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藻谷浩介その2『デフレの正体』角川oneテーマ21

藻谷浩介 『デフレの正体』角川oneテーマ21

 この本は、平成22年7月4日『読売新聞』書評欄に、公認会計士の山田真哉氏によって「統計から真実を読み取れ」と題して、紹介されました。同欄では、「統計を読みとることで様々な思い込みを排除することに成功している」とされていたので、読んでみました。

 結論ですが、著者が「私は無精者で、経済書やビジネス書は本当に数冊しか読んだことがないのですがp125」と述べている通りです。

 経済学的バックボーンがないと、全体像が歪んでしまいます

 経済学と、同書で述べられるような経済現象は全く別物です。前者は、後者がなぜ生じるか(メカニズム)を述べます。経済現象だけに目を奪われると、本質をつかむことができません

以下、解説します。

間違い部分は赤で示します。

p189…技術開発は全力で続けて、日本企業には最先端に立っていただきたい。でも首尾よくそうなっても、稼いだ外貨が内需に回る仕組みを再構築しない限り、外貨が稼げずに死ぬということになる前に、外貨が国内に回らないことで経済が死んでしまうのです。

P30
…日本の貿易黒字は中国の台頭…にもかかわらず年々増加傾向にあったし、世界の景気が良くなればまた回復する…。事実日本の輸出は09年1月を底に伸び始め、貿易黒字もまた拡大基調に戻っています。

P32
…08年には…貿易黒字は4兆円に急落しました。…「日本は貿易黒字を稼げる時代は終わった」という論調が…。

P35
…世界中から莫大な金利配当を稼ぐ日本…そんなに稼いでいるという黒字は…多くは輸出企業と、そういう企業の株主になっているような高齢者富裕層の財布に集中しており…それがまた外国から金利配当を呼んで来ます。

P38 01-08年の8年間だけで累計138兆円もの経常収支黒字が日本に流れ込みました。…実際にそれだけの額を貢いだ外国にしてみれば、「俺たちからそれだけ儲けて、不況だなんてよく言うよ」という思いかも…。

P39 
…日本はどの国から儲けてどの国に貢いでいるかを確認している人は非常に少ない…。

P43
…日本は…韓国、台湾からも07年、08年と続けてそれぞれ3兆円前後の貿易黒字をいただいているのです。…稼いだ貿易黒字の合計は、00年に比べれば2倍以上に膨らんでいて…。

P50
…ハイテク分野では日本にかないっこないフランスやイタリアが…ブランドの食料品と繊維と皮革工芸品を作ることで、日本から貿易黒字を稼いでいるんですよ。…日本だってアジア相手に同じことができるんです。何を怖がっているのか。


 貿易黒字は、海外への資金提供(日本の貸し出し=海外の借り入れ)から生まれます。それを理解していれば、「儲ける」という言葉が出てくるはずがありません。

<不況で貿易黒字は増える>

「日本は多くの産業において強い競争力を持っており国際経済で一人勝ちしているから,日本の貿易収支や経常収支は黒字である」との論調もあります。日本はすごい貿易黒字になっているのに,どうして景気が悪いのだろう」という疑問もあります。「日本は外貨を稼ぎまくっているのに,なぜ不況なのか」とか,「アメリカは貿易赤字なのに,なぜ好景気なのか」ということです。先に言っておきますが、これらは全部間違いです。


GDPの三面等価を見てみましょう。
三面等価 2008

 貿易黒字は,上図の(EX-IM)部分です。国内の貯蓄超過が,貿易黒字になります。

(S-I)=(G-T)+(EX-IM)

 この,(S-I)=(G-T)+(EX-IM)は,どのような比率なのか,上図のこの部分のみを拡大してみましょう。実際の割合,数値例を見てみます。

ISバランス 拡大図.jpg

 さて,景気によって,この,貯蓄(S)と,投資(I)・公債(G-T)・貿易黒字(EX-IM)はどのように動くのでしょうか。

 景気変動を引き起こす要因として,一番影響があると考えられているのは,I(投資)です。景気がいいと,企業は,「モノ・サービスが売れる(来月も,来年も売れそうだ)」ので,設備投資を増やします。それが,日本全体の消費を刺激し,さらに「モノ・サービス」が売れる状態になります。

