止まらぬ食糧高騰 投資マネー流入が拍車

 右側にある「百科事典」は、この記事に出てくる、用語を解説します。使用する場合は、左側「カレンダー」の記事の1月28日をクリックして下さい。

日経H22.12.12『止まらぬ食糧高騰 投資マネー流入が拍車』

…今年の世界の主要穀物は決して不作ではない。米国のトウモロコシの生産量は史上3番目に多い。それでもなお品薄感が強まったのは、「需要の拡大が毎年続き増産ペースが少しでも鈍化すると急に品薄懸念が強まる」…ためだ。

農産物価格上昇 投資マネー.jpg

『食料高、世界経済かく乱』日経H23.1.14
 小麦やトウモロコシなど穀物を中心に食料価格が騰勢を強めている。…需給が引き締まっているからだ。
所得が低い新興国では「消費全体に占める食料の割合は約30%と先進国の倍」…社会不安の引き金となりかねない。
…一方で世界的な低金利は続く。市場関係者の間では資金を借りやすい環境を前提に「カネ余りで商品ファンドなどを通じた投機マネーの流入が価格をさらに押し上げる」との予想も。

穀物高騰 日経H23.1.14.jpg

コーヒー豆急騰、波紋拡大 メーカー値上げ、外食は「我慢」
フジサンケイ ビジネスアイ 1月17日(月)8時15分配信

コーヒー先物市場.jpg

週刊文春2011.1.20『池上彰のそこからですか。円高なのにガソリン下がらず』、

 円高のニュースは頻繁に報じられるのにガソリンの値段が下がりません。…値上がりしています。…レギュラーガソリン1リットルの全国平均価格は、一昨年1月に106円だったものが去年暮れには133円にまで上昇しています。一方、一昨年1月の円相場は1ドルが90円程度。それが暮れには80円台にまで上がっています。
…ここでいう「原油価格」はアメリカ・ニューヨークの原油先物市場での取引価格のこと。石油そのものの取引ではなく、「先物」つまり将来買う値段を決める場所です。ここで決まった価格が世界の原油取引の基準になっています。
…1バレル約43ドルだったものが今年1月3日には91.55ドルまで値上がりしています。なんと倍以上に値上がりしているのですね。

…FRB が資金をジャブジャブ提供して景気を良くしようとしたものの、その金は投機用に使われ、原油価格上昇をもたらしているのです。金もうけに選ばれているのは原油ばかりではありません。…金や砂糖、ゴムなどの商品相場も値上がりしています。


<マネー流入とは?>

 アメリカFRB(日銀に相当)の量的緩和が背景にあります。アメリカは、失業率が9%台と、依然として高く、バーナンキFRB議長が、「長期金利の低下」を目指して、量的緩和を導入しました。カネの量が増えれば、当然「金利」は下がると考えられるからです。

http://aki-ch.com/diary/092910.html クリスタル
アメリカ マネタリーベース.jpg

毎日新聞 社説:米の量的緩和 利少なく害多き決定だ H22.11月 日にち失念

 米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が、第2弾の大規模な量的緩和に踏み切る。今後8カ月間で、米国債を追加購入し総額6000億 ドル(約48兆円)もの資金を市場に排出する。長期金利を押し下げて景気を浮揚させる狙いがあるが、弊害が効果をはるかに上回りそうで、心配だ。

 FRBはリーマン・ショック後の金融危機を受けて量的緩和の第1弾を実施した。今年3月にかけて総額約1・7兆ドルの国債や住 宅ローン担保証券などを買い取った。民間に資金の出し手がいなくなる極端な金融不安の中、市場の緊張を和らげる一定の効果はあった。だが、高失業率や物価 の下落傾向が示すように、実体経済を刺激する力は乏しかった。
 それにもかかわらず、今第2弾を実施しようというFRBの方針は理解に苦しむ。米経済は資金不足に陥っているわけではない。そこに大量の資金を追 加供給しても、長期金利が若干下がる程度で、企業の設備投資や個人の住宅投資にはほとんど回らず、資金の多くは高い運用利回りを求めて国外に流出するだけだ。


アメリカ 金融緩和 イメージ.jpg

 毎日新聞は批判していますが、実際に、デフレを防ぎ、経済成長率の低下を防いでいます。

日経H23.1.29『米、年率3.2%成長に』10月~12月 個人消費・輸出が好調 

 一方、バブル(資産価格高騰)に回っています。株高、新興国へのマネー流入、そして、資源高です。

 冒頭引用記事のように、小麦、トウモロコシ、大豆、カカオ、コーヒー、金、砂糖、ゴムなどが「あっという間」に上昇するのは、その市場規模が違うからです。

日経H22.12.12『止まらぬ食糧高騰 投資マネー流入が拍車』
…投機マネーの流入も値上がりの大きな要因だ。…「世界の株式市場に比べれば穀物の先物市場の取引規模は100分の1程度。資金の1%でも移ってくればひとたまりもない」…

