飯島英胤 日韓経済協会名誉会長(東レ元会長)『論点 貿易立国の明日』読売H22.8.24
数字は筆者挿入。間違いは赤で示しました。
飯島英胤 日韓経済協会名誉会長(東レ元会長)『論点 貿易立国の明日』読売H22.8.24
日韓はともに…経済の拠って立つ基盤が酷似している。…①貿易への依存割合が高い。ともに②国内市場が小さいから、国民の経済生活を高め、国家の反映を図るには、「③貿易立国が重要な柱」である。
…韓国の輸出の6割近くは、日本から輸入した部品・素材を使って、韓国で加工して最終製品にして輸出している。
…一方で、これは韓国の対日貿易の赤字につながる。…④日本からの輸入を減らすには、韓国の技術で日本の部品・素材に代わるものを作れるのか…。もう一つ大事なことは、対日輸出の強化による均衡ある貿易拡大である。
<日本の国内市場は巨大>
②国内市場が小さいから
日本は、世界で第2位の国内市場を持ちます。圧倒的な、経済大国です。
データ出典「グラフで見る日本経済」
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/economy/economic_survey/

韓国のGDPとは、桁が違います。

上記の円グラフでは、日本は8%、韓国は1.5%になります。
<貿易依存割合の低い日本、高い韓国>
①貿易への依存割合が高い
日本のGDP、輸出・輸入額は次のようになっています。

一方、韓国のGDP、輸出・輸入額は次のようになっています。

一見して、韓国の方が、GDPに対して、輸出・輸入額の割合が高いことが分かります。
GDPに対する、輸出額割合です。

韓国のその割合は、2008年で、45%を超えています。韓国は国内市場が小さい(日本に比較すると、人口が少ない)ので、モノづくり企業は、初めから、海外市場に目を向けてきました。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100611-00000001-president-bus_allプレジデント6月11日(金) 10時 0分配信
『なぜサムスンは日本の全電機メーカーの利益を上回るのか』
サムスンの2009年12月期の売上高は、10兆9000億円、本業の儲けを示す営業利益は8736億円だ。
一方、ソニー、パナソニック、日立製作所や東芝、シャープなど、電機大手9社の営業利益の合計は、6400億円(10年3月期見通し)。日本の電機大手が束になっても、サムスン1社の営業利益に届かないのである。
一方、日本は、「巨大な内需の国」なので、「輸出立国」で成長する必要はありませんでした。
日本は、「外需で経済成長」したのではありません。大阪万博(1970)以後の、バブル経済直前までの、日本の内需と外需です。

「内需=GDP-貿易収支(外需)」です。これのどこが、「内需拡大が進まず」なのでしょうか?

このグラフの赤い部分が「外需」です。内需は安定しています。日本のGNP(当時の統計)にとって、外需の割合は、「きわめて低い」のです。
日本の高度成長も、同じです。「内需拡大」で達成したのです。貿易赤字の年でも「内需は拡大」しているのです。

日本は,高度成長期,GNPが,平均して年率10%成長する経済成長を達成しました。国際的にも極めて高い経済成長率です。
しかし,「貿易黒字」は,GNPに対して,ごくわずかの額にとどまっています。なおかつ,1960年と,1963年は,「貿易赤字」です。簡単に言うと,われわれの給与総額(GNP・GNI)は「貿易赤字」の年も拡大しています。高度成長は「輸出拡大による貿易黒字増大」によって,達成したのではないのです。
日本は,内需の拡大で経済成長しました。日本が経済成長を達成したのは,国内市場の拡大によるものです。
日本の貿易依存度は、世界で比較しても、圧倒的に低いのです。
林俊彦 同志社大 『超国籍化で日本経済強く』H22.8.30
…財貨について、輸出・輸入合計の国内総生産(GDP)比として世界銀行が計算する貿易依存度では、2008年の全世界の平均が52.5%であるのに対して、日本は31.5%である。これは世界190カ国中最下位から数えて7番目…。…輸出のGDP比で見ても、日本は米国とともに下位20カ国に入っている。
<日本は貿易立国ではない>
③貿易立国が重要な柱
この10年間で,日本の外需(貿易黒字)のGDPに占める割合が一番多かったのは,2004年の1.93%です。同年の外需(貿易黒字)額は9兆6,260億円,GDPは498兆3,284億円(内閣府データ)です。
リーマン・ショックに端を発した,世界的大不況に飲み込まれた2008年は,0.145%です(外需7,356億円,GDP 505兆1,119億円 同)。
内需99.855% 外需0.145%
これが,日本の外需です。その比は,体重60キログラムの人の,87グラム相当です。近年の最大値,2004年の1.93%を使用すると,60キログラムの人の,1,158グラムです。
世界で比較してみましょう。日本よりも,工業製品を輸出していないはずのイギリスでさえ,その輸出額/ GDP比率は,日本より上です。