 ところが,需要(買いたい)が伸び悩むようになると,つまり,十分に供給が行われると,設備が余分になります。需要が横ばい(成長しない)になっただけで,設備投資は原理上ゼロになり,急速に減少します。設備投資の減少は,日本全体の消費の減少へと波及し,不況になります。

(S-I)=(G-T)+(EX-IM)

 ISバランス式でいえば,景気がいいと,民間投資が活発になり,左辺が縮小します(左辺少ない)。ということは,同時に右辺も少なくなるので,財政赤字も貿易黒字も減少します。「好景気になると貿易黒字は縮小する」状態になります。

 逆に,景気が悪いと,民間投資が少なくなり,左辺が拡大します(左辺拡大)。同時に右辺(国債+貿易黒字)も
拡大
します。つまり「不景気になると貿易黒字が増える」状態になるのです。

中谷巌(一橋大学名誉教授)『痛快!経済学2』集英社 2004  p245
 貿易黒字が大きくなるのは国内で生産したものを国内で消費したり,投資したりしていないからです。つまり,国内の供給が需要を上回っているので,そのあまりを輸出する。だから貿易黒字が増えるのです。もしも,国内で生産した分を国内で消費しきってしまえば,貿易黒字は発生しないのです。

中谷巌(一橋大学名誉教授)『痛快!経済学』集英社 1998  p175
不況だから貿易黒字が増える」のであって,貿易黒字が大きいから豊かになるわけではないのです。


「失われた10年(最近は20年といわれています)」といわれる,停滞期を見てみましょう。

失われた10年実質GDP.jpg

失われた10年 貿易黒字.jpg

 ’96年は「回復感なき景気」と呼ばれつつも,経済成長率(GDPが前年に比べ,どれだけ増えたか)は伸びを示し,’96年には2.7%に達しました。

 ’97年は,消費税が5%にアップされた年です。「山一証券」「北海道拓殖銀行」の倒産はこの年です。’98年の経済成長率は,’74年のオイルショック以来になる,マイナス成長を記録し,マイナス2.0%になっています。同年の貿易黒字は拡大します。「不景気になると貿易黒字が増える」のです。

 逆に、好景気になると貿易黒字は縮小します。 ISバランス式でいえば,景気がいいと,民間投資が活発になり,左辺が縮小します(左辺少ない)。ということは,同時に右辺も少なくなるので,財政赤字も貿易黒字も減少します。「好景気になると貿易黒字は縮小する」状態になります。

 1986年~1990年のバブル景気時代を見てみましょう。バブル景気とは、1986年12月から1991年2月までの4年3か月(51ヶ月)間を指します。バブル景気の引き金になったのは1985年のプラザ合意です。これにより急激な円高が進行し、1ドル240円前後だった為替相場が1年後に1ドル120円台まで急伸しました。政府は、減税や公共投資拡大で対応し、日銀は金融緩和を行いました。地価も株価も高騰し、日経平均株価は、1989年の大納会(12月29日)に最高値38,915円87銭を付けました。平成になっても、この平均株価には、一度も達していません。今から振り返っても、大変な好景気時代でした。

バブル期 実質GDP.jpg
バブル期 貿易黒字.jpg

 このバブル景気時代は,I投資が活発で,(S-I)が急速に縮小しています。また,同時期,貿易黒字は減小しています。確かに好景気になると,貿易黒字は減少するのです。

藻谷浩介 『デフレの正体』角川oneテーマ21P43
…日本は…韓国、台湾からも07年、08年と続けてそれぞれ3兆円前後の貿易黒字をいただいているのです。…稼いだ貿易黒字の合計は、00年に比べれば2倍以上に膨らんでいて…。

藻谷浩介 『デフレの正体』角川oneテーマ21P50
…ハイテク分野では日本にかないっこないフランスやイタリアが…ブランドの食料品と繊維と皮革工芸品を作ることで、日本から貿易黒字を稼いでいるんですよ。…日本だってアジア相手に同じことができるんです。何を怖がっているのか。


藻谷さんが言う「貿易黒字を稼ぐ?」のは、不況の時なのです。

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theme : 間違いだらけの経済教育
genre : 学校・教育

comment

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No title

はじめまして。

質問があるのですが、2004-2006はGDPは増加していますが、貿易黒字は縮小しています。

これはなぜでしょうか?

