「貿易黒字は稼ぎ」という幻想but世間の常識 その1
<「貿易黒字は稼ぎ」という幻想but世間の常識 その1>
日経 H23.4.21
編集委員 滝田洋一「稼ぎ減り起きること」
貿易収支は3月に黒字が大幅に減ったのに続き、4月以降に赤字となるとの見通しが出てきた。
…日本が経済大国となった1970年代以降、貿易収支が赤字になったのは…2度の石油危機や、リーマン・ショック…くらいだ。今回、貿易収支の悪化を招いているのは大震災…。
…これから貿易収支が赤字に陥るばかりでなく経常収支の黒字も縮小するようだと、自由に使える国内資金は減ってくる。
そうなれば、国債の安定消化の前提が揺らぎ、財政赤字の拡大が長期金利の上昇要因として意識されやすくなる。
またまた、トンデモ論です。「経常収支黒字減→国内資金減」ではなく、「国内資金減→経常収支黒字減」です。「経常収支黒字=もうけ」と考えているから、「資金が減る」という表現が出ます。この詳しい内容については、後日扱います。とりあえず、「貿易黒字はもうけ」の間違いについて、先に進みます。
日経 H23.4.21 社説『景気と貿易収支の悪化に細心の注意を』
東日本大震災の爪痕の深さ…。景気の停滞や貿易収支の悪化は避けられず…。
…3月の貿易統計によると、輸出額は前年同月に比べ2.2%減った。
…貿易収支の悪化も気になるところだ。3月の貿易黒字は、前年同月比78.9%減少した。4月には貿易赤字に転落するとの見方も少なくない。
…貿易収支が悪化すると…円安圧力がかかりやすくなる。…円安には日本製品の輸出競争力を高める効果がある。だが震災後…容易に輸出を増やせない。円安は原材料の輸入価格を押し上げる方向にも働くため、今は企業収益の圧迫要因になりかねないとの声が出ている。
ここでも、貿易収支の黒字減少を「悪化」、赤字になると「転落」と表現して、おかしい(王様は裸)ということに、気づいていません。
日経 H23.4.25 『月曜 経済観測』国際協力銀行経営絵責任者 渡辺博史氏のインタビュー
―3月の貿易黒字は大幅に減りました。
「4月以降、貿易収支はいったん赤字に陥るか、黒字であってもしばらくは低空飛行が続く」
どうしても、「貿易黒字低下は悪」と言わせたいようです。再三指摘してきましたが、「貿易黒字は稼ぎ」とか「もうけ」と誤解する原因は、「黒字」「赤字」という言葉にあります。企業の黒字が「もうけ」だから、赤字が「損」だから、「貿易黒字はもうけ」「赤字は損」「赤字に転落してはまずい」という言葉が出てきます。
日経も、「企業の黒字」と「貿易黒字」の本質的違いが分かっていないので、とんちんかんな記事を書き続けます。だから、「貿易黒字」にかわり、「貿易超過(資本流出:注-本当は流出ではありませんが、黒字と書くなら、流出で対抗)」とか、「貿易黒字(資本赤字)」と正確に表記しないと、誤解はなくなりそうにありません。
企業のもうけ= black = 黒字
貿易黒字 = a trade surplus= 貿易過剰(余剰)
黒字の意味がぜんぜん違うのです。
この「貿易黒字」は、「経済学」を知っているか、知らないかのリトマス試験紙になります(大竹文雄先生によると、「比較優位」だそうですが・・・)。
ただ、日経を補足すると、
輸出 =もうけ・稼ぎ です。
でも、貿易黒字は、もうけではありません。
<経常収支≡資本収支>のメカニズム
ISバランス
貿易黒字は、その国の、「貯蓄-投資」で決まります。ISバランス論と言います。
日経H22.11.2 『経済教室』チャールズ・ユウジ・ホリオカ 萩原景子
…2000年代初頭以降は、多くのアジア諸国で国内投資に対する貯蓄の超過が顕著となり、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長らが問題視した世界的な経常収支の不均衡を悪化させることとなった。
…文化的な理由や、企業貯蓄などが重要な要因である場合は…アジアの貯蓄が高止まりし、経常収支の不均衡が引き続きグローバル経済のリスク要因であり続ける可能性もある。
…アジアの貯蓄率は、01~07年の平均の約29%から11~20年には32%に、21~30年にはさらに33%に微増すると見込まれる。このように、高齢化が進んでも、アジア全体としての貯蓄率は高止まりすると考えられる。