<輸出増=輸入増>
④日本からの輸入を減らすには、韓国の技術で日本の部品・素材に代わるものを作れるのか…。もう一つ大事なことは、対日輸出の強化による均衡ある貿易拡大である。
輸出増=輸入増です。韓国が輸出を伸ばそうと思ったら、別に日本からの輸入を減らす必要はありませんし、対日本の貿易赤字を減らす必要はありません。日本からの輸入増=韓国の輸出増なのです。
リカード比較生産費説で示したとおりです。(このブログ カテゴリー リカード-14 輸出増=輸入増 参照)
輸出拡大には,生産量拡大が必要です。生産量拡大には,労働力が必要です。労働力はどこから持ってきますか?それは,比較劣位産業からしか持ってこられません。「比較優位な産業に特化しなければ,輸出は成り立たない」=「輸入をしなければならない」ということなのです。

輸出と,輸入がセットということは,輸出拡大と,輸入拡大もセットということです。
図50 浜島書店 資料集『最新図説 政経』2006 p309

棒グラフの左側は輸出,右側は輸入
日本の貿易額は,年を追って拡大してきました。その際,「輸出の拡大と輸入の拡大」はセットになっていることがわかりますか?「輸出を拡大する=特化する」ということは,「比較劣位産業を縮小しなければばらない=輸入を拡大する」ことなのです。日本は,繊維製品(当初),鉄鋼,造船,家庭電化製品,自動車に特化する一方,繊維製品・石油・鉄鉱石・石炭・農業産品など,劣位産業を縮小し,輸入を拡大してきたのです。
日経H22.2.25

輸出額が増えると、必ず輸入額も増えるのです。だから、日本の「輸出額-輸入額=貿易黒字=外需」も、極小なのです。
実教出版 資料集『新政治・経済資料』p2008 p259

世界の中で比較しても同様です。「一人あたり輸出額の大きい国は,輸入額も大きい,輸出額が小さければ,輸入額も小さい」という相関関係がみてとれると思います。

韓国も同じです。
飯島英胤 日韓経済協会名誉会長(東レ元会長)『論点 貿易立国の明日』読売H22.8.24
日韓はともに…経済の拠って立つ基盤が酷似している。…①貿易への依存割合が高い。ともに②国内市場が小さいから、国民の経済生活を高め、国家の反映を図るには、「③貿易立国が重要な柱」である。
…韓国の輸出の6割近くは、日本から輸入した部品・素材を使って、韓国で加工して最終製品にして輸出している。
…一方で、これは韓国の対日貿易の赤字につながる。…④日本からの輸入を減らすには、韓国の技術で日本の部品・素材に代わるものを作れるのか…。もう一つ大事なことは、対日輸出の強化による均衡ある貿易拡大である。
<日本の国内市場は巨大>
②国内市場が小さいから
日本は、世界で第2位の国内市場を持ちます。圧倒的な、経済大国です。
データ出典「グラフで見る日本経済」
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/economy/economic_survey/

韓国のGDPとは、桁が違います。

上記の円グラフでは、日本は8%、韓国は1.5%になります。
<貿易依存割合の低い日本、高い韓国>
①貿易への依存割合が高い
日本のGDP、輸出・輸入額は次のようになっています。

一方、韓国のGDP、輸出・輸入額は次のようになっています。

一見して、韓国の方が、GDPに対して、輸出・輸入額の割合が高いことが分かります。
GDPに対する、輸出額割合です。

韓国のその割合は、2008年で、45%を超えています。韓国は国内市場が小さい(日本に比較すると、人口が少ない)ので、モノづくり企業は、初めから、海外市場に目を向けてきました。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100611-00000001-president-bus_allプレジデント6月11日(金) 10時 0分配信
『なぜサムスンは日本の全電機メーカーの利益を上回るのか』
サムスンの2009年12月期の売上高は、10兆9000億円、本業の儲けを示す営業利益は8736億円だ。
一方、ソニー、パナソニック、日立製作所や東芝、シャープなど、電機大手9社の営業利益の合計は、6400億円(10年3月期見通し)。日本の電機大手が束になっても、サムスン1社の営業利益に届かないのである。
一方、日本は、「巨大な内需の国」なので、「輸出立国」で成長する必要はありませんでした。
日本は、「外需で経済成長」したのではありません。大阪万博(1970)以後の、バブル経済直前までの、日本の内需と外需です。

「内需=GDP-貿易収支(外需)」です。これのどこが、「内需拡大が進まず」なのでしょうか?