No title

記事本文より

 ISバランス式でいえば,景気がいいと,民間投資が活発になり,左辺が縮小します(左辺少ない)。ということは,同時に右辺も少なくなるので,財政赤字も貿易黒字も減少します。「好景気になると貿易黒字は縮小する」状態になります。

 好景気=貿易黒字縮小
 不景気=貿易黒字拡大

となります。

No title

見方を誤っておりました。

申し訳ありません。

No title

 貿易黒字は、不況で拡大するのです。 この事実を知っただけでも、経済学を勉強する価値があります。

 しかも、貿易黒字は海外資産の増加のことです。われわれの生活自体を豊かにするものではありません。

 今までの常識が180°くつがえります。これが学ぶことの醍醐味です。

 私の試みは、大河の一滴です。ですが、今より少しでも多くの人に知っていただきたいと願っています。

No title

藻谷氏が「貿易黒字を稼ぐ」と表現していることに対し特に間違いと言う必要はないのではなかろうか。経済学的には間違った表現だとしてもそれが彼が提起している問題の本質にどんな意味があるのでしょうか。藻谷氏は確かに経済学の専門家ではないと見ますが、だからといって経済に関することを述べると、どうして言葉が問題になるのですか。もしこれを「日本は貿易黒字を稼いでいるのではない。これは外国に貸しているのだ」と書いたらどうなります。一般の人はそれどういうこと?と聞くこと必死です。そのことの説明に経済学者の方は一般の読者にどのようにわかりやすく説明なさるつもりでしょうか?藻谷氏は学会に研究論文を出そうとしているわけではないのです。それより彼の主張する内容に経済学の上で今の日本の経済の諸問題を解決するヒントが含まれているのであればそれこそ素晴らしいことではないですか。貿易黒字の稼ぎのところで、彼が主張しようとしたことは日本の国際競争力が落ちたと言う議論があるがと前置きして述べているのです。国際競争力が落ちているかいないかはまた論争が起こりそうですがこの際それは置くとします。とにかくこうした言葉の使い方での議論は止めましょうよ。大事なのは彼がデフレの正体の本で主張する日本の年齢別人口構成変化の大きな波(若年労働者が急激に減り始め、高齢人口が急激に増えている日本の特殊な人口構成)が日本の経済の動きにどのくらい影響があるのか無いのか、あるとしたらどうしなければいけないのか、専門家の方でしたらそこをしっかり検証していけばよいのではないでしょうか。一般の読者は本の内容を見て感激したり、面白がったりするかもしれません。それはそれです。多くの読者は藻谷氏の主張が分かりやすかったし、内容が新鮮だったから飛びついたのだと思います。私もそうです。私はエンジニアですがこの本は堂免信義氏の「日本を貧困化させる経済学の大間違い」ほど衝撃は受けませんでしたが、その次によい本だなと感じた人間です。そうか日本経済を人口動態を切り口にして分析する手があったのかと。それで今いろいろな資料を集め私なりの考えをまとめようとしているところです。専門家の方は経済学的にどうのこうのという分析の前に、一度立ち止まって、何故この本が売れるのかの理由を考えて見てはどうでしょうか。今の経済学に問題があって読者がそれを肌で感じているから飛びついたかもしれないのです。今の経済学は今の日本の問題に対し旨く対処できて居ないと思って、、、、藻谷氏はそのことを前書きのところで「今の日本では、経済の問題は、、、、、、何が原因で何が起きているのかと言う事実が、明快な言葉で分析されたり語られたりしていません。」と書いています。私も同感です。この現状を何とかしてほしいと願っている一人です。

No title

 藻谷氏ですか。もう結構なのですが・・・(また、○○にこう書いているが・・・という問い合わせが来て、もう、うんざりです。彼は基本的に人の話や、経済学の本から学ぼうとしていないので(自分の目と耳と足で歩いたことを信じる・・・と著書にあったような・・・)、何を言っても書いても、自分の時間の無駄なのですが・・・

