『大学-職業 接続見直しを』
高祖敏明 上智学院理事長 『大学-職業 接続見直しを』日経H22.10.11
日本学術会議は…大学卒業後3年間は新卒扱いとすることなどを盛り込んだ報告書をまとめた。
…就活の早期化と長期化が、大学教育空洞化の元凶と批判されている。
…新卒一括採用という、日本独自の…採用慣行は、既卒者を採用対象から厳しく排除する面も併せ持つ。…一つの叫びが、「卒業後3年は新卒扱いを!」の大合唱であろう。
『商社の採用活動、4年の夏以降に』日経H22.10.11
三井物産や三菱商事など大手商社が大学新卒者の採用活動見直しに動き始めた。…4年生の4月ごろ始めている…採用活動を2013年春入社の新卒から8月ごろに遅らせる方針だ。
…現在、大手企業は3年生の10月ごろから会社説明会などの採用広報活動を始める。…4年生の…6月ごろまでに内々定を出すのが一般的だ。
…商社の見直し提案に対し、大学などの教育関係者は歓迎している。
商社が見直しを決めたのは、「国際感覚を身につけ」てほしいのに、「就職活動に専念するため海外留学を思いとどまる学生が増えている」ことも原因の一つだそうです。
また、留学の減少は、経済的理由というよりも、日本の学生・大学の内向き志向にあるようです。
益田隆司 東大名誉教授『海外に出ない大学院生 出身校の囲い込み改めよ』日経H22.10.11
…ここ10年ほど、日本から海外留学する若者の減少が続いている。
…米国研究大学の大学院…科学技術分野では博士号取得者の50%以上が留学生だ。中国人が毎年4000人以上、韓国人とインド人が1200前後…。…日本人は200人程度に過ぎず…危惧すべき状況…事態は改善されない。
…船井情報科学振興財団は…博士号取得を目指して留学する学生に対し、授業料、生活費を支援…。…1人当たり2000万円近く…毎年若干名の募集に対して応募者が満足に集まらない。…留学希望者が少ないのは、経済的理由が主ではないのである。
では、世界で比較すると、大学生の就職状況は、どのような状態なのでしょうか。
大前研一『ジャングルで勝ち抜く戦闘力をつけろ』週刊ポスト2010年10月15日号
…日本は就職氷河期といわれているが、今春の大学卒業者の就職率は91.3%注)。これは世界最高水準である。中国は70%、韓国は50%、イギリスは30%でしかない。
注)日経H22.10.11では、60.8%となっています。
政府:新卒雇用特命チーム『新卒者雇用に関する緊急対策について』では「就職内定率91.8%」となっています。
政府は、新卒雇用特命チーム『新卒者雇用に関する緊急対策について』を発表し、雇用対策を行うことを決定しました。
背景には、雇用のミスマッチがあると指摘しています。
従業員規模別の求人倍率を見ると、1000人以上企業が0.57倍であるのに対し、1000人未満企業は2.16倍、300人未満の中小企業では4.41倍となるなど、就職市場にはミスマッチが生じている だから、支援策を講じるというものです。
<新卒枠を卒業後3年に拡大>
(1)「青少年雇用機会確保指針」を改定し、卒業後3年間は新卒として応募できるようにし、既卒者の新卒枠での採用が促進されるよう経済団体等に対し要請
(2)卒業後3年以内の既卒者も対象とする新卒求人を提出し既卒者を正規雇用する事業主に対し、奨励金の支給
この(2)ですが、3年以内既卒者を採用した企業に奨励金「100万円」、同じく、彼らを試験的雇用⇒正社員にした場合、試験期間中は月10万円(最高3カ月)、正社員にするとき50万円を支給するというものです。
大前氏は、この対策について、 「国ぐるみの嘘であり、無駄遣いの域を超えている」と非難しています。
「まともに勉強もせず、コンパに明け暮れている日本の大学生…就職できなかった残りの1割弱は20社ぐらい受けているはずであり、それだけ受けて落ちるような人間の就職支援のためになぜ税金を使う…。優秀でない人間を無理やり中小企業に雇わせるのは犯罪的な行為であり、そのために税金を使うのは国民に対する冒涜だ」
<対策>
新規学卒者が就職できないのも、失業率が高止まりなのも、「不況」だからです。景気回復を達成すれば、労働問題の大部分は解決します。
景気回復政策の指標になるのが、フィリップス曲線です。
<フィリップス曲線>
下のグラフはフィリップス曲線といい、「インフレと失業率はトレード・オフ(どちらかを良くすれば、どちらかが悪くなる)」という関係を示します。
グラフ・参考・引用文献 中谷巌『入門・マクロ経済学 第5版』日本評論社 p231~
失業率を下げようとすれば、インフレ率が上がるし、インフレ率を下げようとすれば失業率が上がってしまうというわけです。このような「失業率と名目賃金の変化率の間のトレード・オフ」関係を発見者の名前にちなんで、フィリップス曲線と呼んでいます。
実際に、日本でのフィリップス曲線は次のようになっています。P247

