藻谷浩介 その16 『デフレの正体』角川oneテーマ21
<藻谷氏の言うデフレの理由>
藻谷浩介『デフレの正体』角川oneテーマ21
P268
「経済を動かしているのは…現役世代の数の増減だ」。この本の要旨を一言でいえばそうなりましょう。…「生産年齢人口の減少と高齢者の激増」という日本の現実…。
P99
所得はあっても消費しない高齢者が首都圏で激増P102
…高齢者だった。彼らは特に買いたいモノ、買わなければならないモノがない。
P135
「昔ほど車を買わない、そもそも以前ほどモノを買わない、最近余り本や雑誌を読まない、モノを送らなくなったし車にも乗っていない、近頃あまり肉や脂を食べないし酒量も減った、水も昔ほど使っていない」ということです。これは正に退職後の高齢者世帯の消費行動そのものではありませんか。
P142
…「生産年齢人口の波」の減少局面に突入した日本。定年退職者の増加→就業者数の減少によって内需は構造的な縮小を始めました。
藻谷さんは、「生産年齢人口減少&高齢者増加による需要不足」が、デフレの正体だとしています。下記のアメリカの様子を見ると、「生産年齢人口減少&高齢者増加による需要不足」がデフレの原因ではないようですね。同国は、そのような状態にはなっていないのです。
日経『大機小機:長期デフレの足音がする』H22.8.7
米国、欧州連合(EU)も長期デフレの様相を呈し始めているようだ。米国経済はバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言にあった「異例な不確実性」に象徴されている。
…未知の領域に踏み込んでいることを示唆している。膨大な需給ギャップ、悪化したままの家計のバランス・シート、物価の鎮静、失業率の高止まりなどを勘案すると、デフレという魔女が、バーナンキ議長を後ろから抱きしめようとしている、といえよう。
…こうした長期デフレの魔女を振り切る方策について、バーナンキ議長は「財政再建より需要喚起を優先すべきだ。必要とあれば追加的金融措置を講じる」と述べている。
…これに対し、日本の政策ポジションは不明確である。ばらまき的支出が継続し、積極果敢な需要喚起策は実行されそうもない。金融面では日本のデフレは貨幣的現象ではない」など奇妙な説明が横行している。
「ヴィクトリアン長期停滞(筆者注:19世紀の話)」の発生・終結では明らかにマネーが決定的な役割を果たしている。日本経済に対する期待を劇的に変え、長期デフレから脱却する方策として、非不胎化介入による円高阻止と追加的緩和が求められている。
川本裕子 早大教授 『米消費者物価指数(13日) 景気回復の鈍さ映す』日経H22.8.8
…住宅市況の落ち込みや高失業率、消費の伸び悩みなどを背景に、物価の上がりにくい「ディスインフレ」になっているもようだ。米国で停滞が長引けば、物価下落が継続するデフレに陥る危険性を指摘する見方まである。

…米国に限らず先進国では金融の目詰まりで、経済活動全体が停滞している。民間の資金需要が乏しくなり、銀行が国債に資金を振り向けることで長期金利が低下している。
景気回復が予想よりも遅れていることの表れだ。物価の低迷による経済の悪循環から抜け出せない「日本化」が広がっているとの指摘も多い。
川本先生の分析は、デフレの要因は「金融」にあるとするものです。モノ<カネ需要なんですね。民間貯蓄率は高くなり、企業も負債を減らすほうに(要するに実物投資よりカネ優先)資金を振り向けています。
8月4日9時44分配信 ロイター
「ドルが一時85.67円を下回る、8カ月ぶり安値更新」
…米商務省が3日発表した6月の個人消費支出と個人所得は、共に前月比横ばいとなった。一方、個人貯蓄率は6.4%と1年ぶりの高水準となり、景気回復の足取りが当面は重くなる可能性が示唆された。
<非不胎化介入による円高阻止>
8月4日9時44分配信 ロイター
「ドルが一時85.67円を下回る、8カ月ぶり安値更新」
