内需刺激へ金利正常化を? 金利UP?の主張
中前忠 中前国際経済研究所代表 『内需刺激へ金利正常化を』日経H23.4.28
1990年以降…米国の多国籍企業が低賃金を求めて中国に生産資源を拡大していく結果、米国の製造業は縮小し、国内の雇用と投資が中国に奪われていく。
…「ウイン・ウイン」の関係が崩れてしまった。中国の雇用増は米国の雇用減と言う「ゼロ・サム」の関係に変わってきたのである。
…日本…少なくとも短期的には東日本大震災後の経済の大幅な落ち込みは避けられない。…しかし、日銀の金融緩和が…国際商品相場を高騰させ、新興国の金融政策のかじとりを一段と難しいものにする、という国際的な負の影響を考慮する必要がある。
…日本の金融政策のあり方…
…第1の柱は、内需主導型経済構造への転換である。…内需主導の成長を目指すのであれば、円高こそ必要である。
…第2の柱は、金利の正常化である。…ゼロ金利政策によって利子所得が奪われ、高齢者層は年金以外に所得がなくなってしまった。
…反対側…企業の利益剰余金は…09年度には270兆円に拡大した。中小企業においてさえ…積み上がっている。
…ゼロ金利は非効率な企業を温存し、企業の新陳代謝という市場経済の最も重要な機能を停止させてしまった。…これは統制経済への道である。
…少子高齢化による労働市場の縮小、新興国経済の高成長が引き起こす資源不足といった問題は、日本が得意とするロボットなどの省エネ投資へのインセンティブを高めている。
…問題は、こうした新たな投資機会が出てきても、ゼロ金利のままでは、成長分野に円滑に資金が回らないことだ。…適正な資源配分のために、金利の正常化が求められている。
<これは間違い>
1990年以降…米国の多国籍企業が低賃金を求めて中国に生産資源を拡大していく結果、米国の製造業は縮小し、国内の雇用と投資が中国に奪われていく。
…「ウイン・ウイン」の関係が崩れてしまった。中国の雇用増は米国の雇用減と言う「ゼロ・サム」の関係に変わってきたのである。
「賃金の安い国に雇用が集中し、先進国は雇用が奪われる」というものです。
グローバル化に伴い、アメリカなどの先進国の製造業が、中国などの新興国に移転し、アメリカ(先進国)の「雇用が奪われる」という、「よくある話」ですが、経済学的には、完全に否定されている話です。
事実に基づいていないのですが、「不況」になったり、失業率が高まったりすると、「何か原因」を作らないと納得しないため、「新興国に雇用を奪われた」とする論調がはびこります。 身近にある工場が閉鎖されたり、従業員が解雇されると、「中国」のせいにしたら、分かりやすく、ストンと落ちますから。
この説の誤りについては、下記カテゴリ:参考資料をご覧ください。
(1)http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-15.html
2010-09-07 産業の空洞化は有り得ない
(2)http://abc60w.blog16.fc2.com/category134-1.html
2010-04-18 倉西雅子 鶴見大学
アメリカの現状です。
出典:世界経済のネタ帳
![[世] アメリカの失業率の推移(1980~2011年)](http://chart.apis.google.com/chart?cht=lc&chs=500x250&chtt=%E5%A4%B1%E6%A5%AD%E7%8E%87%E3%81%AE%E6%8E%A8%E7%A7%BB(1980%EF%BD%9E2011%E5%B9%B4)%7C%E5%8D%98%E4%BD%8D%EF%BC%9A%20%EF%BC%85&chxt=x%2Cy&chxl=0%3A%7C80%7C81%7C82%7C83%7C84%7C85%7C86%7C87%7C88%7C89%7C90%7C91%7C92%7C93%7C94%7C95%7C96%7C97%7C98%7C99%7C00%7C01%7C02%7C03%7C04%7C05%7C06%7C07%7C08%7C09%7C10%7C11&chdlp=b&chdl=%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB&chco=3399CC&chxr=1%2C3.97%2C9.71&chd=e%3Ajyor..-wndj5hxYoQ8OYSZgGnPgxXvSDQDK0F6CyAAIlULWhRgMXHIHPUZ7M.Fy8)
リーマンショック以降、失業率が跳ね上がり、80年の「レーガン」時代の失業率と同じ水準になりました。「中国などの新興国に雇用を奪われた?」感じですね。実際はどうなのでしょう?