グラフ・参考文献 岩田規久男『日本銀行は信用できるか』講談社現代新書2009p88-89

下のグラフはフィリップス曲線といいます。
インフレ時は、失業率が低いのです。
<デフレの問題点>
失業率が高い。
日本の失業率は高止まり、物価はデフレです。
岩田規久男『日本銀行は信用できるか』講談社現代新書2009
日経H22.8.24

実際に、マクロ経済政策の運営において、現在は「金融政策ルール、IS曲線、フィリップス曲線 (池尾和人 慶大教授 『現代の金融入門 新版』ちくま新書 2010 p109)」の3つの分析が標準となっています。
金融政策ルールとは、適正なインフレ率を上(下)回れば政策金利を上(下)げ、総需要>(<)総供給なら政策金利を上(下)げるというものです。
日本学術会議は…大学卒業後3年間は新卒扱いとすることなどを盛り込んだ報告書をまとめた。
…就活の早期化と長期化が、大学教育空洞化の元凶と批判されている。
…新卒一括採用という、日本独自の…採用慣行は、既卒者を採用対象から厳しく排除する面も併せ持つ。…一つの叫びが、「卒業後3年は新卒扱いを!」の大合唱であろう。
『商社の採用活動、4年の夏以降に』日経H22.10.11
三井物産や三菱商事など大手商社が大学新卒者の採用活動見直しに動き始めた。…4年生の4月ごろ始めている…採用活動を2013年春入社の新卒から8月ごろに遅らせる方針だ。
…現在、大手企業は3年生の10月ごろから会社説明会などの採用広報活動を始める。…4年生の…6月ごろまでに内々定を出すのが一般的だ。
…商社の見直し提案に対し、大学などの教育関係者は歓迎している。
商社が見直しを決めたのは、「国際感覚を身につけ」てほしいのに、「就職活動に専念するため海外留学を思いとどまる学生が増えている」ことも原因の一つだそうです。
また、留学の減少は、経済的理由というよりも、日本の学生・大学の内向き志向にあるようです。
益田隆司 東大名誉教授『海外に出ない大学院生 出身校の囲い込み改めよ』日経H22.10.11
…ここ10年ほど、日本から海外留学する若者の減少が続いている。
…米国研究大学の大学院…科学技術分野では博士号取得者の50%以上が留学生だ。中国人が毎年4000人以上、韓国人とインド人が1200前後…。…日本人は200人程度に過ぎず…危惧すべき状況…事態は改善されない。
…船井情報科学振興財団は…博士号取得を目指して留学する学生に対し、授業料、生活費を支援…。…1人当たり2000万円近く…毎年若干名の募集に対して応募者が満足に集まらない。…留学希望者が少ないのは、経済的理由が主ではないのである。
では、世界で比較すると、大学生の就職状況は、どのような状態なのでしょうか。
大前研一『ジャングルで勝ち抜く戦闘力をつけろ』週刊ポスト2010年10月15日号
…日本は就職氷河期といわれているが、今春の大学卒業者の就職率は91.3%注)。これは世界最高水準である。中国は70%、韓国は50%、イギリスは30%でしかない。
注)日経H22.10.11では、60.8%となっています。
政府:新卒雇用特命チーム『新卒者雇用に関する緊急対策について』では「就職内定率91.8%」となっています。
政府は、新卒雇用特命チーム『新卒者雇用に関する緊急対策について』を発表し、雇用対策を行うことを決定しました。
