日経が変わった?変われば良い事だが

<日経が変わった?変われば良い事だが> 

次の新聞記事を見て下さい。

(1) H23.5.13 
貿易黒字の記事

(2)

日経 H23.4.21 編集委員 滝田洋一「稼ぎ減り起きること」
 貿易収支は3月に黒字が大幅に減ったのに続き、4月以降に赤字となるとの見通しが出てきた。
…日本が経済大国となった1970年代以降、貿易収支が赤字になったのは…2度の石油危機や、リーマン・ショック…くらいだ。今回、貿易収支の悪化を招いているのは大震災…。
 …これから貿易収支が赤字に陥るばかりでなく経常収支の黒字も縮小するようだと、自由に使える国内資金は減ってくる。


日経 H23.4.21 社説『景気と貿易収支の悪化に細心の注意を』
東日本大震災の爪痕の深さ…。景気の停滞や貿易収支の悪化は避けられず…。
 …3月の貿易統計によると、輸出額は前年同月に比べ2.2%減った。
 …貿易収支の悪化も気になるところだ。3月の貿易黒字は、前年同月比78.9%減少した。4月には貿易赤字に転落するとの見方も少なくない。
 …貿易収支が悪化すると…円安圧力がかかりやすくなる。


日経H22.10.9 『経常黒字、8月5.8%減 1兆1142億円 円高で輸出鈍化』
 …モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆1142億円の黒字だった。経常黒字は19ヶ月連続だったが、黒字幅は前年同月に比べ5.8%減少した。・・・貿易黒字が縮小したことが響いた


日経H21.10.9『経常黒字10.4%増』
 財務省が8日発表した8月の国際収支速報によると…経常収支は1兆1712億円の黒字となった。
前年同月に比べると、10.4%増え、2ヶ月ぶりに増加…
…輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支が改善した… 


『経常黒字54.5%減 4月国際収支』日本経済新聞 H21年6月9日
 財務省が8日発表した4月の国際収支速報…一部に持ち直しの動きはあるものの、経常黒字額は依然として前年の半分以下の水準にとどまっている。貿易・サービス収支は2873億円の赤字で、前年同月の黒字から赤字に転落した。
 

(1)の今回記事と、(2)①②③④⑤の過去の記事の違いが分かるでしょうか。気づかないほど、小さなことかもしれませんが、実は「大変化」です。

 それは、「貿易黒字は良いこと、赤字はまずいこと(間違い)」という、考え方が180度ひっくり返ったことを示すからです。

(1)の今回記事では、「悪化」「響いた」「転落」という否定的表現や、「改善した」など、肯定的表現が一切入っていません。事実を記載しているのみです。

「貿易黒字はもうけ」と、誤った考え方をしているので、黒字が減れば「悪化」「響いた」「転落」 、黒字が増えれば、「改善した」と書いていました。それが今回なくなったのです。

 編集委員 滝田洋一さん(2)①記事執筆者に、直接メールしたことが奏功した?のでしょうか。今後、「悪化」「響いた」「転落」などの文字が躍らなければ、本当に「変わった」ことになるのですが・・・
 今後の推移を見ていきましょう。


<貿易黒字・赤字とは>

 貿易黒字が減ったなら、同時に資本赤字も減ったことになるので、「資本赤字が減少した。資本収支赤字が縮小したことが奏功した」と書かなければいけません。


日経H22.10.9 『経常黒字、8月5.8%減 1兆1142億円 円高で輸出鈍化』
 …モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆1142億円の黒字だった。経常黒字は19ヶ月連続だったが、黒字幅は前年同月に比べ5.8%減少した。・・・貿易黒字が縮小したことが響いた。
 

 上記の文書を、ひっくり返して、赤字が減った(事実です)と書いてみましょう。

…モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す資本収支(広義)は1兆1142億円の赤字だった。赤字は19ヶ月連続だったが、赤字幅は前年同月に比べ5.8%減少した。・・・資本赤字が縮小したことが奏功した。
2010年5月 国際収支表.jpg

経常収支黒字=②資本収支赤字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏)

経常収支赤字=②資本収支黒字(資本収支・外貨準備・誤差脱漏) 