 とりあえず、経済学的な観点からお答えします。

>大事なのは彼がデフレの正体の本で主張する日本の年齢別人口構成変化の大きな波(若年労働者が急激に減り始め、高齢人口が急激に増えている日本の特殊な人口構成)が日本の経済の動きにどのくらい影響があるのか無いのか、あるとしたらどうしなければいけないのか、専門家の方でしたらそこをしっかり検証していけばよいのではないでしょうか。

GDPは3つの要素から成り立ちます。
①労働力(これが彼の言う生産年齢人口ですか?)
②資本
③生産性

①の労働力が減るから、GDPも減ると言う因果や相関はありません。
日本にとって必用なのは、③の労働生産性の向上です。日常業務でも結構ですし、イノベーション(革新)でもけっこうです。

>多くの読者は藻谷氏の主張が分かりやすかったし、内容が新鮮だったから飛びついたのだと思います。私もそうです。

 はい、皆さん誤解しています。

 ですので、高校で必修の「現代社会」や選択必修の「政治経済」で、正しい知識の普及が急務なのです。

 ちなみに、すでに、「貿易黒字は儲けではない」ことぐらい、資料集には記載されるようになっていますよ。
 その高校生が社会人になって古本で、「デフレの正体」を読んだら、「ウソだあ~」とすぐに分かることでしょう。


 実教出版「2012新政治・経済資料 新訂版」p282
 経常収支+資本収支=0 すなわち資本収支が赤字であれば,経常収支は自動的に黒字となる。
 資本収支の赤字を経常収支の黒字で埋め合わせているわけではないこと,「赤字=悪」ではないことに注意。

 実教出版 2012「ニュースタンダード 資料現代社会」p286
 輸出超過の状態では貿易・サービス収支は黒字となる。海外直接投資が多ければ資本収支は赤字になる。「赤字が悪で黒字が善」という考え方は国際収支の定義からも正しくないし,黒字と赤字はその国が世界経済のなかではたしている役割を考えて評価すべきである。


>そうか日本経済を人口動態を切り口にして分析する手があったのかと。それで今いろいろな資料を集め私なりの考えをまとめようとしているところです。

 人口とGDPやデフレーションは関係がありません。去年の経済白書でも一蹴されていますので、どうぞご覧ください。


>一度立ち止まって、何故この本が売れるのかの理由を考えて見てはどうでしょうか。

 さあ、「柳田理科雄」氏の「空想科学読本」のように、科学=一般の人にはとっつきにくい・・・経済・デフレ=一般の人にはとっつきにくい・・・ことを専門家がわかりやすく、面白く解説してくれると思ったのではないでしょうか。

 もっとも、前者は学問的知見、後者は日本全国の駅前商店街を見たにしか過ぎない知見という、質的レベルで致命的な差がありますが。

>今の経済学に問題があって読者がそれを肌で感じているから飛びついたかもしれないのです。

 経済学は、過去を分析できても、未来予測は絶対にできませんし、過去の分析から、処方箋を示すくらいしか出来ません。全てを一つの理論で示すのは、無理なのです。

 マクロとミクロで違いますし(だから、藻谷氏や普通の人のように、ミクロ(個人的なこととか、もうけとか、黒字とか)をマクロ(閉じた世界、限界がある世界)に適用させるというトンデモにひた走るのですが・・・。
 ミクロでも、既存のものと行動経済学では180度見方が違います。


>今の経済学は今の日本の問題に対し旨く対処できて居ないと思って・・・何が原因で何が起きているのかと言う事実が、明快な言葉で分析されたり語られたりしていません。」と書いています。私も同感です。この現状を何とかしてほしいと願っている一人です。


 違いますよ。経済学的には一定の合意事項は出ています。問題は、政治がそれらを「先送りし続け、決定できない」ことです。

 農業、医療、介護、電力、電波、新聞の再販制etcの既得権益を守り続けては、日本は停滞するのみです。

 イタリアのように、期間限定で、経済学的知見を持った内閣に任せれば、かなり変わりますよ。イタリアの今後1年を、是非ご覧ください。

 経済学は凄く単純です。「いかに最小費用(資源も、時間も人もコストも)で、最大限の効果を得られるか」だけだからです。エコノミーは、「節約」のことです。エコノミクスは、そこからきています。