http://3rdworldman.jugem.jp/?eid=130
雇用増加産業と雇用減少産業(米国) (数字)は筆者挿入
アメリカの雇用増減です。左側はマイナス、右側は増加分です。

(1)サービス業
1990年12月から2010年12月までの20年間で米国の非農業雇用者数(季節調整済み)は2,159万人・20%増加しました。増加数の多い産業順に並べた上の表の産業の雇用者数増加は合計で2,150万人でほぼ全体の増加数に匹敵し、その増加率は実に47%にもなっています。
飲食店従業員が301万人・46%も増えていて、それが群を抜いて雇用拡大を支えていることがきわめて印象的です。これは経済社会変化の普遍的な方向といえるのでしょうか?
2位以下は、教育・地方公務員・看護介護・病院が続き、派遣・SEがきた後で、また診療所・在宅看護と医療介護産業が続きます。
(2)製造業ほか
20年間で雇用が減少した産業の雇用者減少数は合計で△637万人で、これらの産業の雇用者数は△22%も減少しました。雇用者減少数の上位は全て製造業が占めており、とくにアパレル(△81%)織物工場(△74%)皮革製品(△76%)などの衣料製造業が壊滅的になっていることが分かります。また、製造業以外では、郵便を含む連邦政府・出版・通信・航空輸送・列車輸送・ガソリンスタンド・住宅建設なども雇用者数純減産業に入っています。
製造業雇用減少<サービス業になっています。先進国になればなるほど、サービス業割合は上昇します(ぺティ・クラークの法則)。製造業の生産性増加=雇用減少は、ある意味必然です。雇用はあるのです。
日本の場合です。現在、失業率の導出については、各国ともに同じ方法が採用されていますので、同じ土俵での比較になります。
出典:世界経済のネタ帳
![[世] 失業率の推移(1980~2011年)の比較(日本、アメリカ)](http://chart.apis.google.com/chart?cht=lc&chs=500x250&chtt=%E5%A4%B1%E6%A5%AD%E7%8E%87%E3%81%AE%E6%8E%A8%E7%A7%BB(1980%EF%BD%9E2011%E5%B9%B4)%7C%E5%8D%98%E4%BD%8D%EF%BC%9A%20%EF%BC%85&chxt=x%2Cy&chxl=0%3A%7C80%7C81%7C82%7C83%7C84%7C85%7C86%7C87%7C88%7C89%7C90%7C91%7C92%7C93%7C94%7C95%7C96%7C97%7C98%7C99%7C00%7C01%7C02%7C03%7C04%7C05%7C06%7C07%7C08%7C09%7C10%7C11&chdlp=b&chdl=%E6%97%A5%E6%9C%AC%7C%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB&chco=3399CC%2C80C65A&chxr=1%2C2.02%2C9.71&chd=e%3AAABlC1FPFvE.GPG0EEB.AqAqBKEEHPJZLJLeRYWIWdZCbya4WdUDRjPOQZZYZSXy%2Cq7um...EtrrBpbinc3a9d9oMtgorh8dtcNYSUoSTQOWofShCdSZdVjVofc8a.U2P)
日本は、97年・98年のGDPマイナス成長時、08年09年のリーマンショック時に、失業率が急上昇しています。
日本の場合、GDP成長率と失業率の間には、相関関係があるとされています。 「オークンの法則」と言います。