経常収支は、理論的に国内貯蓄から国内投資を差し引くことによって計算できる。
…アジア全体の国内貯蓄率と投資率をそれぞれ予測したところ、貯蓄率は21年~30年においても、高止まりする一方、投資率は低下傾向をたどる。その結果、アジア全体の経常収支の黒字は依然として高水準が続き、世界的な経常収支の不均衡の調整はまだ先のこととなる。
この、不均衡予測は、次のようにグラフ化されます。
読売『G20 成長に軸足 新興国に内需拡大に期待』H22.6.28 グラフも

桑原進 『史上最強 図解 マクロ経済学入門』ナツメ社 2010
P224
貯蓄S-投資I=純輸出NX(筆者注:輸出EX-輸入IMのこと)
これは、国内における貯蓄のうち、投資に回らなかった分と、純輸出(=対外純投資)が一致することを意味しています。貯蓄Sと投資Iは所得Yと実質金利rによりすでに決まっているので、それにあわせて純輸出NXが決まることを意味しています。
P229
純輸出は実質為替レートの関数であると考えられる、といいましたが、純輸出の量はすでに貯蓄投資バランスで決まっています
日本のGDPの三面等価図を見てみましょう。

(S-I) = (G-T) + (EX-IM)
(貯蓄-投資) = (公債) + (貿易黒字)
(貯蓄超過) = (政府への貸し出し)+ (外国への貸し出し)
我々が、消費せず、税金にも回さなかったお金を、貯蓄Sと言います。その国内のS(貯蓄)が、I(企業の投資)、(G-T:公債)、(EX-IM:輸出―輸入:経常黒字:海外への資金の貸し出し)になるのです。S=99兆8880億円、それがIの95兆円、G-T3.4兆円、EX-IM1.4兆円に回るのです。EX-IM1.4兆円は、海外へのお金の貸し出し なのです。
外国債・外国株・外国社債などの購入や、外国への貸付額がEX-IM1.4兆円なのです。
これらは、銀行などの金融機関、生命保険会社・投資信託などの機関投資家、政府、企業、個人です。これらは、資本収支赤字=海外資産増加になります。
一方、「EX-IM」は貿易黒字です。Y GDP(国内総生産)GNP(国民総生産)のうち、我々が、消費せず、税金にも回さなかったS部分は、我々個人に代わり、誰かが購入(消費・投資)しています。I(企業)が購入し、(G-T:公債)政府が購入し、(EX-IM:輸出―輸入)外国が購入しています。EX-IM1.4兆円は、輸出―輸入ですから、海外が日本から多く買ったこと、すなわち貿易黒字です。
ですから、 (EX-IM)は,貿易黒字ですが,同時に日本の,海外への資金の貸し出し(外国の日本に対する借金)になるのです。
貿易黒字額=外国への資金の貸出額
「総生産額」から,国内の「総消費(投資)」(家計・企業・政府)を差し引いたものが,(EX-IM)=貿易黒字・海外への資金流出に等しくなるのです。
「総生産額-総消費」=「国全体の貯蓄超過」=「貿易黒字」
日本全体の所得と支出の差は,貯蓄であり,それは(EX-IM)「貿易黒字」なのです。日本が「貿易黒字」を生み出すのは,日本人が,その支出を,所得以下におさえ,海外への貯蓄供給=海外投資をした結果です。
しかも、海外への資金の貸し出し(外国の日本に対する借金)というのは、返さなければいけないお金ではありません。
高増明他『経済学者に騙されないための経済学入門』ナカニシヤ出版2005
p20
…豊かさというのは、いろいろな財を消費して満足を得ることです。けっして、輸出が輸入より大きいことが豊かではないのです。…対外債務(筆者注:経常、貿易赤字=資本収支黒字)というのは、住宅ローンとは違って返済しなければいけないものではありません。対外債務というのは、たんに外国の企業が自国の土地や株を買ったということです。けっして日本人が(筆者注:外国が)外国からお金を借りてそれを毎月返済しなければならないということではないのです。
投資(カネを貸)してもらっている国から見ます。
○○国の新工場や店舗を、日本人が建てることです。
○○国の会社の株式が、日本人によって買われているということです。
○○国の会社の社債を、日本人が購入している状態です。
