<マルクスで教える経済 その1>
シノドス ジャーナル( SYNODOS JOURNAL )
http://synodos.livedoor.biz/
に、『人口減少デフレ論の問題点 菅原晃』が連載中(2010.10.8~)です。
合わせてご覧ください。
<マルクスで教える経済 その1>
久保田貢 編、『ジュニアのための貧困問題入門』平和文化社2010.10.8

山本政俊著 第3話『生きること、働くことと憲法』P73
「…なぜ景気変動が起こるのか説明しよう。
工場や機械、土地や建物など、ものを生産するための生産手段をもっている資本家。生産手段をもたないために、自らの労働を労働力として売ることで生活する労働者。この二つの階級が対立しているのが、資本主義社会の特徴です。
資本家は、『労働力』という商品を働かせることで、新しい価値を生み出します。労働者をある時間働かせれば、賃金分の価値を生み出すけれど、そこで仕事を終わらせる資本家はいません。必ず、賃金分に相当する時間をこえて、労働を続けさせる。この時間帯に生み出された価値は、まるまる資本家のものとなります。これを『剰余価値』といいます。マルクスという人が、『資本論』という本で明らかにしたんだ。
資本主義経済は、この剰余価値を生産するために、生産のための生産をするわけです。そうすると、どうなるだろう?」
「どんどんものを生産して、作りすぎる」
「そう、生産が過剰になるね。そうしたら、いつか生産と消費のバランスが崩れて、売れなくなるね。これが経済学でいうところの恐慌、不景気です。そして、資本家はよりたくさんの剰余価値=利潤を得ようとすれば、労働者をどのように働かせるだろう?」
「長時間、働かせる」
「そう、働いているのに賃金を払わないサービス残業がその最たるものだね。ほかには?」「くたくたになるまでこき使う」
「そう、労働の密度をあげるんだね。職業病になる人がいても、過労死する人がいても、それをはじめから何とかしようと資本家は、ほとんどいません。
そして、資本家は、いつでもだれでもクビにできる失業、半失業の労働者の大群をつくります。これを産業予備軍といいます。このことによって資本家は『あ、そう。この労働条件がいやなら、もっと安い賃金で働く人はいくらでもいるからね』と労働者を脅すことができるのです。低賃金は剰余価値を増やし、利潤をあげるからね」
この、最新の本(2010.10.8発行)は、「マルクス経済学」をもとに、中・高校生に経済を解説しています。
別にそれでも構わないのですが、その内容が、現代の経済実態とはかけ離れているので、解説します。
<成り立つ?>
そもそも、上記の文が矛盾しています。
「そう、生産が過剰になるね。そうしたら、いつか生産と消費のバランスが崩れて、売れなくなるね。これが経済学でいうところの恐慌、不景気です。」
そのとおりです。
金子貞吉(元中央大教授)『ストック経済―日本経済の成熟化-』
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~kaneko/Letzt/zemikai.pdf
…人々が買う前に,企業はつくるのです。…売れると想定してつくっており,このように企業の生産量は実際の需要ではなくて,予想した需要を前提とするので,需給は一致しません。これが市場経済の宿命です。
そして,生産した後で,事後的に生産は需要にあうように調整されるのです。そこで過剰に生産されていると,売れ残りが出て,翌年にそれを持ちこむので,加速的に生産調整をせざるをえなくなります。この現象が不況です。
このように市場経済はいつも不安定であり,無政府性ともいわれています。
過剰生産→在庫調整→不況というサイクルになります。ですが、上記に出てくる「資本家」は、それでも生産をやめないようです。
「資本家はよりたくさんの剰余価値=利潤を得ようとすれば、労働者をどのように働かせるだろう?」
「長時間、働かせる」
「そう、働いているのに賃金を払わないサービス残業がその最たるものだね。ほかには?」「くたくたになるまでこき使う」
「そう、労働の密度をあげるんだね。職業病になる人がいても、過労死する人がいても、それをはじめから何とかしようと資本家は、ほとんどいません。」
生産量を上げるためにこき使う→これが剰余価値・利潤だというのですが・・・「過剰生産がなければ、剰余価値=利潤が上がらない」「過剰生産すると不況になる・・・」
これでは、「不況になるために利潤を儲ける」という、現実には存在しえないことになってしまいます。
「資本家は、 『労働力』という商品を働かせることで、新しい価値を生み出します。労働者をある時間働かせれば、賃金分の価値を生み出すけれど、そこで仕事を終わらせる資本家はいません。必ず、賃金分に相当する時間をこえて、労働を続けさせる。この時間帯に生み出された価値は、まるまる資本家のものとなります。これを『剰余価値』といいます。マルクスという人が、『資本論』という本で明らかにしたんだ。資本主義経済は、この剰余価値を生産するために、生産のための生産をする」
これを図示してみます。

