経済学の参加です。まず、こちらについて見て行きましょう。
1.
われわれが豊かになりたいのは、より豊かな消費がしたいからです。美味しいものも食べたいし、コンサートや野球場にも行きたいし、高級車にも乗りたいです。
アダムスミス「すべての生産活動の存在理由と目的は消費である」
ですが、われわれには、予算制約があります。収入です。収入以上に消費はできません。
カテゴリ リカード ミクロ経済学 家計の予算線 参照
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-49.html
その所得Yのなかで、どれだけを消費に回すか、どれだけを貯蓄に回すかを考えます。
消費は今使うことです。貯蓄は今の消費をあきらめて、将来の消費に回そうということです。
(借金もあります。将来消費分を、現在に使ってしまうというものです。家のローンが典型です)
若者と老人(退職後)を考えます。
若者時期(第1期)は、所得Y1=消費C1+貯蓄Sです。
老人期(第2期)は、 消費C2=その時の所得Y2+過去の貯蓄S2(利子が加わるため増)
これを1つの式にします。
C+(C2/S2)=Y1+(Y2/S2):S2には利子率が加わっています

点A⇔点Bの間では、第1期の所得Y1をC+Sにし、貯蓄をしている状態です。点A⇔点Cの場合は、借り入れにより、第1期のY1<消費Cが大きい場合です。
次に、選好(無差別曲線)です。
カテゴリ リカード ミクロ経済学 無差別曲線 参照
http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-50.html

例えば、(点う)から(点い)へと、1期の消費を減らすと、2期の消費が増えなければ、同じ満足度は得られません。(点あ)の場合、第1期の消費をあきらめれば、より多くの第2期の消費を増やさなければ、満足度が上がらないことを示します(点う⇔点いより、傾きが大きい)。

まとめると、このようになります。線wは、予算線を越えているので、選べません。線zは、まだ、最適な効用点ではありません。この場合、点アが、この消費者にとって、最適点となります。
さて、では、この消費者の所得Yが増えたらどうなるでしょうか。Y1(第1期)Y2(第2期)が増えた場合です。