このグラフの赤い部分が「外需」です。内需は安定しています。日本のGNP(当時の統計)にとって、外需の割合は、「きわめて低い」のです。
日本の高度成長も、同じです。「内需拡大」で達成したのです。貿易赤字の年でも「内需は拡大」しているのです。

日本は,高度成長期,GNPが,平均して年率10%成長する経済成長を達成しました。国際的にも極めて高い経済成長率です。
しかし,「貿易黒字」は,GNPに対して,ごくわずかの額にとどまっています。なおかつ,1960年と,1963年は,「貿易赤字」です。簡単に言うと,われわれの給与総額(GNP・GNI)は「貿易赤字」の年も拡大しています。高度成長は「輸出拡大による貿易黒字増大」によって,達成したのではないのです。
日本は,内需の拡大で経済成長しました。日本が経済成長を達成したのは,国内市場の拡大によるものです。
日本の貿易依存度は、世界で比較しても、圧倒的に低いのです。
林俊彦 同志社大 『超国籍化で日本経済強く』H22.8.30
…財貨について、輸出・輸入合計の国内総生産(GDP)比として世界銀行が計算する貿易依存度では、2008年の全世界の平均が52.5%であるのに対して、日本は31.5%である。これは世界190カ国中最下位から数えて7番目…。…輸出のGDP比で見ても、日本は米国とともに下位20カ国に入っている。
<日本は貿易立国ではない>
③貿易立国が重要な柱
この10年間で,日本の外需(貿易黒字)のGDPに占める割合が一番多かったのは,2004年の1.93%です。同年の外需(貿易黒字)額は9兆6,260億円,GDPは498兆3,284億円(内閣府データ)です。
リーマン・ショックに端を発した,世界的大不況に飲み込まれた2008年は,0.145%です(外需7,356億円,GDP 505兆1,119億円 同)。
内需99.855% 外需0.145%
これが,日本の外需です。その比は,体重60キログラムの人の,87グラム相当です。近年の最大値,2004年の1.93%を使用すると,60キログラムの人の,1,158グラムです。
世界で比較してみましょう。日本よりも,工業製品を輸出していないはずのイギリスでさえ,その輸出額/ GDP比率は,日本より上です。

<輸出増=輸入増>
④日本からの輸入を減らすには、韓国の技術で日本の部品・素材に代わるものを作れるのか…。もう一つ大事なことは、対日輸出の強化による均衡ある貿易拡大である。
輸出増=輸入増です。韓国が輸出を伸ばそうと思ったら、別に日本からの輸入を減らす必要はありませんし、対日本の貿易赤字を減らす必要はありません。日本からの輸入増=韓国の輸出増なのです。
リカード比較生産費説で示したとおりです。(このブログ カテゴリー リカード-14 輸出増=輸入増 参照)
輸出拡大には,生産量拡大が必要です。生産量拡大には,労働力が必要です。労働力はどこから持ってきますか?それは,比較劣位産業からしか持ってこられません。「比較優位な産業に特化しなければ,輸出は成り立たない」=「輸入をしなければならない」ということなのです。

輸出と,輸入がセットということは,輸出拡大と,輸入拡大もセットということです。
図50 浜島書店 資料集『最新図説 政経』2006 p309

棒グラフの左側は輸出,右側は輸入
日本の貿易額は,年を追って拡大してきました。その際,「輸出の拡大と輸入の拡大」はセットになっていることがわかりますか?「輸出を拡大する=特化する」ということは,「比較劣位産業を縮小しなければばらない=輸入を拡大する」ことなのです。日本は,繊維製品(当初),鉄鋼,造船,家庭電化製品,自動車に特化する一方,繊維製品・石油・鉄鉱石・石炭・農業産品など,劣位産業を縮小し,輸入を拡大してきたのです。
日経H22.2.25

輸出額が増えると、必ず輸入額も増えるのです。だから、日本の「輸出額-輸入額=貿易黒字=外需」も、極小なのです。
実教出版 資料集『新政治・経済資料』p2008 p259

世界の中で比較しても同様です。「一人あたり輸出額の大きい国は,輸入額も大きい,輸出額が小さければ,輸入額も小さい」という相関関係がみてとれると思います。

韓国も同じです。
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