背景には、雇用のミスマッチがあると指摘しています。
従業員規模別の求人倍率を見ると、1000人以上企業が0.57倍であるのに対し、1000人未満企業は2.16倍、300人未満の中小企業では4.41倍となるなど、就職市場にはミスマッチが生じている だから、支援策を講じるというものです。
<新卒枠を卒業後3年に拡大>
(1)「青少年雇用機会確保指針」を改定し、卒業後3年間は新卒として応募できるようにし、既卒者の新卒枠での採用が促進されるよう経済団体等に対し要請
(2)卒業後3年以内の既卒者も対象とする新卒求人を提出し既卒者を正規雇用する事業主に対し、奨励金の支給
この(2)ですが、3年以内既卒者を採用した企業に奨励金「100万円」、同じく、彼らを試験的雇用⇒正社員にした場合、試験期間中は月10万円(最高3カ月)、正社員にするとき50万円を支給するというものです。
大前氏は、この対策について、 「国ぐるみの嘘であり、無駄遣いの域を超えている」と非難しています。
「まともに勉強もせず、コンパに明け暮れている日本の大学生…就職できなかった残りの1割弱は20社ぐらい受けているはずであり、それだけ受けて落ちるような人間の就職支援のためになぜ税金を使う…。優秀でない人間を無理やり中小企業に雇わせるのは犯罪的な行為であり、そのために税金を使うのは国民に対する冒涜だ」
<対策>
新規学卒者が就職できないのも、失業率が高止まりなのも、「不況」だからです。景気回復を達成すれば、労働問題の大部分は解決します。
景気回復政策の指標になるのが、フィリップス曲線です。
<フィリップス曲線>
下のグラフはフィリップス曲線といい、「インフレと失業率はトレード・オフ(どちらかを良くすれば、どちらかが悪くなる)」という関係を示します。
グラフ・参考・引用文献 中谷巌『入門・マクロ経済学 第5版』日本評論社 p231~
失業率を下げようとすれば、インフレ率が上がるし、インフレ率を下げようとすれば失業率が上がってしまうというわけです。このような「失業率と名目賃金の変化率の間のトレード・オフ」関係を発見者の名前にちなんで、フィリップス曲線と呼んでいます。
実際に、日本でのフィリップス曲線は次のようになっています。P247

グラフ・参考文献 岩田規久男『日本銀行は信用できるか』講談社現代新書2009p88-89

下のグラフはフィリップス曲線といいます。
インフレ時は、失業率が低いのです。
<デフレの問題点>
失業率が高い。
日本の失業率は高止まり、物価はデフレです。
岩田規久男『日本銀行は信用できるか』講談社現代新書2009

日経H22.8.24

実際に、マクロ経済政策の運営において、現在は「金融政策ルール、IS曲線、フィリップス曲線 (池尾和人 慶大教授 『現代の金融入門 新版』ちくま新書 2010 p109)」の3つの分析が標準となっています。
金融政策ルールとは、適正なインフレ率を上(下)回れば政策金利を上(下)げ、総需要>(<)総供給なら政策金利を上(下)げるというものです。
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theme : マクロ経済学 ミクロ経済学
genre : 政治・経済