このように、第1期or第2期、どちらかの所得が増加すると、予算制約線は外側にシフトします。この重要な点は、所得増が第1期に起きようと、第2期に起きようと、消費者は両期も消費を増やそうとすることです。消費者は、2つの期の間で、借入や貸付をできるので、所得がいつ得られるかと、今どれだけ消費をするかは、無関係ということです。
ケインズの仮定
(1)限界消費性向は、0<1の間にある。
(2)平均消費性向は、所得が増加すると、低下する。
(3)消費は所得に依存し、利子率の影響は少ない。
ケインズの消費関数
C=C+cY C>1 0<c<1
ケインズは、ある人の現在の消費は、その人の現在の所得に依存するとしました。フィッシャーモデルは、消費は生涯にわたる予測所得に依存すると主張したのです。
これは、後の時代の、下記(1)(2)の萌芽です。
(1)
「人々が将来を織り込んで、行動することを想定に取り入れる」
:合理的期待形成
(2)
IS-LMモデルは、「現在」だけを考え、「将来」を考慮していないのです。「動き」がなく、「止まっている」のです。
(3)
このように、ベースには、動的に考える視点が、必要です。そこで、 「合理的期待形成」説は、IS-LMモデルを徹底的に批判したのです。
2.フリードマンの恒常所得仮説
これは、将来の所得に関して、恒常所得と、変動所得に分けたものです。
恒常所得とは、将来にわたって、予想されるものです。例えば、高学歴で卒業した場合、将来にわたって恒常的に高所得が予想されます。
変動所得とは、一時的な所得増のことです。日本で、ある一部の地域が寒冷気候で、農産物が少なかった場合、別な地域の農家は、所得が上がる可能性があります。
宝くじが当たった場合も変動所得と考えられます。両者ともに、一時期の所得増と考えられるからです。
そして、消費に影響を与えるのは、前者の恒常所得と考えます。100万円給与が上がれば、その人の消費はその分増えます。気候変動で、100万円収入が増えても、全部を使い切らずに、貯蓄に回すだろうというものです。
フリードマンは、将来予測を加えることによって、ケインズの消費関数=現在の所得に関係付けようとしているのは誤りだと説明します。
IS-LMモデルによれば、減税は、消費を刺激し、需要を増やすと考えます。増税は反対に需要を減らすと考えられます。
ですが、恒常所得モデルでは、消費は恒常所得の変化に反応し、租税の一時的な変更(変動)は、消費と需要に、無視できる程度の影響しか与えないとい考えます。
実際に、アメリカでの税制改革は、この仮説を裏付けました。
①1964年の恒久減税は、永続的な減税だったため、経済を刺激する効果がありました。
②1968年の臨時増税は、1年限りのものでした。増税は消費を抑制せずに、失業は減り、インフレ率は上昇しました。
単純なケインズの消費関数では、説明できなかったのです。
現在は、経済学では、「消費は異時点間の決定に直面している」ことを認めた上で、下記の消費関数が、どのように影響を与えるのかを研究しています。
ケインズ
消費=関数(現在所得)
現在
消費=関数(現在所得、財産、期待する将来所得、利子率)
<2つの話>
齋藤由香 『闇の中の一筋の光』週刊新潮 6月16日号
…福島県矢祭町東館小学校の宍戸校長先生…日頃から教育者として「『心に響く言葉』『力のある言葉』とはどんな言葉だろう」と考えて…。
「…福島第一原発の事故では…被災者であるにもかかわらず、日夜、危険な作業にあたってくださっている作業員の方々に…生徒たちのメッセージカードを送ことを決めたのです。木曜日の三時限に二~四年生六十五人にそれを書いて貰いました。…二年生のはなまりあさんのメッセージカードを見ていただければ幸いです」
「日本じゅうをまもってくれている人たちへ ちきゅうにいる人たちが みんなをおうえんしています。つらくてもかなしくても 雨がふっても げんぱつにつなみがきても 木がねっこからおれても きれいなさくらのようにがんばってください」
「もしも、たいへんなことになっても、きぼうをすてずにがんばってください」
「とおくにはなれていても 思いはいっしょ。げんぱつにまけないで、がんばってください」
「あなたたちは、ひさいしゃのやみのなかのひとすじのひかりです。きぼうを捨てないでください」
…宍戸先生の礼状…「このメッセージを見た瞬間、私は小学校で子供たちの前に立ち、教育に携わる者の一人として背筋が伸びるのを覚えました。決して宿題に出して、お父さんお母さんのお話が反映されているのではないのです。子どもたちは…素晴らしい力を発揮できるのだと思います」
『菅総理政治主導の隠された大罪』週刊文春 6月16日号
…医学の世界で指摘されている、人間の生存限界期間「七十二時間」
…それら東北の住民たちを助けるべく向かったのは…警察、消防庁、海上保安庁、そして自衛隊だ。
…その自衛隊が<生存限界期間>中、実は、一歩手前まで追い込まれていたことは、ほとんど知られていない。
…トラックなどの車両、航空機の「燃料」が枯渇する寸前だったのである。
…「需品科」…彼らが見れば備蓄量が何日持つか、一発で答えが出せる。…それも時間単位で…。
…震災の翌日、すでに、燃料が「危機的状況にある」との報告を…上げていた…。
…震災直後、自衛隊は、交通が遮断された孤立地域へ突入し、人命救助を行い、避難民へ物資を持ち込まなくてはならなかった。
…「燃料元売り企業が、供給を止めている」…ある燃料元売り企業の幹部は…「経済産業省からの…業務指導で、燃料の供給は統制された。よって自衛隊への直納は中止せよ、と」
…「被災地へ集中配給するため―そう聞いています」…「官邸の意向だと」-なんと稚拙(ちせつ)な考えなのだ。
…官邸は、東北での燃料不足を見込み、政治主導を見せつけようとしたのだ。…このままでは自衛隊は動けなくなる。特に、航空自衛隊は、あと一日で、ヘリコプターや輸送機が飛べなくなるのだ。…官邸からの指示で燃料供給は経産省で一括してさばこうとしていたのだ。
…官邸が主導した“統制”は、パワフルに展開しようとしていた自衛隊の動きをストップさせた。
…最後には北沢俊美防衛大臣の英断により、燃料供給が復活したのだった。
…経産省が仕切ったとする、それらガソリンスタンドへ燃料を運ぶよう要請された組織こそ、自衛隊なのだ。肝心のその自衛隊が燃料枯渇に陥ってしまった。
…民主党政権がこだわった政治主導―これが、その実態なのだ。
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theme : マクロ経済学 ミクロ経済学
genre : 政治・経済