○○国の銀行の預金を、日本人がしていることです(○○国銀行の預金は、銀行から見たら負債です)。
○○国の不動産の持ち主が、日本人の場合です。
○○国の国債を、日本人が購入している状態です。
たとえば、日本企業が外国から投資された場合、以下のようになります。
外国人の株保有率 出典 日経H22.6.19 2010年3月末現在
オリックス 50.5%
パイオニア 31.3
日本電気硝子 44.4
三井化学 31.5
住友重機械工業36.6
日本郵船35.2
野村HD 44.1
レオパレス21 32.4
これらの企業は、すでに「外国企業」です。日本人が、外国会社の株や社債を買ったり、M&A(買収・提携)したり、海外に工場や店舗を建てる直接投資(海外に株式会社を作る)ことが投資(カネを貸す)です。
日本人が、外国人投資家に借金をして、借金を返済しているわけではありません。
<カネ余り→海外投資→貿易黒字>
国内に投資先がないので、結果海外に投資し、貿易黒字が拡大するのです。
下の図で、Yから(C+I+G)を引くと、NX(純輸出:EX-IM)になります。
桑原進 『史上最強 図解 マクロ経済学入門』ナツメ社 2010

この図をみると、日本の対外純資産は、90年代以降に拡大しています。90年代以降の不況を「失われた20年」と言っています。なんとなく符合していますね。要するに、国内に投資先がない(不況?)から、対外純資産が増えている?のでしょうか?
以上のような投資(海外へのお金の貸し出し)が,日本の対外資産です。その残高は約610兆4920億円(07年末)で,世界一となっています。そのうち,直接投資(海外の工場建設など)は,約55兆円です。また,外貨準備1兆39億ドルのうち,証券(外国国債含む)は8588億ドル,約86%を占めています。
海外資産から外国の日本国内資産を引いた、純資産は、2009年末時点で266兆2230億円と、もちろん世界一になっています。

貿易黒字=海外資産=国内に還流しないカネ
貿易黒字による、対外純資産が増えるのは、日本の場合、「不況(国内に投資先がない)」からなのです。
日経 H23.4.21
編集委員 滝田洋一「稼ぎ減り起きること」
貿易収支は3月に黒字が大幅に減ったのに続き、4月以降に赤字となるとの見通しが出てきた。
…日本が経済大国となった1970年代以降、貿易収支が赤字になったのは…2度の石油危機や、リーマン・ショック…くらいだ。今回、貿易収支の悪化を招いているのは大震災…。
…これから貿易収支が赤字に陥るばかりでなく経常収支の黒字も縮小するようだと、自由に使える国内資金は減ってくる。
そうなれば、国債の安定消化の前提が揺らぎ、財政赤字の拡大が長期金利の上昇要因として意識されやすくなる。
またまた、トンデモ論です。「経常収支黒字減→国内資金減」ではなく、「国内資金減→経常収支黒字減」です。「経常収支黒字=もうけ」と考えているから、「資金が減る」という表現が出ます。この詳しい内容については、後日扱います。とりあえず、「貿易黒字はもうけ」の間違いについて、先に進みます。
日経 H23.4.21 社説『景気と貿易収支の悪化に細心の注意を』
東日本大震災の爪痕の深さ…。景気の停滞や貿易収支の悪化は避けられず…。
…3月の貿易統計によると、輸出額は前年同月に比べ2.2%減った。
…貿易収支の悪化も気になるところだ。3月の貿易黒字は、前年同月比78.9%減少した。4月には貿易赤字に転落するとの見方も少なくない。
…貿易収支が悪化すると…円安圧力がかかりやすくなる。…円安には日本製品の輸出競争力を高める効果がある。だが震災後…容易に輸出を増やせない。円安は原材料の輸入価格を押し上げる方向にも働くため、今は企業収益の圧迫要因になりかねないとの声が出ている。
ここでも、貿易収支の黒字減少を「悪化」、赤字になると「転落」と表現して、おかしい(王様は裸)ということに、気づいていません。
日経 H23.4.25 『月曜 経済観測』国際協力銀行経営絵責任者 渡辺博史氏のインタビュー
―3月の貿易黒字は大幅に減りました。
「4月以降、貿易収支はいったん赤字に陥るか、黒字であってもしばらくは低空飛行が続く」