マイナス成長時は、失業率が高く、高成長時は失業率が低いのです。「雇用が奪われた」のではないことがお分かりいただけると思います。 「グローバル化による雇用流出」など、実際には存在しないのです。
N・グレゴリー・マンキュー『マンキュー経済学』東洋経済新報社 2008 p18
第8原理:生活水準は財サービスの生産能力に依存している
…国や時代の違いによって生活水準に大きな格差が変化があるのはなぜだろうか。その答えは驚くほど簡単である。生活水準の格差や変化のほとんどは、各国の生産性によって説明できる。生産性とは1人の労働者が1時間あたりに生産する財・サービスの量である。労働者の1時間当たりの生産量が多い国ではほとんどの人々が高い生活水準を享受している。労働者の生産性が低い国ほとんどの人が、最も低い生活水準を甘受しなければならない。同様に、一国の生産性の成長率は平均所得の成長率を決定する。
…アメリカの所得が1970年代と1980年代に低成長だったのは、日本をはじめとする外国との競争のせいであると主張する評論家たちがいる。しかし、本当の悪者は海外との競争ではなく、アメリカ国内における生産性の成長率の低下なのである。
<信じられない主張>
…第2の柱は、金利の正常化である。…ゼロ金利政策によって利子所得が奪われ、高齢者層は年金以外に所得がなくなってしまった。
…反対側…企業の利益剰余金は…09年度には270兆円に拡大した。中小企業においてさえ…積み上がっている。
…ゼロ金利は非効率な企業を温存し、企業の新陳代謝という市場経済の最も重要な機能を停止させてしまった。…これは統制経済への道である。
…少子高齢化による労働市場の縮小、新興国経済の高成長が引き起こす資源不足といった問題は、日本が得意とするロボットなどの省エネ投資へのインセンティブを高めている。
…問題は、こうした新たな投資機会が出てきても、ゼロ金利のままでは、成長分野に円滑に資金が回らないことだ。…適正な資源配分のために、金利の正常化が求められている。
高金利にしないから
↓
非効率企業(ゾンビ企業)温存
↓
カネが非効率に使われている
↓
高金利にし、ゾンビ企業を退出(市場機能を使う)
↓
カネが成長分野に回る
この文が書かれたのは、「少なくとも短期的には東日本大震災後の経済の大幅な落ち込みは避けられない」とありますので、震災後です。その状態で、「金利引き上げ」を主張しています。
震災後に、関連倒産が起こっています。
『震災関連倒産、間接被害で全国に…最多は関東』読売新聞 5月1日(日)10時21分配信
東日本大震災の影響を受けた企業の倒産が急速に増えている。
帝国データバンクによると、震災の関連倒産(倒産手続き中を含む)は3月11日~4月末の約1か月半で57件に達した。1995年の阪神大震災の時の2倍を超えるペースだ。取引先の被災など「間接的な被害」を受けた企業の倒産が全国に広がっているのが特徴だ。
57件のうち、東北地方の企業は13件だった。津波で本社が破壊されたり商品を失うなど、震災の「直接的な被害」を受けた企業がほとんどだ。残りの44件の大半は、被災地からの部品調達が滞ったり、消費の自粛ムードで宿泊予約のキャンセルが相次ぐといった「間接的な被害」を受けた。地域別では、最も多い関東が17件、北海道と北陸が7件ずつ、九州でも3件だった。
北海道では、貸切バスの「エクセルバス」が倒産しました。6月までの予約が9割キャンセルされ、先行きの見通しが立たなかったのが、その理由です。
週刊新潮 H23.5.12号 p51
東京商工リサーチ 友田信夫
さらに、倒産件数は増えるはず。昨年度は…月に均せば1000件弱。それが今後は月1500件に増える可能性がある。
倒産はしなくとも、解雇者が同じく急増しています。
同 p52
