『高成長 沸き立つドーハ』読売新聞H22.7.24

<GDP増とは>

 カタール(人口169万人・面積は秋田県ほど)の経済の様子です。


『高成長 沸き立つドーハ』読売新聞H22.7.24
カタール ドーハ.jpg

…世界中が不況にあえいだ2009年も9%の経済成長率を維持。10年は18%に達するとの予測もある。
…経済成長に伴い、人口は過去10年で2.7倍増に増えた。このうち8割は外国人労働者だ。

…国際通貨基金(IMF)の09年推計によると、1人当たり国内総生産(GDP)は約6万8000ドル(約600万円)。日本の1.7倍で、世界1,2位を争う所得水準の高さは…一目瞭然だ。郊外には宮殿と見間違う豪邸が並び、日本や欧州製の高級車が行きかう。

 電気や水道は無料。所得税はなく、医療費も原則無料だ。高校卒業後、警備員として働くフェイサル・ムーサさん(23)は、「生活に全く不安はない。何でも手に入る」と笑う


 GDPは、われわれの総所得(GDI)のことです。簡単にいえば、一人ひとりの給料の総額です。これが伸びるということ(経済成長)は、われわれ自身が豊かになることですし、これが伸びないということは、誰かの給料が増えれば、誰かの給料が減るという、「ゼロ・サム・ゲーム」をずっと続けることになります。

 日本の成長率

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4400.html
日本 GDP 成長率 .jpg

 日本は、この「失われた20年」、毎年0.8%平均しか成長していません。

 1991年に、給料「200万」でスタートした新入社員が、19年たっても「229万円」にしか上がっていない計算です。

 データ文献 日経H22.6.6『日本再生なるか』

 この低成長の結果、1人当たりGDPは3位(00年)→23位(08年)になってしまいました。

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4542.html

1人当たりGDPランキング.jpg

 ドイツにも、イギリスにも、イタリアにも、オーストラリアにも抜かされました。「財政破綻か?」と騒がれた、ギリシャレベルなのです。

世界のGDPに占めるシェアは、14.3%(90年)から、8.9%に低下しました。

 09年→15年の間に、日本の市場が1兆ドル拡大したのに対し、先進国は10倍の10兆ドル、新興国に至っては14兆ドルも拡大しました。

 小学校高学年から中学生時代に、自分も身長が伸びてはいるものの、周りがぐんぐん伸びていて、いつの間にか、背の順番では、クラスの前の方になっているという感じでしょうか。

 なにも、「高度成長よ再び!」と言っているわけではありません。74年→90年の4.2%でなくとも良いのです。先進国で目標としている2%でも、5年後には給料が10%増えるのです。「200万円」の給与が、10年目には、「244万円」になる計算です。

<分析&処方箋>

参考・引用文献 池尾和人 『経済教室』日経H22.8.10

…日本経済は1990年代から20年間にわたって停滞…原因は日本経済にかかわる内的、外的な構造変化にいまだ十分な対応ができていないことにあると考えられる。

(1)内的変化

①日本経済が、開発途上段階を脱却し、先進国化したこと。

 「欧米に追い付き追い越せ」は、80年代には終わりました。

…自国の技術水準が世界の最先端のそれから遅れている段階では、海外の進んだ技術を取り入れ…生産性の向上を図っていくことができる(後発性利益)。…世界の最先端水準に追いついてしまったら、自ら最先端を押し広げていくしかなくなる。

 確かに、高度成長期は、「欧米に追い付き追い越せ」で、十分成長できました。

『大機小機』日経H22.4.7 数字は筆者挿入

 日本経済は短期的には不況の底を脱したようだが、長期的な成長率はどのようになるのだろうか。
 潜在成長力とは土地、①労働力、②資本の増加、③生産要素の生産性の上昇率などを加えたもの…。…61~71年の高い成長率の要因は労働1.78%、資本2.57%、生産性の上昇率5.3%…。…最も問題なのは③生産性の増大である。


拙著『高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門』より

 技術力(生産性)です。やはり,日本の高度経済成長時代は,この技術力を,欧米,特にアメリカから導入していました。「欧米に追いつけ追い越せ」という時代だったのです。

図62 東学 資料集『資料政・経2008』 2008年 p313
技術輸入.jpg

 この時代は,欧米から,技術を導入すれば,自動的に生産性は上がっていたのです。1960年から1970年までの,GDP成長の要因のうち,45%を占めるのが,技術進歩だったのです 。もちろん,これが成長の一番の要因です。
「欧米に追いつけ追い越せ」の時代はとっくに過ぎました。「欧米の技術を導入すれば,経済成長できた」時代ではありません。すでに,世界一の水準にある日本は,今後,独自に,新たな技術や,ビジネスのやり方を開発していかなければなりません。資本主義発展の原動力は「イノベーション=革新」です。


②処方箋

 「欧米に追い付き追い越せ」の時代は、初等中等教育レベルが重要でした。ですが、今後は高等教育が必要です。

池尾和人 『経済教室』日経H22.8.10
…わが国の戦後の経済成長は、後発性利益に負うところが大きく…こうした段階では、公教育は初等中等レベルに重点を置き…というやり方は効率的だった。