これは、GDPの理論そのものです。GDP(総生産)=GDI(所得総額)=付加価値(新たに作った価値)だからです。

生産されたモノ・サービスは 所得以上には消費されません。モノ・サービスが余ったら、資本家の所得にもなりえません。
ところが、さらに、資本家は「剰余価値=利潤」を上乗せしようとするそうです。ただ働き(サービス残業)のことのようです。
必ず、賃金分に相当する時間をこえて、労働を続けさせる。この時間帯に生み出された価値は、まるまる資本家のものとなります。これを『剰余価値』といいます。<この本の説明>

「資本主義経済は、この剰余価値を生産するために、生産のための生産をするわけです。そうすると、どうなるだろう?」
「どんどんものを生産して、作りすぎる」
「そう、生産が過剰になるね。そうしたら、いつか生産と消費のバランスが崩れて、売れなくなるね。これが経済学でいうところの恐慌、不景気です。」
「この剰余価値を生産するために、生産のための生産をする」のがここでいう「資本主義経済」のようですから、必ず需給バランスが崩れます。

「モノやサービス」を作れば作るだけ(そうしないと、剰余価値=利潤が生まれない)、不況に向かって突き進むということになります。これが「資本主義」だそうです。
この本を解説すると、このような解釈になります。
http://synodos.livedoor.biz/
に、『人口減少デフレ論の問題点 菅原晃』が連載中(2010.10.8~)です。
合わせてご覧ください。
<マルクスで教える経済 その1>
久保田貢 編、『ジュニアのための貧困問題入門』平和文化社2010.10.8