群馬県伊勢崎市の大手自動車部品メーカーでは総勢150名もの派遣社員が4月4日、いきなり一斉に4月末での雇用終了を言い渡されています。
短期には、震災という影響で、倒産が増加します。長期ではどうでしょうか。
http://journal.mycom.co.jp/news/2011/04/11/026/index.html
2011年3月の全国企業倒産状況 - 帝国データと商工リサーチの値を比較
全国企業倒産件数・負債総額の推移 資料:帝国データバンク

リーマンショック後、ようやく立ち直りの兆しが見えていました。
http://www.tsr-net.co.jp/news/status/monthly/1210034_1592.html
東京商工リサーチ『2011年(平成23年)3月度 全国企業倒産状況』
倒産件数は、前年同月比9.9%減で20カ月連続で前年同月を下回った。連続減少期間としては、1971年6月から1973年4月までの23カ月連続に次ぐ過去4番目の長さ。
また3月としては、2005年(1,140件)以来年6年ぶりに1,200件を下回った。依然として「中小企業金融円滑化法」や「景気対応緊急保証制度」などの金融支援効果による倒産抑制が続いている。
このように、「中小企業金融円滑化法」や「景気対応緊急保証制度」などの低利融資・金融支援策で、企業倒産を抑えてきました。著者のいう、「非効率な企業を温存」?し、「企業の新陳代謝という市場経済の最も重要な機能を停止」してきた政策です。
ですが、今後 著者が望む「非効率な企業?」の退場が加速します。
石巻市では、200社ほどの水産加工会社が、津波の被害を受け、壊滅状態です。「市場機能の復活」です。
倒産・失業の増加を、著者は「望ましい」と言います。
<日本は高金利>
デフレは、本来は、絶対につくはずのない利子が、「貨幣」を持っているだけで、ついてしまう現象です。
モノの値段が下がる(デフレ)状態だとします。モノの値段が10%下がる(100万円→90万円)と、110万円で買えるのは、1.22個分です。1年前には100万円のモノを1個買えたのですが、名目金利が10%つき、デフレで10%モノの値段が下がると、1.22個買えるのです。モノの価値<カネの価値です
実質金利=名目金利-インフレ率
20% = 10% -(-10)%
デフレの時は、名目金利がたとえ0%でも、モノの下落率分、金利がつくのと同じことなのです。
「企業の利益剰余金は…09年度には270兆円に拡大した。中小企業においてさえ…積み上がっている」のは当然です。カネ>実物投資なのです。
デフレなら、名目金利がゼロでも、実質金利が付きます。誰も利子率の低い「債権(投資)」なんかしません。

黙っていても(黙ってカネを積み上げる)、金利が付くのです。単純に、上記グラフを見ても、日銀がゼロ金利(~0.1%)を採用しても、1.9%とか、0.9%程度の金利が付いていることと同じです。
アメリカが採用している短期金利は2009年以降、0.25%です。

単純計算ですが、2009年の実質金利は-1.92-0.25=-1.67%、10年が-1.12%になります。(表面上マイナス金利にさえなっています)
実質金利では、日米逆転にさえなります。日本は、アメリカより、高金利」国なのです。
そのような状態の中、著者は「ゼロ金利のままでは、成長分野に円滑に資金が回らない」から、政策金利の引き上げを主張します。GDP成長率で、日本を上回っているアメリカ(日0.6%:米3.3%予測)以上の、「高金利にしろ!」ということです。
理解できません。
1990年以降…米国の多国籍企業が低賃金を求めて中国に生産資源を拡大していく結果、米国の製造業は縮小し、国内の雇用と投資が中国に奪われていく。
