林俊彦 同志社大 『超国籍化で日本経済強く』H22.8.30

林俊彦 同志社大 『超国籍化で日本経済強く』H22.8.30

…日本企業は製造業を中心に90年ごろから海外進出を進めてきた。
…製造業全体で海外現地生産を行う企業の割合は、90年度に40.3%だったものが、09年度には67.5%に上昇…。
…海外現地生産比率は、90年度の4.6%が09年度には17.9%になった。


 ここに「産業の空洞化・雇用の流出」をまねいているとの批判があります。ですが、そうではなさそうです。

…第一に、すでに直接投資 (筆者注:海外に工場を建てる、海外企業へのM&A etc)からの収益…受取額のGDP比は…08年には4%に上昇している。…直接投資からの収益は本社の経常収益に反映され、株主配当や株価の上昇として株主に還元され、さらに法人税として政府の税収に貢献…。

直接投資収益が本社の経常利益に占める割合は、09年度で資本金10億円以上の大企業の…24%に達する。…企業部門全体の経常利益をとっても12%となっている。すなわち、日本企業の経常収益のうち1~2割は、海外への直接投資からの収益によってもたらされている。


 GDPは国内総生産(Gross Domestic Product)のことです。ある一定期間に,国内で生産されたすべてのモノ・サービスの付加価値の総額です。
 GDPと,GNPの関係は,次のように示されます。
GDP と GNI .jpg

 純所得とは,「海外から送金される所得-海外へ送金される所得」のことです。GNPは所得の総計なので,現在では,GNI=国民総所得(Gross National Income)という言い方をします。もちろん,GNP=GNIです。
 日本の場合,純所得は,黒字になっています。つまり,GNI(GNP)>GDPとなっています。
GDP GNI 数値.jpg

 日本の所得収支は1年間に15.8兆円の黒字(’08年末)です。この「所得収支」は,近年,「貿易黒字」額を上回るようになりました。「日本が輸出中心の『貿易立国』から,『投資立国』に移りつつある」というのは,このことを示しています。

 その中味ですが,外国債券の利子収入が7割,直接投資の収益が2割,外国株式の配当金が1割です。この「所得収支」を含めた,「純所得」は,順調に増え続けてきました。

…第二に「雇用の輸出」論とは逆に、海外進出企業は国内の雇用にも貢献している。
…経済産業省…によると、01年度に270万人程度だった現地法人雇用者数は、03年度に350万人となった。そして03年の国内の完全失業者数も350万人である。…これが「雇用が輸出された」との印象を生んだのかもしれない。

 …しかし…現地法人雇用者数の上昇とほぼ同じ割合で日本にある本社の売上高は上昇…。事業拡大に伴って…投資収益を確保しただけではなく、本社の売り上げの上昇も経験している。さらに、05年度から08年度にかけて、海外現法の雇用者数は436万人から452万人に増加したが、同じ期間に本社の常用雇用者数も394万人から422万人に増加している。海外現法の雇用拡大と、国内本社の雇用拡大は、ほぼ同じペースで起こっている。

…日本企業の対外進出は国内経済の空洞化をもたらすというより、国内経済の活性化に貢献していると評価できよう。

雇用の流出?.jpg

 このように、「生産設備のアジア移転によって、それらの製品の輸出は減り、国内産業は空洞化する=雇用が失われる」という考え方は、よく検証する必要があるのです。
スポンサーサイト

theme : 間違いだらけの経済教育
genre : 学校・教育

comment

Secret

カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

10月 | 2017年11月 | 12月
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -


FC2カウンター
カテゴリ
記事を検索する
「国債」 「公債」 「食糧」 「貿易黒字」などで検索して下さい
プロフィール

菅原晃

Author:菅原晃
中高の教科書でわかる経済学 マクロ篇 発売です!

中高の教科書でわかる経済学 マクロ篇

中高の教科書でわかる経済学 ミクロ篇 発売です!

中高の教科書でわかる経済学 ミクロ篇


図解 使えるミクロ経済学 発売です!

図解 使えるミクロ経済学

図解 使えるマクロ経済学 発売です!

図解 使えるマクロ経済学


高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学発売です!

高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学


経済教育学会 
経済ネットワーク 会員
行政書士資格


注 コメントする方へ

このブログでは、個人的なご意見・ご感想(価値観 正しい・間違い、好き嫌い、善悪)は、千差万別で正誤判定できないことから、基本的に扱っておりません。
意見は書き込まないで下さい。こちらの見解(意見)を尋ねる質問も、ご遠慮願います。
経済学は学問ですので、事実を扱い、規範(価値観)は扱っていません。事実に基づく見解をお願いいたします。
カテゴリ『コメントに、意見は書かないで下さい』を参照願います。
なお、はじめてコメントする方はコメント欄ではなく「質問欄」からお願いいたします。

ご質問・ご意見(非公開でやりとりできます)
内容・アドレス表示されず、直接やりとりできます。

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク
最新記事
最新コメント
検索フォーム
月別アーカイブ