 追伸:くだらないのですが、もう1回、あらためて藻谷理論を扱いますね。

No title

金山正男さんから、次のようなコメントが来ました。掲載にふさわしくない部分を除いて、載せます。

>しかし先生のデフレの正体の本に対する批判も少し一方的な解釈が多いと私はお見受けします。それは既に私が投稿した通りです。もし私の解釈が間違えているのでしたら、先生の批判集の中に是非載せてほしいと思います。私には誰かを非難したり、中傷する意図は露ほどもありません。真実を知りたいだけなのです。今日図書館でいい本を見つけたので、それを読んでみようと思います。それは橋本寿朗氏の「デフレの進行をどう読むかー見落とされた利潤圧縮のメカニズム」です。これを読んで少しは前へ進めるかもしれません。


 一方的な解釈をしたことはありません。きちんと著書から引用し、その誤りを指摘したものです。事実の話で、価値判断(意見)は排除していますので。単なる事実で、真実です。

 思いたいのは分かりますが、きちんと事実を積み重ねた上での検証が必用です。

 金山さんへの回答は、すでに記したとおりです。

No title

私の投稿を載せていただきかつそのコメントをされたことを感謝いたします。先生は私の「人口の波が日本の経済に影響が有るのか、無いのか、有るとしたらどれ位あるのか」という私の疑問に対し回答(?)らしき(?)コメントを書かれましたが、それを読んでも自分の回答になってるのかどうかがよく分かりませんでした。。何度か読んで得た私の先生のコメントの解釈は、先生が「GDPの構成要素は、労働力、資本、生産性で、労働力の減少とGDPとは因果関係なく、大事なのは生産性です。」と述べている以上、人口の波と経済とは関係ありませんと解釈して宜しいのですね。そう解釈した上で私はすぐ、ネットで{人口と経済成長」をキーワードにして調べました。そこにはいろいろな公式な論文が出されていました。しかしどれを見てもそのようなことは書かれていません。はてどちらが正しいのでしょう。先生は生産性が大事とおっしゃいましたので、それについても少し述べさせていただきます。先生は藻谷氏が生産性の説明を縷々なさっているのをご存知ですよね。そこで彼が主張していることはどう考えられたのですか。彼は、専門家の方は生産性が大事だ、あるいは成長が大事だといっているがそのことについて辛らつな批判を展開しています。彼の批判は私には理解できます。国のGDP潜在成長率を規定するものは労働力の上昇率と労働生産性の上昇率ですよね。(これはクルーグマンさんもいろいろな経済コラムで書かれています。私の主張ではありませんので念のため)前述したネットで見つけた論文では、生産年齢人口の減少がどんどん進んでいる日本において、労働力維持または上昇のためのいろいろな対策を打たないと大きな影響が出るといっているのです。それは肝心の生産性の上昇も今の日本の産業構造が製造業からサービス業中心になってきているから生産性の大幅な上昇が望めないからだといっています。先生は別のところのコメントで、「事実」という言葉を2回、「真実」を1回使っていらっしゃいますが、これらの”事実”は事実ではないと言われるのでしょうか?

No title

人口の波が日本の経済に影響が有るのか、無いのか、有るとしたらどれ位あるのか

 それが聞きたいのですか?あるに決まっているではないですか。子供の数(割合)が減り、高齢者数が毎年100万人台で増えるのですよ。
 たとえば、おむつ売上数は、子供用<大人用に今年~2、3年いないで逆転することが明らかになっています。

 子供の数<ペットの数です。当然、経済にミクロでは影響があります。

 「あるとしたらどのくらい(量ですか?)あるのか」、これは、専門に研究されている先生の著書をお読みください。私は、見たことがありません。あったら教えてください。

①労働投入
②資本投入
③生産性TFP

GDPの成長には③が一番影響がある。これは事実であり、真実ですが。

GDPの成長には、①②③しかないのです。(寄与度)といいます。

 なお、藻谷理論による「生産性」解釈は、完全に誤りです。カテゴリ藻谷のところで、「生産性」を扱っているところを参照願います。

 ③生産性の上昇が少ないので、日本のGDP成長率が上がらない。これは事実で、真実です。全然否定するようなものではありません。

 繰り返しになりますが、①②③しかないのです。構造改革をしたり、規制緩和をしたり、それらと金融政策を組み合わせて、①②③を上昇させる政策・・・これらは、すでに一定の合意がなされています。