午前の東京外為市場でドルは一時85.65円まで下落し、昨年11月以来8カ月ぶりの安値を更新した。市場では、85.50円付近にはオプション関連のドル買い需要もあるとされるが、ドルが85円半ばを割り込んだ場合には、昨年11月末の安値84.82円が視野に入ってくるという。
円高が進んでいます。円高は、輸出の減少につながります。総支出から見たら、GDP=消費(C)+投資(I)+政府(G)+輸出(EX)から、輸入(IM)を引いたものなので、輸出を伸ばせばGDPは拡大します。
「非不胎化」とは、円安にする円売り・ドル買い政策に対して、日銀がそれを相殺(マイナスの方向)しないというものです。
財務省が、円売り・ドル買い介入(為替介入)をします。外貨増です。その分、市場に「円」が出回ります。日銀が国債の売りオペをすれば、市場に増えた「円」を吸収します。これを為替介入の「不胎化」といいます。市場の
「円」をプラス・マイナスゼロにすることです。
「非不胎化」とは、この「売りオペ」をしないで、市場の「円」を増やしたままにすることです。実際に、03年、04年、財務省は為替介入を行い、日銀は、「売りオペ」ではなく、「買いオペ」で、量的緩和を行いました。
松尾匡 立命館大学教授『不況は人災です』筑摩書房 2010 p78~ グラフも
…円高になったら、日本経済はどうなりますか。…輸出産業では…当然、売上が落ちますよね。…こうなるのを阻止するために財務省は、巨額の円を売って、ドルなどの外貨を買い、円の価値が上がるのを食い止めたのでした。

…このときは日銀が、財務省の巨額の円売り介入と歩調を合わせて金融緩和を拡大しました(筆者注:量的緩和)。だから結果的に、日銀が作ったおカネで円売り介入をして、世の中に「円」を出回らせるのと似たようなことになったのです。
「非不胎化」によって、市場の「円」を増やそう、量的緩和をしようというのが、『大機小機』の主張なのです。
藻谷浩介『デフレの正体』角川oneテーマ21
P268
「経済を動かしているのは…現役世代の数の増減だ」。この本の要旨を一言でいえばそうなりましょう。…「生産年齢人口の減少と高齢者の激増」という日本の現実…。
P99
所得はあっても消費しない高齢者が首都圏で激増P102
…高齢者だった。彼らは特に買いたいモノ、買わなければならないモノがない。
P135
「昔ほど車を買わない、そもそも以前ほどモノを買わない、最近余り本や雑誌を読まない、モノを送らなくなったし車にも乗っていない、近頃あまり肉や脂を食べないし酒量も減った、水も昔ほど使っていない」ということです。これは正に退職後の高齢者世帯の消費行動そのものではありませんか。
P142
…「生産年齢人口の波」の減少局面に突入した日本。定年退職者の増加→就業者数の減少によって内需は構造的な縮小を始めました。
藻谷さんは、「生産年齢人口減少&高齢者増加による需要不足」が、デフレの正体だとしています。下記のアメリカの様子を見ると、「生産年齢人口減少&高齢者増加による需要不足」がデフレの原因ではないようですね。同国は、そのような状態にはなっていないのです。
日経『大機小機:長期デフレの足音がする』H22.8.7
米国、欧州連合(EU)も長期デフレの様相を呈し始めているようだ。米国経済はバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言にあった「異例な不確実性」に象徴されている。
…未知の領域に踏み込んでいることを示唆している。膨大な需給ギャップ、悪化したままの家計のバランス・シート、物価の鎮静、失業率の高止まりなどを勘案すると、デフレという魔女が、バーナンキ議長を後ろから抱きしめようとしている、といえよう。
…こうした長期デフレの魔女を振り切る方策について、バーナンキ議長は「財政再建より需要喚起を優先すべきだ。必要とあれば追加的金融措置を講じる」と述べている。