どうしても、「貿易黒字低下は悪」と言わせたいようです。再三指摘してきましたが、「貿易黒字は稼ぎ」とか「もうけ」と誤解する原因は、「黒字」「赤字」という言葉にあります。企業の黒字が「もうけ」だから、赤字が「損」だから、「貿易黒字はもうけ」「赤字は損」「赤字に転落してはまずい」という言葉が出てきます。
日経も、「企業の黒字」と「貿易黒字」の本質的違いが分かっていないので、とんちんかんな記事を書き続けます。だから、「貿易黒字」にかわり、「貿易超過(資本流出:注-本当は流出ではありませんが、黒字と書くなら、流出で対抗)」とか、「貿易黒字(資本赤字)」と正確に表記しないと、誤解はなくなりそうにありません。
企業のもうけ= black = 黒字
貿易黒字 = a trade surplus= 貿易過剰(余剰)
黒字の意味がぜんぜん違うのです。
この「貿易黒字」は、「経済学」を知っているか、知らないかのリトマス試験紙になります(大竹文雄先生によると、「比較優位」だそうですが・・・)。
ただ、日経を補足すると、
輸出 =もうけ・稼ぎ です。
でも、貿易黒字は、もうけではありません。
<経常収支≡資本収支>のメカニズム
ISバランス
貿易黒字は、その国の、「貯蓄-投資」で決まります。ISバランス論と言います。
日経H22.11.2 『経済教室』チャールズ・ユウジ・ホリオカ 萩原景子
…2000年代初頭以降は、多くのアジア諸国で国内投資に対する貯蓄の超過が顕著となり、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長らが問題視した世界的な経常収支の不均衡を悪化させることとなった。
…文化的な理由や、企業貯蓄などが重要な要因である場合は…アジアの貯蓄が高止まりし、経常収支の不均衡が引き続きグローバル経済のリスク要因であり続ける可能性もある。
…アジアの貯蓄率は、01~07年の平均の約29%から11~20年には32%に、21~30年にはさらに33%に微増すると見込まれる。このように、高齢化が進んでも、アジア全体としての貯蓄率は高止まりすると考えられる。
経常収支は、理論的に国内貯蓄から国内投資を差し引くことによって計算できる。
…アジア全体の国内貯蓄率と投資率をそれぞれ予測したところ、貯蓄率は21年~30年においても、高止まりする一方、投資率は低下傾向をたどる。その結果、アジア全体の経常収支の黒字は依然として高水準が続き、世界的な経常収支の不均衡の調整はまだ先のこととなる。
この、不均衡予測は、次のようにグラフ化されます。
読売『G20 成長に軸足 新興国に内需拡大に期待』H22.6.28 グラフも

桑原進 『史上最強 図解 マクロ経済学入門』ナツメ社 2010
P224
貯蓄S-投資I=純輸出NX(筆者注:輸出EX-輸入IMのこと)
これは、国内における貯蓄のうち、投資に回らなかった分と、純輸出(=対外純投資)が一致することを意味しています。貯蓄Sと投資Iは所得Yと実質金利rによりすでに決まっているので、それにあわせて純輸出NXが決まることを意味しています。
P229
純輸出は実質為替レートの関数であると考えられる、といいましたが、純輸出の量はすでに貯蓄投資バランスで決まっています
日本のGDPの三面等価図を見てみましょう。

(S-I) = (G-T) + (EX-IM)
(貯蓄-投資) = (公債) + (貿易黒字)
(貯蓄超過) = (政府への貸し出し)+ (外国への貸し出し)
我々が、消費せず、税金にも回さなかったお金を、貯蓄Sと言います。その国内のS(貯蓄)が、I(企業の投資)、(G-T:公債)、(EX-IM:輸出―輸入:経常黒字:海外への資金の貸し出し)になるのです。S=99兆8880億円、それがIの95兆円、G-T3.4兆円、EX-IM1.4兆円に回るのです。EX-IM1.4兆円は、海外へのお金の貸し出し なのです。
外国債・外国株・外国社債などの購入や、外国への貸付額がEX-IM1.4兆円なのです。
これらは、銀行などの金融機関、生命保険会社・投資信託などの機関投資家、政府、企業、個人です。これらは、資本収支赤字=海外資産増加になります。