 この原則が頭に入っていれば、「黒字が減少した。○○が響いた」などと、書くわけがありません

 経常黒字は、「国内に還流しないカネ=対外債権=外国への資金の貸出」なのです。ですから、経常黒字は「良いこと・悪いこと、損だ・得だ」という対象ではありません

2009 GDP三面等価 +輸出入

経常黒字=外国への資金の貸し出し

 まず,経常黒字は日本国内で消費されなかった生産財・サービスを外国が消費(購入)すること、あるいは無償で提供すること(経常移転収支)です。と同時に,外国が,日本に外国債や株式・社債を購入してもらったり,直接投資(海外に工場を建てるなど)でも株式を購入してもらったりしています。日本からみると海外に貸していることです。

 ということは,日本が「経常黒字」を出せば出すほど,日本の海外での「財産」が増えることになります。そして,実際にその通りになっています。

 以上のような投資(海外へのお金の貸し出し)が,日本の対外資産です。その残高は約610兆4920億円(07年末)で,世界一となっています。そのうち,直接投資(海外の工場建設など)は,約55兆円です。また,外貨準備1兆39億ドルのうち,証券(外国国債含む)は8588億ドル,約86%を占めています。

日本 対外純資産残高.jpg

 この、海外債権から生み出される所得が、「所得収支」です。対外純資産は、円で計算されますから、「円高」になると、目減りします(ドルの金額自体は変わりません)。

G:\ブログ 絵\2009年 国際収支表.jpg

 ただし、日本や東アジア諸国は収益性の高い製品を米国に輸出する一方で、そこで得た利益を米国に回す構図ではありません。

 トヨタや、パナソニックが「輸出」の主体です。一方、銀行などの金融機関、生命保険会社・投資信託などの機関投資家、政府、企業、個人が海外投資を行う主体です。これらは別々です。投資家が海外投資をするのは、自分のもうけのためであり、「日本の貿易黒字分」や「外貨が余っているから」投資しなければならないのではありません。

 また、外国の政府・企業・個人からすると、社債・国債・株式を発行して資金を調達するのは、「貿易赤字」を穴埋めするために行っているのではありません。お金を貸してくれる主体は、国内であれ、海外であれ、企業・政府・個人にとってはどちらでもかまわないのです。

「EX-IM」は、資本収支赤字(海外投資)から、生まれるのです。つまり、「お金の貸し借り」が先で、「経常黒字」は後なのです。

 この日本の「対外債権」は、アメリカから見たら、「対外債務」になります。

 対外債務とは、借金ではなく、アメリカ国内の「預金・株・国債・社債・土地・建物」の購入者が「外国人」であるということの意味しかありません。日産や、ヤマダ電機、三井不動産、花王、ソニーetcはすでに、外国企業です。

 しかも、海外からの資金の借り入れ(日本の外国への資金提供)というのは、返さなければいけないお金ではありません

高増明他『経済学者に騙されないための経済学入門』ナカニシヤ出版2005 
p20
…豊かさというのは、いろいろな財を消費して満足を得ることです。けっして、輸出が輸入より大きいことが豊かではないのです。…対外債務(筆者注:経常、貿易赤字=資本収支黒字)というのは、住宅ローンとは違って返済しなければいけないものではありません。対外債務というのは、たんに外国の企業が自国の土地や株を買ったということです。けっして日本人が(筆者注:外国が)外国からお金を借りてそれを毎月返済しなければならないということではないのです。


 投資してもらっている国から見ます。

 ある会社の株式が、外国人によって買われているということです。
 ある会社の社債を、外国人が購入している状態です。
 ある銀行の預金を、外国人がしていることです。
 ある国の国債を、外国人が購入している状態です。
 ある国の不動産の持ち主が、外国人の場合です。

 株式の50%超を外国人が持っている、ヤマダ電機や、日産は、外国企業です。日本の国債の4%~7%ほどは、外国人が購入しています。北海道のニセコにある長期滞在型のホテルやコンドミニアムは、オーストラリア人が購入しています。

外国人の株保有率 出典 日経H22.6.19
2010年3月末現在
オリックス 50.5%
パイオニア 31.3
日本電気硝子 44.4
三井化学 31.5
住友重機械工業36.6
日本郵船35.2
野村HD 44.1
レオパレス21 32.4

 これらの企業は、すでに外国企業です。日本人が、外国人投資家に借金をして、借金を返済しているわけではありません

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