先物市場と くじら.jpg
 プールにクジラが飛び込むようなものです。

日経H22.12.12『止まらぬ食糧高騰 投資マネー流入が拍車』
…投機で高騰した典型的な例がチョコレートなどの原料となるカカオ豆だ。…ロンドン市場では7月に1トン2700ポンド台となり、33年ぶり高値をつけた。主因は…英ファンドが年間生産量の1割弱となる約24万トンを買い占めたためといわれる。主産地のコートジボワールなどの収穫減少を見込んで一気に買い進めた。

日経H23.1.19『熱帯農産物 増産に壁』
…各商品とも…金融緩和などで膨らんだ余剰マネーが流入し、相場の上昇に…。ただ、値上がりしても増産に直結しにくいという需給面の要因が相場を底上げしている面も見逃せない。
 

 とんでもない話に見えます。ですが、2008年のリーマンショック以降は、コーヒー価格が下がりすぎ、「農家がやっていけない!」と騒がれたことも事実です。「元に戻った」とも言えます。
 一方、実物経済にとっても、儲けの最大チャンスになります。

日経H22.12.12『止まらぬ食糧高騰 投資マネー流入が拍車』
…価格高騰を受けて世界中で食糧の増産に拍車がかかりそうだ。穀物の主力生産国の米国では穀物農家が来春、価格の上昇しているトウモロコシの作付を増やす見通し。
 

 マネー・ゲームです。

<マネーゲーム追記>

H23.1.27日経『現金や金、上昇一服』
農産物価格 原油金価格.jpg


 高騰の続く穀物と対照的に、代表的な国際商品である原油や金の値上がりが一服している。…下落の一因はインドの利上げ…。中国やブラジルでも今年に入って金融引き締め…商品高→新興国の物価上昇→金融引き締めという連想が広がっている。
これに対し、穀物は天候不順による減産懸念が強く、新興国の需要が衰えにくい。…割安感があるとされ資金流入は続いており、原油や金とは異なる値動きとなっている。
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食糧価格の高騰について

一部の国では食糧価格の高騰が政変に結びついているとニュースになっていました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110204-00000591-san-int

一方、FRBのバーナンキ議長は金融緩和が食糧価格高騰の原因ではない、と言っています。
また、各国は自前の金融政策がとれるはずであるとも。。。

彼の主張はどの程度正しいのでしょうか。。?

またここで金融緩和=社会悪のイメージがつくと、日本が金融緩和に踏み出すのが難しくなりそうな気もします。

どのようにお考えでしょうか。
もしよろしければ教えていただけますか。。?

No title

 因果関係でいうと、

 直接の原因は、「中国など新興国で肉や砂糖の需要が増え、ロシアの猛暑や米国の大雪、オーストラリアの洪水など異常気象が供給に影響した。夏の収穫がわかるまで食料価格は高止まりし、インフレなど不安定要因がさらに価格を押し上げる恐れがある。」ということですよね。
参照
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110204-00000591-san-int

 間接的には、「金融緩和」の一部資金が、「先物市場」に回っていることも事実です。

 「正しいか正しくないか」で言えば、「直接の原因ではない」という意味では「正しい」ことになります。

 たとえは変ですが、「北海道高速道路上の事故の原因は、前方不注意(車間距離不足)」ですが、環境として「吹雪で前が見えずらかった」というようなものでしょうか。

「前が見えずらいなら、いったん止まるか、減速すればよい」のでは?というのが、「各国は自前の金融政策がとれるはず」に相当ですかね?

 「金融緩和は悪」という価値判断については、正解が無いので、新興各国の主張は主張として、その意を封ずることは出来ません。

 事実としてはアメリカ「金融緩和」で、ドル安・円高になっています。その規模までは達していませんが、ユーロも、金融緩和しています。日本が「金融緩和」しても、FRB・欧州中銀は、「非難」出来ません。

 バーナンキの政策は、アメリカがデフレに陥るのを回避し、経済成長を達成しました。「成功か失敗か」で言えば、現在のところ「成功」しています。何しろ「日本の轍は踏まない」というのが、最大の政策決定基準です。

 次の課題は、少しずつ、「正常な金融政策」に戻すことでしょうか。

No title

自動車を運転する際は、基本的には各々の運転手に責任がある、という考え方でしょうか。

不作と需要増大が吹雪なら、他国の金融緩和政策は、となりでアクセルふかしまくってる自動車(気をつけないとあぶない)。。とも言えそうですね。

途上国を軽自動車みたいなものだと思うと、その国にとっては隣でスピード出しているトラックのような経済大国はちょっと怖いのかもしれませんね。。

ありがとうございます。

No title

 おっしゃるとおりだと思います。的確な描写ですね。
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