 欧米の技術を取り入れればよいのですから、単純労働者でも、十分に対応できました。

先進国化した段階では、独自イノベーション(革新)の能力を強化するために、高等教育の拡充へ重点をシフトさせていくことが求められる。…修士号や博士号の取得者数の人口比…日本は…東アジア諸国の中でも相対的に低学歴国にとどまっている。

 冒頭記事、カタールの取り組みです。

…ハマド首長は…カーネギーメロン大など米国の有名大学6校の分校を誘致し、高等教育の充実に力を注いでいる。…強い経済基盤を構築するには、人材育成が欠かせないとの考えからだ。

(2)外的変化

 ①共産主義が崩壊し、世界が単一市場になったこと(グローバル化)

 以前は、日本の近隣には、産業化した国はほとんどありませんでした。しかし、いまや「韓国」の貿易最大相手国は、冷戦時代の大敵「中国」です。「日本」の貿易相手も1位は「中国」です。
 その中国は今年、日本のGDPを超え、世界第二位の経済大国になりました(既発表ずみ)。

池尾和人 『経済教室』日経H22.8.10

…わが国は主要な産業をすべて自前で持つというフルセット型の産業構造を構築してきた。…しかし近隣に産業化した国が存在するようになる…。…中国は…「世界の工場」と呼ばれ…これだけの規模の産業化した経済が存在するとき…フルセット型の産業構造は合理的とはいえなくなる。…当然に一部の産業分野は近隣諸国に譲って、国際分業の利益を追求することになる。


 ですが、その「譲った方が良い分野」の調整も、すでに雇用者がいるので、できるだけ遅らせるような政策が、90年代に採られました。その結果、「国際分業の利益を引き出すような産業構造への転換は遅れたままになった」のです。

 2000年代後半、アメリカの消費過大に助けられ、輸出が伸びたものですから、本来やっておくはずだった「高度サービス産業その他の育成といった課題の取り組みも鈍ることになった」のです。「日本の産業構造は、いまなお中国の台頭に代表される新たな現実に十全に対応したものとなっていない」のです。

②処方箋

 これについては、池田教授は述べていません。ですが、その一つに、「高齢者市場」の開拓(まあ、黙っていても増加するのですが)があります。

<高齢者市場>

 実は、日本の消費市場に占める高齢者(世帯主が60歳以上で2人以上世帯)の割合は、09年ですでに4割に達しています。高齢者は消費の主役なのです。

平成22年度 『経済財政白書』の分析です。高齢者が、消費を押し上げていることが示されています。

 高齢者が押上げに寄与する個人消費

高齢者 消費.jpg


 第一に、60歳以上の高齢者世帯による個人消費の押上げ寄与は非常に大きい。すなわち、2003年以降、おおむね一貫して60歳以上世帯が個人消費にプラスの寄与をしており、かつ、個人消費に対するプラス寄与のほとんどはこの世代による。例外はリーマンショック後の急激な消費の落ち込みのときだが、そのときもマイナス寄与は小さかった。2009年後半以降の個人消費の持ち直しも高齢者がけん引している。


 消費の主役は、高齢者です。

・・・第二に、世帯数の推移を見ると、予想されるように、60歳以上の世帯数のみが一貫して増加しており、他の年齢層の世帯は減少している。すなわち、60歳以上の世帯数が持続的に増加していることが、その分だけ同年齢層の消費を押し上げ続け、これが個人消費の変動における寄与の大きさにつながったといえるだろう。

 第三に、ここでの年齢別の3区分によれば、35~59歳の世帯の一世帯当たり消費が一か月約35万円と最も高いが、60歳以上の世帯がこれに次ぎ、34歳以下の世帯が最も低い。したがって、若年世帯が減少し、高齢者世帯が増加するだけで、平均的な世帯当たり消費はむしろ増加する。


 この高齢者市場は、今後も拡大の一途です。

 参考・引用文献 長沢光太郎『豊かな加齢支える産業 世界に先駆け育成を』日経H22.8.6 グラフも

2010年現在、日本の75歳以上人口は1400万人である。これが20年後の2030年には2300万人へと900万人の増加が予想されている。


 三菱総合研究所の調べによると、高齢者がもっとも困っている健康上の問題は、「腰・肩・ひざの痛み」「視力」で、これらにはそれぞれ18万円、13万円支出しても良いと考えています。潜在需要は8兆円となるそうです。
 そうすると、健康支援サービスや、機能補完器具、ロボットなどの商品が、今後確実に売れてゆくことになります。

 さらに、部屋や浴室の段差、階段などの高低差の解消に5.8兆円の潜在需要があります。また、高齢者の「スポーツ観戦・観劇・美術鑑賞」などの余暇活動も、年間7.2兆円消費され、プラス潜在需要は4兆円とされています。他にも衣料品2.4兆円など、高齢者市場は、年率3%で成長し、2020年には100兆円を超えることが予想されるのです。

 これらの市場は、今まで「存在しなかった市場」です。「新商品・新サービス」が次々とでてくることが予想されます。

 なぜ、これらの市場を拡大することが有望かというと、これが、日本の武器になるからです。日本の高齢者の絶対数は、確実に増加するのですが、実は、中国やインドの高齢者絶対数増加は、日本の比ではありません。まさに、「爆発的に増加」するのです。

アジア65歳以上人口.jpg

 そうすると、日本で先行開発された「健康支援サービスや、機能補完器具、ロボットなどの商品」は、アジア市場を席巻できることになります。
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