 政治が取り組んでいないのです。

>先生は生産性が大事とおっしゃいました

 勝手に「大事」などと、付け加えないで下さい。どれが大切だとか、大事だとかという価値観を排除していますので、変な解釈をされると困ります。事実と真実にしか、興味はありません。

>何度か読んで得た私の先生のコメントの解釈は、先生が「GDPの構成要素は、労働力、資本、生産性で、労働力の減少とGDPとは因果関係なく、大事なのは生産性です。」と述べている以上、人口の波と経済とは関係ありませんと解釈して宜しいのですね。そう解釈した上

 私が書いていないことを、ご自分で解釈されても困ります。私は、上記「 」で示された部分を、自分では書いていません。

No title

私が本質的なことを議論しようとしても、先生は言葉の問題に置き換えてコメントしてきます。このようなことをしては出口が見つからなくなるのでこれを最後のコメントとさせていただきます。先生は私の問いかけ「人口の波が日本の経済に影響があるのか、ないのか」に対し、「有るに決まっているではないですか。子供の数が減り、高齢者が毎年100万人台で増えるのですよ。」と答えました。果てそれっておかしくないですか?先生は前に、労働力が減るから、GDPも減るという因果や相関はありませんといっているのですよ。因果や相関は無いけど影響は出るに決まっているというのですか?私の頭ではとても理解できない不思議な言葉のマジックです。私は因果関係というのは人口が減るから、GDPもそれにつれ下がるといったようなことが因果関係(原因ー結果の関係)で、相関関係というのはその影響がある法則を持っている(たとえば、人口が10%減るとGDPも10%減るといった様なこと)指すと今まで思っていたのですが私が因果関係、相関関係の言葉の解釈を間違えたのですかね。いづれにしろこうした言葉のやり取りは私にとっては関心がないのでこれでこの議論は終わりとします。 

No title

>私が本質的なことを議論しようとしても、先生は言葉の問題に置き換えてコメントしてきます。このようなことをしては出口が見つからなくなるのでこれを最後のコメントとさせていただきます。先生は私の問いかけ「人口の波が日本の経済に影響があるのか、ないのか」に対し、「有るに決まっているではないですか。子供の数が減り、高齢者が毎年100万人台で増えるのですよ。」と答えました。果てそれっておかしくないですか?先生は前に、労働力が減るから、GDPも減るという因果や相関はありませんといっているのですよ。因果や相関は無いけど影響は出るに決まっているというのですか?私の頭ではとても理解できない不思議な言葉のマジックです。