山本政俊著 第3話『生きること、働くことと憲法』P73
「…なぜ景気変動が起こるのか説明しよう。
工場や機械、土地や建物など、ものを生産するための生産手段をもっている資本家。生産手段をもたないために、自らの労働を労働力として売ることで生活する労働者。この二つの階級が対立しているのが、資本主義社会の特徴です。
資本家は、『労働力』という商品を働かせることで、新しい価値を生み出します。労働者をある時間働かせれば、賃金分の価値を生み出すけれど、そこで仕事を終わらせる資本家はいません。必ず、賃金分に相当する時間をこえて、労働を続けさせる。この時間帯に生み出された価値は、まるまる資本家のものとなります。これを『剰余価値』といいます。マルクスという人が、『資本論』という本で明らかにしたんだ。
資本主義経済は、この剰余価値を生産するために、生産のための生産をするわけです。そうすると、どうなるだろう?」
「どんどんものを生産して、作りすぎる」
「そう、生産が過剰になるね。そうしたら、いつか生産と消費のバランスが崩れて、売れなくなるね。これが経済学でいうところの恐慌、不景気です。そして、資本家はよりたくさんの剰余価値=利潤を得ようとすれば、労働者をどのように働かせるだろう?」
「長時間、働かせる」
「そう、働いているのに賃金を払わないサービス残業がその最たるものだね。ほかには?」「くたくたになるまでこき使う」
「そう、労働の密度をあげるんだね。職業病になる人がいても、過労死する人がいても、それをはじめから何とかしようと資本家は、ほとんどいません。
そして、資本家は、いつでもだれでもクビにできる失業、半失業の労働者の大群をつくります。これを産業予備軍といいます。このことによって資本家は『あ、そう。この労働条件がいやなら、もっと安い賃金で働く人はいくらでもいるからね』と労働者を脅すことができるのです。低賃金は剰余価値を増やし、利潤をあげるからね」
この、最新の本(2010.10.8発行)は、「マルクス経済学」をもとに、中・高校生に経済を解説しています。
別にそれでも構わないのですが、その内容が、現代の経済実態とはかけ離れているので、解説します。
<成り立つ?>
そもそも、上記の文が矛盾しています。
「そう、生産が過剰になるね。そうしたら、いつか生産と消費のバランスが崩れて、売れなくなるね。これが経済学でいうところの恐慌、不景気です。」
そのとおりです。
金子貞吉(元中央大教授)『ストック経済―日本経済の成熟化-』
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~kaneko/Letzt/zemikai.pdf
…人々が買う前に,企業はつくるのです。…売れると想定してつくっており,このように企業の生産量は実際の需要ではなくて,予想した需要を前提とするので,需給は一致しません。これが市場経済の宿命です。
そして,生産した後で,事後的に生産は需要にあうように調整されるのです。そこで過剰に生産されていると,売れ残りが出て,翌年にそれを持ちこむので,加速的に生産調整をせざるをえなくなります。この現象が不況です。
このように市場経済はいつも不安定であり,無政府性ともいわれています。
過剰生産→在庫調整→不況というサイクルになります。ですが、上記に出てくる「資本家」は、それでも生産をやめないようです。
「資本家はよりたくさんの剰余価値=利潤を得ようとすれば、労働者をどのように働かせるだろう?」
「長時間、働かせる」
「そう、働いているのに賃金を払わないサービス残業がその最たるものだね。ほかには?」「くたくたになるまでこき使う」
「そう、労働の密度をあげるんだね。職業病になる人がいても、過労死する人がいても、それをはじめから何とかしようと資本家は、ほとんどいません。」
生産量を上げるためにこき使う→これが剰余価値・利潤だというのですが・・・「過剰生産がなければ、剰余価値=利潤が上がらない」「過剰生産すると不況になる・・・」
これでは、「不況になるために利潤を儲ける」という、現実には存在しえないことになってしまいます。
「資本家は、 『労働力』という商品を働かせることで、新しい価値を生み出します。労働者をある時間働かせれば、賃金分の価値を生み出すけれど、そこで仕事を終わらせる資本家はいません。必ず、賃金分に相当する時間をこえて、労働を続けさせる。この時間帯に生み出された価値は、まるまる資本家のものとなります。これを『剰余価値』といいます。マルクスという人が、『資本論』という本で明らかにしたんだ。資本主義経済は、この剰余価値を生産するために、生産のための生産をする」
これを図示してみます。

これは、GDPの理論そのものです。GDP(総生産)=GDI(所得総額)=付加価値(新たに作った価値)だからです。

生産されたモノ・サービスは 所得以上には消費されません。モノ・サービスが余ったら、資本家の所得にもなりえません。
ところが、さらに、資本家は「剰余価値=利潤」を上乗せしようとするそうです。ただ働き(サービス残業)のことのようです。
必ず、賃金分に相当する時間をこえて、労働を続けさせる。この時間帯に生み出された価値は、まるまる資本家のものとなります。これを『剰余価値』といいます。<この本の説明>

「資本主義経済は、この剰余価値を生産するために、生産のための生産をするわけです。そうすると、どうなるだろう?」
「どんどんものを生産して、作りすぎる」
「そう、生産が過剰になるね。そうしたら、いつか生産と消費のバランスが崩れて、売れなくなるね。これが経済学でいうところの恐慌、不景気です。」
「この剰余価値を生産するために、生産のための生産をする」のがここでいう「資本主義経済」のようですから、必ず需給バランスが崩れます。

「モノやサービス」を作れば作るだけ(そうしないと、剰余価値=利潤が生まれない)、不況に向かって突き進むということになります。これが「資本主義」だそうです。
この本を解説すると、このような解釈になります。
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theme : 間違いだらけの経済教育
genre : 学校・教育