…「ウイン・ウイン」の関係が崩れてしまった。中国の雇用増は米国の雇用減と言う「ゼロ・サム」の関係に変わってきたのである。
…日本…少なくとも短期的には東日本大震災後の経済の大幅な落ち込みは避けられない。…しかし、日銀の金融緩和が…国際商品相場を高騰させ、新興国の金融政策のかじとりを一段と難しいものにする、という国際的な負の影響を考慮する必要がある。
…日本の金融政策のあり方…
…第1の柱は、内需主導型経済構造への転換である。…内需主導の成長を目指すのであれば、円高こそ必要である。
…第2の柱は、金利の正常化である。…ゼロ金利政策によって利子所得が奪われ、高齢者層は年金以外に所得がなくなってしまった。
…反対側…企業の利益剰余金は…09年度には270兆円に拡大した。中小企業においてさえ…積み上がっている。
…ゼロ金利は非効率な企業を温存し、企業の新陳代謝という市場経済の最も重要な機能を停止させてしまった。…これは統制経済への道である。
…少子高齢化による労働市場の縮小、新興国経済の高成長が引き起こす資源不足といった問題は、日本が得意とするロボットなどの省エネ投資へのインセンティブを高めている。
…問題は、こうした新たな投資機会が出てきても、ゼロ金利のままでは、成長分野に円滑に資金が回らないことだ。…適正な資源配分のために、金利の正常化が求められている。
<これは間違い>
1990年以降…米国の多国籍企業が低賃金を求めて中国に生産資源を拡大していく結果、米国の製造業は縮小し、国内の雇用と投資が中国に奪われていく。
…「ウイン・ウイン」の関係が崩れてしまった。中国の雇用増は米国の雇用減と言う「ゼロ・サム」の関係に変わってきたのである。
「賃金の安い国に雇用が集中し、先進国は雇用が奪われる」というものです。
グローバル化に伴い、アメリカなどの先進国の製造業が、中国などの新興国に移転し、アメリカ(先進国)の「雇用が奪われる」という、「よくある話」ですが、経済学的には、完全に否定されている話です。
事実に基づいていないのですが、「不況」になったり、失業率が高まったりすると、「何か原因」を作らないと納得しないため、「新興国に雇用を奪われた」とする論調がはびこります。 身近にある工場が閉鎖されたり、従業員が解雇されると、「中国」のせいにしたら、分かりやすく、ストンと落ちますから。
この説の誤りについては、下記カテゴリ:参考資料をご覧ください。
(1)http://abc60w.blog16.fc2.com/blog-category-15.html
2010-09-07 産業の空洞化は有り得ない
(2)http://abc60w.blog16.fc2.com/category134-1.html
2010-04-18 倉西雅子 鶴見大学
アメリカの現状です。
出典:世界経済のネタ帳
リーマンショック以降、失業率が跳ね上がり、80年の「レーガン」時代の失業率と同じ水準になりました。「中国などの新興国に雇用を奪われた?」感じですね。実際はどうなのでしょう?
http://3rdworldman.jugem.jp/?eid=130
雇用増加産業と雇用減少産業(米国) (数字)は筆者挿入
アメリカの雇用増減です。左側はマイナス、右側は増加分です。

(1)サービス業
1990年12月から2010年12月までの20年間で米国の非農業雇用者数(季節調整済み)は2,159万人・20%増加しました。増加数の多い産業順に並べた上の表の産業の雇用者数増加は合計で2,150万人でほぼ全体の増加数に匹敵し、その増加率は実に47%にもなっています。
飲食店従業員が301万人・46%も増えていて、それが群を抜いて雇用拡大を支えていることがきわめて印象的です。これは経済社会変化の普遍的な方向といえるのでしょうか?