 回答します。

 やはり、ミクロと、マクロを混同しているようです。

①労働力人口の減少(=14歳以下の少子・65歳以上の高齢者増)は、ミクロで、個々の企業、業界に影響があります。

 これは、実証があります。いろいろ、影響が出そうな業界を調べてみてください。おむつも一例です。



②労働力が減るから、GDPも減るという因果や相関はありません。これはマクロの話で、実証的にそうです。

 95年から労働力人口が減少していますが、GDPが減ったという事実はありません。

 また、GDPは「A労働力・B資本・C生産性」で分析されますので、人口が減る?とGDPが減るなどという理論も、実証も、ありません。


>不思議な言葉のマジック

 そうではなくて、「マクロ=閉じた世界」と「ミクロ=オープンな世界」では、言葉も違うし、現象も実証も違いますというお話です。

 一つ一つ分けて考察しないと、何を言っているんだか、M氏の主張のように、訳が分からなくなります。

 以上です。

No title

またまたおかしなことをおっしゃいます。どうして、頼みもしないミクロとかマクロといったわけの分からない言葉を持ち出してくるのですか。私は前にそんなの興味ないといったではないですか。しかし先生はここでも自分が間違えてるのにそのことに気付かず(これはあくまで私の推測)私に向かって「あなたは勘違いなさっている」と挑戦してこられる。だがどうして「ミクロ=閉じた世界」、「マクロ=オープンな世界」なのですか。あなたは、ひょっとして、マクロ経済のマクロとミクロ経済のミクロの事を指してミクロとマクロという言葉を使われていらっしゃるのですか。もしそれだったらそれこそ大間違いです。ミクロ経済は、企業の行動等に関すること(例えば、製品価格形成等)、でマクロ経済はそれら経済主体を一括りで、つまり国レベルでの経済活動を論じるもの。これは経済は知らなくてもミクロ、マクロという英語の意味をを知っていればなんとなく分かります。閉じた世界とか、オープンな世界という言葉はクルーグマン氏の本で私は初めて知りました。もしこのこととミクロとマクロを結びつけたのだとしたらあなたの説明は明らかに間違いです。私がクルーグマン氏の本から学んだことは、国(マクロ)はクローズッドシステムで、企業活動はオープンシステムで、だから、国の経済運営を企業の経済運営と同じように考えてしてはいけないのだと。私はその時、あ、そうなのかと不思議に感心したのを覚えています。彼は多くのアメリカの政府の要人達や、アメリカの多国籍の企業経営者がその違いも知らずに、国が運営できると思って発言するのでl困ると書いていました。日本でもいっぱいそうした人が居ますよね。規制緩和はすればよいのだとか構造改革すればうまくいくとか、グローバリゼーションをもっと進めればよいとか、生産性を上げればいいのだとか財政改革をすればよいのだとか言う主張です。彼はそうした論調が政府の中で幅をきかしていて、しかも経済学者から見ればそうした大企業経営者のほうがはるかに影響力を持つがゆえに困っているとも「告白」していました。私の尊敬する故下村博士も本でともすれば日本の多くの識者が議論するとき、国民経済を視点にして発言をしないことを憂えていました。特にアメリカに対しては強い口調で「アメリカの唱える自由貿易主義の決定的な間違いは、国民経済の視点を欠いていることだ。、、、アメリカ人経済学者の見解をなんとなく受け入れて、日本の経済学者や政府までが、自由貿易が市場の命題であるかのように思い、苦しくても自由貿易を守れなどと騒いでいる。」とまで言い切っているのです。この2人は国民経済という言葉をしっかりと使われる学者です。今の日本の経済学者は国民経済の視点で発言する人を不思議と見たことがありません。TPP加入のときの議論でも国民経済の上ではどうなるのかの視点が必要なのに、TPPを推進したい政府が反対派に対し「国益だけは損なわないようにする」と答えているだけです。少し話はそれましたが、とにかく、ミクロ、マクロの言葉を先生はどのように勉強なさって、「ミクロ=閉じた世界」、「マクロー=オープンな世界」とわけの分からない呪文を唱えるのでしょう。もしミクロを企業活動、マクロを国の経済活動という意味で使われているのならまるっきり反対のことを言っています。私は先生がどのように思っていられようとかまいません、しかし私の問いに対し余計な話を持ち出さないで下さい。そしてそれを基に私が勘違いしているなどと勝手に決め付けたりしないで下さい。

No title

>だがどうして「ミクロ=閉じた世界」、「マクロ=オープンな世界」なのですか。

>とにかく、ミクロ、マクロの言葉を先生はどのように勉強なさって、「ミクロ=閉じた世界」、「マクロー=オープンな世界」とわけの分からない呪文を唱えるのでしょう。もしミクロを企業活動、マクロを国の経済活動という意味で使われているのならまるっきり反対のことを言っています。私は先生がどのように思っていられようとかまいません、しかし私の問いに対し余計な話を持ち出さないで下さい。そしてそれを基に私が勘違いしているなどと勝手に決め付けたりしないで下さい。


 逆ですよ。私が書いたのは、「マクロ=閉じた世界」と「ミクロ=オープンな世界」です。

 その意味で、あなたがクルーグマンの本から学んだという、

>私がクルーグマン氏の本から学んだことは、国(マクロ)はクローズッドシステムで、企業活動はオープンシステムで、だから、国の経済運営を企業の経済運営と同じように考えてしてはいけないのだと。私はその時、あ、そうなのかと不思議に感心したのを覚えています。

でよろしいのではないでしょうか。

 あと、クルーグマン(クルッグマン)についてですが、

>この2人は国民経済という言葉をしっかりと使われる学者です。今の日本の経済学者は国民経済の視点で発言する人を不思議と見たことがありません。TPP加入のときの議論でも国民経済の上ではどうなるのかの視点が必要なのに、TPPを推進したい政府が反対派に対し「国益だけは損なわないようにする」と答えているだけです。

 クルッグマンは、「自由貿易」推進ではなく、「反対」の人なんですか?