一方、「EX-IM」は貿易黒字です。Y GDP(国内総生産)GNP(国民総生産)のうち、我々が、消費せず、税金にも回さなかったS部分は、我々個人に代わり、誰かが購入(消費・投資)しています。I(企業)が購入し、(G-T:公債)政府が購入し、(EX-IM:輸出―輸入)外国が購入しています。EX-IM1.4兆円は、輸出―輸入ですから、海外が日本から多く買ったこと、すなわち貿易黒字です。
ですから、 (EX-IM)は,貿易黒字ですが,同時に日本の,海外への資金の貸し出し(外国の日本に対する借金)になるのです。
貿易黒字額=外国への資金の貸出額
「総生産額」から,国内の「総消費(投資)」(家計・企業・政府)を差し引いたものが,(EX-IM)=貿易黒字・海外への資金流出に等しくなるのです。
「総生産額-総消費」=「国全体の貯蓄超過」=「貿易黒字」
日本全体の所得と支出の差は,貯蓄であり,それは(EX-IM)「貿易黒字」なのです。日本が「貿易黒字」を生み出すのは,日本人が,その支出を,所得以下におさえ,海外への貯蓄供給=海外投資をした結果です。
しかも、海外への資金の貸し出し(外国の日本に対する借金)というのは、返さなければいけないお金ではありません。
高増明他『経済学者に騙されないための経済学入門』ナカニシヤ出版2005
p20
…豊かさというのは、いろいろな財を消費して満足を得ることです。けっして、輸出が輸入より大きいことが豊かではないのです。…対外債務(筆者注:経常、貿易赤字=資本収支黒字)というのは、住宅ローンとは違って返済しなければいけないものではありません。対外債務というのは、たんに外国の企業が自国の土地や株を買ったということです。けっして日本人が(筆者注:外国が)外国からお金を借りてそれを毎月返済しなければならないということではないのです。
投資(カネを貸)してもらっている国から見ます。
○○国の新工場や店舗を、日本人が建てることです。
○○国の会社の株式が、日本人によって買われているということです。
○○国の会社の社債を、日本人が購入している状態です。
○○国の銀行の預金を、日本人がしていることです(○○国銀行の預金は、銀行から見たら負債です)。
○○国の不動産の持ち主が、日本人の場合です。
○○国の国債を、日本人が購入している状態です。
たとえば、日本企業が外国から投資された場合、以下のようになります。
外国人の株保有率 出典 日経H22.6.19 2010年3月末現在
オリックス 50.5%
パイオニア 31.3
日本電気硝子 44.4
三井化学 31.5
住友重機械工業36.6
日本郵船35.2
野村HD 44.1
レオパレス21 32.4
これらの企業は、すでに「外国企業」です。日本人が、外国会社の株や社債を買ったり、M&A(買収・提携)したり、海外に工場や店舗を建てる直接投資(海外に株式会社を作る)ことが投資(カネを貸す)です。
日本人が、外国人投資家に借金をして、借金を返済しているわけではありません。
<カネ余り→海外投資→貿易黒字>
国内に投資先がないので、結果海外に投資し、貿易黒字が拡大するのです。
下の図で、Yから(C+I+G)を引くと、NX(純輸出:EX-IM)になります。
桑原進 『史上最強 図解 マクロ経済学入門』ナツメ社 2010

この図をみると、日本の対外純資産は、90年代以降に拡大しています。90年代以降の不況を「失われた20年」と言っています。なんとなく符合していますね。要するに、国内に投資先がない(不況?)から、対外純資産が増えている?のでしょうか?
以上のような投資(海外へのお金の貸し出し)が,日本の対外資産です。その残高は約610兆4920億円(07年末)で,世界一となっています。そのうち,直接投資(海外の工場建設など)は,約55兆円です。また,外貨準備1兆39億ドルのうち,証券(外国国債含む)は8588億ドル,約86%を占めています。
海外資産から外国の日本国内資産を引いた、純資産は、2009年末時点で266兆2230億円と、もちろん世界一になっています。

貿易黒字=海外資産=国内に還流しないカネ
貿易黒字による、対外純資産が増えるのは、日本の場合、「不況(国内に投資先がない)」からなのです。
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