2位以下は、教育・地方公務員・看護介護・病院が続き、派遣・SEがきた後で、また診療所・在宅看護と医療介護産業が続きます。
(2)製造業ほか
20年間で雇用が減少した産業の雇用者減少数は合計で△637万人で、これらの産業の雇用者数は△22%も減少しました。雇用者減少数の上位は全て製造業が占めており、とくにアパレル(△81%)織物工場(△74%)皮革製品(△76%)などの衣料製造業が壊滅的になっていることが分かります。また、製造業以外では、郵便を含む連邦政府・出版・通信・航空輸送・列車輸送・ガソリンスタンド・住宅建設なども雇用者数純減産業に入っています。
製造業雇用減少<サービス業になっています。先進国になればなるほど、サービス業割合は上昇します(ぺティ・クラークの法則)。製造業の生産性増加=雇用減少は、ある意味必然です。雇用はあるのです。
日本の場合です。現在、失業率の導出については、各国ともに同じ方法が採用されていますので、同じ土俵での比較になります。
出典:世界経済のネタ帳
日本は、97年・98年のGDPマイナス成長時、08年09年のリーマンショック時に、失業率が急上昇しています。
日本の場合、GDP成長率と失業率の間には、相関関係があるとされています。 「オークンの法則」と言います。

マイナス成長時は、失業率が高く、高成長時は失業率が低いのです。「雇用が奪われた」のではないことがお分かりいただけると思います。 「グローバル化による雇用流出」など、実際には存在しないのです。
N・グレゴリー・マンキュー『マンキュー経済学』東洋経済新報社 2008 p18
第8原理:生活水準は財サービスの生産能力に依存している
…国や時代の違いによって生活水準に大きな格差が変化があるのはなぜだろうか。その答えは驚くほど簡単である。生活水準の格差や変化のほとんどは、各国の生産性によって説明できる。生産性とは1人の労働者が1時間あたりに生産する財・サービスの量である。労働者の1時間当たりの生産量が多い国ではほとんどの人々が高い生活水準を享受している。労働者の生産性が低い国ほとんどの人が、最も低い生活水準を甘受しなければならない。同様に、一国の生産性の成長率は平均所得の成長率を決定する。
…アメリカの所得が1970年代と1980年代に低成長だったのは、日本をはじめとする外国との競争のせいであると主張する評論家たちがいる。しかし、本当の悪者は海外との競争ではなく、アメリカ国内における生産性の成長率の低下なのである。
<信じられない主張>
…第2の柱は、金利の正常化である。…ゼロ金利政策によって利子所得が奪われ、高齢者層は年金以外に所得がなくなってしまった。
…反対側…企業の利益剰余金は…09年度には270兆円に拡大した。中小企業においてさえ…積み上がっている。
…ゼロ金利は非効率な企業を温存し、企業の新陳代謝という市場経済の最も重要な機能を停止させてしまった。…これは統制経済への道である。
…少子高齢化による労働市場の縮小、新興国経済の高成長が引き起こす資源不足といった問題は、日本が得意とするロボットなどの省エネ投資へのインセンティブを高めている。
…問題は、こうした新たな投資機会が出てきても、ゼロ金利のままでは、成長分野に円滑に資金が回らないことだ。…適正な資源配分のために、金利の正常化が求められている。
高金利にしないから
↓
非効率企業(ゾンビ企業)温存
↓
カネが非効率に使われている
↓
高金利にし、ゾンビ企業を退出(市場機能を使う)
↓
カネが成長分野に回る
この文が書かれたのは、「少なくとも短期的には東日本大震災後の経済の大幅な落ち込みは避けられない」とありますので、震災後です。その状態で、「金利引き上げ」を主張しています。
震災後に、関連倒産が起こっています。
『震災関連倒産、間接被害で全国に…最多は関東』読売新聞 5月1日(日)10時21分配信
東日本大震災の影響を受けた企業の倒産が急速に増えている。
帝国データバンクによると、震災の関連倒産(倒産手続き中を含む)は3月11日~4月末の約1か月半で57件に達した。1995年の阪神大震災の時の2倍を超えるペースだ。取引先の被災など「間接的な被害」を受けた企業の倒産が全国に広がっているのが特徴だ。