>彼は多くのアメリカの政府の要人達や、アメリカの多国籍の企業経営者がその違いも知らずに、国が運営できると思って発言するのでl困ると書いていました。日本でもいっぱいそうした人が居ますよね。規制緩和はすればよいのだとか構造改革すればうまくいくとか、グローバリゼーションをもっと進めればよいとか、生産性を上げればいいのだとか財政改革をすればよいのだとか言う主張

 これらに、クルッグマンは、「反対」なのですか?いや、何でもかんでも「進めればうまくいく」などと言わないことは、もちろん承知の上ですが。

No title

クルーグマン氏は特に自由貿易に反対しているとは言えないと思います。彼は、みんなが良い良いと言っていることに対しそれは間違いだとははっきり指摘はしますが、私は彼は中立的な立場をとっていらっしゃると思います。それは、次のような記述があるからです。「アメリカのビジネス階層の大勢が自由貿易の支持者であり、世界貿易を拡大すれば世界の雇用状況が改善されるとの思い込みがある。、、、、、経済学者は一般に、自由貿易が世界の雇用を増やす、とは思っていいない。経済学者は何故、ビジネス階層が常識と受け取る考え方に組しないのか。NAFTAの議論を進めたとき、、、、、NAFTA支持派の討論者から猛然と反発された経緯がある。」この記述からすると反対の立場をとっているようにも取れるが、それはあくまで自由貿易が素晴らしいとするビジネス階層のエグゼクティブに対し苦言を呈しているだけのことです。そしてそれが間違いだと彼らを説得しようとしてもなかなか理解してくれないことにイライラしているだけです。
規制緩和についても同様だと思います。中立的な立場をとっていると思います。必要なときもあるし、してはいけないときもあるという立場で、それを採用するかどうかはその時の国の経済状況によるということです。これにはよい事例があります。彼は、日本に来日した際、竹中大臣と、日銀幹部と会っています。その折、彼が日銀に対し「日本は流動性のわなにはまっている」と言って日銀に対しインフレターゲット目標の設定を進言しています。その時のことをニューヨークタイムズ紙のコラムに書いています。私は、それを彼の本で知りました。その記事の中でも私が注目しているのは、竹中平蔵氏との会談です。彼は制緩和、構造改革を進めようとする元竹中大臣に対し、どうしてそのような危険な行為を今実施しようとするのか。それは経済学では自殺行為ではないか。今の日本は供給過剰ではない。(つまり供給過剰な状態なら規制緩和、構造改革、生産性上昇はしてもよいといっているのと同じこと)、今は需要不足ではないかといっています。それに対する竹中大臣の答えは、いや、今それが必要なのです。日本経済が体質改善されれば、それが成長に繋がっていくのだと。(とわけの分からないことを言いますーこれは私の考え)。これでクルーグマン氏の立場は中立だと分かりますよね。あくまでそうした体質改善は需要不足のときはやってはいけないと言うだけのことです。しかしひどいですよね。竹中氏がが大臣になってから、株価は奈落の底に落とされ、金融危機が発生し日本経済は一瞬地獄を覗いたのですからね。私はそうした舞台裏は、ずーと後になってクルーグマン氏のエッセイ集で知ったのですから。怖いことです。

No title

すみません。急いで書き込んだためさっき述べたことでうっかり間違えをしたたことに気がつきました。クルーグマンさんは、需要超過(インフレが激しいとき)の時には規制緩和、とか構造改革とか、生産性上昇とか、効率化が有効だと言っているのだと思います。彼は、需要不足のときそんなことをやったら経済の自殺行為だといっているだけで、やっていい時の条件までは書いていませんでした。しかし、考えてみればイギリスのサッチャー氏がやったりしたのはそうしたインフレがあって、経済も停滞するsタグ譜レーションが進んでいたときです。つまり、賃金が下方硬直性になり、賃金プッシュインフレが進んでいて、政府もも非常な非能率でいわゆる「イギリス病」が進んでいたときの処方箋です。アメリカのレーガノミックスも似たような経済状況のときです。と私は考えます。(私がが考えているだけですよ。)それを指摘したような人が居たようにも記憶がありますがそれが誰だったかは忘れました。
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