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不況の正体 その2

<均斉成長の前提>

「均斉成長」とは、以下ののように考えます。

GDPは次の3つの要素で構成されます。

① 労働量(何人の人が何時間働いているか)
② 資本ストック(どのくらいの機械や工場が動いているか)
③ 技術力(労働と資本を,どのくらい効率的に活用しているか)

 GDPは, ①労働力(人口),②資本ストック,③技術力をかけあわせたものです。

GDP 三要素

 今、①の労働力、③の技術力(生産性)を、一定とします。③の技術力とは、生産性のことです。例えば、運搬を手作業でやっていたところに、トラックを導入すると、生産性は向上します。パソコンに新しいソフトを入れて、今まで1時間かかっていたものが、30分でできるようになるのも、生産性の向上です。

 だとしたら、生産性の向上とは、「労働者の数を増やす」ことと、同じとも考えられます。パソコンで、1時間かかっていたものが、30分でできるようになったら、労働者を1人から2人に増やしたこと、トラックを導入し、仕事量が10倍になったら、労働者を1人から10人にしたのと同じことと考えられます。

 ①労働力×②資本ストック×③技術力のうち、①と③は同じものと考えると、GDPは③&②です。

 このモデルで、経済成長を考えてみます。


<資本の限界生産力は低減する> 

 資本について、別な見方・考え方を示します。ソロー・モデルと言います。

 労働者の数が一定で、資本だけを増やすと、資本が増えることによる、生産量増大(限界生産力)(限界:資本や労働者を10万円分増やした時に、どのくらい生産量が増加するか)は、低下します。

 ①労働力×②資本ストック×③技術力のうち、①と③は同じものと考えると、GDPは③&②です。この③を固定して考えます。

 例えば、2人で、1台の機械(パソコン)を使用している場合です。

1
   
 ここに、パソコンを資本投資します。1年に1台増やします。

2

 どうでしょうか、2人で1台を使っていた時より、生産性がアップし、結果的にY(生産量)が増えることが分かると思います。
 ところが、ここからさらに1台・2台とパソコンを増やしていくとどうなるでしょうか。

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 それは確かに、パソコンが増えると働いている人はうれしいかもしれませんが、増えても、だんだん使いこなせなくなってきます。1人で、2台・3台のパソコンを持っていても使いこなせません。

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 もうこうなると、完全に使いこなせません。最初の2人で1台のパソコンから、1台増えたとき(これは効率アップ!)に比べ、7台から8台に増えたときの1台は、ほとんど、効率アップになっていないことが分かります。増やせば増やすほど、効率アップの値は小さくなります。パソコンの能力を引き出せなくなっているのです。

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 これは、パソコンの量(資本)を一定にして、人を増やしても同じです。

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 これなら、最初の2人で1台のパソコン状態と、変わらなくなってしまいます。増やせばよいというわけではありません。

 このように、限界生産力(限界:資本を10万円分増やした時に、どのくらい生産量が増加するか)は、低下します。

 中谷巌『ニューマクロ経済学』日本評論社 2007 p259
ソローモデル.jpg

<定常状態>

 このように、効率は悪くなっていくのですが、ここで、さらに厄介な問題が生じます。それは、パソコンは古くなる(減耗する)のです。

7


 5年でパソコンがダメ(減耗)になる場合、毎年、1台を増やしても、毎年1台が廃棄になります。

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 毎年1台ずつパソコンは増えますが、5年目以降は、毎年1台ずつ廃棄します。5台で資本の量は変わらなくなります。定常状態です

 1人に1台だった時に比べ、5台ですから、5倍のY生産ができるわけではありません(限界生産力)低下
 とりあえず、Yは、2倍に増えたとしましょう。Yが2倍に増えたのですから、S貯蓄I投資も2倍になったと仮定します。そうすると、1年に2台のパソコンを投資することになります。

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 投資が2倍に増えても、同じです。10台になったところで、定常状態になるのです。Yの生産力は、増えないのに、固定資本の減耗は、毎年一定の割合です。

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 資本の蓄積が進む(日本)と、すべての投資が、設備の維持・更新に充てられる(減価償却)「定常状態」すなわち、GDPが伸びない状態になると考えられています。

固定資本減耗/投資額.jpg



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