57件のうち、東北地方の企業は13件だった。津波で本社が破壊されたり商品を失うなど、震災の「直接的な被害」を受けた企業がほとんどだ。残りの44件の大半は、被災地からの部品調達が滞ったり、消費の自粛ムードで宿泊予約のキャンセルが相次ぐといった「間接的な被害」を受けた。地域別では、最も多い関東が17件、北海道と北陸が7件ずつ、九州でも3件だった。
北海道では、貸切バスの「エクセルバス」が倒産しました。6月までの予約が9割キャンセルされ、先行きの見通しが立たなかったのが、その理由です。
週刊新潮 H23.5.12号 p51
東京商工リサーチ 友田信夫
さらに、倒産件数は増えるはず。昨年度は…月に均せば1000件弱。それが今後は月1500件に増える可能性がある。
倒産はしなくとも、解雇者が同じく急増しています。
同 p52
群馬県伊勢崎市の大手自動車部品メーカーでは総勢150名もの派遣社員が4月4日、いきなり一斉に4月末での雇用終了を言い渡されています。
短期には、震災という影響で、倒産が増加します。長期ではどうでしょうか。
http://journal.mycom.co.jp/news/2011/04/11/026/index.html
2011年3月の全国企業倒産状況 - 帝国データと商工リサーチの値を比較
全国企業倒産件数・負債総額の推移 資料:帝国データバンク

リーマンショック後、ようやく立ち直りの兆しが見えていました。
http://www.tsr-net.co.jp/news/status/monthly/1210034_1592.html
東京商工リサーチ『2011年(平成23年)3月度 全国企業倒産状況』
倒産件数は、前年同月比9.9%減で20カ月連続で前年同月を下回った。連続減少期間としては、1971年6月から1973年4月までの23カ月連続に次ぐ過去4番目の長さ。
また3月としては、2005年(1,140件)以来年6年ぶりに1,200件を下回った。依然として「中小企業金融円滑化法」や「景気対応緊急保証制度」などの金融支援効果による倒産抑制が続いている。
このように、「中小企業金融円滑化法」や「景気対応緊急保証制度」などの低利融資・金融支援策で、企業倒産を抑えてきました。著者のいう、「非効率な企業を温存」?し、「企業の新陳代謝という市場経済の最も重要な機能を停止」してきた政策です。
ですが、今後 著者が望む「非効率な企業?」の退場が加速します。
石巻市では、200社ほどの水産加工会社が、津波の被害を受け、壊滅状態です。「市場機能の復活」です。
倒産・失業の増加を、著者は「望ましい」と言います。
<日本は高金利>
デフレは、本来は、絶対につくはずのない利子が、「貨幣」を持っているだけで、ついてしまう現象です。
モノの値段が下がる(デフレ)状態だとします。モノの値段が10%下がる(100万円→90万円)と、110万円で買えるのは、1.22個分です。1年前には100万円のモノを1個買えたのですが、名目金利が10%つき、デフレで10%モノの値段が下がると、1.22個買えるのです。モノの価値<カネの価値です
実質金利=名目金利-インフレ率
20% = 10% -(-10)%
デフレの時は、名目金利がたとえ0%でも、モノの下落率分、金利がつくのと同じことなのです。
「企業の利益剰余金は…09年度には270兆円に拡大した。中小企業においてさえ…積み上がっている」のは当然です。カネ>実物投資なのです。
デフレなら、名目金利がゼロでも、実質金利が付きます。誰も利子率の低い「債権(投資)」なんかしません。

黙っていても(黙ってカネを積み上げる)、金利が付くのです。単純に、上記グラフを見ても、日銀がゼロ金利(~0.1%)を採用しても、1.9%とか、0.9%程度の金利が付いていることと同じです。
アメリカが採用している短期金利は2009年以降、0.25%です。

単純計算ですが、2009年の実質金利は-1.92-0.25=-1.67%、10年が-1.12%になります。(表面上マイナス金利にさえなっています)
実質金利では、日米逆転にさえなります。日本は、アメリカより、高金利」国なのです。
そのような状態の中、著者は「ゼロ金利のままでは、成長分野に円滑に資金が回らない」から、政策金利の引き上げを主張します。GDP成長率で、日本を上回っているアメリカ(日0.6%:米3.3%予測)以上の、「高金利にしろ!」ということです。
理解できません。
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genre : 政治・経済