吾郷健二 『農産物貿易自由化で発展途上国はどうなるか 地獄へ向かう競争』

吾郷健二 『農産物貿易自由化で発展途上国はどうなるか 地獄へ向かう競争』明石書店2010.3.5

吾郷健二 西南学院大学教授

<市場経済学批判>

P13~
 市場の価格メカニズムを中心にした市場経済学(主流派の新古典派新自由主義経済学)…の適用範囲は…広くあっては社会を危機にさらすと考えている。
…われわれの政策原理(あるべき社会経済像)の基本秩序は、次のような優先順位であるべき…。
 

 として優先順位は、1自然原理、2社会原理、3経済の原理→(1)互酬性の原理:共的(2)再配分の原理:公的(3)市場の原理:私的と主張します。その中で、 「市場メカニズムは…最下位に位置するp14」ものとしています。

P16
…八十年代以降の新自由主義の台頭…一次産品問題…それが発展途上国経済の現実の動向にどう照応し、どのような困難がもたらされているかを追跡したものである。それは…「地獄へ向かう競争」であったと言って良い。



<メキシコの場合>

 メキシコの地域自由貿易協定1994年~(NAFTA=アメリカ/カナダ/メキシコ間)は「新自由主義改革の頂点p269」でした。

 その目的は輸出の伸びを通じて、経済を成長させ、開かれた経済への効率的な外国投資の流入が工業の発展と投資率を高め、生産性を上昇させ雇用機会と賃金の上昇をもたらし、国民の福祉を改善させ、貧困を削減させ、不法移民を減少させ、また外資の優れた技術が破壊された環境の改善と保全をもたらすp273」ことでした。

 本のデータは、2003年までの,古いものを使用しています。ただし、「2009年現在の世界恐慌下にあっても同じことが言えるp291」と書いていますので、現状も同じととらえていると考えて良いでしょう。

失敗例 p273~

(1)1994~2003年GDP成長率は1%、83~03年だと0.03%にすぎない。「失われた20年だ」
(2)輸出はNAFTAによって、メキシコの生産的能力を大いに損なう形で貿易の量や流れが完全に変わり、輸出を上回る輸入増で赤字基調となった。

(3)直接投資の流入にもかかわらず、経済はほとんど成長しなかった
(4)94年の経済危機から脱していない(2009年現在も)etc

 メキシコのGDP推移です。

[世] 名目GDPの推移(メキシコ)

 メキシコのGDP・輸出額・輸入額推移です(データ出典JETRO)

メキシコ GDP

 順調に伸びています。

「輸出の伸びを通じて、経済を成長させ、開かれた経済への効率的な外国投資の流入が工業の発展と投資率を高め、生産性を上昇させ…雇用機会と賃金の上昇をもたらし、国民の福祉を改善させ、貧困を削減させ、不法移民を減少させ、また外資の優れた技術が破壊された環境の改善と保全をもたらすp273」

 という目標が達成されていないとは、言えません

 もしも、福祉や貧困問題が改善されていないとしたら、経済成長によりパイは大きくなった(=経済的には良くなった)のですから、あとはその配分=政治問題でしょう

補足 H22.6.9

 市場メカニズムを使うのは、効率が良いからです。政府がある意図を持ってお金を使うより、市場メカニズムを利用した方が、資本をより効率的に使用できます。「官僚たちの夏」という、旧通産省のドラマ・小説がありましたが、あれは「失敗」を扱ったドラマ・小説です。「国民車」構想は失敗に終わりました。
 ただし、市場メカニズムは、必ず敗者を産み出します。(少なくとも半分の業者による)成功が見込まれる一方、必ず「倒産・失業」が生じてしまいます。
 「市場メカニズム礼賛」「市場メカニズム万能」ではないのです。
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