…これに対し、日本の政策ポジションは不明確である。ばらまき的支出が継続し、積極果敢な需要喚起策は実行されそうもない。金融面では日本のデフレは貨幣的現象ではない」など奇妙な説明が横行している。
「ヴィクトリアン長期停滞(筆者注:19世紀の話)」の発生・終結では明らかにマネーが決定的な役割を果たしている。日本経済に対する期待を劇的に変え、長期デフレから脱却する方策として、非不胎化介入による円高阻止と追加的緩和が求められている。
川本裕子 早大教授 『米消費者物価指数(13日) 景気回復の鈍さ映す』日経H22.8.8
…住宅市況の落ち込みや高失業率、消費の伸び悩みなどを背景に、物価の上がりにくい「ディスインフレ」になっているもようだ。米国で停滞が長引けば、物価下落が継続するデフレに陥る危険性を指摘する見方まである。

…米国に限らず先進国では金融の目詰まりで、経済活動全体が停滞している。民間の資金需要が乏しくなり、銀行が国債に資金を振り向けることで長期金利が低下している。
景気回復が予想よりも遅れていることの表れだ。物価の低迷による経済の悪循環から抜け出せない「日本化」が広がっているとの指摘も多い。
川本先生の分析は、デフレの要因は「金融」にあるとするものです。モノ<カネ需要なんですね。民間貯蓄率は高くなり、企業も負債を減らすほうに(要するに実物投資よりカネ優先)資金を振り向けています。
8月4日9時44分配信 ロイター
「ドルが一時85.67円を下回る、8カ月ぶり安値更新」
…米商務省が3日発表した6月の個人消費支出と個人所得は、共に前月比横ばいとなった。一方、個人貯蓄率は6.4%と1年ぶりの高水準となり、景気回復の足取りが当面は重くなる可能性が示唆された。
<非不胎化介入による円高阻止>
8月4日9時44分配信 ロイター
「ドルが一時85.67円を下回る、8カ月ぶり安値更新」
午前の東京外為市場でドルは一時85.65円まで下落し、昨年11月以来8カ月ぶりの安値を更新した。市場では、85.50円付近にはオプション関連のドル買い需要もあるとされるが、ドルが85円半ばを割り込んだ場合には、昨年11月末の安値84.82円が視野に入ってくるという。
円高が進んでいます。円高は、輸出の減少につながります。総支出から見たら、GDP=消費(C)+投資(I)+政府(G)+輸出(EX)から、輸入(IM)を引いたものなので、輸出を伸ばせばGDPは拡大します。
「非不胎化」とは、円安にする円売り・ドル買い政策に対して、日銀がそれを相殺(マイナスの方向)しないというものです。
財務省が、円売り・ドル買い介入(為替介入)をします。外貨増です。その分、市場に「円」が出回ります。日銀が国債の売りオペをすれば、市場に増えた「円」を吸収します。これを為替介入の「不胎化」といいます。市場の
「円」をプラス・マイナスゼロにすることです。
「非不胎化」とは、この「売りオペ」をしないで、市場の「円」を増やしたままにすることです。実際に、03年、04年、財務省は為替介入を行い、日銀は、「売りオペ」ではなく、「買いオペ」で、量的緩和を行いました。
松尾匡 立命館大学教授『不況は人災です』筑摩書房 2010 p78~ グラフも
…円高になったら、日本経済はどうなりますか。…輸出産業では…当然、売上が落ちますよね。…こうなるのを阻止するために財務省は、巨額の円を売って、ドルなどの外貨を買い、円の価値が上がるのを食い止めたのでした。

…このときは日銀が、財務省の巨額の円売り介入と歩調を合わせて金融緩和を拡大しました(筆者注:量的緩和)。だから結果的に、日銀が作ったおカネで円売り介入をして、世の中に「円」を出回らせるのと似たようなことになったのです。
「非不胎化」によって、市場の「円」を増やそう、量的緩和をしようというのが、『大機小機』の主張なのです。
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theme : マクロ経済学 ミクロ経済学
genre : 政治・経済